【ネタ・習作】夢の欠片   作:へきれきか

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第05話 ヒモの汚名を雪げ

「えーと次は……三角関数か。……紙も消耗品ってわけじゃないのにどうやってここまでたどり着いたんだ……? 考えた人天才だろこれ」

 部屋の中でひとり机に向かいブツブツと何やらつぶやいている大和。端から見れば、完全に不審者である。

 どうしてこんな状況になったのか。

 それは一月半ほど前、彼の妹と西平太守の会談があった、あの日まで遡らなければならない。

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「そうか。太守様、ホントに良い人だったんだな」

「はい。とてもお優しくて素晴らしい方でしたよ」

「けど何で正体がバレてたんだろう……」

「そ、そんなことはどうでもいいじゃないですかっ」

 董西平太守との会談を終えて屋敷へと帰ってきたものの、田元皓は半ドンで午後の予定はなく、無職の大和もさして重要な用事は無い。本人にとっては本当に悲しことだが。ともかく、久々に二人でゆっくりできるということで先の会談の様子など、お茶を飲みながら歓談している。

 それはいつもと何ら変わらないおなじみの風景。

 しかし、大和としてはこのままお話とお茶を楽しんで終わり……などということにする気は毛頭無かった。

 田伯鉄は、一つの重大な決心をしてここにいる。

 

 働きたいのだ。

 どうしようもなく。

 

 もう、色々と限界だった。

 読み書きの能力も高くなってきたので、何日か前から就職活動をしているのだが、まったく上手くいっていない。それはもう見事なまでに。

 そんな焦りが出てくる中、偶然出会った将軍様には「ちゃんと職探せば?」などと言われてしまう。

 挙句の果てに眼鏡っ娘賈文和様である。

 

『伯鉄。はいこれ』

 差し出されたのは小さめの袋。

 可愛らしい花柄のそれからは金属同士が触れ合う音がする。

『……これは?』

『案内してくれたからね。そのお礼よ』

『案内といっても正直何もしてないですよ?』

『いいのよ。わりと楽しかったし。いいからとっときなさい』

『いや、でも……』

『あぁもう! 面倒くさいわね! 仕事もないんでしょ? 素直に受け取りなさいよ』

 

 …………

 

(……働きたくなくてこうなったわけじゃないさ……)

 大和は最初、国に仕官しようと思っていた。

 高3まで野球にかまけてたとはいえ、勉強もそれなりにはできるし、持っている未来の知識があれば何かと役に立つはずと考えたからだ。しかし、それはそんなに簡単なことではないとすぐに断念させられる。後漢に似たこの世界では、「実務が出来るかもしれない」などという理由で採用はされないのである。

 官吏になるためにはまずその採用試験に受からなければならないが、ハッキリ言って彼がそれに合格するのは不可能に近い。官吏を目指す人間は幼いころから『孝経』『論語』を学び、『詩』『書』『春秋』『易』『礼』などを修めていくのだが、田伯鉄にはこれらの知識教養が足らなすぎた。まともに目指していたらよくて数年、下手をすれば一生かかっても無理かもしれない。

 郷挙里選という、いわゆる推薦制度のようなもので地方から採用される方法もある。が、どちらにしろ先に挙げた教養等が足りないし、なによりこれまでの経歴がでっち上げの男が推薦されるはずもない。出生もデタラメな上、名声も地盤も全くないのだ。

 では民間に就職は?

 それも上手くいきそうにない。腕を怪我しているのがネックになっているのか、どこも感触は悪かった。

 こうなってくると残された道は、左腕の回復を待つか縁故採用に頼るかとかになってくるのであるが……。

 完治にはあと一ヶ月ほどかかるらしく、すぐにこの状況を変えることはできない。縁故採用の方はというと――異世界人の大和にとって、頼れる人は限られてくる。

 すぐに思い浮かぶのは華将軍と妹の菊音。

(華将軍の仕官話はありがたいけど、すぐに進む話じゃないので却下。菊音は……)

 危険を冒してまで長安に捜査に出向いてしまう。そんな正義感の塊のような彼女が、裏口入学的なことを許すとも思えない。

 まさに八方塞がり。

 知恵をいくら絞っても打開策は生まれてこない。

 できれば一人でどうにかしたかったが、それももう限界。

 とにかく一度相談することにしたのだった。

「なぁ、菊音」

 湯のみを置き、姿勢を正して相対する。

「なんですか?兄さん。そんな改まって」

 小首を傾げる妹を見て、

(よしっ! 一歩を踏み出そうじゃないか! ヒモ生活からの脱却のために!)

 膝の上で握りこぶしを作る。

 全然かっこ良くない決意をする自分に泣きたくなるが、そんなことも言っていられない。

「実はその……大事な相談事があるんだ」

「……何でしょうか?」

 長安以来見たことのない、兄のこの上なく真剣な表情に気づいたのか、声のトーンを落として聞き返す。

 それを見た大和は一つ大きく深呼吸をして、

 

「働きたいんだ、俺」

 

 静かに切り出した。

 

「え?」

 

「どうしようもなく働きたいんだ……」

 

 声を絞り出して言うと、

「兄さん、お仕事を探してるんですか?」

 などとお聞きになってくる。

(頼む……頼むからやめてくれ。「働かなくてもわたしが稼ぐのに……」みたいな目で俺を見るのは)

 自分を形作っている何かが音を立てて崩れていくのを感じる。

「でも、べつに困ってないですよ?」

(それはそうだろう)

 大和は思った。

 というのも、妹・田豊はなかなかの高給取りであるにも関わらず、郎党のようなものをもっていないし、ちょっとしたオシャレをしたり本を買ったりする以外には特にお金を使おうとしないからである。貯蓄もかなりあるらしい。彼女にとって、男一人養うことは大した負担ではない。

 大きな負担がかかっているのは彼女の財布ではなく、河北大和の小さくもちゃんとそこにある自尊心であるとか、その辺りである。

 つまり、

「俺が困ってるんだ」

「おこづかいが欲しいなら言ってくれれば……」

「…………」

(惜し……くないっ! 全然違う! そうじゃないんだ……そうじゃなくて……)

 

 軽くめまいを覚えるが、ここで諦めるわけにはいかない。

 大和は妹に一生懸命に、まるで厳しい親に初めてのバイトを認めてもらおうとする高校生のように、「働きたい」ということを訴えた。こんなに熱心に人を説得したのは、東京の大学に行くことを親に認めさせたとき以来かもしれない。

 熱意が伝わったのかなんとか理解してもらうことができ、無事本題に入れたが、その頃にはかなりの気力を消耗してしまっていた。

 

 何はともあれ、二十からのハローワーク開始。

 

……

………

 

「――というわけで、官吏になるのは教養的な問題で無理だと思ったんだ。それで民間を受けてたんだけど……怪我のせいかこれも思うようにいかなくて……」

 二十の男が、椅子に座ると足も届かないような子どもに就職の相談をしている。

 ものすごい絵面である。

 だが当人は必死も必死。「田鋼のすねかじり」はご近所でも周知の事実なのだから。

「民間っていうのは、商家とかのことですか?」

「うん。読み書き計算が出来るからいけるかなって思ったんだけどね」

「……無理ですよ。兄さん」

 妹は顔を曇らせる。

「どうして?」

「それは、その……」

 うつむいた後、

「わたしが侍御史だからです……」

 申し訳なさそうに上目遣いで言った。

「えーと、それは」

 

(どういうことだ?)

 

「恥ずかしい話ですけど、洛陽では賄賂が横行していて……大きいお店の多くは公卿や宦官に多額の心づけを渡してます。昨日お話しした通り、侍御史は監察と弾劾の官ですから……」

「そんな職に就いている人間の兄を雇うわけにはいかない、か」

「……はい。あとはやはり官人の兄というのは色々と使いづらいというのもあると思います。小さいお店にとっては、こっちの理由の方が大きいです……」

 怪我が要因だと思っていたけど、それは建前。

(少し考えれば分かりそうなのに……まぁ、それだけ焦ってたってことなんだろうけど)

「あの……ごめんなさい、兄さん」

「いやいやっ! 謝らないでくれよ! 菊音には感謝することはあっても――というか、感謝しかないから!」

 望んでもいない謝罪に慌てる。

 これは本音だった。世話になりっぱなしなこの子には、きちんと恩を返したい。そういう思いもあって、職を探している。

(しかし、困ったな)

 怪我の有無に関わらず民間への就職が無理ということになると、あとは華将軍の紹介による軍への就職くらいしか残された道はない。

 

(……軍隊か)

 

 思い起こされるのは厳しい訓練風景ではなく、美貌の色白将軍とあの濃厚なラーメンの匂い。

 

(うっ……ちょっとぶり返してきた)

 

 急いでラーメン臭を将軍様とともに頭から追い出す。

『おいこらっ! 伯鉄!』などと騒いでいるが、大和は無視することにした。

 

 腹をさすりながら前を見ると、

「う~ん」

 両腕を組んでうんうん唸っている。

 もちろん真剣なのだろうが、どうにも可愛らしさが勝ってしまって威厳がない。

 本人も気にしてるようなので言わないが。

 と、その菊音がパッと顔を上げて、

「兄さんは『学校』というところで勉強してたんですよね?」

 いいこと思いつきました! という感じで大和に聞く。

「あ、ああ、昨日の夜に話した通りだよ。野球ばっかやってたけど、勉強もそれなりにはしてた。というか、やらされてたと言った方がいいけど……」

「その『学校』では、算数も教えてもらってたんですよね?」

「うん。数学とかって名前でね」

 そう。

 だから書き言葉をそれなりに覚えた今、田伯鉄は一応一通りの読み書き計算ができる。

 それを職探しに活かそうと考えていたのだが……。

「ちょっと待っててください」

 何か考えがあるのか、椅子からちょこんと降りて、傍らに置いていた鞄から何かを取り出そうとしている。

(ってあれ? それは……)

「鞄、使ってくれてるのか」

 その見覚えのある肩がけ鞄は、かつて大和が通学に使っていたお気に入り。洛陽で暮らし始めるときに、他にお礼になるものが無かったので(もちろん教科書等の中身を抜いて)彼女にプレゼントしたものだった。

「はい。これ、すごく使いやすいです。とくに『ちゃっく』っていうのがお気に入りで。……ほんのちょこっとだけわたしには大きいですけど」

(いや、普通に結構大きいと思います。それデスクノートも入るやつだし)

 

「たしかここに……あっ! あった」

 戻ってきた彼女が手にしているのは一冊の本。

 題名は『九章算術』とある。

「それは?」

「この国の最高峰の、様々な算数が集められた問題集です。太守様に会う前にお友達から借りてきたんです」

 九章算術を卓上に置いて続ける。

「昨日の夜、元いた世界について詳しく話してくれたじゃないですか?……わたし、前から兄さんがいた世界のこと聞きたかったんですけど……なかなか話してくれなかったし。だから昨日はとてもうれしかったです。……ま、真名で呼んでくれたのはもっとうれしかったですけど……」

「ん……うん」

 あらためて言われると言いようのないむず痒さを感じる。

「そ、それで、お話の中の『学校』っていうのがすごく気になったから」

「どれくらいのものか知りたくなったと」

「はいっ。だって国の人みんなが勉強できるんですよね? それってすごいです!」

 興奮した様子で身を乗り出す。

 現代日本に暮らしていると、受ける側の人間にとって義務教育なんかは名前通りの『義務』でしかなかったけれど、やはり教育を受けられるというのは幸福なことだったのだろう。もっとまじめに勉強していてもバチは当たらなかったかもしれない。大和はほんの少しだけ後悔した。

「それで、その九章算術って本を使って一体何を? 俺の算術の力をはかるとか?」

「はい。その通りです。兄さんの力次第では働きたいという願いも実現できます」

 自信ありという感じの菊音。

 しかし、

「でも、仮に算術の能力が高かったとしても、それを発揮する場がだな……」

「なければ作っちゃえばいいんですよ」

 言い切らぬうちに言葉をつなぐ。

 

(作る?)

 

「つまり……?」

「私塾を作っちゃうんです」

「しじゅく?」

 予想外の言葉に一瞬呆気にとられる。

(しじゅく……私塾。私塾ってあれだよな。吉田松陰とかがつくってたやつ)

「いくらなんでもそれは難しくないか?」

「どうしてですか?」

「どうしてって、誰も生徒は来ないと思うけど……」

 いくらなんでも、こんな無名の男の塾に来てくれる物好きはいないだろう。

「だいじょうぶです。なんとかなりますよっ」

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「いつでもどうぞ」

 場所は変わって屋敷の書庫兼書斎。いよいよ算術テストの開始である。

 大和は正直なところ不安はあまり感じていなかった。古代中国の数学がいくら世界的にかなり進んでいたとしても、1800年近くも前の時代なのである。

 

 そんなに難しくはないだろう。

 

 と、高をくくっていた。

 しかし、それは極めて甘い判断だと言わざるを得ない。

 二十年かけて作り上げてきた常識という名の物差しは、あくまでもあちらの世界を基準にしている。後漢の服屋にブラジャーが売られている時点で、そんなものは捨ててしまうべきだったのだ。

「では、まずはこの辺りで」

 小さい手で答えを隠した状態にして差し出されるのは、先ほどの九章算術。

 

(……おいおい、なんだこれは)

 

 信じられない物を見た。

 大和の表情を一番よく表現する言葉はそれであった。

 無理もない。そこにあったのは数Ⅱの中でもかなり高度な問題なのである。紙も書物に使うのが主で、消耗品として浪費するには高価に過ぎる。そんな中で、どうやって図などを使う高等数学が成立するというのか。

 ここに至って、大和は自分の常識などこの世界では全く意味を成さないのだと思い知らされた。

「兄さん?」

「……ああ、何でもない。始めるよ」

 

 二次関数、数列、統計、微分、積分、etc……。大学受験時に詰め込んだ知識――入学とともに薄れていくそれをフル動員して、大和は問題に挑む。

 テストは現代の時間に換算して約三時間、みっちりと行われた。

 果たしてその結果は……。

 

「合格ですよっ。兄さん」

「本当に?」

 採点を終えた妹の第一声に、喜びの前に「本当なのか?」という疑念が持ち上がる。例えるなら、

『面接が上手くいかなかったと感じていた会社から採用の知らせを受けた』

 そんな感じである。

「結構間違えたと思うんだけど……」

「全然問題ありませんよ。これなら私塾も開けちゃいます」

 大和とは対照的に嬉しそうに言う。

 それでも納得のいっていない様子の兄に、田豊は、

「算術っていうのは学問の中でもかなり特殊なんですよ」

 喜びの感情は消さず、弟子に諭すかのように語り始めた。

「ある程度まで到達すると、研究とか証明でどうしても紙が必要になってきちゃいます。紙は使い捨てちゃうには高価すぎるし……それに使う人自体が少いので、高度な算術書というのもほとんどありません。基本的にお金持ちの人とか、代々天文に携わってる人とかでなければ、算術を極めることはできないんです」

「……なるほど、俺の算術の力でも教えることはできるってことか」

「例えば兄さんが最後に解いてた問題なんて、天文のお仕事とかをしたりしない限り、必要ないですよ」

 

(ん?)

 

「それじゃあ、やっぱり生徒なんて来ないんじゃないか? 必要水準の算術を教えるところなら、他にも沢山あるだろうし。それならあっちの世界の知識で使えそうなのを見つけて――」

「あっ」

 途端に妹の顔が曇るのに、

「やっぱりそう簡単にはいかないかなぁ」

 肩を自分で揉みつつ言う。

「…………」

「菊音?」

 いつものボールが跳ね返ってくるかのような反応がない。

「あっ、いえ……私塾は開けると思います。高等算術まで人に教えてくれるところは荊州の水鏡さんのところくらいですし……それに……」

「それに?」

「ち、ちょっとお仕事が残ってるの思い出しちゃいました。部屋へ戻って仕上げちゃいますね」

「お、おう。わかった」

 慌てた様子で――彼女お得意の明らかな嘘をついて、部屋を出ていこうとする。

「……私塾は兄さんの思うようにして下さい。わたしは協力します」

 戸の前で振り返ってそう言った妹。

 表情が冴えないのが気がかりだった。

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「あーくそ。ここで間違ったか」

 答えを見て、頭をかく。

 大和はあれから毎日、この国特有の算術用語と数学の確認作業――簡単に言うところの"お勉強"に追われていた。

 

(しかしまぁ、自分から勉強するとか信じられないな……)

 

 そんなことを考えるとなんだか情けなくなってもくるが、それもあともう少しの辛抱かもしれない。

 田伯鉄は近いうちに算術専門の私塾を始めることになっている。場所はここ、田家のお屋敷。離れを少々いじっただけの簡易的なものではあるが、教室も完成済である。

「ここで……こうだ。……うん、こっちはあってるな」

 自分の導き出した数と答えが一致するのを見て、ひと安心する。

 その右手に握りしめられているのは算盤だ。

 

『算術ができたとしても、やっぱり算盤を使えないと……』

 

 そう菊音に指摘されてからは、毎日が数学の勉強及び算盤練習の繰り返しであった。

 確かにその通り。いくら計算が合っていようが、出来るだけ紙の消費を抑えられなければ、とてもではないが算術家とはいえない。この世界の計算機である算盤を使いこなすことは、基本中の基本なのだ。

 故に教本を読み込んで算盤の基本を覚えた大和は、それを使ってひたすらに問題を解き続けるという苦行を己に課していた。

「ふぅ~」

 区切りのいいところまできたので、算盤を置き、手の平を組んで上に大きく伸びをする。かつて煩わしさしか感じなかった勉強が、心地良い疲労感と達成感に変わっているのが不思議だった。

 首を回せば、小気味いい音を立てる関節。そのなんともいえない感触に目を閉じていると、

「伯鉄様、お茶をお持ちいたしました」

 後ろから聞き覚えのある声がかかる。

 振り返ると思った通りの顔がそこにあった。

「ああ、爺さん。ありがとう」

 目下の者にすぐに礼を言う。

 似たもの同士な兄妹に老使用人は苦笑して、

「進み具合はいかがですかな?」

 お茶を置きながら問いかけた。

「いや、それがなかなか。算盤なんて使ったことがないしね」

「算盤も無しに算術を勉強されたのですか?」

「あ、いや……地面に書いて勉強してたんだよ。お金もなかったから」

(あ……あぶない……)

 

 家に妹がいないとき、話し相手になってくれるのは主にこの老使用人である。主の兄にも気楽に話しかけてくれる彼を、大和は妹同様に気に入っていた。

「でも、入塾希望者は相変わらず集まらなくてね。宣伝の仕方が悪いのかな」

「入塾希望者……ですか」

 長いあごひげを撫でながら、老使用人はつぶやく。

 そう。いくら勉強しようが、教える相手がいなければ「お金を稼ぐ」という目的は達成されない。それではどうしようもないのだ。

 

(どうしたもんかな。街にポスター貼るわけにもいかないし……)

 

「一つ」

 

 考えていると、声が響く。

「え?」

「一つ、有効な方法がございます」

 老人はひげを撫でる手を止め、真剣な面持ちで主の兄を見つめる。その瞳の奥に燃えるものを感じ、大和は続きを促した。

「この方法は使用人としての立場からはとてもおすすめ出来ません。ただ、"そういうもの"を抜きでと仰るのであれば、是非ともあなた様に成し遂げていただきたいと思うのです」

「なんというか……とりあえず、聞いてみなくちゃ答えようがないよ」

 いつもと違う雰囲気にぎこちない笑みで返すと、

「それは……ははっ。仰る通りでございますね」

 自分の様子が可笑しかったのか、表情を和らげた老使用人。

 彼は窓から雲が流れていくのを眺めながら――しかし、もっと遠くのものを懐かしむように目を細める。

 

 

「かつて洛陽(ここ)で官吏として働いていた私にとって、それは悲願でございました。

 伯鉄様が気にかけられている元皓様の様子の変化の答えも、おそらくそこにあります」

 

 

 あれほどうるさかったセミの声は、もう聞こえない。

 

 算術を主軸とする何でも屋「田算塾」が開かれたのは、それから十日後のことだった。

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「――じゃあ、解いてみて。あ、計算が終わった人は手を挙げてね」

 大和の声に、生徒達は一斉に算盤を弾き始める。

「ふぅ……」

 

(大分慣れてきたかな)

 

 机に肘をつきつつ思いながら、教室を見渡す。

 妹より少し上くらいの子もいれば、中年、壮年の男もいる。儒学中心の通常教育課程からは外れた――算術に特化した私塾なので年齢層はバラバラだ。

 目線を下ろすとお気に入りの腕時計。女性がそうするように内向きに巻いているのは、本を構えたまま時間を確認出来るようにするためである。デジタル表示された数字の羅列は、授業終了の時間が近いことを示していた。巻かれているのは左手首。長安の事故での骨折はすでに完治し、不自由なく使えている。

 パチパチと珠を弾く気持ちいい音の後、ほどなくしてほぼ全員の手が挙がった。

「大体みんな解けたみたいだね。ああ、解けなかった人は気にしないでいいよ。まだ教えてないところだから」

 その言葉に何人かがホっとした顔をするのを見て、

(まだ生徒同士で学力差があるか。まぁ、これだけ年とか違えば当たり前だけど……補講とかもした方がいいかな。入れるとしたらあの時間帯は――)

 などと教師らしく考える。

 算塾を開いてすでに二ヶ月くらいが経過。新暦であれば年越しも近い。

「にしても早くなったなぁ」

「先生の教え方が上手いからね」

 お調子者の少年が言う。

 駆け出しの先生である大和にとって、生徒からのこの言葉はとても嬉しい。

 が、しかし。

「おだててもダメだ。お前はちゃっかり隣の答え覗いてただろ。ちゃんと見てたぞ? 罰として宿題出しとくからな」

「うぇ~やぶへびだぁ」

 オーバーに嘆く少年の様子に、どっと上がる笑い声。それに合わせて大和も笑う。同じ志を持つ者が多いからか、年齢が離れていても生徒同士仲良くやってくれている。これは非常に喜ばしいことであった。

「あー、静かに静かに。……じゃあ、どういう答えになったかな?」

 場を締め、一番後ろに座った青年に問いかける。

「私ですか?」

「うん」

「はい、大きい方が一本あたり八銭で三十本。小さい方が七銭で四十八本です」

「すばらしい、正解だ」

(彼らの期待を裏切らないためにも、これからも勉強し続けないと)

 自分を教師として見てくる生徒達の視線に、思う。

 元の世界のときと同じ、義務感からの勉強。それなのに、沸き起こってくるやる気が全然違うのは一体どういうことだろう。受験のため、お金のためときて、今では生徒のためというところが大きい。

 

(ホント、以前の自分に今の生活をみせてやりたいな)

 

 元の世界にいたときの勉強嫌いだった自分と、毎日必死に勉強しているここでの自分。そのギャップに思わず笑いそうになる。

 信頼を失う恐れからか、算術家としての名誉を求めてか、はたまた彼らを一流にしたいという教師としての想いからか。

 どれもが正解のように思えるが、どれとも違うようにも思う。

 

(……理由はまぁ、大した問題じゃない。とにかくやれることをコツコツと、だ)

 

 凡庸な己を天才と信じてくれている彼ら。

 大切な生徒達を前に、新米教師は決意を新たにする。

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「にしても……どうにかならんかなぁ、これ」

 庭石に座り込んで九章算術を広げながら、大和は独りごちた。

 午前中の授業を終えて、質問や補講の対応をした後は少し遅めの昼食をとり、午後の授業までの待ち時間は、ここで授業内容の確認をする。その一連の流れはいつの間にやら習慣となっていた。

 今日はあと一コマ授業があるが、開始まではまだ大分時間がある。

 手にしたそれは、算術家・田伯鉄にとっての相棒。蛍光色の付箋が大量に飛び出していて、どのページにも綺麗とはいえない字で所狭しと書き込みがしてある。

 妹が友人から買い取ったという算術書――値段も茶を噴き出すほどに高いそれを汚してしまうのはどうかとも思ったが、当の菊音に、

『兄さんにあげたんですから気にしないでください。……役立ててくれるならそれでうれしいです』

などと言われたこともあり、ありがたく使わせてもらっていた。

 この大量の付箋と書き込みの理由は実に簡単である。

 

(人にものを教えるってのがこんなに難しかったとは……)

 

 田算塾頭は天を仰いだ。

 私塾を開くことが現実味を帯びてきた頃から今日まで、それを毎日思い知らされている。現代数学の知識があればなんとかなるなどという考えは幻想だった。なんの苦労もなく、要所だけをかいつまんで素晴らしいものを作るなどということは不可能。妹に勉強を教えるのと、複数の人の前で授業をするのとでは難易度が全然違うのである。それほどまでに、「授業をする」というのは難しい。

 

「こんなことなら教職課程とっておけばよかったな……」

 

 教科書やカリキュラムがあればそれも多少は楽になるのだろうが、この時代にそんなものはない。ないものは自分で考えるしかないのだが、これがかなりの重労働なのである。

 それをさらに難しくする要因が一つ。それは九章算術や既存の算術書どころか、全ての書物に当てはまるものだ。

 

 すべて中国語、つまり漢字で書かれている。

 

 これはアラビア数字に慣れ親しんだ大和をかなり苦しめていた。

 一度組み上げてきたものを更地にするのは非常に難しい。「漢字で計算するんですね。はい、わかりました」とはいかないのだから。

 私塾の開校は見切り発車なところが多分に存在したので、未だに空いた時間のほとんどはお勉強に費やされている。それも苦労して計算した途中式、結果を漢字に変換しながら行わなければならない。

 その上で今後の流れを考慮に入れつつ、日々の授業内容を考えるのだ。

 極めてデリケートかつ面倒な作業だが、人にものを教える以上は当然求められてくるものなのだから、仕方がない。

「……ふぅ」

 ぼんやりと空を眺めていると、並んで飛ぶ鳥が視界を横切る。

 この世界の空は広い。高層ビルなどの無粋な遮蔽物はなく、青く清く澄み渡っている。

 

(とにかく時間が足りないんだよなぁ)

 

 仲良く飛んでいくのを目で追いつつ思う。

 時間は有限であるというのに、「やりたいこと」、「やらなければならないこと」は山のようにある。

 勉強はこの先もずっと続けていかなくてはいけない。これは確実だ。

 今はこの世界の算術を教えるので手一杯であるが、生徒達の仕官や仕事を助けるために、新しい帳簿の書き方であるとか、元の世界の知識を使った実用的なことも教えていきたい。

 妹が勧める高等数学の教科書の出版だって面白そうである。それを授業で使う教科書にして――。

 

(……あれ? やっぱりちょっとおかしくないか?)

 

 もともと私塾開校の目的はお金と……。その稼いだお金にしろ、恩返しの他は帰還方法の調査に使うはずだったのである。これでは手段が目的に変わってしまっている。

「ふ……ふふっ。あははははははっ……ったく、人間変わろうとすれば変わるもんなんだな」

 

「まったくね。前会ったときはすねかじりだったのに、もう算術の先生やってるんだから」

 

「へ?」

 

(この声は……いや、まさか)

 

 振り返るとそこにいたのは、

 

「けど、人の話を聞かないところをまず変えるべきじゃないの?」

 

「文和様!? それに――」

 

「お久しぶりです……伯鉄さん」

 

「太守様まで! 一体どうしてこちらに……」

 本を閉じ、慌てて立ち上がって畏まる。

「どうしてって、普通に案内してもらってここまで来たわよ。声かけようと思ったんだけど、あんた普通に声かけても無視しそうだし」

「はは……」

 相変わらずのキツさには半笑いを浮かべる他ない。

(いや、聞きたいのはそういうことじゃなくてですね)

 思っていると、

「討伐の恩賞として位を頂いたので、そのご挨拶で洛陽まで来たんですよ」

補足してくれるのは西平太守。

「なるほど、そういうことでしたか。妹から聞いています。たしか中郎将に昇進されたとか。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 

(太守様なのに腰が低いなぁ)

 

 ペコリと頭を下げる董西平を見た大和の感想はそれだった。

 

(涼州でもなかなかの軍閥を組織しているらしいが、とてもそんな風には……。ひょっとすると可憐で儚げなこの娘を守ってやろうと猛者が集まって構成されているのかもしれない)

 

「それで、せっかく都に来たのだから、お二人に会おうということになって」

「ご訪問歓迎いたします。しかし、あいにくと妹は本日公務でして……。帰って来るのは夕方になるかと思います。それにおもてなしの用意もなく……」

「いいえ。突然押し掛けたのは私たちの方ですから」

 慣れていない敬語に気づいたのか、西平太守は子どもっぽい笑みとともにそれを遮り、

「本当は元皓さんに連絡をとってからにしようと思ってたんですけど……詠ちゃんが伯鉄さんが算術の私塾を始めたって聞いて、すごく会いたがってたから……」

 隣へ顔を向けて言う。

「ちょっ、ちょっと月!? ち違うわよ、伯鉄! 変な誤解なんてしないでよねっ!」

「誤解って……。とにかく太守様にこんなとこで立ち話をさせるのもアレですし、中へご案内します」

「ありがとうございます。伯鉄さん」

「さっきまで太守様の横で大笑いしてたくせに」

「いや、それを言われるとその……面目ないです」

「ふふふっ」

 こらえきれなくなったように笑う。

「どうかされましたか?」

「いえ……伯鉄さん、やっぱりお話の通りの人なんだなぁって思って」

「…………」

(一体どんなこと言われてるんだろう)

 

 

 

―・―・―・―・―

 

「では、毎日がお勉強なんですね」

「ええ。なかなかにキツイです。でも、以前にお会いしたときのその……スネかじりの生活に比べれば、遥かに充実した日々を過ごせています」

 田家の居間で、いつもの食卓を挟んで座る。

 賈文和はともかく、西平の太守様とじっくり話すのは初めてだったのでどうなることかと思っていたが、それは杞憂であった。董仲穎という人物は妹の話通りの仁君。大和のイメージにある暴君董卓とは似ても似つかない優しい女の子である。

 会談……というような堅苦しいものではなく、お茶を飲みながらの雑談。女の子を楽しませるようなウィットに富んだ話は出来ないので、大和としては「当たり障りのない話に終始するだろうな」と思っていたのだが、予想に反して場はかなり盛り上がっている。

 匈奴討伐の顛末、ここまでの旅路、洛陽の近況等を話した後は田伯鉄の私塾が話題を独占した。

 普段触れることのない高等算術の話は二人の興味を引くのに十分だったようで、算盤を片手に簡易教室を開くことになってしまったほどである。その際に二人が見せた“乾いたスポンジが水を吸うかのような理解力”に大和が唖然としたのは言うまでもない。

 その後は主に賈文和による質問攻めである。

 以前会った時も質問攻めにあったが、あのときのような警戒心のようなものはない。純粋に知識を求められているのだから、それに答えるのが学者というものだろう。

 もちろん全てを教える時間はないので、数ある計算方法の中でも大和が面白いと思ったものを、いくつか選んで教授することで我慢してもらうことになった。

 理解はしてもらったが、それでも満足はしてもらえなかったようで、洛陽滞在中に算術を教えることを約束させられてしまったのには、頭を抱えざるを得ない。

 

(ただでさえ時間がないのに、また面倒な仕事が……)

 

 けれど、彼は三国志愛好会に所属していたほどである。その英雄(女の子だけど……いや、女の子だからか)に頼られていい気がしないわけがない。さすがに太守様に先生と呼ばれてしまったのには困惑したが、算術家を名乗っている以上は全力で臨むつもりでいる。

「そういえば、この後は何か予定はあるの?」

 眼鏡のズレを直しながら、思い出したかのように少女は聞いた。

「授業がもう一回あります。商人のクラスなんですが」

「くらす?」

 怪訝な顔に大和は慌てる。

 前回散々疑われたこともあり、彼女のこうした顔は少しトラウマになっているのである。

「あ、えーと、つまり商人専門に算術を教えるってことです」

「そんなこともされてるんですか?」

(商人に算術を教えるってのは珍しいんだろうか)

 驚いた様子の西平太守に大和は、

「ええ、いくら妹が長安の件で名を上げても、私自身がまだまだ無名なので正式な門弟はそんなに多くないんです。

 その点、商人は役立つ、利になるとなれば動きは素早いですから。……まぁ、当然授業内容は普通と違って、商取引に使う計算とか相談とかが主なんですけど」

 

 どこから噂を聞いてきたのか、洛陽の商人たちの行動は素早かった。

 授業を受けに来た中には大和の就職を断った店まであったのだから、その強かさは推して知るべし。もっとも、それくらいの逞しさがなければ、この汚職が蔓延る都でやっていくことはできないのだが。

 

「それに何といっても彼らはお金を持ってますからね。いいお客さまですよ」

「現金ね……でも、学者としての自負とか、そういうのはないの? それじゃ知識を切り売りしてるみたいじゃない」

「はははっ、仰るとおりで。でも、いいんですよそれで。私の頭に腐らせておくより遙かにマシですし。役立ててくれるのであれば、それで構わないです」

「あんたがそういうのなら別にいいけど……」

 理解はするが納得はいかない。そんな顔をする。

 

(何か気に障ったかな? って、もうこんな時間じゃないか!)

 

 時計をチラと確認すると、話題に出た商人クラスの授業時間が近い。

「お二人はこの後の予定は?」

「王城へ上がるのは明後日なので……今日は何も予定はないです」

「なるほど」

(それは丁度いい。この二人に観てもらえたら、授業もしま……らないかもしれないな。二人とも可愛いし)

 けれど、教師として授業の客観的な評価が欲しいのは事実。

「よければですけど、授業を見学されますか? 終わる頃には妹も帰って来るでしょうし」

「いいの?」

 好感触に、大和は歯を見せて笑う。

「お誘いしたのはこちらですから、いいも悪いもないですよ」

 言った後で、その言葉がかつて妹にかけられたものにそっくりなことに気づいた。

「それにギャラリーがいてくれた方が燃えるってもんです」

「ぎゃらりー? 前もそうだったけど時々変な言葉使うわね」

「き、気にしないでいただけると助かります」

 

(結構やっちゃうんだよなコレ。無意識なんだろうけど、気をつけないと……)

 

「それで、どうでしょうか?」

 

 顔を見合わせた後、

「よろしくお願いします。伯鉄先生」

 やはり行儀よくお辞儀をする西平の太守様。

「先生は勘弁して下さい。くすぐったすぎます。では、教室へご案内しましょう」

 

 

 

 

「時間があれば洛陽とか案内するんですけどね」

「じょーだん! 月、やめといた方がいいわ。この前なんか大将軍の実家の肉屋跡とか案内されたんだから」

 経験者は声を大にして断言する。

「ぐっ……それは言わない約束でしょう、文和様。そもそも案内できるほど詳しくないって言ったのに、無理やり案内させるのがですね……。

 それにあれから都のことも勉強しました。前よりまともな案内はしてみせますよ」

「ふーん、そう」

 

(信じてないなこれは……)

 

「ふふふっ。仲がいいんですね」

 

「だから違うんだって!」

 

 

(人に授業を見せるのは初めてだけど……はたして上手くいくかな。まぁ、変に気張らずにいつも通り頑張りますか)

 

 スイッチを切り替えつつ仕事場へ――田伯鉄の戦場へと向かう。




 今回の「就職出来ない」という話は一刀との対比で考えました。
 原作のどの√でも、彼は特別な存在として集団のトップに拾われてます。なので字が読めない、恋姫世界についての知識がないなどのマイナス要因があっても、とりあえずスタートラインには立てました。

 ところがこの主人公は田鋼というこの世界の普通の人として認識されちゃってるので、仕官する際に求められるものもこの世界の常識が基本になってしまい、ハードルはかなり高いです。
 作中で彼が言う「一生かかっても無理かも……」は、当たらずも遠からずです。その上拾ってくれた田豊が下手に位の高い宮仕えの人物だったので、動きが制限されてしまうという。

 そんな主人公を助けるのは、やはり原作の一刀同様、未来の知識でした。しかし、こいつ何ができるのかなって考えてみると、結構選択肢がないんです。
 専門の知識がないですから、農業や医者とかは無理(作者にもそんな知識ないので書けません)です。商家などは田豊の関係で就職不可能。となると、学校で普通に習うことを活かすしかないんじゃ……。
 ってことでの数学です。

【算術の扱い】
 恋姫世界なので実際の三国志の時代よりもかなり数学が進んでたりしますが、深く悩まずに「凡人主人公が名声を得るために数学使います」程度に考えて下さると幸いです。
 作中で儒教をあえて『教養』と表現したのと同じで、深く掘り下げまくるということはありません。
 改稿前は「恋姫のFF」がやりたいのか「三国志時代で算術SUGEEE!」がやりたいのか訳がわからないことになってました。書きたいのは「恋姫のFF」なので、物語における算術の比重を落とした感じです。

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