(兄さん、ごめんなさい)
食後の甘味を美味しそうに口に運ぶ西平の太守を見ながら、菊音は頭の中でつぶやいた。
そこは洛陽でも有数の大きさを持つ飯店の一室。貴人や豪商が好んで使うというその個室は、天井から床に至るまで様々な意匠が施されている。後になって三人ともあまり好みでなかったと知ったときは思わず笑ってしまった。
しかし、そんな和やかさはもうそこにない。いや、その表現は語弊がある。今も西平の太守は優しげな微笑みをたたえて話しかけてくださっているのだから。
つまり問題となっているのは……。
兄・伯鉄は何か心配していたようであったが、会談自体は終始和やかな雰囲気で進んできていた。西平の太守・董仲穎の人柄は仁君と呼ぶに相応しく、その臣である賈文和も見識高くとても聡明な人物である。
会談はお呼び出しの理由である官吏摘発のお礼に始まり、長安の件、それに関連した討伐軍の話と続く。その後は、侍御史の職務について、西平の様子、洛陽の政治情勢など色々なことが話題に挙がった。
長安での行動は非常に危険な行為だったと責められてしまったけれど、最初に年齢を聞いて驚かれていたことを考えると、心配してくれたのだろうことは容易に想像できた。
二人とも優しい人なのである。
それがこの場合は運悪く、非常によくない状況を生み出してしまったというだけのこと。
(だいじょうぶかな……)
菊音はとにかく、気が気でないといった感じであった。せっかく用意してもらった料理の味も、太守様の話もあまり頭に入ってこない。
公式の話が一通り終わった頃、
『お仕事のお話はここまでにしましょう』
西平の太守・董仲穎がそう言って場を締めた後は、お茶を頂きながらの歓談に入った。内容は先のものとは違い、洛陽の美味しいお店、流行りの服、涼州のお料理についてなど。それらの他愛ない――しかしとても楽しい話題に打ち解けてきたとき、彼女の一言からそれは始まったのである。
―・―・―・―・―
「あの……お部屋の前にいた人が、あなたのお兄さんの伯鉄さんですか?」
「あ、はい、そうです。って、ええ!? どうして……」
菊音は思わずお茶をこぼしそうになる。
「長安でちょっとした噂になってたのよ。侍御史田元皓が生き別れの兄と感動的な再会を果たしたってね」
驚きを隠せない様子の侍御史に、賈文和が主の代わりに答えた。
「そのときに左腕を怪我されたって聞いてたので……そうなのかなって」
(どうしよう。兄さんは兄妹だってことは黙っていてくれって言われてたけど。もうばらしちゃった……)
「でもよくわかったわよね。見た感じ、年だって結構離れてるんでしょ? 生き別れた時の記憶なんてほとんどなかったんじゃない?」
先に長安の一件を話したときは、二人とも田鋼については聞かなかった。仕事の話の途中であったからそれは当然といえば当然なのだが、予想していなかった兄の話題に、優秀であるはずの侍御史の頭脳は混乱する。
“とっさの判断に弱い”
これは本人も自覚しているところではあるが――。
「は、はい、その……ほとんど憶えてなかったんですけど、やっぱり兄妹だと何となくわかるものなんだなぁって……」
「…………え?」
まるで時間が止まってしまったかのように固まる二人。
外からのセミの声が、止まっているのは二人だけだと教えてくれる。
(あ、あれ? 今のってもしかして変だったかな?)
「……あの……どうしてお兄さんだと思ったんですか?」
硬直を解いた西平太守は恐る恐るといった風に質問をぶつけた。
「で、田家に伝わる短剣を持っていたのと、あと……顔の感じが何となく……」
「他には何かありましたか? 例えば……共通の知人がいらっしゃったとか……」
口調は柔らかく、しかし追求は止まらない。
「ぃぇ……特には……あっ、昔から家に仕えてくれているお爺さんは、兄さんのことを知っていました」
「………………」
「………………」
気まずい沈黙に視線が泳ぎ、両手は服の裾をギュッと掴む。
侍御史田元皓は汚職官吏の嘘を見抜くのは得意でも、自身が嘘をつくのは下手くそなのだ。
その様子を心配そうに見て、
「……詠ちゃん」
西平太守は隣へ顔を向ける。
「月……もしかして……」
返されるのは多少の呆れと諦めの入った親友の表情。
それを見て、悪戯が見つかった子どものような顔ではにかみ、
「元皓さんは西平の人たちの恩人でもあるの。……お願いできないかな……?」
賈文和にとって予想通りの“おせっかい”を頼んだ。
「やっぱりぃ……はぁ~……わかったわよ」
「ありがとう、詠ちゃん」
ふふっと笑う太守さまを見て、菊音は嫌な予感にとらわれる。
なんだか自分だけが置いてきぼりで、どんどん話が進んでいっている。そんな感じがするのだ。
……そして残念なことにその予感は見事に的中していた。
「ねぇ、元皓さん。話した通りボクたち洛陽に来たのは初めてでね。よかったらこれからあなたのお兄さんに案内してもらおうと思うんだけど」
「あ、案内なら後で私が――」
「いいわ。今から出るのはボクだけだから。この後昼食も用意してるから、月と二人で楽しんでて」
“よかったら”とは言うものの、代案はしっかりと遮り、それが当然であるかのように支度を始める。
「え? あの、えと……」
何とか場をつなごうとするも、賈文和はそんな時間を与えない。
「もちろん本人の許可はとってからにするから安心して。じゃあ月、いってくるね」
「うん。いってらっしゃい。詠ちゃん」
「あ……」
止める間もなく部屋を出ていってしまう。
それを見送った後、
「元皓さん、私たちはご飯にしましょう」
「はい……」
西平太守が微笑んで言うのに、菊音はそう返すより他はなかった。
―・―・―・―・―
「へぇ、優しいお兄さんなんですね」
「は、はい。すぐに人の話を聞かなくなるのは直してほしいですけど……」
(さっきから兄さんの話しかしていない気がします。ま、間違いないです。完全に誤解されてしまってます)
菊音の疑惑はすでに確信に変わりつつある。
二人は「田伯鉄は兄を詐称し、田家に転がり込んだ不届き者かもしれない」と考えているのだろう。
河北大和を屋敷に保護するにあたり、赤の他人ではなく兄として迎え入れる。
この奇策は彼女に対して敵意を持った――醜聞を捏造するような人間には相応の効果を発するが、その反面善意に――心配や思いやりといったものにとことん弱いのだ。
二人の完全な善意からの行為である以上、『被害者』である彼女がいくら言っても「この子は上手く騙されているのかも……」と思われてしまっておしまいである。
(どうしよう。太守さまになら真実を話して……でも、あまり人に話してしまうのも……。それにいくらなんでもあんな話をいきなりするのはどうかと思うし……。
兄さん……上手く切り抜けてくれるかな?)
そんな事は知らんとばかりにセミの声が増す。
幼き侍御史は少しだけ心が折れそうになるのを感じた。
―・―・―・―・―
少女は運ばれてきた料理の美味しそうな香りに一瞬顔をほころばせるも、すぐにそれを消し、
「あんたは食べないの?」
目の前の男に向かって言う。
(……やりにくいな)
大和は感じた。
しかし、それを顔に出すほど子どもでもない。
「すでに済ませてきましたので」
「そう。なんか悪いわね」
「いえ、どうぞお気になさらず……」
促されて食事を始める少女を見て、心の中で大きなため息をつく。
(どうしてこんなことに……)
会談会場から少し離れた場所にある飯店に二人はいた。
洛陽の正面玄関である南の平城門。そこから王城へと伸びるメインストリートから適度に距離をとったこの辺りは、様々な商店が集まる商業区域としての機能を有している(田家の屋敷も程近い)。その一角にあるこの店は、先ほどのような貴人御用達といった感じのものではなく、都ではごくごく一般的な大きさのものだ。
卓を挟んで座る男女を、周りの客は遠目にチラチラと伺う。それもそのはず。男は中の下、よく言っても中の中であるのに、連れているのが都でもなかなかお目にかかれない程の美少女なのだから。
デートであれば大歓迎だが、残念ながらそんな雰囲気ではない。
(疲れた……)
今の彼の率直な感想である。
大和が飯店の廊下で会談の終わりを待っていると、一人の女の子が部屋から出てきた。
深緑という世にも稀な髪色を両三つ編みに垂らし、眼鏡の似合ういかにも頭のよさそうな美少女。
名を賈文和というらしい。
本日二度目の英雄様のご登場である。
ということはこの子と一緒にいたもう一人の娘が董卓なのだろう。あの部屋に入った人間は三人。消去法でいくとそうなる。
(イメージにあったヒゲでデブのおっさんとは似ても似つかないな)
問題の董卓はおっさんどころか「儚げな」という表現が相応しい女の子であった。想像の斜め上どころか遙か上空をいったその姿には面食らったが、心配していたような事態にならずにすんでよかったといえる。彼女が董卓であれば、妹がどうこうされるということはないだろう。
『ちょっと頼みたいことがあるんだけど』
部屋から出てきた眼鏡っ娘の頼みごとというのは「近くの散策のお供」つまり「洛陽を案内してほしい」ということであった。
お供であれば彼女達が連れてきた人達がいるし、彼自身都で暮らし始めて間もないので案内出来るほど詳しくない。そういうわけで断ろうとしたが、それでも構わないと言う。
薬が効いてくれたのか胃腸の調子も回復してきていたし、貴人の頼みを無下に断るわけにもいかない。そういうわけで承諾したのだが……。
彼女は明らかに大和のことを疑っていた。
初めて来た洛陽の案内。
これは単なる口実だったのだろう。
お供としてついてきたはずが、なぜか正体がバレており、ここへ来る途中の会話の大半は田伯鉄の身の上話であった。両親のこと。これまでどこで何をしていたのか。どうやって妹を探し当てたのか等々。長安で耳にした噂の兄妹が気になったからだと言っていたが、普通は興味本位でここまで聞いてこない。
矢継ぎ早に繰り出された質問。洛陽で生活を始める際に菊音と口裏を合わせていたので、何とか全部答えられた(……と思う)。
(しかし、田家に伝わる短剣の話なんかはかなり危なかった)
冷や汗をかいたことを思い出す。
しつこく出自を問い質してくる官吏もいなかったので、そんな設定はすっかり記憶の彼方。なんとか引っ張り出せたときは本当に心の底から安堵した。
彼女が質問の答えに納得したのかは分からない。というより田伯鉄の話が真実か否か、彼女には判断のしようがないだろう。
(なら、なぜそんな無駄なことを?)
食事をする少女を視線だけを動かし見やるが、その真意は読み取れない。
ともかくその質問攻めもようやく一段落がついた。聞いてみると昼食がまだだというので近場の飯店へご案内。そして今に至るというわけであった。
「そういえばボクばっかり話しちゃってたけど、伯鉄は聞きたいこととかはないの?」
賈文和は食事を中断して、初めて会話の主導権を渡した。
「そうですね……」
大和は突然の展開に何かあったかと考え、一つ思いつく。
「どうして洛陽にいらっしゃるんですか?」
これは聞いてみたかった。
「どういうこと?」
「すみません。聞き方が悪かったです。長安の一件に関連して討伐軍が組織されることが決まったのは昨日のことだと聞いています。それなのにもう洛陽に到着しているのはどうしてかなと」
「ああ、そういうこと。大将軍に呼び出されたと言えば分かる?」
「……十常侍……ですか」
「へぇ……」
一瞬輝いたように見えたのは眼鏡か、その奥の琥珀色か。
「いや、ここに暮らしていればそれくらいのことは……」
後漢の都洛陽。
その権勢の集中する場所では、熾烈な権力争いが展開されている。
肉屋から皇后の兄として大将軍にまで昇りつめた何進と、帝のお気に入りの宦官の集団である十常侍。この両者の確執は日増しに強くなってきている。
成り上がりで股肱の臣のない何進としては、手元に自分の手駒が欲しいのだろう。その為に辺境の太守を呼び寄せるというのはあり得る話ではある。
演義や正史では、彼が大将軍になるのも董卓を呼び寄せるのも、もう少し先のことだ。
(大将軍就任に関しては分からないけど、董卓招聘の時間的なズレの背景にはこの世界特有の事情が絡んでいるのかもしれない)
それは地方官を除いた官職――中央官職の一部形骸化である。
例えば袁紹が任じられている司隷校尉(これも演義等とは就任するタイミングが違う)は、洛陽と長安を取り巻く七郡を統括するのであるが、彼(彼女?)は冀州の南皮にいて、司隷にはいないらしい。
つまり中央の官職の一部はあくまでも名誉的なものであり、実際にその官の実務を行うわけではないのだ。実を伴わない名という点では、日本の大名たちが朝廷からもらっていた官位と同じと言えるだろう。
よって、ここ洛陽には袁紹も曹操もいない。
中央の官職に就いて洛陽にいるはずの英雄達は、官職こそ元の世界と同じものに就いていたりするものの、ほとんどが地方官として各地に散っている。
もちろん、それらの官職が実務を必要としない名だけのものになっているとしても、実務自体が無くなったわけではない。中央で独自に登用された官吏や将軍が違った役職名でそれらの実務を執り行っているのだが、その多くは十常侍たち宦官の息がかかっている。
(となると何進が味方を増やすために採るべき方法は自ずと限られてくるよな。都で無名の董卓を使おうとするのも、おそらく宦官達の影響を受けていな――)
視線に気づく。
「あ……すみません」
「……べつにいいけどね」
(「西施の顰み」とは言うけど、美少女ってのはどんな顔しても魅力が損なわれないんだな……って、そうじゃないだろ)
「はぁ。何か気が抜けちゃったわ。大将軍にお呼ばれして洛陽に来たってとこまでよ。……でもまぁ、結局大将軍のご期待には添えなかったわけだけどね」
「ということは太守様の討伐軍参加は十常侍の意向ですか」
大和の言葉に少しだけ目を大きくし、
「……頭がいいのか悪いのか……まぁ、いいわ。その通りよ。おかげで西平にとんぼ返り。嫌になっちゃう」
溜息とともに不満を吐き出す。
「お気持ちお察しします」
(西平ってそんなに都に近いわけでもないしな)
大和は他人事に考えた。
ヒモ状態で職無しの彼としては、卒業した先輩の職場の愚痴を聞いている気分なのである。
賈文和はよほど不満が溜まっていたのか(それでも声の大きさを落とす辺りは流石というべきか)、さらに続ける。
「でも、悪いことばかりでもないのよね。何の実績も無いまま洛陽にいれば、大将軍にいいように使われるだけだっただろうし。それに討伐軍の件がなかったとしても、結局何か理由を作られて帰されてたと思うわ」
「なるほど、確かに」
十常侍は良くも悪くも政治を知り尽くしている。大将軍になって日が浅い何進よりも、役者は数段上だろう。
(しかし、戦争か)
お気に入りのとうもろこしのひげ茶を口に運ぶ。
董仲穎も賈文和も、大和よりも恐らく年下の女の子である。
その二人が兵を率いて戦うのだ。当然ながら、命を懸けて。
(やるせないな……)
異世界に来てしまったという事実を再認識させられた。
そんな思いだった。
「……どうかした?」
「いえ、なんでも……。では、西平に帰られたらすぐに出陣ですか」
「そうなるわね。ま、とにかくボクは月のために頑張るだけよ」
そう言って年頃の娘のように笑う。
(なんだ。やっぱり笑った方が可愛いじゃないか)
さっきまでの重い感じは何処へやら。
不覚にもそう思う。
「ゆえ」というのはおそらく董卓の真名なのだろう。
賈文和が初めて見せた笑顔には、彼女に対する深い親愛の情が溢れていた。
―・―・―・―・―
「詠ちゃん。伯鉄さんはどうだった?」
「本当の兄かどうかはなんとも言えないわ。ただ、そうね……悪いやつじゃないと思う」
田伯鉄とのやりとりを思い返す。
そう、悪い男には見えなかった。
少なくとも親友が心配しているようなことをする人間ではない。
「よかったぁ」
相好を崩すのに、詠は呆れたように、けれどどこか嬉しそうに苦笑する。
「頭はなかなか切れるみたいだったけどね。でもいきなりぼーっとして話を聞かなくなったり……とにかく変なやつだったわ」
飯店の一件を思い出していると、
「ふふふっ」
可笑しそうに笑っている。
「どうしたの? 月」
「ううん、元皓さんの言ってた通りの人なんだなって」
「……妹にもあの調子で迷惑かけてるのね、あいつ。あれじゃ苦労しそうだわ」
「もしかして……伯鉄さんのこと気に入ったの?」
親友の訳がわからない言葉に、何も無いところで躓きそうになる。
「まさか! どうしてそうなるのよ」
(いきなり何を言い出すかと思えば……)
「だって、楽しそうな顔してたから」
「無位無官の相手だから気を使わなくていいってだけよ。顔も好みと違うし」
「ふふっ。わかったよ、詠ちゃん」
微笑む親友を見て、
(……あやしい)
長年の付き合いからそう考える。
「でも……余計な心配だったかもしれないね」
親友が振り向くのに合わせてそうすると、そこには並んで帰っていく田兄妹。
帰り際に西平太守に対して「想像してたよりも全然かわいい」などと言ったことを怒られているのだろうか。それともまた別のことか。二人はじゃれ合いながら歩いている。その姿は確かに……。
「だってどう見ても本当の兄妹だもん」
「……そうね」
「また、会えるかな」
「会えるわよ、きっと」
「明日も……人と会うんだっけ」
「そ。官軍の将軍たちとね。作戦会議が終わり次第、西平に帰還になると思う」
「……戦争……しなくちゃいけないんだよね……」
「最低でも一回はね。……大丈夫よ。月にはこの賈文和がついてるんだからっ」
絶対に傷つけさせたりしない。
そう、例え相手が誰であっても。
この小説のスタンスというか、そういうところをまず書くべきだったのに書いていませんでした。今回の後書きを借りて書かせていただこうと思います。
【本作について】
恋姫†無双は元がご都合主義の18禁ゲームの為、突っ込みどころが非常に多いです。なので揚げ足取りというか、設定を使ったアンチは非常に簡単といえます。少し史実要素、現実要素を加えてやればあら不思議。愛すべきキャラが非常識な人間になったり、とんでもない悪党になったりしちゃいます。
本作ではそれはやりません。
基本的に独自解釈・設定は恋姫設定の肯定と補足のために使います。
「こうで、こうだからこういうふう(恋姫設定)になってます」
もしくは、
「こう(恋姫設定)だから、多分こんなふうになってるんです」
みたいな感じです。
洛陽を最初の舞台に選んだのもその為です。
今回少し出した官職の名誉職化とかの支配体制部分を語りやすいってのもあるんですが……例えば女性が活躍する世界だからということで二次創作中にたまに出てくる「女尊男卑」の問題。
これを取り上げる場合、陳留とかでやっちゃうと「曹操って差別主義者なのかよ」ってなっちゃいますが、洛陽だと「地方と違い、古い因習を捨て切れない旧体制」という具合に、原作キャラにほぼダメージを与えることなく説明できたりします。というか、むしろそういう汚れ役にこそオリキャラを使うべきでしょうね。
【オリキャラについて】
オリキャラについては暴走を防ぐためにルールを決めています。
・登場させるのであれば、基本的に『原作内で存在を示唆されていた人』もしくは『原作開始時に死んでしまっている人』にし、原作にまったく描写がない人物の登場は可能な限り避ける。
というものです。
例えば、水鏡先生に元直ちゃん、管輅、劉璋、張譲などの原作で名前が登場している人物、また、存在について言及されている帝や十常侍など、そして皇位継承者などの当然いるだろう人物が登場したとしても、郭図や審配、沮授なんかは基本的には出てきません。
田豊はこの基本ルールに反する例外なので、作中で管輅に語らせた通り「主人公が来なきゃ死んでた女の子」つまり「存在はしたけど物語には関われなかった人物」という設定にして原作との辻褄をあわせています。
追記:英雄譚で田豊がキャラとして出たので、英雄譚とは辻褄あってないです……。
「オリ主が来なければ原作通り」が基本姿勢です。
もちろん、作品内で名前を出さないだけなので、いるかいないかは皆さんの想像にお任せします。
【主人公について】
一時期一刀で本編再構成を考えていたのですが、人物像を掴みきれなかったのと、ハーレムが書けそうになかったので断念したという経緯があります。
「皮を被るくらいなら……」ということで、いわゆるオリ主になりました。設定解釈ものの場合、モテすぎるイケメンでは話が構成しにくいというのも理由の一つです。そんなことより朱里に五回連続! とかいう話になってしまうので……。
あと、現代知識を持っている人間が一人だと、結局ワンサイドゲームになってしまいそうだからというのもあります。もう一つ理由があるのですが、それはネタバレになってしまうので。
名前の元ネタは中華人民共和国河北省に本拠を置く実在の企業です。なので名前は当初「公司」だったんですが、それじゃあんまりだってことで「大和」になりました。主人公なのに不遇な奴です。
因みに彼の言う「元の世界」というのは、こっち(現実)ではなく、一刀が学校生活を送っていた世界になります。