「よく考えたら当然だな」
「……む?」
「いや、この組み合わせ」
俺達はアリーナのピットに居た。
お互いの機体の最終調整も終わり、後は開始を待つだけの状態。
目を閉じ、腕を組んでシュヴァルツェア・レーゲンにもたれかかっていたボーデヴィッヒが俺の呟きに反応した。
「話題の男性操縦者が三人。それでそれぞれが候補生と組んでるんだ。一般生徒のためにも早めに手の内晒して対策立てられるように最初にしたんだな、と」
よくよく考えてみたら確かにそうだなと納得した。
しかしこれは失敗だったな、まさか自分からフラグを引き寄せてしまうとは。
「奴と戦えるなら、それでいい」
ボーデヴィッヒはぶっきらぼうにそう答えた。
「分かっていると思うが、織斑一夏は私が墜とす。如月、お前はもう一人のフランスの相手をしろ」
相変わらず一夏に固執しているが、もうしょうがない。
自分でも分かっていると思うが止まらないんだろう。
何気に訓練を通して名字で呼んでくれるようにはなった。
「任せろ」
「ふん、私の顔に泥を塗るようなマネだけはするなよ」
それだけ言うと彼女は再び目を閉じた。
言われなくても分かっている。
彼女とは一応、作戦会議みたいなものは開いたが……まぁ、どうだろうか。
ボーデヴィッヒと一夏が戦っても普通に勝てると思う。
シャルルが邪魔しなければ。
問題は俺がシャルルを倒せるか。
いや、倒すまではいかなくても足止め出来ればいい。
だが、彼女は強敵だ。
機体、技能共に万能で様々な戦法を取ってくる。
機体性能の相性でいけば俺に軍配が上がるが、それだけでは駄目だ。
やはり、あの二人の作戦を潰さなければならないだろう。
恐らく原作通り一夏がシャルルの銃を拾って撃ってくるだろう。
最近あの二人が射撃訓練してるのよく見るし。
しかしどうやって潰すか……。
試合開始のアナウンスが鳴るまで俺は考え込んでいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
場所は代わり、アリーナの中。
天井は開き、雲ひとつ無い快晴の空が広がっている。
フィールドには既に一夏と白式とシャルルのラファール、そして俺の四天とボーデヴィッヒのレーゲンが睨み合っている。
「一戦目で当たるとはな」
「なぁ、なんでお前は俺を目の敵にするんだ?」
試合開始数秒前に一夏とボーデヴィッヒが言葉を交わした。
「それすら分からんか」
「どうやら、この勝負が終わったらお前とは話し合う必要があるな」
試合開始の合図が五秒前を切った。
「「まずは、倒す!」」
二人の叫びと同時に試合が開始される。
「おおおっ!」
先に動いたのは一夏だった。
一夏は『雪片弐型』を展開すると
「ふん……」
しかし一夏の奇襲は既に想定済み。
ボーデヴィッヒは『AIC』を発動して一夏を拘束した。
「じゃあ俺も」
近接ブレードの『篝火』を展開し、加速。
今まさに一夏を助けようと武装を展開するシャルルに斬りかかる。
「やっぱりそう来るよね!」
シャルルは右手のショットガンを加速して接近する俺に発砲し、左手のサブマシンガンをボーデヴィッヒに向けて放つ。
俺は『天岩戸』の右側を全面に展開して散弾を防ぎつつ、そのまま突っ込む。
ボーデヴィッヒのカノン砲があらぬ方向に飛んでいくのをセンサーが教えた。
今のシャルルの邪魔が間に合ったのか、ちくしょう。
「はっ!」
「させないよ!」
接近し、『篝火』を振り下ろすがシャルルはショットガンとサブマシンガンを粒子に戻すと『ブレッド・スライサー』という名称の小型ブレードを展開して受け止める。
「『
高速切替。
その名の通り、装備を素早く切り替える機能。いや、技術だったか。
ただでさえ武装を大量に積んでいる専用のラファールから望んだ武装を即座に取り出せるのはやはり搭乗者自身の技量によるものだろう。
「僕の特技だから、ねっ!」
そう言い放つとシャルルは空いた方の手にハンドガンを展開すると、こちらに向けて放つ。
「おっと!」
シャルルのブレードを弾き返すように篝火を横に振り抜き、スラスターを起動して横にズレてハンドガンの照準をずらす。
避けながらこちらも右手で篝火を握り、空いた左手にハンドガンの『
「まさか反応するなんて!」
反撃に驚いたシャルルは腕のシールドを展開し、ハンドガンで牽制しながら後退する。
反応したとはいえ数発もらってしまい、エネルギーが少し減った。
「っと、行かせねぇよ」
『篝火』と『花陵』を粒子に戻してビームショットライフの『散雷』を展開する。
ライフルモードにしてボーデヴィッヒの妨害に入るシャルルを移動しながら狙撃。
移動しながらの射撃なので流石に当たらないが、二人の連携の邪魔は出来た。
「しつこいなぁ!」
「固いこと言うなよ」
散弾に切り替えた『散雷』を二つ展開し、両脇に抱えてビームを放ちながらシャルルを追いかける。
連結すれば巨大なビームが撃てそうな格好だが、生憎そういう武装ではないので不可能だ。
まぁ、散弾を撃っているのも理由がある。
さっきからシャルルがポイ捨てしている武器を狙ってのことだ。
地表から離れていないところを飛行していて助かっている。
しかし、逃げながらも隙を見ては一夏の援護をするシャルルは流石と言える。
ボーデヴィッヒと斬り合っているのを見かけるが、一夏も中々しぶとい。
「えいっ!」
シャルルがいきなり軌道を変え、垂直に上へ飛んだ。
俺も追いかけるために上へ機体を移動させるが……。
「しまった……!」
視界が強烈な光に包まれる。
とっさに手で光を遮ろうとするが、そこで自らの失敗を悟った。
「引っかかったね」
太陽を背にしたシャルルが意地悪く言った。
シャルルが何かを展開し、構える。
そして表示されるロックオンのアラート。
「普段は滅多に使わないけど、その盾を攻略するのに入れておいて良かったよ」
うっすらと俺の視界に映るのは長い砲身とこちらに向く銃口。
ーーーー大口径の対戦車ライフル。
……いやいや、お前がそれ使って、しかも人に向けて撃っちゃダメだろ!
独特の銃声と共に発射される銃弾。
『天岩戸』を前面に展開して防御するが衝撃は殺せず吹き飛ばされる。
シャルルは二発、三発と続けて発射。
スラスターによる推進も間に合わず、地面に叩きつけられる。
「ぐえっ」
背中から落ちたせいで変な声が漏れる。
ロックが外れているのを察した俺は視界を塞いでいる『天岩戸』を戻し、落ちた拍子に手から零れ落ちた『散雷』を拾って立ち上がる。
「
「今、初めて使ってみたのさ!」
そして目撃したのは瞬時加速を使い、上からボーデヴィッヒに強襲するシャルル。
「しかし!私の停止結界の前では無力!」
迫るシャルルにAICを発動するボーデヴィッヒ。
あともう少しというところで変化は起きた。
「き、貴様っ!?」
「任せたぜ!シャルル!」
唯一の武装である雪片弐型を投げ付け、ボーデヴィッヒのAICを妨害する一夏。
俺は状況を理解してすぐさま『散雷』をライフルモードにして二人に向けて放つが、間に合わない。
「『
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」
雄叫びと共にシャルルは切り札であるパイルバンカーを展開する。
「がっ、はっ……」
俺の静止も虚しく、シャルルはボーデヴィッヒに向けてパイルバンカーを叩きつける。
あまりの衝撃に、地面がへこんでいた。
「……やっちまったな」
その光景を見て、呟く。
恐れていたことが、現実になった。
銃が無ければ刀を投げればいいじゃない
Q.展開早くね?
A.早くしないと一夏が墜ちるから
Q.ラウラ弱くね?
A.舐めプしてたんだよきっと
頑張ります
短くてマジすみません