神様転生した者だけど毎日が苦痛   作:八雲 紅

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タイトル通り
ツッコミツッコミアンドツッコミ


ツッコミ詰め合わせの第33話

「おはよう、鋼夜くん」

 

「おはよう、簪さん」

 

朝。食堂で何を食べるか迷っていたら簪さんに声を掛けられたので振り向いて自分も挨拶を返す。

 

「……鋼夜くん。これ、忘れてたよ」

 

そう言って差し出されたのは一枚のディスク。

あ、これは……。

 

「ありがとう!無くしたと思ってたんだ」

 

四天を弄った時に使った記憶領域関連のディスクである。

無くしたのに気付いて三時間くらい部屋を探したけど無かったから諦めてたんだ。

 

「整備室に置いていったままだったよ」

 

……なるほど。この間、簪さんが俺の部屋を訪ねてきたのはこういう理由だったのか。

 

「ありがとう。朝、一緒に食べる?」

 

「……うん。あ、それと放課後についてだけど……」

 

俺と簪さんは朝食を一緒に摂りながら、放課後の練習について話し合った。とりあえず今日の練習は無いみたいだ。

ちなみに今日の俺の朝食はホットケーキだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

時は流れてお昼休み。

何事も無く午前の授業が終わり、俺はのほほんさんをはじめとする数人のクラスの女子と学食へ向かっていた。

 

 

「かなりんは何にする~?」

 

「うーん、日替わりランチかな?」

 

「では、私はきつねうどんにします」

 

「シャケ召喚!」

 

「せっかくだから私はこのレディースランチを頼むぜ!」

 

券売機の順番を女子に譲り、一歩離れて何を頼むか決めようとした時。

 

「あ」

 

「…………」

 

振り向けばクラスで絶賛ぼっち中のボーデヴィッヒが居た。

 

「……ふん」

 

一瞬目が合ったが向こうはこちらを一瞥しただけで券売機の列に並んだ。

あ、普通に並ぶのね。

 

 

「後ろに立つな」

 

「並ぶのに無茶言うな」

 

 

券売機の列に並んだらいちゃもんつけられたがボーデヴィッヒは既に何を買うか決めていたらしく、素早く食券を購入していった。

 

よし、今日は唐揚げ定食だ。

食券を購入してそれをおばちゃんに渡す。

しばらくすると頼んだ唐揚げ定食が届く。

おばちゃんに礼を言って俺はクラスの女子がいる場所へ向かった。

 

「ごめん、俺ちょっとボーデヴィッヒと一緒に食うわ」

 

が、向かったのは一緒に昼食をとるためではなくその約束に断りをいれるためである。

 

「え……あのボーデヴィッヒさん?」

 

谷本が驚いたような顔で俺を見る。

ボーデヴィッヒはクラスで浮いている。

喋らないし、空気が重いし、一夏に手を出すのを阻止したとは言え転校直後の第一印象は悪く、とにかく近寄り難い。

 

「このままぼっちって可哀想じゃん?ちょっと特攻してくる」

 

一人ぼっちは寂しいもんな。

 

「生きて帰ってきてね」

 

夜竹さんが無駄にいい笑顔でそう言ってきた。

生きて帰ってこいって……どのくらい危険人物だと思われてるんだボーデヴィッヒよ。

いや、まぁ、あながち間違いではないが。

 

「俺……帰ったら結婚するんだ」

 

「如月くん、誰と結婚するのか詳しく」

 

「なんでさ」

 

妙に食いついてきた相川さんを適当に流して俺は一人でハンバーグを食べているボーデヴィッヒの元へ向かった。

 

理由としては一夏へのフラグ及び今回の騒動フラグが折りやすいから。

箒との同盟はまだまだ継続中だし、戦闘なんて嫌である。

 

それに織斑先生からも頼まれたし、クラスの関係がギスギスするのは正直見てられない。

今はまだ「近寄り難い子」程度の認識だから修正は効く、かもしれない。

 

 

一人で黙々と食事をしているボーデヴィッヒに声をかける。

 

「一緒にいいか?」

 

「…………」

 

「沈黙は肯定と見なす」

 

「勝手にしろ」

 

許可が出たのでボーデヴィッヒの向かい側に座る。

ボーデヴィッヒはハンバーグを食べている。なんか……微笑ましく見える。何故だ。

 

しばらくの沈黙。

お互いの間に料理を咀嚼する音だけが流れる。

気まずい、これは失敗した。

 

「……おい」

 

と、向こうが沈黙を破ってくれた。

俺は顔を上げてボーデヴィッヒを見る。

 

 

「貴様、何が目的だ」

 

「特に無いな。強いて言うならお前の応援か?」

 

「なに……?」

 

俺から応援という意外な言葉を聞き、ボーデヴィッヒは眉を吊り上げる。

 

「この間のお前と織斑先生との会話を偶然聞いてな。アドバイスをしてあげようと思ったんだよ」

 

「……ほう。言ってみろ」

 

「確認なんだがお前はどうしてIS学園に来たんだ、ドイツ軍シュヴァルツェア・ハーゼ隊の隊長ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐?」

 

「ふん、お前はあの男や他の女共よりは少しマシなようだな」

 

嘲笑を浮かべながら腕を組んだ彼女は自信満々に語る。

 

「教官を連れ戻すためだ。あの人の手腕は我がドイツで振るわれるべきであり、もっとも力を活かせる場所だ。こんな場所で腐っていく教官を、私は見たくない」

 

織斑先生が活躍してた時代には行動がファン以上に逸脱した、いわゆる信者が沢山出たらしい。

彼女は重度の織斑先生信者だと思われる。間違いない。

 

「IS学園の特記事項の中に『あらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意無しの介入を禁ずる』っていうのがあってだな」

 

なので、まず俺は正面から突破することにする。

 

「教官が同意すれば問題ないだろう?」

 

「アホか。お前が学園に生徒として入学した時点で色々アウトだよ。それにどうやって同意させるんだよ」

 

「それは……」

 

と、ここで初めてボーデヴィッヒが口ごもる。

前なら多分「織斑一夏をぶっ潰す」的な事を言ったかもしれないが、まぁ、こいつも色々考えてるんだな。

 

「確かに織斑先生は教師するより軍で教官やってる方が似合うと思うよ?俺もそう思う。でも先生本人が教師やりたいって思ってるんならそれは他人が簡単に口を挟むことじゃないよな?」

 

織斑先生が望んで教師やってるのかは知らんけどな。望んでるって事にしとこう。

 

「だが、ここの生徒が教官が教えるに足る人間ではない」

 

「意識が甘くて危機感が無くてISをファッションか何かと勘違いしている、て事か?」

 

「ああ、まさしくその通りだ」

 

ボーデヴィッヒの言葉を先に答える。

 

「否定はしない。確かに、軍に居たお前から見たらそう感じるかもしれない。でもな、考えろ」

 

「何をだ」

 

「今、何月だ?」

 

「六月だな」

 

「お前は何を言っているんだ」と言いたげな目で俺を見るボーデヴィッヒ。

そこまで分かってて、俺の言いたい事が分からないお前にその言葉を返したい。

 

「俺たちが入学したのは四月だ。授業でISに実際に触れたのは先月の半ば。しかもここは学校だ。ISのための学校とはいえ四六時中ISに触れてる訳じゃない。……胸を張って言えることじゃないが、まだまだ勉強中なんだよ俺達は」

 

それに日本は平和の国なんだよ。

軍に居た人から見たらおかしいかもしれないけどね。

 

「ふん、偉そうなことを言った割にはこの学園の程度が知れるな」

 

俺の言葉を聞いて再び嘲笑を浮かべるボーデヴィッヒ。

なんかイラっとくる。

 

「へー、ドイツって新兵をそのまま戦場に放り込むんだー。まともな訓練もないのかー。すげー」

 

「……なんだと?」

 

「え?お前が言ってた事を総合したらドイツはそういうことなんだろ?俺、何か変なこと言った?」

 

「くっ……」

 

鋭い視線で俺を睨むボーデヴィッヒ。

自分で言ってて思うが煽るのだけは上手いな俺。

 

「それと『この学園の生徒』ってお前は言ったけど、二年生と三年生の方も見て言ってるのか?」

 

「見ていない」

 

自信満々に答えるとこじゃないと思うよ、そこ。

 

「じゃ、見てこいよ。それで先輩方がちゃらんぽらんだったら俺は何も言わねぇ」

 

その場合は本当に何も言えねぇ。

 

「……いいだろう。たった一、二年学んだだけの奴らに私が負ける筈がないからな」

 

ほー、そこまで言いますか。そこまで言って負けたら恥ずかしいよそれ。

……いいこと思いついた。適任が居るじゃないか、最近知り合った俺の知ってる唯一の先輩が。

 

「じゃあ、俺の知り合いの先輩に模擬戦を頼んでおくよ。時間は放課後ね」

 

 

俺はスマホを取り出し、何故か登録されていたとある連絡先にメールを送るのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

またまた時間は流れて放課後。

 

俺は第一アリーナの観客席に居た。

 

アリーナでは既にIS同士の模擬戦が始まっており、ボーデヴィッヒと俺が呼んだ先輩……更識楯無生徒会長が戦っていた。

 

ボーデヴィッヒの機体は『シュヴァルツェア・レーゲン』

無骨な黒い装甲に背部の大型カノン砲が特徴の機体だ。

 

ボーデヴィッヒの機体は知識により知っているからいいが、更識会長の機体に俺は注目していた。

 

 

『ミステリアス・レイディ』

装甲の少ない水色のIS。

が、性能や機能が馬鹿げていた。

四天から送られて来る情報によると、ミステリアス・レイディはナノマシンの混入した水を操るISらしく、水のヴェールを纏えば防御に使える。ランスに纏わせれば攻撃に使える。とにかく水、水、水。

 

機体も凄いが、会長自身の技量も凄かった。

ボーデヴィッヒの繰り出すワイヤーブレードを軽々と避けて反撃する。

カノン砲も普通に避ける。

 

さすがはロシア国家代表。IS学園最強。

 

機体データばかり見ていたせいで勝負はあまり見ていなかったが模擬戦は会長の勝利で終わった。

 

途中からボーデヴィッヒに同情してしまうくらい会長は強かった。

なんだよ最後の「ねぇ、やけに湿っぽいと思わない?」って。

じゃあ俺は「なァ、粉塵爆発ッて知ッてるかァ?」って言えばいいのか、わかりません。

しかも水蒸気爆発ってお前……究極の初見殺し過ぎる。あれって対策あるの?PS装甲で耐えれるんなら希望はあるけど。

 

 

「っと……行きますか」

 

俺は四天の情報を整理したあと観客席からピットへ向かった。

 

「あら」

 

その途中で着替え終わって制服姿の会長と出くわした。

 

「どうだった?おねーさん強かったでしょ?IS学園最強の名は伊達じゃないのよ」

 

バッと開かれた扇子には「勝利」の文字が。

前に聞いたのだが生徒会長=IS学園の生徒最強、ということらしい。

通りで二年で生徒会長やってるわけだ、少し納得。

 

「はい、とても強かったです。今日は急なお願いを聞いてくれてありがとうございます」

 

会長は急なお願いにも関わらず了承してくれた。本当にありがたい。

 

「いいのよ、学園生活を楽しく送れるようにするのも生徒会の仕事だから。じゃあね、如月くん」

 

「では」

 

会長と分かれて俺は目的の場所へ向かった。

 

ピットには悔しそうな顔をしたボーデヴィッヒが居た。ISスーツのままだ。

 

「……なんだ、私を笑いにきたのか」

 

こちらを確認すれば、彼女はかなり弱った表情となる。

 

「いや、全然」

 

「……約束通り、この学園に対する評価は考え直そう」

 

ボーデヴィッヒは自嘲気味に答えると俺からくるりと背を向ける。

 

「あー、待て待て」

 

そして俺は彼女を呼び止める。

自己完結してもらっては困る。

 

「なんだ」

 

「最初に言っただろ、アドバイスをするって。正直言うとお前が言った事、ISに対しての意識とか的を射ている事もある。……いい方法があるぞ、お前の不満も織斑先生の評価もどうにかできる方法が」

 

「……言ってみろ」

 

もうどうにでもなれ、といった様子のボーデヴィッヒに笑顔を向けながら俺は言った。

 

「うちのクラスの奴らを指導してやればいいさ。お前が知識や技術で頭一つ飛び抜けてるのは知っている。クラスメイトが気に入らないなら自分の指導で引っ張っていけばいい。織斑先生が教師に向いてないと思ってるなら、いっそ先生の仕事を奪う勢いで……そうだな、模範生になってみたらどうだ?優秀な生徒を嫌う先生は居ないからな」

 

俺がそう提案すると彼女はいったん考える素振りを見せ、表情が徐々に明るくなっていった。

 

「……だが、私は奴を、織斑一夏を許さない」

 

が、一夏の事を思い出したのか。

すぐに恨めしそうな表情を浮かべる。

……恐らく、彼女はもう分かっているはずだ。一夏を恨んでも意味は無いと。だが、理屈ではないのだろう。

……これに関して俺は何も言えない。当人達で解決してくれ。

 

「それについては何も言わんが……まぁ、学年別トーナメントまで待てばいいさ。そしたらあいつと合法的に戦える」

 

「ふん……礼は言わんぞ」

 

もう俺は用済みとばかりに、彼女はピットを出て行った。

 

 

 

「ちょろい!」

 

誰もいなくなったピットで俺はそう呟く。

 

これでいい。

計画通り。

これでボーデヴィッヒ関係の問題はどうにかなるだろう。多分。

織斑先生の名前は本当に凄いな。

 

ボーデヴィッヒが素直な子で助かった。

 

 

問題を片付けて清々しい気分になるが、もう一つ特大の爆弾があるのを思い出し今度は沈んだ気分になった。

 




コウヤ=サンのクチサキジツ!

ラウラは素直
なんだかんだで鋼夜に言われた事を守ってます
ラウラのキャラが崩れてる?気にするな!

次はシャル
またツッコミだらけになると思うのでご了承下さい

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