新生IS<インフィニット・ストラトス>~英雄達集う~   作:武御雷参型

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新規で書いている所もあるので、更新が遅れました。
次回は対抗戦になると思います。


第十六話~訓練そして、思い

それから暫らくの月日が経ち、五月となった。

この時期は、クラス対抗戦があり、各クラスの代表一名がそれぞれのクラス代表と戦いトップを競う対抗戦である。また、この対抗戦でトップとなったクラスには、半年間。食堂で使えるフリーパス券が支給される事になっている。

クラス代表は、それぞれのクラスメイトからの無言のプレッシャーに、日々、胃を痛くしているのであった。

それは、一組のクラス代表である一夏も同様であった。そんな時に手を差し出したのがキラ達であった。

 

「一夏、準備は良い?」

 

「いつでもいいぞ」

 

第一アリーナで対峙しているのはキラと一夏であった。

 

「今から僕はここから一歩も動かないで攻撃をするから、それを回避してね。出来るんだったら僕に攻撃してきても良いよ」

 

「おう‼」

 

キラは一夏の返事を聞くと「行くよ」と呟いた。すると、ストライク・フリーダムのバックパックである“ハイパードラグーン機動兵装”が勢いよく射出され、キラのストライク・フリーダムの周りに浮遊する。

 

「いきなりかよ‼」

 

「じゃないと、訓練にならないでしょ?」

 

「まぁ、確かに………ちなみに手加減は?」

 

「あると思う?」

 

キラの言葉に一夏はゲンナリとする。

 

「まぁ、いっちょやってやりますか‼」

 

が、一夏は気合を入れ直しキラとの訓練を開始するのであった。

 

 

 

 

 

 

だが、一時間もしない内に一夏はへばってしまっていた。

 

「一夏、みっとも無いよ?」

 

「ハァ………ハァ………あの弾幕を…………回避できるか‼」

 

「まぁ、白式は機動戦闘を視野に入れた機体だよ? これ位は出来ないとね?」

 

「千冬姉も言ってたけど………キラってどうしてそんなに戦闘に詳しいんだ? 俺よりも先に見つかったとしても、大差はないだろ?」

 

一夏にしてはキラが戦闘慣れしている事に疑問に感じるのは、仕方が無い事である。国家代表候補生でもないキラが……否、キラ達が戦闘慣れしているのはおかしいと感じていたのであった。

 

「そうかな? でも一つ言えるとしたら」

 

「言えるとしたら?」

 

「それだけ護りたい者が居ると言う事だよ」

 

キラの言葉に一夏は「護りたい者」と呟いていた。

 

「僕にとって護りたい者はラクスだね。自分の愛している者を悲しませない為にも、それだけの力がいる。だけどね、“力だけ”、“思いだけ”、一つだけの思考では、何も守れないし自分自身も守れない。でも、その二つが重なり合う事で、本来の力を発揮する事が出来る様になるんだよ。一夏、セシリアと戦った時に君が自分で言った言葉を覚えてる?」

 

「ああ、覚えている。自分の家族は護って見せる。でもその前に千冬姉の名を汚さない様にしないと、だけどさ………最近になって思い始めたんだ」

 

一夏の言葉にキラは何も言わず、一夏が口を開くのを待った。

 

「護るってどう言う意味なのかを………」

 

「君にとって護りたい存在はいるの?」

 

「護りたい存在?」

 

「そう、護りたい存在。正確には好きな人はいるのかっていう事」

 

一夏には理解できなかった。

 

一夏自身、千冬と共に両親に捨てられたと思っていた事から、“自分の事を好いている者などいない”と思っていたからである。

 

それ故に、“好きになってくれる奴なんていないから、一生涯一人ぼっちなんだろうな”などと問題発言を繰り返し、周囲の人間の神経を逆撫でして騒動を引き起こしていた。

だが、言った本人は悪意は無いばかりか全くの無自覚だった為、その鬱憤が周囲の人間に溜まりに溜まってきていて、それらが限界に達した時に自らに跳ね返ってくることになる……因果応報とはまさにこのことであるが、それが何時になるかは誰にも解らない。

 

「えっ? でも、俺を好きになってくれる奴なんて「そんな事は聞いてもいないし、言い訳なんて聞きたくないよ。それに、そう言う事を言ってるんじゃないんだよ、一夏」じゃぁ、どう言う事なんだよ⁉」

 

(なお)も解っていない一夏の言葉を聞き、キラは不機嫌になる心を抑えて溜息を吐いた。

 

同時に、“思い込みから来る自己否定”の言葉を口にする一夏に、失意を覚える事を禁じ得なかった。

 

「ハァ~……やっぱり君は気付いていないようだね。僕には君が何をしたいのかよく解らないよ。君が“他人と一緒に居たい”のか、それとも“誰とも関わりを断って一人きり”になりたいのか。初日の授業で織斑先生が君に言ったこと、もう忘れたの?」

 

「どう言う意味だよ、キラ」

 

「はっきり言うよ。君は自分の気持ちに気付いていないだけだよ」

 

キラは一夏の心の中に好いている者が居る事が解ってはいた……だが、それを口にするほど甘くも無ければ優しくも無い。

 

「一度、自分に素直になって自問自答した方が良いよ。そうだね………今、君と関わりを持っている人達を思いながら、自分の素直な気持ちと照らし合わせてみたら?」

 

「…………」

 

キラの言葉に一夏は考え始める。

 

「(俺と関わりを持っている人………箒、セシリア、鈴……………駄目だ、解らねぇ。考えるだけ、泥沼に入って行く気がする。“自分の気持ちに素直になれ”って、一体何を言いたいんだよ、キラは? 箒とは幼馴染だし、鈴も同じことが言える。セシリアは……最初は嫌な奴だったけど今は違う…………後で考えよう)」

 

「(一夏、今の君の姿は昔の僕のように危うい人間だね。だけど、君の中にある素直な気持ちに気付けたら、道を違える事は無いよ。もしも、道を違えても違えなくてもそれが解らなかったり自己完結してしまった時は……その時は、時間が解決する他にないか、もう”どうしようもない”ね)そろそろ訓練を再開しようか。考えるのはその後で良いしね」

 

「お、おう‼」

 

キラの一言で一夏の思考は訓練へ切り替わるのであった。

 

この後、一夏はキラから問われた“自分の事が好きな人がいるのか”を考えながらも迷い続ける困難な道が待っていた……キラは一夏がそれを乗り越えられる事を心から願っていた。

 

 

 

それから一時間後、キラと一夏の訓練は終了した。

 

「お疲れ、一夏」

 

「流石にあの弾幕は疲れるな………にしてもキラは息を切らしてないよな?」

 

一夏は息切れを起こす一歩手前であった。

 

だが、それもキラの手加減のお陰であり、本気のキラならば“もう何度も死んでいる”事に、一夏は全く気付けなかった。

 

「僕と君とは違うよ。そろそろ、締まる時間だね。上がろうか」

 

「そうだな」

 

キラと一夏は更衣室へ向かって行くと、入り口に一人の少女の影がある事に気付いた。

 

「鈴? どうかしたのか?」

 

「うぇ⁉ ああ、一夏。それとヤマト。お疲れ」

 

入り口に立っていたのは鈴であった。鈴の手にはスポーツドリンクが握られていた。それに気付いたキラは、鈴に気を使った。

 

「一夏、僕は戻るよ。ラクスが待ってるしね。また明日ね」

 

「おう」

 

キラは一夏と別れ、自分の部屋へと戻ろうとした時、鈴の耳元で囁いた。

 

「大丈夫、更衣室には誰もいないからね」

 

「なっ⁉」

 

キラの呟きに鈴は驚きながらキラを見るが、キラはどこ吹く風の様に歩いて行った。

 

「ありがとう」

 

キラはは聞こえていないであろうが、鈴は静かにキラにお礼を言った。

 

 

 

 

 

国際IS委員会の地下に一隻の戦艦が建造されていた。

 

「どうだ、現状での進行状況は?」

 

「やはり、元が元なので何とも言えないですね。それに………本気でこの武装を積むんですか?」

 

二人の男性がフリップボードを見ながら戦艦の建造状況を確認していた。

 

「ああ、それが委員長からの指示だったからな。それに………この戦艦があれば、戦争を最小限に留める事が出来るかも知れないからな………」

 

「ですが、この戦艦………いや、この強襲揚陸戦闘艦で戦争が最小限に留める事が本当に出来るのですか?」

 

「出来るさ………だが、それは今じゃない」

 

「どう言う事ですか?」

 

「フッ、今の委員会では扱える事が出来ない代物と言う事だ」

 

男性はそう言うと、造船場から出て行く。

 

「(そうだ……あの強襲揚陸戦闘艦があれば、きっと………)」

 

男性は胸に仕舞っているロケットを取り出し、中の写真を見つめた。

 

「君に鎮魂歌を捧げよう。そして…………いつか必ず君の元へ逝くよ」

 

男性が見つめる写真は、男性と山田真耶似の女性が写っており、二人とも笑顔であった。

 

「亜耶」

 

男性はそう言うとロケットを胸へと仕舞い、歩みを進めるのであった。

 

 

 

 

学園の職員室では真耶が仕事に追われている最中であった。

だが、真耶は仕事の手を止めるとデスクの引き出しを引き、一枚の写真を取り出した。

そこには真耶に似た顔立ちの女性と男性、そして真耶自身が映し出されていた。

 

「お姉ちゃん。私、念願だった先生になれたけど………やっぱりお姉ちゃんの様には行かないんね。私、どうしたら良いのかな?」

 

真耶は写真に映し出された女性に語り掛けたが、写真からは何の答えも出てこなかった。

 

「それにお姉ちゃんを亡くしたあの人は、いつの間にかどこかに行っちゃうし…………私には誰も助けに来てくれないのかな?」

 

真耶自身、IS学園での襲撃で生徒に危険な目に遭わせてしまった事に後悔をしていた。

もしも、あの場で義務を放棄し駆けつけていたら、生徒に危険な目に遭わせる事は無かっただろう。

だが、放棄をするという事は懲戒免職までに行かなくとも、それなりの処罰を受ける事になるがそれは覚悟の上。

だが、心で思っていたとしても、身体が言う事を聞いてくれなかった…………否、聞く以前に、動く事すらままならなかったのだ。

 

しかし、考えてみれば当たり前の事である。

 

ISが登場してから十数年、こんな事は一度も無かった。

 

まして、無人機と言う未曽有の機体が出て来ることを考えられるほど、真耶達には“認識は勿論、技量ばかりか想像力すらも無かったとしかいえない”、という現実を叩きつけられたのだ。

 

「私ね………教師失格なのかな…………」

 

「そんな事は無いだろう」

 

「えっ?」

 

真耶の呟きに一人の教師が答えた。

 

「織斑先生?」

 

「真耶、お前が苦労している事は私が一番知っている。いや、ここの教師一同がお前の努力や苦労を知っている。それを簡単に諦められるのか?」

 

千冬は真耶の隣に座ると一枚の写真をデスクから取り出した。

 

「それは?」

 

「これか………一夏と私を置いて行く前に撮った写真だ。この時、一夏はまだ四歳だった。私は中学生になった頃だったか…………懐かしく感じしてきている」

 

「それで、ご両親は…………」

 

「ある程度の貯金を残して姿を消した。だが、その時に私に言ってくれた。いつまでもお前達の事は見ているとな………この言葉に私は救われた。一夏には“捨てられた”と言ったのだが、あれは大きな間違いだった。両親は何らかの研究に関わっていたのだろう。だが、その研究で私達が危険な目に遭うと知って姿を消してしまった。これが私が考えた両親が消えた理由だと思っている。だが一夏は未だに“自分を好きになる奴なんていない”とか“だから一生涯一人ぼっちなんだろうな”等と言っている。その時私が一夏に言った発言の責任は、本当に大きいな」

 

千冬はそう言うと写真を引き出しに戻すと、仕事を始めた。

 

「さぁ、真耶‼ 今日の仕事を終わらせて呑みに行くぞ‼」

 

「はい‼」

 

真耶の心は幾分か軽くなった気がしていた。そして、これからは生徒に危険な目に遭わせない為にも、自分の技術を磨こうと決心するのであった。




誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたらどしどし送ってください‼
作者の気分も良くなり、もしかしたら更新が早くなるかも…………多分。



修正を行いました。

機体設定について(セカンドシフト機体)

  • 設定通り
  • 劇場版基準
  • そもそも、劇場版を見てないからわからない
  • いっそのこと、新規で作ろう

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