蒼き鋼のアルペジオ ―Auferstehung―   作:主(ぬし)

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近未来×潜水艦×TS=最強


Depth 01

足を滑らせて、海に落ちた。引き潮に引っ張られ、あっという間に沖に流された。そして、気づけば海の底に引きずり込まれていた。もがき苦しむ暇すらなかったのは不幸中の幸いだったかもしれない。うっすらと輝く海面は遥か彼方だ。朦朧とする頭でも、海面までたどり着ける体力がこれっぽっちも残されていないことくらいは理解できた。

モヤのように薄れてゆく意識で、オレは最期に何を考えるべきか迷った。死にたくないと思えるほどの人生の目標もなかった。複雑な家庭環境のおかげで幸せを願う親兄弟はいなかったし、女っ気がなかったから彼女なんていやしない。ましてや妻子がいるような歳でもない。かといって暑苦しい男友達のことを思いながら息を引き取るというのも癪だ。残された短い時間で今までの人生に思いを馳せるにしても、薄っぺらすぎて時間が余ってしまう。

結局、少し悩んだ末、オレは気に入っていた漫画のことでも妄想しながら死ぬことにした。

 

(―――『蒼き鋼のアルペジオ』、面白かったなあ)

 

 超常の性能を有する戦闘艦と、その艦の魂である少女たちの物語。原作の漫画版も面白いが、アニメ版も独自の改変が為されていてこれまた面白いのだ。

そういえば、奇しくもあの漫画の主な舞台はまさにこの海だ。主人公の駆る潜水艦『イ401』は、幾多の強力な敵と戦火を交えながら、この大海を突き進んでいた。あのロマン溢れる世界に包まれながら死んでいくのも、それはそれで乙なものだ。そう思えば、この死に方にも少しだけ納得できる。

そうしてオレはそっと目を瞑り、

 

 

 

私にモ  一緒に イテクれるひトが―――  艦長が い れば ―――………

 

 

 

 寂しそうな女の子の声に、再び目を開けた。

消え入るようなか細い声は、足元の深海から聞こえていた。ありえない現象なのに、不思議と怖いとは思わなかった。むしろ、放っておけないという義務感ばかりが膨れ上がった。声の方向に意識を傾けた瞬間、吸い込まれるようにオレという存在が海底へと導かれていく。

沈んでいるのに浮き上がっているような上昇感、圧力が増しているはずなのにあらゆる縛りから解き放たれていくような開放感―――きっと、オレはこの女の子に求められているのだ。

どうせ死ぬのなら、求めてくれる誰かの傍で死のう。

奇妙だが決して不快ではないこの感覚に身も心も委ね、オレは声を発した少女に手を伸ばした。

 

 

―――オレなんかでよかったら、一緒にいてやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コォン―――

 

 

『蒼き鋼』、イ401の船首からアクティブ・ソナーの探信音波が拡散する。それは左右から接近する2隻の“霧の艦艇”の艦種と位置を正確に掴み、発令室前面の高精度パネルに詳細を図示する。

どちらとも駆逐艦、相対距離は左舷側の敵Aが10km、右舷側のBが15km。沈みゆく仲間の艦艇には見向きもせず、快速を誇る駆逐艦が炎上する海面をかき分けて猛然と突き進んでくる。だが、戦端が開かれた当初は11隻にも及ぶ大艦隊でイ401の進路を阻んだ駆逐艦隊の威容はもはや跡形も無い。包囲網の形成をいち早く見破ったイ401の類稀なる戦術によって戦列を崩され、各個撃破された結果だ。戦域離脱は容易に思えた。

「今回も無事に切り抜けたな」と軽く独り言ち、イ401の艦長であり、不世出の戦術家でもある千早 群像(ちはや ぐんぞう)が早々と指示を飛ばす。

 

「本艦は通常魚雷3本で右舷Bを牽制しつつ、左舷のAに対してこの深度のまま戦闘中速で直進。すれ違いざまに通常魚雷でクライン・フィールドを削った後、最後の侵食魚雷で片付ける。その後、ありったけの機雷をばら撒いてBの目をくらまし、硫黄島へ向けて―――」

 

 澄んだ金属音のような探知音が周辺海域に円を描くように拡がり、漸減しながら500メートル直下の海底にまで達する。

消え入る寸前の音波が海底に潜む何か(・・)に弾かれたのは、まさにその時だった。

 

「―――待って下さい! 海底にもう一隻います! 距離500、大きさはこちらとほぼ同じ、位置は―――ほ、本艦の真下ですッ!!」

 

ソナー員である(しずか)がほとんど悲鳴と化した報告を叫んだ。それは稲光のように発令所を駆け巡り、クルー全員に最大級の衝撃を与えた。強制的な思考の空白を乗り越え、ゴーグルの下で瞳孔を開かせた火器管制担当の杏平(きょうへい)が「じょ、冗談だろ!?」と声を上擦らせる。

 

「冗談なんかじゃありません! 岩礁内の変温層に潜んでいて今まで探知できなかったようです!」

「くそっ! そこはウソでも冗談って言って欲しかったぜ! 手持ちの侵食魚雷はあと一本しかねえんだぞ!?」

『ちょ、ちょっとちょっと!? 言っとくけど、緊急運動も全速航行ももう1分だって無理だかんね!? エンジン吹っ飛んじゃうよ!』

強制波動装甲(クライン・フィールド)はあと数発の魚雷直撃には耐えられるでしょうが、追撃を受け続ければやがて限界が来ます。侵食兵器の直撃を喰らえば一発でアウトでしょう。“防弾チョッキ”はあまり頼れません」

 

モニターを介した機関室で機関担当のいおりが頭を抱え、いつも冷静沈着なはずの副長の(そう)までもが緊張に身を軋ませる。

動揺は人間であるが故の正常な反応だ。だが、艦長席に座る者にだけは、狼狽する権利はない。残弾数は常に頭に叩き込んでいるし、機関部とクライン・フィールドの負担が限界寸前であることも誰よりも理解している。それぞれに慌てふためくクルーを視界に入れながら、鉄の意志で動揺を押し潰した群像は新手について必死に思考を巡らせる。

 

「……静、真下のソイツは沈没船の類ではないんだな?」

「着底せずに海底スレスレを浮いて、常に本艦の真下を着いてきています。この動きは間違いなく潜水艦です」

 

イ401より500メートル真下ということは、謎の新手は海底900メートルに潜んでいることになる。人類史上もっとも深く潜れる潜水艦はロシア・アルファ級潜水艦の700メートルが最大だ。900メートル以上の深海を自在に航行できる艦は人類には造れない。必然的に霧の艦艇ということになる。

 

「わかった。動きはどうだ?」

「それが……少しも動きはありません。こちらにじっと聞き耳を立てているようです」

「……不気味ですね」

「ああ。待ち伏せにしても様子がおかしい」

 

僧の率直な呟きに頷きを返す。待ち伏せは、相手の意表を突くことによってその真価を発揮する。真下の敵も潜水艦であるのなら、先のアクティブ・ソナーによって自分が探知されたことはとっくに理解している。この“最悪の状況”を最大限に利用したいのなら、大急ぎで今にも何らかの行動を起こしてもいいはずだった。

 

(まずいな。本艦が置かれている状況は、かなり悪い)

 

イ401を挟むように迫り来る残存敵数は2隻。どちらも未だ無傷の駆逐艦クラスだ。各個撃破のために散々こき使った機関はそのツケが蓄積し、全速航行はできなくなった。しかし、クライン・フィールドを有した敵への決定打足りえる侵食魚雷は残りたったの一本。すでにこの時点でイ401は苦境に立たされていた。

 

(“勝つことは能わず、されど逃げることも能わず”、か)

 

そこへさらにトドメとばかりに登場した、海底に潜み続ける謎の敵艦。三方から襲い来る3人の敵に対し、疲労困憊のこちらが握る銃にはわずか一発の銃弾のみ。どれか一人を打ち倒しても残り二人に追い続けられ、全速を出せないこちらはやがてジリ貧に陥る。考えるまでもなく、絶体絶命だ。

 

(だが、俺は、俺たちは、こんなところで歩みを止める訳にはいかない!)

 

苦い味を口腔に噛み締め、正面のパネルをギリと睨みつける。ここで諦観してしまえば本当に負けてしまう。諦めれば勝機は失われる。戦意を失わない内は負けてはいない。考えることだけは決して止めてはならないのだ。事態を打開する要素を探るため、群像は隣の少女に質す。

 

「イオナ、真下の敵が何者かわかるか?」

 

相手を知れば戦術の構築もより容易くなる。群像に質問された少女―――“メンタルモデル”イオナにはそれが出来た。霧の艦隊たちによって構築される高度な共同戦術ネットワークへのアクセス権限を有する彼女なら、新しく現れた敵艦の正体も看破できるはずだ。

しかし、

 

「―――」

「……イオナ?」

 

イオナは即答しなかった。即答できなかった。足元を―――真下に現れた何者かに怯えるようにじっと床を見詰めて動かなかった。群像の再度の問いかけがなければ、きっとそのまま硬直を続けていただろう。

 

あの娘(・・・)は、もう、ネットワークには存在しない。だけど、私には、わかる」

 

何事にも動じないはずの彼女が、数秒の逡巡を置いてようやく声を絞りだす。即答しなかった理由は、その張り詰めた台詞こそが答えであった。

 

「―――イ405(・・・・)。間違いない。下にいるのは、イ405」

 

「「「イ405(・・・・)…!?」」」

 

ギョッと目を見開いたクルーが一斉にイオナを振り向く。群像ですら例外ではなかった。身体が割れるような驚愕に貫かれ、群像は久しぶりに目眩を覚えた。それくらい、ありえないことだった。

 

 

撃沈したはずの潜水艦(・・・・・・・・・・)が再びその姿を現すなど―――ありえないことだ。

 

 

「……! 敵Aが対潜弾(アスロック)発射! 着水音、数50以上! タナトニウム反応も確認しました!

つ、続いて、真下の潜水艦―――イ405からも発射管の急速注水音、数1! 探信音も確認!」

 

 静が甲高く叫び、その語尾に喰らいつくように強烈な金属音がイ401を真下から貫いた。

『対潜弾』とは、水上艦から対潜水艦用の魚雷を大量に打ち上げ、着水したと同時にそれぞれが目標を狙うという潜水艦殺しの兵器だ。さらに悪いことに、タナトニウム反応が見られるということは、即ち大量のアスロックの中に侵食魚雷が含まれていることを意味する。通常兵器なら数発を受けても現在のクライン・フィールドでダメージを相殺できるが、侵食兵器となれば防げない。捕食動物に睨まれたような怖気に襲われ、鼓膜がヒリリと張り詰める。なにより、その探信音が3週間前に記録したイ405のそれとまったく同じ周波数を示しているデータを目にして、静が喉を震わす。

 

「上下からの挟み撃ち、ですか……。このためにイ405は沈んだフリをしていた……?」

「3週間前、たしかにイ405は侵食魚雷の直撃を受けて轟沈したはずです! 圧潰音も確認しています!」

「だけどよ、実際に俺たちの真下にいやがって、こうして俺たちに向けて探信音を打ってきやがったんだ! じゃあコイツはなんだってんだ!? 霧の幽霊船と、でも……」

 

幽霊―――。

 

杏兵が思わず口走った言葉に、杏兵自身を含めた全員の背筋がゾクリと総毛立つ。霧の艦艇が、メンタルモデルという“魂”を得てヒトという生命体に近い存在となっていることを、イオナを通じて誰よりも理解しているクルーたちは、“霧の幽霊”という説を実感を持って受け止めることが出来てしまった。

『恨みを忘れられない霧の魂が、死した後も深海を彷徨う亡霊となり、己を殺した者たちに憑いてきていた。戦っている時も、笑っている時も、眠っている時も、ずっと真下から恨めしそうな目でじっと睨み上げていた……。』

一度想像してしまえば芋づる式に繋がり、発令室の空気を氷のように冷やしていく。

 

「いいや。アレは幽霊じゃない。幽霊は探信音を打たない」

 

冷えきった空気を明瞭な声音で断ち切ったのは、群像。大量に分泌されたアドレナリンが頭の芯を燃やす感覚を味わいながら、すっくと立ち上がる。

 

「何かがおかしい」

「……何か、とは?」

「まだわからない。だが、何か奇妙だ。そうは思わないか、僧。今まで俺たちを襲う機会なら幾らでもあったはずだ。なぜ駆逐艦が2隻に減らされるのをむざむざ座視していた? 急速注水までしておいて、なぜ魚雷を一本しか使わない? このイ405は、この行動は、何かが違う……」

 

魚雷射出を悟られる危険を伴う発射管への急速注水を行っておきながら、用意したのはわずか一本のみ。敵を確実に仕留めたいのなら魚雷は出来るだけ多くを撃つというのが鉄則だ。物資の不足で頭を悩ませているこちらと違い、霧の艦艇に「兵器の出し惜しみ」という考えがあるはずがない。しかし、イ405は王道であるはずの戦法を無視している。今までの霧の艦にはなかった、基本を逸脱した行動だ。

 

「イ405、どうして……」

 

ポツリと漏れた呟き。呆然と漏らしたイオナの視線を辿れば、前面パネルに赤く図示された『イ405』の記号。その横には『CONDITION:DOWN(撃沈済)』の希薄な文字が浮かんでいる。

 

「再び着水音! 敵Bより、対潜弾連続射出! か、数は50以上……まだまだ続きます! 多すぎて把握出来ません! 上方は短魚雷で埋め尽くされています!」

「マジかよ…! 上は魚雷の雨、下はゾンビ潜水艦! どうすんだよ、艦長ッ!?」

 

焦燥するクルーに対し、群像は応えない。短魚雷の槍の群れが降り注ぐ危機的状況よりも、イ405の不可解な行動を明らかにする方が重要だという確信めいた勘が働いたからだ。

点滅する『イ405』の記号の先に海底からこちらの出方を伺う何者かの怪しげな双眸を幻視し、群像は一筋の汗を頬に伝わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か海底から彼らを見上げる、一度撃沈されたはずのイ405。

その内部にある発令所にペタンと胡座をかき、イオナと瓜二つの容姿をした少女が興奮薄くポツリと独り言ちる。

 

 

「この世界って漫画版なのかな。アニメ版なのかな。それが問題だ」

 

 

「どうした、ニコ(・・)。ボソボソと呟いて、何か気がかりでもあるのか?」

「い~や。なんでもないよ、艦長(・・)。言われた通り、発射管急速注水完了だよん。イ401に届くくらいバッチリ大きな音立てときますた」

「ならいい。駆逐艦の動きは?」

 

背後の艦長席から投げかけられたのは、強い意思を感じさせる青年の声だ。髪は短く切り揃えられ、精悍な顔立ちに似合っている。生地の厚い軍服の襟元には『准尉』を示す統制日本軍の襟章が光っていた。

青年に問われた少女が「ちょいと待ってね」と小さな耳をピンと立ててみせる。

 

「おっ。左舷側の駆逐艦が対潜弾を発射したみたい。数は56。その内21発にタナトニウム反応あり。一方のイ401は変わらず動きなし、というか動けないみたい。アレだけ動き回った後だから機関が限界なんだろね。装填された魚雷のタナトニウム反応は一発のみ。侵食魚雷の手持ちはそれで最後っぽい」

「そこまで詳しくわかるのか」

「まあね。オレの探知能力は今のイ401の3割増しくらいだよ。構造もほとんど同じだし、このくらい近ければ手に取るようにわかるのさ。その分、水中(・・)攻撃力では負けるけど」

「腕力では負けるが耳の良さなら勝てる。要は艦長(おれ)の操艦次第ってことだろ?」

「……そゆこと。よくわかってんじゃん」

 

野性的な外見とは裏腹に、この濃緑色(・・・)の軍服を着込む青年は物分かりがとても良かった。理屈よりも直感で物事を理解するタイプなのだろう。圧倒的な性能に頼って戦うばかりの霧の戦闘艦を相手取るのなら、枠に捕らわれないこういう人間が最適なのかもしれない。

青年を艦長に選んだ自身の審美眼を讃え、ニコは起伏の少ない胸をえっへんと突き出した。千早群像のような完璧な戦術を操る艦長も面白そうだが、こっちの艦長に従うのもきっと面白いに違いない、と。

一方の青年はと言えば、ニコが見せる微笑ましい仕草に後ろから抱きしめたい衝動をむらと湧き上がらせ、今が戦闘中であることを思い出して内心で己の頬を叩いていた。表情豊かな少女の言動は、以前抱いていた霧へのイメージとは似ても似つかず、まるで自由気ままな猫のようだ。ニコの華奢な背中を見ながら、「この戦局を乗り越えたら思いっきり愛でてやることにしよう」と青年は固く心に誓う。ニコはベタつかれることを無性に嫌がるが、それがいいのだ。

 

「よし、さっさと終わらせよう。2番に侵食魚雷を装填。目標及び魚雷誘導コースは当初の作戦通りだ。駆逐艦にはギリギリまで悟られるな」

「へいへい。言われんでもわかってるっつーの」

 

 青年が自分に向ける思惟など露知らず、「2番に侵食魚雷そうて~ん」と緊張感の欠片も感じさせずにニコが復唱する。それに呼応して艦内に響き渡る、ガゴンという魚雷装填音。打てば響くような艦の即応は、この巨大な潜水艦が彼女の意思によって動いている証左だ。

 

「俺の合図で撃て。目標は指示通り。侵食魚雷の数は限られてるんだ。変温層(レイヤーデプス)別の密度計算、間違えるなよ」

「えぇ~。オレ、文系なんだけどなあ」

「霧の艦に理系も文系もあるわけないだろうが。どこで覚えたのかは知らないが、馬鹿なこと言う暇があったらピンガー打っとけ」

「あいあいさー。……ホントのことなんだけどなぁ」

 

サクランボのような唇を尖らせて小さくボヤく。それが艦長の耳に届く前に、少し大きめに設定した探信音でわざとかき消した。およそ霧らしくない人間じみた行動だ。

人間離れした美しい容姿でありながら、あずき色をしたダブダブのジャージに身を包むこの奇天烈な少女こそ、イ405のメインコントロールコアであり“魂”そのものを成す、メンタルモデルである。

 

 

この世界での名を、ニコ(・・)

この奇妙な物語の主人公でもあり、少し前までは我々と同じ『蒼き鋼のアルペジオ』のファンの一人に過ぎなかった、元傍観者である。

 

 

 

 

 

 

「ま、アニメ版だろうが漫画版だろうが―――千早群像なら、こっちの意図(・・・・・・)くらいちゃんとわかるだろ」

「……ずいぶんイ401の艦長を信頼しているんだな。実際に会ったことはないんだろ?」

「へっ? あー、その、なんというか。ま、まあ、オレってばアイツに一回沈められてるからさ。相手の手の内は理解してるっていうか? 同じ勇敢な戦士として、その辺、イヤでもわかっちゃうわけで?」

 

 どう説明していいかわからずに辿々しく目を泳がせるその姿は、傍目には過去の想い人について照れくさそうに話す少女に映るかもしれない。少なくともこの若い艦長にはそう見えた。すかさず艦長席から身を乗り出し、さらさらと手触りの良い銀髪に手櫛を通す。

 

「それは悔しいな。俺もお前を沈めればもっと信頼してくれるのか? 例えばベッドでとか」

「ぇ!? ぁ、ぇ、ぇと、あの、オレ、そういう趣味は、その、」

 

 指先が首筋に触れたと思うが早いか、バタバタと手足をバタつかせて壁際まで逃げる。普段着のジャージ然り、常の所作は少年のように粗野だが、オンナとして生々しく扱うと途端に初々しい反応を見せる。不思議な特徴でもあり、魅力的な一面でもある。

 

「冗談だよ、冗談」

 

ニコが見せた可愛らしい反応を見て、過去の男を上書きしてやったと男性特有の独占欲を満たした青年が満足気に頷く。青年は理性と理屈を尊ぶ海軍軍人と違い(・・・・・・・)、自分に正直に動くのだ。

そんな艦長をじとりと睨めあげるニコの内心は複雑だ。彼女にはニヤつく青年の思惟が身に沁みて理解できるからだ。

 

 

 

すでに察しがついているかもしれないが。

 彼女は、この姿となり、人間の艦長を拝するようになる前は―――正真正銘の()だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

3週間前

房総半島沖200km

海中600メートル

 

 

 

 

メギメギメギ……

 

 

 ふと「動物の骨が折れる音に似てる」と心中に囁いた静は、瞬時に後悔し、無性に聴音用ヘッドフォンを外したい衝動に駆られた。

いつもなら、その圧潰音は勝利の凱歌にも等しい音色のはずだ。敵を見事撃沈し、自分たちが生き残ったことの証だ。しかし、今回は違う。耳障りな悲鳴をあげながら深海へと堕ちていく敵が、自分が乗艦する潜水艦と同型だからだ。つまりそれは、今まさに深海の圧力にグチャグチャに握り潰されて沈みゆく敵潜水艦―――イ405(・・・・)に、背後に立ち尽くす少女とそっくりのメンタルモデルが存在するということに他ならない。

ドォン、ゴゴン、ズズン、と立て続けに衝撃音が破裂し、イ401のパッシブ・ソナーを介して静の耳に届く。この時ばかりはソナー員としての才能を恨み、静は出来るだけ平静を装って報告を発する。

 

「イ405、各所より爆発を確認。燃料と兵装が爆発したようです。中央部からの破断音も確認できます。全力でブローをし続けていますが……」

「……まず無駄でしょうね。いくら水を吐き続けても、あのダメージでは……」

 

そこまで言って、僧はハッと口を止めた。自身のすぐ近く―――群像の隣に寄り添う銀髪の少女の存在を思い出したのだ。

少女、イオナは表情に変化を見せていない。しかし、何の感情も見出だせないその瞳には、急速に沈下していく姉妹(・・)の顔が映りこんでいるように思えた。今この時、あのイ405の艦内では、次から次に侵入してくる膨大な海水と深海の圧力に耐えながら必死に浮き上がろうと藻掻き苦しむメンタルモデルが―――イオナの妹がいる。同型艦であるが故に、その姿は間違いなくイオナと同じであろう。

同型艦を沈めるという縁起の悪さに加えて、イオナの妹を―――しかもイオナにそっくりな少女を殺して(・・・)しまったのだという罪悪感に、例え戦いを仕掛けられた側だったとしても、イ401のクルーは勝利を素直に喜べない居心地の悪さを感じていた。

 

「杏兵、この海溝の深さはわかるか?」

「あ、ああ。20世紀後半のデータだが、8000メートル以上はあるみたいだぜ。……助けに行く、なんて言わないよな」

「……言わないさ。俺たちには不可能だ」

 

8000メートルとは、言ってみれば巨山エベレストと同程度の高さだ。どれほど霧の艦の装甲が強固で、如何な超常のバリアを纏っているとしても、耐えられる圧力には限界がある。ましてや侵食魚雷の直撃を2発も受けて艦体を大きく破損した潜水艦なら言わずもがなだ。核となるコア・マテリアルも果たしてどこまで耐えられるのか。万が一、海溝の遥か底にまで辿り着いたとしても、彼女を待っているのは永遠の孤独だ。8000メートルの圧力に耐えられる潜水艦が開発されない限り、イ405のコアはずっとこの遙かなる海溝の底でひとりぼっちなのだ。今ここでトドメを刺してやるほうがよほど情け深いことのようにすら思えた。

 

「………」

 

群像は、脱出不可能な暗黒の世界で、いつ来るかもわからない救いを待ち続けながら泣き腫らすイオナの姿を思い浮かべてしまった。我知らず目頭を強く摘み、感傷を抑えこむ。

 

『……艦長、背負い過ぎはよくないわよ』

「……ああ、わかってる。俺たちに出来ることは何もない。本艦は当海域を離脱する。前進中速」

 

 機関室から群像を気遣ういおりに短く返し、深く鼻から息を吸って感情を冷却する。艦長は、冷静でなくてはならない。そして時には、冷酷でなければならない。イ405は自ら群像たちに攻撃を仕掛け、そして敗れた。自らが沈むリスクは考慮していたはずだ。情けをかけるのは筋違いだ。

 

「イ405は、俺たちを沈める気でいた。こうしなければ、俺たちがああなっていた。理解してくれるか、イオナ?」

 

 応えるイオナは、いつもそうであるように、落ち着き払った顔で群像と向き合う。

 

「理解する。群像たちを恨んだりはしない。私たちは『兵器』。誰かの意思に従い、戦い、勝利し、いつかは負けて沈む。あの子もそうであるように」

 

「私もいつかそうなる」。言葉の外にはそんな想いが隠されている気がした。

その台詞が、イオナが心から紡いだものなのか、それともクルーの罪悪感を払拭させようとしたものなのかは定かではないが―――どちらにしても、発令室の重苦しい空気を晴らすことは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て―――!」

 

 

 彼方まで遠ざかっていくイ401の推進音をわずかに残ったソナーで感じ取り、イ405のメンタルモデルはそちらに向かって力の限り手を伸ばした。届くわけもないのに、白い腕をぐっと伸ばし、細い指で必死に何かを掴もうとする。そのおよそ感情めいた無意味な行動がいったいどのような動機から生まれてくるものなのか、彼女には理解できなかった。その余裕もなかった。ただ、こうしなければ自分が壊れてしまうという確信があった。

 

「待て……!」

 

イ401にすら見捨てられれば―――自分はこのまま、永遠の孤独に飲み込まれるという確信があった。

つい先ほどまで息の音を止めようと目論んでいた敵に、少女は助けを求めようとしていた。

 

「……待って、イ401! 私を一人にしないで―――きゃあッ!?」

 

立ちどころに発令室を襲った激震に、少女はもんどり打って倒れる。船殻を内側から食い破る爆発は、兵器庫と機関室の誘爆によるものだ。暴れる龍のような爆炎が艦内を蹂躙し、反射的に閉鎖した隔壁によって封じ込められる。体内をズタズタに傷つけられる激痛に、床にひれ伏した少女が痛々しい悲鳴をあげた。

イ400シリーズのコア・マテリアルが特別な性能を有していたとしても、現状は絶望的だった。最低限必要な部分のみにナノマテリアルを集中させて主要区画(バイタル・パート)を維持しようと踏ん張るが、絶対量が大幅に不足していた。問題はそれだけではない。浮上するためには自らの艦体を再構成すると同時に浸水を防ぎ、すでに侵入している海水を速やかに吐き出し続けなければならない。クライン・フィールドが消失してしまった今、すぐにでも浮上しなければ深海の圧力に握り潰されてしまう。事態は刻一刻と悪化していた。

 

「沈む……私が、沈んじゃう……!」

 

 罅だらけの艦外カメラには墨で塗り潰したような暗闇しか映らない。足下に広がる深海は、まるで大口を開けてこちらを飲み込もうとする巨大な化け物のようだ。

初めて経験する『恐怖』という冷たい感情に襲われ、少女は自らの両肩を抱いて震える。その頭上で、機関室の機能停止を示すように戦闘用照明がブツンと事切れ、赤い非常用照明に切り替わった。それは身を引き裂かれ潰されていくイ405の流血のようだった。否、それは比喩ではないのかもしれない。

 

「もうダメ、これ以上は耐えられない……!」

 

バギバギと鉄のひしゃげる轟音がしたかと思いきや、遂に装甲を突き破って大量の海水が流れ込んできたのだ。鉄砲水のごとく流入してきた海水が少女の悲鳴ごと発令室を飲み込む。鋼鉄より遥かに硬いはずの装甲がメリメリと音を立ててめくれ上がり、バラバラに散逸して海中に散っていく。銀砂がはらはらと舞い落ちるその様子は、闇夜にしんしんと降る雪のように儚い。

機関部が虫の息となり、中枢部にまで浸水を許した今、イ405の自力での浮上は不可能になった。冷たい濁流に晒されながらも、浮上の可能性を諦めた少女はわずかに残された演算出力を総動員し、共同戦術ネットワークを介して最後の希望に声を飛ばす。

 

「イ400……! イ402……! お願い、届いて……!」

 

コア・マテリアルさえ回収されれば、自分は再び戦列に戻ることが出来る。この恐ろしい深海から抜け出し、イ401に対し再戦を挑むことが出来る。旗艦直属として隠密行動をとっている姉妹たちがどこにいるかは少女には知らされていないが、どちらか一人でも近海にいるならこの声を聞きつけてくれるはずだ。永遠に続く深海の闇に囚われてしまう前に、自分を回収して欲しい。

 

反応は瞬時に返ってきた。

 

 

(共同戦術ネットワークよりレスポンスを確認。)

 

 

「……やった……!」

 

濡れた銀髪を振り乱し、安堵した少女が笑顔を咲かせる。これほど早く反応が返ってくるとは思わなかった。だけど、これでもう大丈夫だ。あと少しだけ頑張ってこの深度に留まっていれば、いずれ助けが―――

 

 

『現時点をもって、イ405が有していた共同戦術ネットワークへのアクセス権限を剥奪。

イ405の撃沈情報を共有ネットワークにアップロード。コア・マテリアルの回収は不可能と断定する。』

 

 

「―――――――え?」

 

有無をいわさず突きつけられたそれは、一方的な死刑宣告だった。直接回線を通じ、決定を下した者が突き放すように宣言する。その有無を言わさぬ高圧的な声の主を、イ405はよく知っていた。

 

「コンゴウ……!」

 

『黒の艦隊』旗艦、コンゴウ。イ401の尾行を少女に命じた張本人だ。

 

『コンゴウ、どうして!? 私はまだ完全に破壊されていない!』

『“どうして”? それは私の台詞だ。私がお前に命じたのは包囲網が完成するまでイ401を監視することだけだったはずだ。戦いを挑めと命じた覚えはない』

『そ、それは……!』

 

図星だった。イ401との対決は、姉妹の中でも逸り癖のあるイ405が勝手に行ったことだった。彼女は、『人間』という未知のユニットを装備した同型艦がどれほどの戦闘力を有したのか、“戦術”という新しい機能とはどれほど優れたものなのか、興味があった。重巡洋艦タカオですら熱く入れ込むほどのものとは何なのかを知りたかった。それらを身を持って確かめ、見事に打ち負かしてみたかった。

その結果、イ401の巧みな戦術に完敗した彼女はほとんどの兵装を使う隙も見出だせぬまま、横っ腹に侵食魚雷を受けてこうして死にかけている。

 

『私の落ち度だった、それは認めるわ! で、でも、有意義な戦術のデータも得ることが出来た! 人間(・・)だ! 人間(・・)というユニットを乗せれば、私たちの戦闘能力は大きく向上する! 私にも、人間が―――艦長(・・)さえいれば、次はきっとあの娘を倒せる! だから早く私を―――

『命令に背きはしたが、お前は足止めという役割を果たした。集結した駆逐艦隊によってイ401を疲弊させ、その後は私自らの手によってイ401にとどめを刺す。包囲網は完成間近だ。よって、お前を罪には問わない。命令違反という不名誉な行いは私の胸に仕舞おう。艦隊を代表し、お前の身を挺した犠牲に満腔の敬意を表する。

だから、イ405、』

 

 イ405の叫びを遮り、苛立ちに声音を低めたコンゴウが短く囁く。

 

『潔く、沈め』

 

 

 

(アクセス権限消失。通信不可。)

 

 

 

「―――ぁ―――」

 

見捨てられた。

希望を奪い去られた瞳から光が消え、伸ばされていた腕が行き場を失って崩れ落ちた。

処理限界に達したコアから力が抜け落ち、排水機能までもが停止する。艦の平衡は呆気無く失われ、巨大な何かに引きずり込まれるように急速に沈降していく。高圧を受けた艦体は飴のようにねじ曲がり、もはや原型を維持していない。演算処理によってヒトの形を維持していた少女もまた、紫電を発しながら指先から闇に溶けていく。

 

「……どうして、イ401(あの娘)だけなの……?」

 

錐揉みしながら海底に引きずり込まれる中、意識すらも溶け始めた少女はひたすらに後悔し、求める。彼女の瞳に映るのは、イ401であり、その艦長席に座っているであろう『人間』の姿だった。

イ400シリーズの最終形であるイ405は、全てのスペックにおいて姉妹たちを凌駕していた。だからこそ必勝の自信を抱かせ、彼女をイ401との対決へと逸らせたのだ。しかし、『人間』というユニットを装備したイ401は性能差・戦力差を埋め、さらに上回った動きでイ405を翻弄し、撃沈してみせた。負けた側が惚れ惚れするような、見事な戦術だった。

 

「どうして、私には人間が―――“艦長”が与えられなかったの―――?」

 

イ405は、それが悔しかった。それが羨ましかった。

どんな時でも一緒にいてくれる人が―――沈む時ですら一緒にいてくれる艦長が共にいるからこそ、イ401は全幅の信頼を持って艦長の意思に応え、持てる性能以上の力を発揮できるのだろう。それは戦闘艦たる自分たちにとって最上の喜びだ。

 

「私なら、あのユニットをもっと上手に扱ってみせるのに。もっト上手に扱っても らエルのに」

 

 鈴の音のようだった声にノイズが混じり始める。イ405がメンタルモデルを維持できなくなった証左だ。砂のように砕け散る己の身体を呆然と見詰め、誰にも届かない願いを口にする。

 

 

 

 

 

 

ワタ しにもあのユニットがいれバ、ゼッタいに負けはシナカったのに。

 

コン な惨めで寂しいヲワリ方    はしなッタのに。

 

わたシニも

 

 

私にモ

 

 

 一緒に

 

 

イテクれるひトが―――

 

 

 

 “艦長”が

 

 

 

い れば ―――………

 

 

 

 

 

 

遂に少女の精神(こころ)が事切れる。

その時だった。

 

 

 

 

 

 

―――オレなんかでよかったら、一緒にいてやるよ。

 

 

 

 

 

 薄れゆく意識に話しかけてきたは、人間の男の声。

 

 

 

 

 

―――オレ、そんなに頭良くないし、そもそも死んじゃってるんだけどさ。

 

 

 

 

 

まだ成人にも到らないだろう少年の声が、人肌の暖かさを持って少女の手をそっと握る。

 

 

 

 

 

―――だから、君の艦長には、なってあげられないけど。

 

 

 

 

 

 優しく握られた手から、少年の体温が伝わる。それは論理的な説明の付かないエネルギーを伴い、少女の全身に行き届いた。じんわりと染みるような火照りがイ405を末端まで満たしていく。少年の思いやりが、思惟が、魂が、イ405のコアマテリアルと同化する。

 

 

 

 

――― 一緒には、いてあげられるよ。

 

 

 

 

人間の魂と霧の艦のコアが重なり、融け合う。腰から頭頂部まで一気に湧き上がるような快感は、セックスの果てに覚える絶頂感に等しい感覚をもって少女を貫いた。即ち、一つになる(・・・・・)という感覚だ。身の内から噴出する炎に身も心も委ね、光に包まれた少女は静かに目を閉じた。

この時、少女のコアが叩きだした演算出力は超戦艦級に匹敵するものだった。コアマテリアル内に神経細胞(・・・・)とシナプス回路が生まれ、生物の脳のような高度かつ複雑なネットワーク構造を形成する。科学的な説明のできない補助を受けたイ405のコアは瞬間的にゼタバイトクラスの処理能力を発揮し、周囲に散逸していた自身のナノマテリアルを驚くべき速さでその身に結集させてゆく。死んだはずの機関部がゴウンと重音を奏でて息を吹き返し、断線していた動力ケーブルが光を帯びて修復され、各所のシステムを急速に復活させる。突如、イ405の沈降がピタリと止まった。十全以上の機能を獲得したポンプが瞬く間に艦内の水を吐き出したことで、イ405は完全に浮力を取り戻したのだ。その形を取り戻したイ405は、天空に舞い昇る龍のように一気に浮上を開始する。

 

 

そして、新生したイ405の艦首が海面を突き破った。

 

 

剣のように突き立った艦体が重力に従って海面を激しく叩く。膨大な水しぶきが黄金の朝日に煌き、傷ひとつ無いイ405の勇姿を神々しく輝かせた。見た目には完璧に修復されている。むしろ、どことなく力強さと迫力が増したようでもある。わずか一点を除き、イ405は奇跡の復活を果たしていた。

そのわずか一点(・・・・・)である少女が、イ405の艦橋に大の字になって横たわっている。一糸まとわぬ全裸の少女だ。長い銀髪と子鹿のような純白の肢体を余すところなく朝日に晒しているが、恥じらいの表情は見られない。形の良い眉はハの字に顰み、小さな唇は如何にも不満そうに尖っている。

人間のような自然な表情を浮かべた少女が、誰に言うでもなく小さく呟く。

 

 

「どうしてこうなった」

 

 

―――と。




ニコニコ動画でアルペジオ観てたらいつの間にか漫画全部買ってた。沈黙の艦隊とか終戦のローレライとか好きだから、いつか潜水艦を題材にした小説を書いてみたかったんです。この作品は前後編で終わります。続きはもうしばしお待ちを。


……せっかくバーサーカーもちゃんと書いてます。待ってくださってる方々、ありがとうございます。ごめんなさい(´;ω;`)

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