榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第145話から第147話

第145話

 

 風巻分家を後にして、テクテクと国道を歩く。日差しが暖かく、昼寝には最高の季節だ。

 週末からゴールデンウィークに突入するが、今回の調査の仕事も有るし二日位しか休めないかな?

 結衣ちゃんの為にも、近場でも何処かに連れて行かないとね。

 家族(嫁予定)サービスは必要だし、結衣ちゃんも友達との会話でゴールデンウィークに何処にも出掛けなかったは駄目だろ?

 ここは男として、また世帯主として毅然とした態度で旅行計画を出来れば泊まりで……淡い予定を考えながら歩いて気分を紛らわしても小腹が空いた。

 お昼は食べたが、松花堂弁当だけでは足りない。だが食事を出して貰って、近所で又食べたら失礼だろう。

 そう思い横須賀中央駅で降りて食べる事にする。来た道をそのまま戻りながら、金沢八景駅へ。

 相変わらず駅改札周辺には大学生らしき若者が溢れている。

 

「学生の街って訳じゃないよな?でも比率は若者が高い」

 

 今時の若者と言うと、僕がオッサンだと自覚してしまう……いやマダマダ若い、僕は若いんだ!

 PASMOで改札を潜り抜けてホームへ。丁度来た各駅停車の普通電車に乗り込む。座席に座り先程迄の事を振り返る。

 亀宮さんとは大分打ち解けたと思う。あと亀ちゃんも威嚇される事が無くなった。

 それどころか偶に半透明の状態で現れ、見つめ合ってから目を逸らされて溜め息をつかれた事も有る。

 最近は具現化も少ないし、何気に亀宮さんが触ってきても平気だ。認められたか呆れられたかだな、うん。

 

 ご隠居の婆さん&風巻のオバサンは……

 

 信頼は出来ないが、信用を得ようと良い条件を提示してくれる。娘達については、若干だが嫌われ気味に感じる。

 一族の結束が強い連中だから、身内に害をなした僕は嫌いなんだろう。

 そんな彼女達が僕を手伝ってくれるそうだが、余り期待は出来ない。

 容姿は好みから大きく外れるが、年頃の女性から敵意剥き出しは嫌だな……ある程度の歩み寄りは必要だが、コイツ私に気が有るんじゃない?

 とか勘違いさせない為には注意しなきゃ駄目だ。ぼんやりと考えながら、車窓を眺める。

 丁度電車がトンネルを抜けて、自然光が電車内に差し込む。見える景色は、緑溢れる山々の間に連なる民家。

 

 京急電鉄はトンネルが多い事で有名だ。

 

 全線のトンネルの半数以上は横浜駅から三崎口駅の間に有る。トンネルとトンネルの間の景色も緑が多い。

 要は山の中ばっかりで、県道の両側に民家が連なる自然豊かな街並みなんだ。

 途中の逸見駅で快速特急の通過を待ったが、20分位で横須賀中央駅に到着した。

 

 電車を降りてホームを見渡すと、横須賀中央駅は外人が多い。米軍基地が有りドブ板商店街も有るからか?

 ムキムキの男性外人が殆どだが……外人を見て何となくハンバーガーが食べたくなったので、商店街のバーガーキングに向かう。

 結構前に出来たのだが、入るのは今回が初めてだ。だが噂では、兎に角デカい・マズいと評価が極端なんだよな。

 

 ボリューム重視なら良いが、味は日本人向けで無いのか?店内に入ると一階は注文カウンターだけで、客席は二階らしい。

 

「「「いらっしゃいませー」」」

 

 元気良く挨拶をしてくれる。数人の外人が屯(たむろ)しているが、注文待ちか?

 空いているカウンターの前に立つと、若い女性店員が対応してくれた。

 

「いらっしゃいませ、ようこそバーガーキングへ。此方でお召し上がりですか?」

 

 世界中でも上位だろう、店員さんの親切な対応を受ける。

 

「えーと、持ち帰りで。BKダブルベーコンチーズを三つとオニオンリング、それにスナックサラダを下さい」

 

 バーガーキングは、ハンバーガーの中でビッグサイズをワッパーって呼ぶ。直径で13センチ重さは4.4onzも有り、普通サイズの二倍の重量だ!

 今回頼んだのも、ビッグサイズのワッパーだ。

 

「はい、BKダブルベーコンチーズを三つにオニオンリング、それにスナックサラダですね?お飲み物は如何致しますか?」

 

「飲み物は良いです」

 

「はい、有難う御座います。右側に寄ってお待ち下さい」

 

 若い女の子に、こんなに丁寧な対応をされると、外人さんは勘違いしないかな?しかも制服姿は魅力が当社比200%増しだ、増量中なのだ!

 実際ナンパも多いらしい。イメージだとイタリアだが、実はインドネシア・ブラジル・フィリピンがダントツだ。

 イタリア人はシングルの人しか声を掛けないらしく、パートナーが居る場合は大人しい。

 但し殆どの男性が、所謂「目で舐める様に」女性を見る。

 そして今のパートナーよりも好ましい・別れても良いと思うと、猛然とアタックするそうだ。

 結局は女好きな民族なのだろう……まぁ直接聞いた訳じゃなくて、本で読んだ知識なんだけどさ。

 

「お待たせ致しました。BKダブルベーコンチーズを三つとオニオンリング、それにスナックサラダでお待ちのお客様」

 

「はい、どうも有難う」

 

 最後まで丁寧な対応で品物を渡された。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 結局事務所に戻れたのは、2時半を回っていた。デスクにハンバーガーを置いて、冷蔵庫からコーラを取り出す。

 500mlのペットボトルだ。因みに、このコーラは特保認定でダイエット効果が有るらしい。

 食事の時に一緒に飲むと、食べ物からの栄養摂取を抑えるのかな?

 片手でモグモグとBKダブルベーコンチーズを食べながら、携帯電話を操作し桜岡さんへのメールを打つ。

 

 

「お久し振りです。修行の方は進んでますか?実は少し話したい事が有ってメールしました。

時間が出来たら携帯か事務所の方に電話して下さい。お願いします」

 

 流石にメールで、僕達は付き合ってると嘘を付いたとは書けない。ちゃんと説明しなければ駄目だろ?

 メールを送信し両手が使える様になってから、スナックサラダを開ける。気休めだが、野菜は食べないとね。

 スナックサラダと言っても、味はシーザーサラダだ。スナックサラダを完食し、オニオンリングを摘む。

 流石にハンバーガー三個はキツい。味は大味で日本人には合わないかも知れないな……

 僕でも三個目で飽き飽きした味だが、満腹感は半端無い。最後の一口をコーラで流し込み、お手拭きで手に着いた油を拭き取っていると電話が鳴った。

 事務所の電話の方だった。

 

「はい、榎本心霊調査事務所です」

 

「霞です、ご無沙汰していますわ」

 

 久し振りに聞く、桜岡さんのお嬢様言葉だ。亀宮さんもお嬢様だが、話し方は普通だ。

 まぁ後天的に亀ちゃんに憑かれて一族の代表になったのだから、生粋のお嬢様の桜岡さんとは違うか……

 

「そうですね、一月振り位ですかね?実は最近なんですが……派閥への勧誘が五月蝿くなって、仕方無く知り合った亀宮さんを頼ったんですよ。

元々、当世最強の彼女が僕の事を誤解とは言え絶賛してしまい……彼女の対立勢力から、しつこい勧誘が有りまして」

 

 本当に困りました、と愚痴を零す。困ってしまい仕方無くなんだよと、アピールする。

 

「うーん、確かに亀宮一族と対立するのは得策ではないですわね。私は梓巫女として義母様と共に、関西の梓巫女連合に所属してますよ。

フリーランスの榎本さんは、大変珍しい存在ですわ」

 

 梓巫女連合だと?そんな巫女マニアが知ったら涎を垂らす団体が実在するのか?

 僕は最近迄、同業者と極力接点を持たない様にしてたから、その辺の事情には詳しくない……派閥に入ると色々と詮索されて困るから。

 

「そうなんですよ。亀宮一族と対抗してる連中からの加入条件は、まぁまぁ良いのですが……

基本的に対抗路線だと、僕が亀宮さんとの戦いの矢面に立たされるのが問題なんです。僕には何のメリットも無い」

 

「榎本さんは争いを好みませんものね。それで、お話とは何なんでしょうか?派閥に所属した報告じゃないですよね?」

 

 そうだった、本題だ。ロリコンの僕が信念をねじ曲げて迄、嘘を付いたアレだ……

 

「その……言い難いのですが……お願いが有りまして。

亀宮さんの一族って、その……結束が強くて排他的な部分がね。

どうも、当主の亀宮さんが僕を一族に引き込むのは、むっ、婿入りみたいな勘違いをされてしまい……

もっ勿論勘違いです!僕は、そんな感情は1mmたりとも持ってません」

 

「それで?」

 

 一言で返して来たぞ!しかも声質が若干だが低くて冷たい。これは危険な兆候だ、良く分からないし理解もしたくないが危険な兆候だ……

 

「それでですね。実は亀宮さん本人は、僕と桜岡さんが付き合ってると思ってまして。

だから誤解を解く為にも、その通りだと周りの方々にも言ってしまって。ご迷惑だとは思いますが……」

 

「なんだ、そんな事ですか。構いませんよ、私は別に……対外的に言い触らして貰っても、全然構いませんわ」

 

 アレ?大して驚かないし、慌ててもいないな。んー、アレか?今は関西だし距離も有るし、人の噂もナントやらか?

 だが、一応念の為に言質を取るか……

 

「ご迷惑じゃないですか?その嘘……」

 

「大丈夫です、問題無いです、安心して下さい。私に任せて下されば平気ですわ!」

 

 言葉を被せられた……でも迷惑だけど大丈夫・私が何とかします的には、僕の事を好きなのかな?

 友人として。ならばお礼を言っておかないと駄目だ、人として友人として。

 

「有難う御座います。必ずお礼はします、絶対です!」

 

「ふふふふふ、却って大変かも知れませんよ。では、貴方(あなた)も頑張って下さいね」

 

 あなた?

 

「そっその呼び方は……って電話を切られた。

別に二人だけの時に、恋人の芝居はしなくても良いのに。でも、何か何気にヤバい様な……

ああ、結衣ちゃんが恋人なら大々的に発表してロリコン王を名乗るのに。現実は何時も非情だ……」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 思わず嬉しくて叫びそうになるのを何とか我慢した……榎本さん、やはりお相手は居ないのね。

 亀宮一族の事は、それなりに知っている。現当主に会ったのは、品川の小原邸での顔合わせが初めてだったけど……第一印象は悪かった。

 榎本さんの事をゴリラと評したのだ。違う、彼は躾の行き届いた私のクマさんなのよ!

 でも確かに、かの一族との対立の矢面に立つのは不利益でしかない。あの霊獣は強力だし、一族の連中も数が多い。

 だから、あの一族の派閥に加わるのは、榎本さんの安全を考えても賛成だ。

 

 関西梓巫女連合は、文字通り神道系の団体。仏教徒の榎本さんは所属出来ない。

 

 でも偽物でも恋人として、私にお願いをするなんて……お願いするのは、私に対して悪い感情は無い。

 恋人として振る舞って貰うのに、好み以外の人には頼まない。つまり私は、彼の女性の好みに当て嵌ってる。

 

 ドストライクなんだわ!

 

 もしかして家を出たのは早まったかしら?余計な策略など巡らせずに、素直に押した方が成功したかも……

 

「霞?誰に電話してたの?」

 

「義母様、榎本さんからです。最近どうですかって?近状報告ですわ」

 

 義母様は、お父様と策略で結ばれたって言ってますが、前回は失敗の連続。やはり他人任せでは無くて自分で行動しなくては!

 

「そうなの?随分と嬉しそうね。じゃ修行を続けるわよ」

 

「ええ、早く習得して帰らなくては駄目だわ」

 

 生霊専門の私に必要なのは、汎用性。普通の除霊も出来ないと、榎本さんと一緒には居られない。

 守られるだけでは、彼の負担でしかないのだから。でも資質の関係で、普通の除霊術を学んでも効果は薄い。

 ならば、今有る術を極めて汎用性を高めるしかないのです!

 修行は厳しいですが、ゴールデンウィークには一度里帰りをした方が良いですわね。

 定期的に会ってないと、恋人とは言えないですから……言質は取りましたから、精々言い触らしましょう!

 

 

第146話

 

 風巻分家初出勤の朝。結衣ちゃんには一連の流れを説明しておいた。

 新しい仕事を受けた事。職場が提供されて、金沢八景に通う事。

 ゴールデンウィークは三日間休むから行き先を決める事。派閥に加入や亀宮さんの事は、話していない……

 

 そこっ、ヘタレとか言うな!

 

 実際に説明しても余計な……いや、説明したら余計な心配事が増えるだけだろ?

 わざわざ波風立てる必要は無いのだよ。

 元々7時過ぎに起きて横須賀中央の事務所に出勤していたが、金沢八景に9時ならば朝のサイクルを変えなくても平気だ。

 8時に家を出て、14分の電車に乗れば間に合うのだから。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 地元駅のホームに立つ。サラリーマンが乗車位置に並んでいる。

 日本の朝の通勤風景、一部の外国では考えられない事らしい。

 マナー良く平均を好み、団体行動をソツなくこなす民族性だろうか?キチンと二列に並んだ最後尾に立ち電車を待つ。

 何時もは二駅で到着だが、今日からは六駅目だ。

 朝夕の通勤時間帯は全ての電車が停まるが、昼間の時間帯は普通電車のみ。中途半端な駅が金沢八景だ。

 まぁ二分も走れば金沢文庫駅だし、此方はターミナル駅としてソコソコの大きさと賑わいがある。

 金沢八景駅は、逗子線との分岐点としては重要だ。

 実は風巻分家は、金沢八景駅と金沢文庫駅の中間辺りに有るので、実際はどちらを利用しても良い。

 だが、わざわざ電車で通過して歩いて戻るのが嫌だから、不便でも金沢八景駅を利用してるだけだ。だって勿体無いじゃん。

 

 丁度来た電車に乗客の流れに合わせて乗り込む。ムキムキの僕はスペースを多目に取るが、特に文句は言われない。

 だが極力座らずに立って乗る事にしている。座席の幅も取る為だからだが、流石に狭いスペースに割り込む事はしない。

 オバタリアンは世界でも有数な図々しい人種らしいが、僕には真似は出来ない。運良く車両の中ほどで吊革に掴まれた。

 暫くは電車に揺られながら景色を見る。良く晴れて遠く海の向こうの千葉迄見渡せるなぁ……

 こんな天気の良い日は、ボートを借りてノンビリ釣りでもしたい。だが暫くは自由の無いサラリーマンと同じだ。

 勤務時間に拘束されるが、仕事を請けるのだから当然だ。日給計算だから、サボったら駄目だ!

 金沢八景駅に着いたので、働くサラリーマン達と共にホームに降りる。ああ、自由って素晴らしいよね?

 

 早く仕事を終わらせて自由気ままな自営業に戻りたいぜ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「お早う御座います」

 

「お早う御座います」

 

「ああ、おはよう」

 

「「おはようございます」」

 

 上から僕・亀宮さん・滝沢さん・風巻姉妹だ。門をくぐり抜けると、既に皆さん並んでいた。僕を凝視してるので、思わず聞いてしまう。

 

「もしかして、僕を待ってました?」

 

「いや、丁度亀宮様が到着したので出迎えだ。安心しろ、貴殿を待ってない」

 

「ですよねー?」

 

 バッサリ滝沢さんに切られた、滅多切りだ。並んで玄関から仕事部屋に皆さんで向かう。

 途中で今日の昼食は外食する旨を伝える。亀宮さんが居ると、毎日高級な賄(まかな)いと言うか、上品な食事が出そうだからな……

 どうやら亀宮さんは暇なら毎日来そうな勢いだが、仕事無いのか?亀宮一族暇なのか?

 隣を歩く亀宮さんに、それとなく聞いてみる。

 

「亀宮さんが来てくれて嬉しいけどさ。今は忙しくないの?他の依頼とかさ?」

 

「仕事は幾つか抱えてますが、私が出張る程では無いみたいです。大体月に一回か二回ですよ、私が除霊現場に呼ばれるのは?」

 

 下部組織の手に負えない仕事を対応するって訳か……切り札的な当主に、ホイホイ除霊はさせないよね。

 確かに真打ちは後から来た方が、有り難みが違う。

 ふむふむと納得しながら部屋に入り机に座るけど、昨夜と配置が違ってる?昨日は確か、事務机が三つだった。

 僕用と少し離れて向かい合わせに置かれた、姉妹用の事務机だけだった。

 だが今は四つの事務机が向かい合わせて二組、計四つ有ります。因みに滝沢さんは入口近くに椅子が有り、座っている。

 立ちっぱなしなんてナンセンスだし、胡座や正座と違い椅子から立ち上がり行動に移すのは楽だ。

 護衛として、無駄に疲労する必要は無い。因みに昨日選り分けた資料の有る事務机が僕のだ。

 じゃ僕の向かい側は……当然だが亀宮さん用だよな?普通に座って此方を見ているし、やり辛い……

 

「じゃ、早速仕事を始めますか。先ずは一通り資料を読ませて下さいね」

 

 取り敢えず椅子に座り、選り分けた資料に目を通す。勿論、老眼じゃない眼鏡を装着して知的レベルを上げるのは忘れない。

 本来の僕の除霊スタイルは事前調査に力を入れる。まさに頭脳派霊能力者が僕の本来の姿なのだ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 岩泉前五郎(いわいずみぜんごろう)

 

 1920年大正9年、愛知県生まれ。

 

 1945年昭和20年、終戦25歳。

 

 1947年昭和21年4月、第1回参議院議員通常選挙に無所属で当選。

 

 1950年昭和25年、結婚し同年第一子誕生。

 

 長男の岩泉廉太郎(いわいずみれんたろう)だ。

 

 1986年昭和61年、息子の廉太郎が政局入り。

 

 1993年平成5年、第40回総選挙で落選。

 

 自民過半数割れ、社会党惨敗の年だ。

 

 これを機に政治家活動を終える、73歳。

 

 そして2012年平成24年1月に亡くなり、今回の事件を引き起こす。

 

 うーむ、薄い、内容が薄過ぎる……政治家だから自身のホームページの経歴欄を確認すれば分かる程度の内容だな。

 念の為、早速用意して貰ったパソコンを起動。Google検索で、「岩泉前五郎 経歴」を入れて検索開始。

 

 hit数665件か、そこそこ有るな……一番上をクリックして、表示された内容と比較してみるが、殆ど同じだ。

 

「ねぇ?この先々代の経歴を詳しく調べてくれって頼んだけどさ。詳細ってコレだけ?」

 

 A4用紙をペラペラと振って聞くが、黙って頷かれた。亀宮一族の諜報担当なんだろ、大丈夫か?

 町場の興信所の方が断然マシだぞ。それに自分が公表する内容なんて、正しいのかなんて分からないだろうに。

 経歴詐称なんて当たり前だぞ。ペラペラな経歴書の用紙に、追加調査事項を書き込んで行く。

 

 先ずは……

 

 ①生まれた場所を詳しく。それと終戦迄に何をしていたか?学生時代から成人し、終戦に至る迄の行動の詳細。

 あの時代に五体満足なら必ず軍に所属してた筈だ。軍隊時代の事も詳しく。

 

 ②政治家になってからの詳しい経歴・実績だ。どの分野で権力を発動出来たかで動きが分かる。

 

 ③政治家を引退し亡くなる迄の約20年間に、何をしていたか?ここが一番怪しいと個人的には思う。何故、家族にも秘密を持ったのか?

 

 その秘密が今回の元凶だ。人の線、岩泉前五郎から追えるのは、先ずはコレ位かな?

 後は補足で亡くなった測量会社の連中だが、これは背景にヤクザや変な団体が絡んでないかの確認で良いだろう。

 被害者が彼等だけなら徹底的に調べるが、後続も被害に有ってるからな。彼等自体が原因とは考え辛い。

 

 次は土地から追う場合だが……

 

 Google earthを起動し、住所を入力する。「愛知県新庄市」うーん、山林と言った意味が分かる。

 山ばっかしだ……問題の場所の地図が確か、この辺に有ったな。

 

 机の上のファイルを漁る……

 

 コレだ、最初の被害者の発見された場所の拡大地図。地名は、谷川か。Google earthを操作し、地図を移動し地名を探す。

 

 有った、谷川!

 

 周辺も殆どが山で、地図上は稜線しか表記が無い。道の表記が無いが、当然国道や県道は無いのは分かる。

 だが私道位は無いと移動出来ないだろ?地図の縮尺を下げていく。

 詳細表示にすると、漸く道らしい二本線が……これが山道なんだろうが、車が通れるか徒歩専用かが分からない。

 最悪は登山道と考えて、現地までの移動は全て徒歩だな。

 

 逃走手段が限定されるのは、厄介だ……しかし周囲との境界が曖昧だな。

 

 何処から何処までが、岩泉氏の所有地なのか?何処までがセーフティーゾーンで、何処を越えれば襲われるのか?全く分からない。

 因みに周りの地名は、宮ノ前・宮の入・雨吹・海老……近くに釣月禅寺が有るな。

 その他で地図から読み取れる集落・神社仏閣・史蹟・名勝等々は無い。

 本当に山の中で有り、こんな所が開発されるのかと疑ってしまう場所だ……アレ?変に真四角と言うか、綺麗な長方形が四つ並んでるな。

 何だろう、拡大しても地名・名称表記は出ない。プールな訳が無いし、まさか建物?

 

 次は画面を写真に切り替えて確認するが……

 

「榎本さんって眼鏡を掛けると知的ですね。筋肉ムキムキなのに眼鏡が似合うって不思議……」

 

 思わず調べていたパソコン画面から視線を亀宮さんに移す。チラリと時計を見れば、30分以上放置プレイだ。

 流石に放ったらかしは不味かったかな?

 

「うん?老眼じゃないですよ。近眼なんです」

 

 クイッとフレームを人差し指で押し上げる。知的な仕草だろ?

 

「「似合わなーい」」

 

 即答かよ?一部分の女性陣には、お気に召さなかったみたいだ。今まで無言だった姉妹からの胸を抉る言葉。

 しかも事務机に顎を乗せているリラックス振り。朝から私はやる気は有りませんな状態だ……それと比較してクスクス笑う亀宮さんと滝沢さん。

 此方は好意的な感じもする笑い方だけどね。アウェーだ、この場所は僕にとってアウェーだ。

 

「亀宮さん、実は暇してます?」

 

 風巻姉妹は無視して、その雇い主に話を振る。

 

「えっと、ええまぁ……その無言で資料を調べる榎本さんを見てるのは楽しいのですが、私も何かお手伝いしたいなーって」

 

 お手伝い、善意なんだろうな。だが諜報部隊所属の姉妹がプラプラしてて、その組織のトップに手伝わせて良いのか?

 風巻姉妹に視線を送るが、合わせる前に逸らされた。

 

 うん、もう帰れ!

 

 亀宮さんの方に視線を送る。彼女の机にも、ちゃんとノートパソコンが有るな。

 

 ならば……

 

「亀宮さん、愛知県に伝わる伝説を調べてくれるかな?伝説とは、龍神伝説とか色々あるよね。

場所・年代・内容を纏めてくれれば良いよ。力有る存在を調べるのに、伝説って割とヒントになるんだ。

因みに今回の山林周辺は、愛知県新庄市。周辺の地名は、谷川・宮ノ前・宮の入・雨吹・海老だよ」

 

 メモ紙に地名を書き込み、亀宮さんに渡す。メモ紙を受け取り、マジマジと見る彼女。

 

「榎本さんは、今回の相手は伝説級のモノだと思うんですか?」

 

 それを調べる為の諜報部隊で有り、僕等の仕事なんだけどね。前回の丹波の尾黒狐クラスが原因なら、十分に胡蝶で対応出来る。

 彼女が美味しく頂いてしまうだろう。だが今回は、絞り込みすら未だの状態だ。

 

「いや、全然。可能性の一つだよ。

どちらにしても怨霊・悪霊・妖怪・まさかの荒神とか、絞り込む為の調査を今日から始めてるの!」

 

 これから調べるんです、特定するんです!

 

「「なら私達に指示は無いの?」」

 

 だらけていた姉妹だが、流石に仕える組織のトップが手伝うのだ。マズいと思ったのかな?

 元々やって貰うつもりで書いていた経歴書を渡す。

 

「これに書いた通りの事を調べてくれる」

 

 黙って受け取り但し書きを読む……そして姉妹で耳打ちしたり、此方をチラ見してクスクス笑っている。

 

 嫌な感じだなぁ……

 

 そして徐(おもむろ)に自分の事務机の引出からファイルを取り出した。

 

「はい、調べておいた」

 

 受け取って中身をパラパラと見る。確かに僕のオーダーした内容が、事細かく掛かれている。手書きの綺麗な文字だ……

 

「「昨日言われたから調べておいた」」

 

 前言撤回、亀宮一族諜報部隊大丈夫かと思ったが、どうやら中々の能力だ!

 

 

第147話

 

 風巻分家で調査初日から、風巻姉妹に弄られていると言うか……彼女達は完全に僕が嫌いらしい。

 言われた事はする。が、言われないとしない。

 うーん、だが渡されたファイルには、丁寧に手書きで詳細な報告が書かれている。このアンバランスは何だ?

 しかも内容は分かり易く、流石は諜報部隊の一員と感心させられた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「うん、良く纏まってるね。分かり易いよ……」

 

 頼んだ仕事に対して予想以上の結果が来た。ちゃんと誉めると言うか、評価しなきゃ駄目だ。

 

「「別に仕事だから、大した事は無い」」

 

 ツンデレ来ました、乙!まぁデレには発展しないから、ツンデレじゃないな。だが、一日で纏めた物ならば大した物だ。

 

 

 問題の岩泉前五郎(いわいずみぜんごろう)。

 

 1920年大正9年、愛知県志茂郡・字長岡の中里村の生まれ。岩泉溜吉(いわいずみためきち)の三男に生まれる。

 長男は既に流行病で亡くなっている。次男の欣治(きんじ)は5歳年上だ。

 次男も前五郎が12歳の時に、事故で亡くなっている。水死であり、台風の時に何故か氾濫中の川を見に行き流された。

 一緒に見に行った友人達の証言も有り、事故として処理された。

 子供時代は特段優れた物も無く、体格も運動能力も学力も普通か……

 

 「戦前の話だけど、どうやって調べたの?」

 

 100年近く前の話だし、彼等の親族に聞ける内容じゃない。そもそも目立つ事をしてないのに、記録が有るかどうか……

 

「岩泉前五郎氏については、前々から調べていたよ」

 

「中里村自体も既に統廃合を繰り返して、町名しか残って無かったわ。戦争中の空襲で住民はパラパラ。

だから周辺の町の古老を片っ端から当たったの。偶々、当時を知る人に会えて話を聞けたけど……

特に前五郎氏に対して記憶に残る出来事は無いそうよ。良くも悪くもね」

 

 なる程な……僕に渡された資料は抜粋か。実はもっと膨大な調査報告が有るのだろう。

 淀みなく答える彼女達の評価を一段上げる。しかし過去を知る連中が少ないと調べ様が無いな。

 まだ有名にならない子供時代の事なんて、親類縁者しか知らないだろう。そして僕等は聞ける立場に無い。

 中里村自体も既に無いとなると、幼年期の事を調べるのは絶望的。だが、流石に少年時代では事件にも関係無さそうだ。

 

 問題は無いかな?

 

「良く調べてるね。もしかして、亀宮さんに頼んだ伝説系の事も調べて有るの?」

 

 もし調べて有るなら、亀宮さんには悪い事をした。二度手間だし、あくまでもインターネットでの調査だ。

 彼女達が調べてるなら精度が違うだろう。亀宮さんの立場が無い。チラリと彼女を見ながら聞いて見る。

 亀宮さんが特に気を悪くした様子は無いのが救いだ。

 

「ううん、調べて無いよ」

 

「正確に言えば、山林その物自体は調べました。伝説・言い伝えの類ですけどね。

ですが何も出ませんでした……そこから調査範囲を県内全域に広める必要が有りますか?」

 

 妹は端的に、姉が詳細を報告してくれる。兎に角、亀宮さんに無駄な事をさせなくて良かった。

 

 一安心だ……

 

「でも愛知県全域って、調査範囲広くない?」

 

 風巻妹が初めて僕に話し掛けてきた、いや質問だけどさ。

 

「そうかな?これは僕の経験則だから、確証は無いけどね。でも調査範囲は出来るだけ広く、それから絞り込む物だろ?

3キロ圏内の山林周辺だけど、今は立入禁止と言うか近付けない。

だけど必ず周りに痕跡は有ると思う。アレだけの力の有る奴が、狭い場所にずっと潜んでいられると思うかい?」

 

「人を殺して運べる奴が、今まで誰にも知られずに居られるかって事?でもその場で死んで怨霊化だったら?」

 

「又はソレが憑いた物を運びこんだら?本家の壷とか、曰く付きの品物の可能性は?」

 

 体を此方に向けて長期で話す体勢になってる。この討議は長くなるのだろう……つまり納得する迄、続けるつもりかな?

 だが、風巻姉妹の質問はもっともだ。

 

「その可能性は有るね。だけど、それは岩泉前五郎を調べていけば分かるだろ?

それは土地じゃなく人の仕業だ。彼が誰かを殺したのか、何かを持ち込んだのか?

殺して捨てたら彼の周りで誰かが行方不明。物を持ち込むなら、そんなヤバい物を人知れず手に入れられる訳が無い。

必ず痕跡が有り入手ルートを調べられる。だが……僕なら自分の土地に、そんな厄介なモノを持ち込まないな」

 

 幾ら秘密にしたいとは言え、自分の土地に持ち込み家族にも怪しまれる様に立入禁止にした。

 バレたら怪しんでくれ、犯人は自分だと思われる危険を政治家が犯すか?人知れず処理する連中とだって知り合えるだろう。

 

「分かった。では、土地の調べ方だけどどうするの?愛知県全域の伝説・言い伝え・噂話を洗い出して検証するの?」

 

「でも検証と言っても、関連性が分からないよ?どうやって繋がってるのを調べるの?」

 

 確かに調べ上げた事が、本件と関連してるかなんて分からない。しかし、この討議に亀宮さんはニコニコと頬杖をしながら見てるだけだ。

 確かにゲスト扱いだから、調査方針に参加する必要はないが……何故か照れ臭い。

 

「情報を摺り合わせるしかないよね。僕は土地を調べて貰うけど、単体で特定するつもりはないよ。

岩泉前五郎氏の過去と関連性が有るかを調べるんだ。

まぁ全く関係が無くて、君達が言った無関係のモノを持ち込んだかも知れない。

でも可能性は消せる。そんな地道な作業が調査だろ?だが、諜報は一歩踏み込むよね。

僕の下では直接乗り込んで諜報活動はさせないよ。少なくとも相手を特定して対策を考える迄はね。

危険な事は出来るだけやらない。やるにしても危険度を下げないと駄目だ」

 

 諜報活動って、結構危ない事もするよね?例え非合理的な事も、やりそうな感じだ。

 だが、僕は少なくとも法に則った方法で始める。無茶をするのは必要になってからだ。

 

「うーん、見た目筋肉なのに見掛け倒し?」

 

「そんな弱気では、亀宮様を任せられませんよ」

 

 何だろう、姉妹で変な方向に向かった発言だが?だが、彼女達の表情は真剣で茶化す感じはしない。

 つまり彼女達は、僕に007みたいな活躍を希望し、亀宮さんをボンドガールみたいに扱えと?

 

「諜報部隊の風巻一族と、民間調査事務所の僕とでは、仕事に対する前提が違うのは分かるかい?」

 

「「前提?同じでしょ?」」

 

 何だろう、この反応は?やはり僕が考えている事と同じなのか?ここは、思い違いの無い様に言っておかないと駄目だな。

 

「えっと、多分お互い勘違いが有るかもだから確認するよ。僕が亀宮一族……ご隠居が経営する若宮不動産と契約した。

内容は岩泉一族の所有する山林の怪異現象の調査。民間企業が民間調査事務所に依頼したんだ。

分かるかい?

契約書の存在した仕事はね、法に則った進め方をするの!非合理な事や調査員を危険に晒す事はしない」

 

 この仕事は公にしても、建て前上は問題無い様にしなければ駄目なんだ。

 

「呆れた!そんな気持ちで仕事するの?」

 

「そんな弱腰では困ります!もっと前向きに」

 

 やはり、僕と彼女達では、気持ちにかなりの温度差が有ったな。

 僕は依頼された仕事、彼女達は一族から命令されてるし人一倍使命感が高そうだ。

 だから、僕に対して態度が悪いのか……

 

「弱腰結構!そもそも弱腰って何だ?

死ぬ確率が高い無謀な捜査とかが強気か?訳の分からない連中を相手に、碌な調査もせずに突撃しろってか?」

 

「気構えの問題です!」

 

「尚更だ!安全を無視した心構えで仕事が出来るか!」

 

「姉様、臆病者に何を言っても無駄だよ。コイツ、見掛け倒しの弱虫だよ」

 

 流石にイラッと来たので言い返そうとしたら、亀宮さんから物凄いプレッシャーが……

 恐る恐る見ると、髪の毛がフワッと怒りのオーラで盛り上がっている。しかも目がね、笑ってるし表情も穏やかなんだけど……

 何だろう、今僕は怖いと感じている。

 どんな連中にだって勝てないと分かっても、此処まで恐怖心は無かったのに……

 

「佐和、美乃。

榎本さんを愚弄する事は、私が許しません。彼は必要な時は、必要以上に勇敢なのです。

弱腰?弱虫?貴女達は敵意を露わにする我が一族に、単身で乗り込めますか?

そして打ち勝てますか?」

 

「それは……私達は武闘派じゃないから」

 

「そうです、亀宮様。榎本さんの力は認めるけど、気構えが……」

 

「お黙りなさい!

彼は私と敵対しない為だけに、此処に居てくれるのです。断る事も出来たし、私の夫として一族の頂点に君臨する事も出来るのにです。

亀ちゃんが、勝てないと降参する程の力をお持ちなのですよ。そもそも彼の仕事の進め方は、慎重・安全・確実です。

寧ろ弱腰なのは、多人数で彼に襲い掛かる我が一族の連中です。そして、それを悉く去なした榎本さんは強いのです。

忘れては駄目ですよ、私達は彼の情けで生きているのですから」

 

 何か、凄い勘違いが絶賛進行中です。亀宮さん、貴女は僕を何だと思ってますか?

 情けで生きているなんて、そんな凶悪な奴だと?ほら、二人共驚いたを通り越して真っ青だ。

 

「いや、僕はそんな事は……」

 

「それに榎本さんは、調査が終われば先陣切って突撃しますよ。八王子でも、そうでした。

入念に調査し、トドメは自らが迅速に……

そしてイレギュラーな事態も、力押しで解決出来る力が有るのです。そうですよね?」

 

 嗚呼、君は笑顔で僕を死地に追いやるんだね。純粋無垢な瞳は、薄汚れた僕には耐え難い。

 思わず脱力してうなだれてしまう……

 

「亀宮様、あの噂って本当なんですか?一族の呪術部隊が全滅し、若手武闘派で最強の野田が壊されたって……」

 

 笑顔で頷く亀宮さん。君の笑顔が憎らしく思える僕は異常か?

 

「寝るのに邪魔だからって、厳重に封印した邪悪な壷を簡単に祓ったのも?」

 

 此方も笑顔で肯定した。確かに間違っちゃないよ。

 でもさ、もう少し……こう、何ていうか……僕に優しくしても罰は当たらないよね?

 

「私は目から鱗でした。亀ちゃんと言う霊獣の加護を過信して、調査をおざなりにしていた事を。

そんな慢心した私を叱ってくれたのも、榎本さんなんです。だから、彼を馬鹿にする事は許しませんよ」

 

「ごめんなさい。私達が悪かったよ」

 

「ごめんなさい。噂が信じられずに、傲ってたみたい。それ程の力が有りながらも慎重なんですね」

 

 ほら、最悪な勘違いが進行した。この流れだと、僕は調査が終わったら……率先して怪異現象に立ち向かわないと駄目じゃん。

 分かれば良いのです、とか笑ってる亀宮さんが……いや、彼女は純粋にそう思ってるんだ。

 

「そんなに固く考えずにさ。調べるだけ調べてから、行動に移すで良いだろ?僕等には時間が有るんだ。慌てる必要は無い」

 

 このまま亀宮さんの話を否定しても、拗れるだけでメリットが何も無い。ならば、話をまとめて調査重視の方向で進めるしかあるまい。

 溜め息をつきたいのをグッと我慢する。

 

「すまない、榎本さん。事情が変わったので、悠長にしてられなくなった」

 

 僕が話を纏めようとしたら、突然風巻のオバサンが部屋に飛び込んで来た。

 

「事態が変わったとは?」

 

 嫌な雰囲気だが、話を聞かないと進まない。仕方無く、話の先を促す。

 

「それが……岩泉廉太郎氏が我らを呼び出した。他にも呼ばれた連中は居る。

どうやら我慢出来ずに、複数の霊能力者を集めたみたいだ。亀宮様と共に向かって欲しい」

 

「なっ、ナンダッテー?」

 

 また小原氏の時と同じ状況になるのか?いや、前回より全く情報が無いぞ。

 だが、先程の話の流れから、僕は亀宮さんと同行するしかない。

 

 ピンチ、大ピンチだ!

 


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