榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第122話から第124話

第122話

 

 突然、保育園の職員室に現れた厳つい筋肉。キョドる保母さん達。

 

「ほら、こっちよ。園長室に行くわよ」

 

 スッピンなスエット上下のお鶴さん、もといシスターメリッサ様。

 

「ああ、そうですね。皆さんこんにちは、お仕事中失礼します」

 

 ズンズン先を行くメリッサ様の後に付いて園長室に入る。他とは違う重厚なチーク材の扉で表面に十字架が貼り付いている。

 流石は教会と言う所かな?中は6畳程の広さの洋間になっており、手前左側が応接セット正面が園長先生のデスクだ。

 其処には品の良い初老の女性が座っていた。彼女がメリッサ様の叔母さんかな?

 修道女姿で眼鏡を掛けた……ぽっちゃりさんだ。

 

「ソファーに座ってて。叔母様、彼が話していた榎本さんよ」

 

「ええ、話は亀宮さんから聞いてますよ。八王子の件では鶴子が大変お世話になったそうで、有難う御座いました」

 

「叔母様、鶴子とは呼ばないでって言ってるでしょ!」

 

 今、サラッと色々考えさせられる情報が有ったぞ。亀宮さんから除霊の事を聞いたって言った。自分の姪っ子じゃなくて亀宮さんからと。

 あの当世最強の亀宮一族の当主と簡単に話せる立場なのか?

 一族総出でバックアップし且つ監視もしてる連中が、幾ら姪っ子と幼馴染みだからと言って気安く話させるのか?

 周りが許すとも思えない。それに彼女も業界の関係者なんだな。わざわざ僕を呼び出した真意は何だろう?

 

「いえ、お世話なんてそんな事は……今日は仕事の件で相談事だと聞きましたが?」

 

 さり気なく周りを観察する……この部屋は変だ。入った時に違和感が有ったんだ。良く見れば変な造りをしている。

 部屋が円形だし床が大理石貼りで金属の目地が走っている。

 

 まるで魔方陣の様な模様だ……しかも窓には鉄製の飾り格子が嵌め込まれている。

 

 天井だってシャンデリアが……天井の模様も魔方陣になってないか?

 

 シャンデリアを形成してる飾りにも、さり気なく十字架がぶら下がってる。分かり難いが床と天井の両方が魔法陣になっていて、装飾品の殆どが何かしらの結界用具だ。

 西洋では鉄は魔を祓うと言われている。此処って悪魔祓いに使用するか、相手を呪術的に拘束する部屋かな?

 生半可な魔なら中に入れないし、入ったら出れないぞ。

 

「榎本さん、先ずは座って下さい。色々気付かれたみたいですね。話に違わぬ有能さ。鶴子さん、お茶とお菓子を用意して下さいね。一番高級な物ですよ」

 

「叔母様!また鶴子って……全く……」

 

 ブツブツ言いながらメリッサ様が部屋から出て行った。デスクから立ち上がり、僕にソファーを勧め向かいに座る。

 この女性、嫌な感じがヒシヒシとするんだ。柔和な笑顔だし、所作にも不審な点は無い。

 年相応に衰えた体力と思うから、肉体的には僕が圧倒的に有利。でも、でも呑まれてるんだよ。

 

「大分警戒されてますね。榎本さん、色々気付かれたみたいですが心配しないで下さい。どうこうするつもりは有りませんから」

 

 にこやかな笑顔だが、目が笑ってないんだ。この老女、何を考えてるんだ?

 

「さて、僕もどうこうされるつもりも有りませんが?ご用件を伺いたいですね」

 

「鶴子がお呼びしたのは、アレの仕事が行き詰まったからよ。

普段は私に相談するのだけど、コソコソと貴方に連絡してたから紹介しろって言ったの。ほら、パソコンも用意してるわ」

 

 確かに応接セットのテーブルに不自然にノートパソコンが置いてある。しかも無線ランのが。

 無意識に左手首を触ってしまうが、特に胡蝶の反応は無い。彼女なら危害を加えられれば問答無用で乱入する筈だ。

 

「メリッサ様の叔母さんと言う事は柳さんと呼べば良いですか?」

 

 目を細めた、この切り返しは駄目だったか?

 

「ふふふ、鶴子の本名も知ってた事を考えると梢ちゃんから聞いたのかしら?あの娘が無警戒で誉める方がどんな人か見たかったけど、子供の頃の話までしてるなんてね」

 

 見極め?詮索?秘密を抱える僕には嬉しくない事だ。亀宮さんが言い回ってるとは思いたくないが、もしかして僕は詰んだ?

 

「仕事中に世間話とかは出来ませんでしたが、手紙の遣り取りをしてまして……

そこでメリッサ様との馴れ初めを知ったんですよ。亀宮さんは僕を過大評価し過ぎてますから……困ったものです」

 

 そう言えば手紙の返事出してないや。でも手紙だと一族の連中に検閲されそうだな。個人用携帯にメールした方が良いかな?

 

「鉄壁の聖女を口説き落とした男にしては控え目ね。あの一族は当主の直系子孫は居ないのが当たり前だから、相当な騒ぎよ。

過去の現当主の子供達は全て強力な術者だったそうだし。あの霊獣を抑えられるだけでも異常なの。これから大変よ貴方は」

 

 やっぱりだ!しかも悪い方向へぶっ飛んでるし。

 

「僕と亀宮さんは仕事上の付き合いが有るだけです。確かに良い娘さんですが、そう言う事は……」

 

 個人的に亀宮さんは友達付き合いなら、喜んで申し込むだろう。でもロリな僕が彼女に恋愛感情を持つ事は無い。

 子種が欲しいって言われても、亀宮さんじゃハッスルしないよ愚息は。ああ僕は最低の思考をしてたな、ごめんなさい。

 

「無駄よ。あの一族は強引だから、頑張りなさい。応援してあげるわ」

 

 どっちをだ?どっちを応援するんだよ?

 

「結構です、頑張るつもりは有りません」

 

「貴方、本当に変わり者ね。権力とお金と美女がセットなのに、頑なに断るなんて……何が不安なのかしら?」

 

「なっ……」

 

 不満じゃなくて不安って言ったぞ。彼女に不満じゃなくて、僕に不安が有ると言った。この人、何を考えている?

 何を気付いてる?ナニを知ってるんだ?

 

「禍々しい力と神々しい力が渦巻いてるわよ。貴方に憑いたモノは……なる程、亀ちゃんでも躊躇するわね。

悪魔でも上級の気配なのに貴方は平然としてる」

 

 胡蝶に気付いてるのか!

 

「それで柳さんは……」

 

「お待たせしました。お茶ですわ」

 

 鶴子さん、空気よんでよ!今一番大切な事を聞こうとしたのに……テーブルの上に珈琲と何故か山下清三郎商店のエントツケーキを並べている。

 

「榎本さん、私のお話はお終い。鶴子の相談に乗って下さいな」

 

「叔母様、榎本さんと何を話してたのかしら?」

 

 メリッサ様の問いにケーキにパクつく事でかわす柳さん。どうやらメリッサ様は知らないみたいだな。

 

「世間話だよ。それでメリッサ様の相談事って何だい?」

 

 早くこの場を立ち去った方が良いと思い、当初の相談事を聞いてみる。

 

「何か誤魔化されてるみたいな?まぁ良いわ。実は場所が問題なんですが……」

 

 彼女の相談を纏めると場所は言えないが、ある山小屋に泊まると特定な条件下で泊まった人が死ぬ。

 原因は不明だが時期を問わず餓死らしい。原因として考えられるのは、50年以上昔だが最初の遭難者が山小屋で遺体で発見された。

 彼は足を怪我しており自力下山が出来ずに、山小屋に避難し餓死した。当時の山小屋には緊急用の薪や毛布は有れども保存の難しい食料などの備蓄は無かった。

 保存しても獣が荒らして逆に良くないから。それに場所も登山から最初の避難小屋だから麓まで近いのも災いした。

 その後、何人もの登山者が不自然な餓死をするので閉鎖した。しかし何故か呼び寄せられるのか単独の登山者が必ず犠牲になる。

 過去に何回もお祓いをしたし調査で寝泊まりもしたが原因究明には至らず。因みに犠牲者は単独以外の共通点は見当たらず。

 確かに犠牲者リストは老若男女を問わず時期もマチマチだ。一見して共通点は見当たらない。

 しかも調査の時に現れないなんて用心深いな。因みに定期的に何人かのパーティーを組んで捜索に当たるらしい。

 

「厄介だね。原因究明には独りで泊まらないと駄目かもね」

 

「そうなんですよ。しかも除霊費用が安いんです。100万円ですよ。うら若き乙女を危険に晒して100万円?有り得ないですわ」

 

 メリッサ様、まさか泊まる気なのか?この手のゴーストハウスは危険だよ。しかし見取り図を見ると本当に10畳程度の小屋だ。

 間仕切壁も何も無い。トイレも無い。写真を見れば室内には薪ストーブに収納ボックスだけだ。

 収納ボックスの中にはランタンや毛布、マッチ類が入ってるんだろう。

 周辺の地図や写真を見て思うのは、尾根の下側に立っていて雨風が防げる立地なんだろう。廻りにも石垣が積んで有り強度は大した物だ。

 だが建物自体はログハウスっぽく丸太の組合せに板張りの屋根に飛散防止の石が置いてある。

 基本的に窓にはガラスがなくて木製の観音開きだ。資料には50年前から補修を繰り返して現在に至るそうだ。

 近くに新しい避難小屋が有るのに、誘導看板も無い此方に呼ばれるのか。

 

「どうですか?何か良い案は有ります?」

 

 じっと資料を見ている僕に話し掛けるメリッサ様。

 

「何故、この仕事を受けたんですか?メリッサ様は浄化系の霊能力者でしょ?この手の案件は一見小屋に潜む霊を祓えって事だけど……

しかも都会大好き文明の利器大好きなメリッサ様が山小屋なんて変だよ」

 

 グッと言葉に詰まってるけど聞いちゃ駄目だった?冷めた珈琲を飲んで喉を潤す。

 砂糖はステップタイプを一本しか入れてないから苦いな。山下清三郎商店のエントツケーキを食べる。

 コレって最近横浜ポルタに出店した老舗洋菓子屋の看板メニューだ。

 カップケーキの中をくり抜きクリームを詰めてスポンジで蓋をした、美味しいけど食べ辛いケーキだ。

 

「ちょっとお世話になった方からの紹介で断れないのよ。でも山登りをして独りで山小屋に泊まるなんて嫌!代わりに榎本さん請け負ってよ」

 

 おぃおぃ、義理で請けたんだろ?僕に押し付けて上前跳ねるのか?だけど解決は簡単だよ。原因究明さえしなきゃ。

 

「請けても良いけど簡単だよ」

 

「あら、どこが簡単なのかしら?鶴子は運動音痴だから独りで霊と対決なんて無理よ」

 

 柳さんも話に喰い付いてきたな。

 

「柳さんならどうしますか?」

 

 本家?エクソシストの意見を聞きたいな。

 

「私?私なら勿論独りで泊まるわよ。床や壁一面に魔法陣を書いて迎え撃つわ。でも鶴子には無理ね」

 

 エクソシストって運動神経が良くないと駄目なの?だが、この人は用意万端準備してから対峙する、嵌め技が得意な気がするな……

 イメージでは悪魔に取り憑かれた人を椅子に縛り付け清水や十字架で脅して、悪魔の本名を聞き出すんじゃなかったっけ?

 しかし柳さんのメリッサ様への評価って低いんだな。

 

「メリッサ様でも手配出来ますよ。何、内容は簡単だけど準備は大変かな」

 

「手配?なによ、そのニヤニヤした顔は!」

 

「ほぅ、鶴子でも簡単って手段を聞きたいわね」

 

 本当に簡単だ。霊能力者じゃなくても除霊する手段は色々有るんだよ。

 

「簡単ですよ。この山小屋は新しいのが出来てるから不要なんですよね。

周辺写真や地図を見る分には岩山の陰にひっそり建っている。ならば放火して燃やせば良いんですよ。簡単でしょ?」

 

「「はぁ?放火?」」

 

 あれ、そんなに吃驚する事かな?キリスト教って魔女狩りで火炙りとか沢山したじゃん。火炙りで悪魔を祓ったんでしょ?

 

「火はそれだけで浄化作用が有る。山小屋は木製だし廻りに飛び火する心配も無い。

完全に燃やして跡地に清めた塩を大量に撒けば完璧です。ただし手続きと言うか準備は入念にしなければ駄目ですね」

 

「そっそんな……そんな事で何とかなるの?駄目よ放火なんて!」

 

「うふふふふふ。榎本さんって本当に面白いわ。

事務能力に長けて慎重な性格って聞いてたけど、発想は大胆じゃない!

良いわね、その入念な準備も教えて欲しいわ」

 

 叔母と姪っ子から両極端な感想が来ました。しかも柳さんは乗り気だ。

 放火と聞いて目が爛々と輝いてやがる。実は黒魔術とか使うんじゃないだろうな?

 

 

第123話

 

 山小屋の怪。

 

 登山者を呼び込み何故か餓死させるという、曰く付きの怪談話だ。だが原因も何となく分かっているから犠牲者を出さない様にすれば良い。

 だから小屋ごと燃やしてしまえって提案した。火は魔を祓うには最適だ。

 でも常識的からかメリッサ様は反対し、柳さんは喰い付いた。メリッサ様は当初の肉感的なコスプレ修道女のイメージからかけ離れたよ。

 まさか普段は保母さんだなんて。しかも叔母って言う老女だが、とんだ喰わせ者だぞ。

 見た目柔和な園長先生だが、僕が呑まれる程の何かを纏ってるんだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「その放火に必要な準備を教えて下さいな」

 

 放火と言った途端に目が爛々としてきた老女。放火が、いや炎が大好きか?

 

「そうですね。簡単に言えば放火は罪ですし、火災になれば消防が動く。事前に消防に相談に行っても除霊だからって放火しますじゃ許可しない。

だから短期間で建物を全焼させなきゃならない。幸い山小屋は火事になっても中々消火活動は出来ない。

だが報道のヘリコプターは来ますね。大体発生から30分以内には来るでしょう。

それ迄に全焼出来るだけの確認を取って、その場を離れなければ駄目だ。警察だって馬鹿じゃない。当日の入山者位は調べる。目撃者も居るかも知れない。

それと時期と天候です。山は天気が変わりやすい。出来れば乾燥して風が強い時が良い。

仕込みに発火材や固形燃料を窓から中に放り込むのも良いですね。一番大切なのは当事者が疑われない事です。

この辺を依頼者に納得させてアリバイを用意すれば良いと思います」

 

 腹を押さえて笑う柳さんに、ポカンと口を開けて呆けてるメリッサ様。話し終えて珈琲を一口。

 

 やっぱり苦いや。

 

「榎本さん、確かに有効ですね。しかし放火魔として捕まらない準備に重点を置くとは……うふふふふ、私がやりたいわ」

 

 やはりこの叔母さん放火に興味がアリアリだよ。火が大好きなんて奴は大抵ヤバい人種だ。

 

「山岳協会が許可をするとは思えませんわ。無理よ、犯罪ですよ」

 

「ならば不審火にすれば良いんですよ。その山岳協会にも秘密で。幸いな事に山小屋には薪も暖炉も有る。

なら過失で火災も有り得ますよね。例えば毛布に燃え移ったとか、ランタンひっくり返して燃料が床に零れたとか……

でも犯人は怖くなり逃げ出した。捕まらなければ問題は無いでしょ?」

 

 まぁそれじゃ報酬は貰えないから、どうしたら放火しても良いか。放火しなければならないかを依頼者に納得させなければならない。

 この辺の交渉が大変で実行自体は大した手間は掛からない。

 

「そうですわね。夜とかに火を付ければ逃走も楽だわ。それに山小屋は比較的麓に近いなら逃げ易いでしょうし。

私の他に口の固い共犯者を何人か用意させて一気に燃やせば……嗚呼楽しそうね」

 

 この老女、実行犯に名乗り出たぞ。私の他って、私が直接火をつけたいんか?でも夜間は有効だな。

 闇はそれだけで逃走の味方だし、麓に降りてしまえば逃げるのは簡単だ。惜しむらくは関係者で無く、全くの第三者を実行犯にしないとバレますよ。

 でも教会の修道女且つ保育園の保母さんが犯人とは考えないか?

 

「鶴子、榎本さんの案を採用なさい。貴女はアリバイ作り、私が実行するから。善意の放火ですからね。うふふふふふ、うふふふふふ……」

 

「それじゃ相手も納得しないですよ。先ずは説明を……」

 

 どうやら相談事は一応解決した様だ。エントツケーキを食べ終わり、クリームで甘くなった口の中を珈琲で流し込む。

 

「メリッサ様、解決って事で帰って良いかな?」

 

「そうね、叔母様がトリップしたから話し合いは無理だわ。榎本さん責任取りなさいよ。

この人、昔から型破りな事で有名なの。最近大人しくなってたのに、また火炙りギャハハーとか騒ぎ出すんだから」

 

 ヤッパリ魔女狩り大好きみたいな人だったのか……本当はもう少し最初の話の続きがしたかったけど、藪蛇にならない内に帰ろうかな。

 

「うん、ごめん。反省してる……でもメリッサ様の問題も解決しそうだからチャラで良いよね?」

 

「榎本さん何時もそうよね。もう少し私に優しくしても良いじゃない」

 

 私怒ってます的に腰に手を当てているメリッサ様。でも最後は笑ってくれた。

 二人して火炙り火炙りと呟く老女から目を逸らし園長室から出る。するとまた他の保母さんから注目を集める。

 

 お辞儀をしながら彼女達の間を通り抜けると、何処かで見た様な人達が?誰だっけ?

 

「お疲れ様、榎本さん」

 

「久し振りね、その節はどうも」

 

 二人の保母さんから話し掛けられた……誰だっけ?知り合いに保母さんなんて居ないぞ。

 

「えっと……どうも」

 

 取り敢えずお辞儀をしておく。保育園の出口までメリッサ様が送ってくれた。

 

「余り参考にならなかったかも知れないけど、除霊(放火)上手くいくと良いね?」

 

 後ろでは子供達がお遊戯を始めた。有名な自己犠牲を厭わないパンの人の主題歌を振り付きで歌ってる。ここがエクソシスト集団の拠点とは誰も思わないだろう。

 

「ごめんなさいね。叔母様がどうしても会わせろって五月蝿くて。言い出したら聞かないのよ、あのババァ」

 

 ははははは、確かに怖い老女だよねって言っておく。本当に底が知れなくて怖いんだ。

 

「でもパソコン使わなかったじゃない。アレで何するつもりだったのよ?」

 

 此方を拗ねながら見上げてくるメリッサ様。そんなにパソコン準備させたのが大変だったかな?

 

「今回は放火一択だったけど本当は色々調べながら話すつもりだったんだ。例えばネットの噂話やGoogleEARTHで周辺の地形を調べたりさ。

でも何であの物件を?お世話になった人の紹介でも人を殺す霊は凶悪だよ。

僕だって怖いから直接祓わず炎で焼き尽くす提案をしたんだ。危険な相手だから油断はしないようにね」

 

 あれ?吃驚した顔だよ?何か変な事を言ったかな?一応心配してるんだけど……

 

「良いわ、許す。今度お礼するわよ、必ずね。それとフローラ達の事分かってなかったでしょ?まるで知らない人みたいな対応してさ」

 

 さっきの二人ってお供の人達なの?するとセントクレア教会ってエクソシストの集団なのか?

 

「メリッサ様、この教会って保母さん兼シスター?エクソシストの団体?」

 

 ニヤリと笑ったよ。あの老女はエクソシスト集団の元締めなんだな!

 

「榎本さんはピンで仕事してるけど、他の人は多かれ少なかれ何らかの集団に属してるのよ。又は比護を受けているわ。

今回の八王子の件で日本最大の亀宮一族の現当主が力を認めた相手は、フリーランスの霊能力者だった。これから色んな団体から接触が有るわよ。

自分の勢力を強める為にね。勿論、私達の所でも大歓迎だから。榎本さんも女性だらけの方が華やかで良いでしょ?じゃね!」

 

 ポンと肩を叩いてメリッサ様は園児の輪に走っていった。園児の手を取り一緒にお遊戯を始めたよ。

 こうして見ると立派な保母さんだよね。

 

 しかし派閥ねぇ……

 

 今まで気にして無かったけど、妙な感じになってきたな。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「ねぇセンセー。あのクマみたいな人は新しいセンセー?」

 

「ちがうよ!センセーのコレだろ?」

 

「えーセンセーの彼氏は僕がなるんだよ」

 

 園児達は榎本さんの話で持ち切りだ。あんなに大きな人は初めてみただろうから。

 一部不穏な台詞も有ったが、残念ながら旦那様としてはアレは考えられない。悪い人じゃないし霊能力者として力も有る。

 でも好みから30°位ズレてるから。でも仕事仲間としてなら許容範囲内ね。

 あの肉の壁は良い守りになるわ。それに雑務とかも得意みたいだし。先程の話を纏めに園長室に向かう。

 

「失礼します。叔母様から見て榎本さんはどうでしたか?」

 

 デスクに肘を付き顎の下で手を組む悪人ポーズで此方を見ている。何かしら、険しい顔だけど?

 

「鶴子。今後榎本さんには近付くんじゃないよ。アレは危険なモノに取り憑かれてる。

いや取り憑くなんてモンじゃないね。殆ど同化してるよ。

何故、アレだけのモノと同化して平気なのかが分からない。私は怖いよ、怖くて近付けないよ」

 

 さっき迄は普通に対応してたじゃない。どちらかって言えば壊れた叔母様を怖がってたわよ。

 

「何を言ってるんですか?確かに怪しげな力を使いますが、彼は悪い人じゃないですわ!」

 

 この院長室は処置室としての機能も有している。邪悪な存在は入った途端に身動きが取れなくなる。

 どんなに深く取り憑いていても例外は無い。でも榎本さんは普通に出入りしてた。

 

「確かに初見で部屋の絡繰りに気付いたのは大したもんだ。私は試しに幾つかの言霊を飛ばしてみた。結果は全て霧散した……」

 

「言霊って!あれは人に向けては危険じゃないですか!」

 

 私達は神と精霊から力を借りて魔を祓う。悪魔には効果絶大だが、一般人にも多少の悪い影響は有る。無闇やたらと使っては駄目な筈でしょ?

 

「最初は自身が強い力を持っているか、結界や守護霊の働きかと思ったよ。帰るまでは私も中々の男だと思ったさ」

 

 帰るまで?別に部屋を出る時も普通だったわよ。トリップしてる叔母様から目を逸らして出て行ったんだから。

 

「別に異常は……」

 

「鶴子!気付かなかったのかい?あの男の背中から顔を出したバケモノを!

アレは私に向かって首を掻き切るジェスチャーをしたんだよ。巫女服を着た幼女の姿だったけど、禍々しくも神々しい力を放っていた。

注意して廻りを見てごらん。何重にも張った結界が壊されてる。アレは私が宿主に探査系の言霊を使ったのがお気に召さなかったんだ。

次に何かすれば殺す……体ん中にあんなモンを取り憑かせてる奴なんだよ!」

 

 探査系って……何処に居ても場所が特定出来る術じゃない。そんな術をかけられたら怒るに決まってるわよ。

 

「それは叔母様が悪いわよ!そんなストーカーちっくな術をかけられたら誰だって怒ります。

榎本さんは確かに危険なナニかを宿してるのかも知れない。でも彼が危険人物かは別問題よ。大丈夫、悪い人じゃないから平気だって」

 

 確か左手首に隠し玉が有るって言ってたわね。それが幼女の巫女さんなのか……力有る霊を使役出来るのか。

 でも叔母様が怯えるなら、叔母様だけが会わなければ良いのよ。山小屋の除霊が成功したらお礼をしなくちゃね。

 幾ら好みの依頼人から頼まれて断れなかった仕事だからって。成功すれば、玉の輿に乗れるかも知れないのよ。

 ふふふふっ実行犯は叔母様がヤルんだし、今回の私は良い所取りをすれば良いのよ。

 

「目指せ玉の輿!私はセレブになってみせるわー!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 疲れた……何も得る物も無くメリッサ様に助言しに行っただけだった。だが少し情報は貰えた。

 派閥か……小笠原さんや桜岡さんに、それとなく聞いてみようかな。もしも周りから悪目立ちするなら、亀宮さんの派閥に入れて貰うのが良いだろう。

 

 比較的空いてる車内の真ん中辺りの席に座る。車両には乗客は5人しか居ない。

 あと少ししたら帰宅ラッシュになるだろう。あの老女、エクソシストの元締めみたいな奴だ。

 しかも亀宮さんと繋がってそうなんだよな。うーん、一度メールで相談しようかな。派閥争いなんて初めてだから苦手なんだよ。

 元々目立たない様にひっそりと仕事して来たからね。他人との関わりは、例え同業者でも最低限にしてきた。

 

「やっぱ亀宮さん所にお願いするしかないかな?でも子種くれとか怪しい話になりそうだし……」

 

 亀宮さん本人は信用も信頼もしている。でも周りがヤバそうな感じだ。亀宮一族、一度どんな連中か調べてみようか……

 

 

第124話

 

 何故だ?何故全く異変が無いんだ?既に三日間も録画・録音チェックをしているが、異変は全く無い。

 既に40時間近くもパソコン画面を見てイヤホンで殆ど無音の録音を聞いている。退屈で発狂しそうだ。

 

 明日は晶ちゃんが遊びに来るし……

 

 このまま膠着状態じゃ仕方無いから、来週から泊まり込みだな。泊まると言っても寝ないで待機だから、昼夜逆転の生活が始まるのか。

 両手を上げて布団に寝転ぶ。ボフンと受け止めてくれる布団はフカフカだ。うーん、肩凝りが酷いのは目を酷使してるからか?

 

 目と目の間、鼻の上を揉む……

 

 流石に半日ぶっ通しでパソコン画面をにらめっこだったからな。そう言えば最近、胡蝶が大人しいけど……

 

「胡蝶、居るかい?」

 

「何だ、正明?暇つぶしに我を呼ぶな」

 

 左手首の蝶々形の痣から滲み出る全裸幼女。寝転ぶ僕の腹の上にちょこんと胡座をかいている。本性を知っているが、正直愛らしい。

 

「いや、最近見なかったから気になって……」

 

「ふむふむ、仕えし我を思う気持ちは合格だな。我を思うなら早く子供を作らんか!」

 

 藪蛇だったか?だが機嫌は良さそうだ。

 

「うん、まぁ努力します」

 

 やはり風俗と違い結婚前提の子作りには抵抗が有る。愛しの結衣ちゃんとは着々と距離を縮めているが、まだまだ先の話だし……

 せめて高校は卒業させないと、今時中卒が最終学歴は良くない。勿論、専業主婦だから学歴は問題は無いかも知れないが、彼女にも高校生活は体験させてあげたい。

 大学なら学生結婚も有りだろう。逆に要らん虫が湧かないから丁度良い。

 

「そうだ、正明。最近行ったあの教会の腐れババァな。我等の首に鈴を付けようとしたんで〆ておいたぞ。

くっくっく……あの怯えた顔は忘れられん」

 

 教会?ババァ?〆た?セントクレア教会の事か?ババァって柳さん?

 

「ちょ、おま、どう言う事だよ?そんな寛がないで教えてくれよ」

 

 布団にうつ伏せに寝転び足をぶらぶらとする仕草は、お尻が丸見えで大変愛らしいのです。しかし話す内容が物騒極まりない!

 

「正明も気づいてたろ?あの部屋の仕掛けには。我は正明が崇める事により善に傾いておる。

本来は祟り神だがな。あの程度の結界で我を捉える事は出来ぬ。

あのババァ、反応せぬのを良い事に帰り際に我等に首輪を付けようとした。

だから術と張られた結界を全て壊して脅したのだ。こう、クイッとな」

 

 チシャ猫みたいな笑顔で首を掻き切る仕草をしたけど……それって、その仕草を柳さんに見せたの?

 

「あの……胡蝶さん?その仕草を柳さんに見せたのかな?どうやって?」

 

 うわっ?僕の体に潜り込んだぞ。

 

「こうやって上半身を背中から現してな、クイッと脅したのだ。哀れな位に怯えておったぞ。

自慢の結界を破られ術を弾かれたのだ。最後通告だと思ったろうな。もうチョッカイも掛けてこないだろ」

 

 腹の上に上半身だけ生やした胡蝶さんが、ご機嫌で教えてくれた。でも、それって苦労して隠している胡蝶の存在がバレたんじゃ?

 

「それって胡蝶の存在がバレたんじゃないのか?」

 

「安心しろ、正明。ちゃんと服は着ておいた。何の問題も無い」

 

 いやいやいや、大問題だろ?そんな強力な存在を体から生やすなんて、僕は一躍有名人だ!

 

「ななな、何で?」

 

「まぁ聞け、正明。既にお前の存在は注目されておる。

お前は気付いてないやもしれんが、何人かの霊能力者達が近くに徘徊し探査系の術や陣を仕掛けておる。

勿論、我が居る故に不発じゃがな。だが奴らはそうは思うまい。正明、お前が強力な術者として認識されるだろう。

ならば我の存在を隠すのは危険だ。人間は限界が有るからな。正明単体なら直接仕掛けてこよう。

靡かねば暗殺も考えられる。だが我と言う存在が正明の守護霊か使役霊と思われれば違ってくる。

契約次第では人間以上の力有る存在を使役出来るからな。亀が良い例だ。あの取り憑かれてるポヤポヤより遥かに力強い」

 

 胡蝶さん、心配してくれるのは大変嬉しいです。確かに700年位前なら、そんな物騒な考えも有りだったんでしょう。

 しかし現代で他勢力に行く位なら殺してしまえって、短絡的な集団が有るかな?まぁ現代に当て嵌めても……

 僕は既にマークされていて、勧誘を断ればパワーバランスの問題で嫌がらせ位はされるかも知れない。

 でも亀宮さんの亀ちゃんみたいに人智を超えた強力な存在が憑いていれば、簡単には手を出せないから大丈夫みたいな?

 何だよソレ、全く迷惑以外の何物でもないな!

 

「有難う、胡蝶。僕も何処かの派閥に入った方が良いのかな?単独だと限界が有りそうだし……」

 

 有力なのは亀宮さんの所だけど、まさか彼女か彼女の一族はコレを見込んで話を広げた?いやいや亀宮さんは、そんな考えは無い。

 あれは聞かれたら善意で僕が凄いんだって教えたんだろう。これは早めに手を打たないと危険だ。

 

「なぁ胡蝶?僕は亀宮さんの派閥の末席にでも加えて貰おうと思うんだ。

本来なら胡蝶を主祭神として祭らないと駄目だと思うけど、今から起業しても間に合わないと思うから」

 

 彼女が榎本一族に課す試練は胡蝶自身を崇める事だ。この提案はそれに反している。

 僕の腹から生える彼女に真剣にお願いする姿は、端から見れば滑稽でしかない。

 

「む、我を祭るのを怠らなければ構わん。今お前に死なれては我も消滅するからな。

言った筈だぞ、我と汝は一心同体だと。良かろう、あのポヤポヤに話すが良い」

 

 胡蝶は昔の感覚で取り敢えず大きな木の下に宿れと言ってるんだろう。いずれは宿り木を食い尽くせ位は言いそうだ。

 諺(ことわざ)的に言えば軒先を貸して母屋を盗られる?

 

 さて胡蝶の許可は下りたが、実際にはどうすれば良いのか分からない。亀宮さん本人に派閥に入れてくれって頼めば良いのか、長老と言われる連中に許しを請えば良いのか?

 んー、取り敢えず電話してみよう。確か手書きの名刺が机の中に……デスクの鍵付き引出しの中に有る名刺ホルダーを引っ張り出す。

 

 女性らしい柔らかな文字で書かれた手書きの名刺。

 

 携帯電話と固定電話の番号、それに携帯電話とパソコンのメアドが書かれている。取り敢えず自分の携帯電話のアドレス帳に登録、さて何で連絡するか?

 固定電話は取り次ぎしてくれるか不明だ。彼女本人が出るとは限らない。

 携帯電話をかけるには……既に21時を過ぎてるから一般常識的に急ぎじゃない用事でかける時間帯じゃないよな。

 残された手段はメールだが、パソコンは起動してないと読まれない。ならば携帯電話にメールするか。

 

「亀宮さん、夜分済みません。実は相談事が有り一度話したいのですが宜しいでしょうか?

携帯電話の方に連絡したいので、可能な日時と時間を教えて下さい。此方から電話します。 榎本」

 

 文面もおかしくないな。では送信だ!送信ボタンをポチッと押す。

 

「便利じゃな。これで遠方の奴に連絡が取れるのか?ふむ、昔は遠見の術や言霊を飛ばしたものだが」

 

 肩車の体制で僕の携帯操作を見ていた胡蝶の台詞だが……700年前に遠方に連絡する手段が有った事が凄い!

 

「胡蝶さん、その術って僕でも使え……ウワッ、急に電話が鳴るなよって?あれ亀宮さんだ」

 

 通話ボタンを押す。

 

「もしもし、榎本です」

 

「今晩は、榎本さん。亀宮です。何ですか、相談事って?」

 

 早い早いよ亀宮さん。コッチから連絡するから日時と時間を教えてって書いたじゃん!

 

「今電話大丈夫なんですか?夜も遅いですが?」

 

「大丈夫よ。撮り溜めたビデオを見てるの」

 

 当世最強の女性が、夜に撮り溜めたビデオを見て寛いでるの?変じゃないけど変だ。

 

「へっ、へぇ……何を見てるのかな?」

 

 彼女のイメージならバラエティーか旅番組かな?

 

「水曜どうでしょう?の再放送ですわ。今丁度アメリカ横断編をやってますの。面白いですよね、水曜どうでしょう?」

 

 はい?僕は水曜どうでしょう?とか見た事無いです。

 

「あの、すみません。僕は水曜どうでしょう?って知らなくて……」

 

「えっと、ですね。北海道のローカルテレビ局の旅バラエティーなんですが、毎回大泉洋さんと他の出演者達がですね。

くだらない企画を本気で行うんです。今もですね、アメリカまでわざわざ行ってレンタカーでアメリカ大陸を縦断するだけの……

あの、榎本さん聞いてますか?」

 

「はい、聞いてますよ」

 

 彼女の水曜どうでしょう?談義は一時間以上続いた……飽きた胡蝶は布団で熟睡し、僕は携帯のバッテリーが切れそうになり充電しながら拝聴した。

 

「……で、最新話は羽田空港から四国までカブに乗って行くんですよ!彼等の自由奔放さが羨ましいんです」

 

 最後に彼女の本音が聞けた。やはり絶大な力を持っていても、一族の連中が彼女を良い様に使ってるんだろうか?

 

「亀宮さんの憧れなんですね。彼等の自由奔放さが……僕も何だかんだと、しがらみや付き合いが有りますから本当の自由は無いですね。

それは誰しも多かれ少なかれ有りますよ」

 

「ふふふふっ、榎本さんって話し易いわ。こんなに誰かとお話ししたの初めてよ。

あっ、相談事が有ったんですよね?すみません、私だけ一方的に話してしまって」

 

 漸く本題に入れる。もう22時を過ぎてるけど、亀宮さんは大丈夫かな?

 

「あの、もう22時過ぎてるけど大丈夫かな。何なら後日でも構わないんだけど……」

 

「平気ですわ。明日はお休みですから、榎本さんが良ければ話して下さい」

 

 んー何て切り出すかな。天然さんの彼女だから、直球で言った方が良いか……

 

「実は亀宮さんが言った通りに最近になって僕に勧誘が来るんですよ。派閥へのお誘いです」

 

「流石ですわ!榎本さん程の方がフリーなんて珍しいですもん」

 

 珍しいですもん、と来たぞ。やはり彼女は善意で言い触らしてるんだな。凄く、困るんです。

 

「まぁ僕も自由気ままに仕事をしてましたが、此処に来て派閥の重要性に気が付きまして……

でもお誘いの派閥も良く分からないですし、皆さん亀宮さんに対抗出来る点が重要らしいんです。正直、ウザいんですよ」

 

「ごめんなさい。私が言い触らした所為で、ご迷惑を……」

 

 やはり天然だけど根っこは優しくて頭も良いんだ。ちゃんと自分の所為だと気が付いてる。

 

「僕は亀宮さんと敵対するつもりは全く無いので、出来れば亀宮さんの所の派閥の末席にでも入れて欲しいんです。

図々しいお願いだとは思いますが、勧誘に対して既に亀宮さんの所にお世話になると言って断りたいので……」

 

 体の良い断りの理由に使うのは心苦しいけど、彼女の派閥と言えば勧誘は止まるだろう。

 結局、亀宮さん自身が自分と同等の霊能力者を探して来て引き入れた事になる。彼女の株が上がっても非難される事は無い。

 

「榎本さんが私の家に来てくれるんですか?」

 

「ええ、うっかり亀宮さんと対立してる派閥に属したら大変ですから」

 

 あら、どうしましょう?そうだ、御隠居様達に……いえ、先ずは榎本さんを皆さんに紹介しなくては!何やら電話口で亀宮さんが暴走してるけど大丈夫か?

 

「もしもし、亀宮さん?落ち着いて下さい。もしもし、聞いてます?」

 

「分かりました!私に任せて下さい、ええ戦艦に乗ったつもりで安心して下さい。榎本さんなら即幹部に……いえ、私と同じ」

 

「落ち着かんかい!僕は末席で良いの!亀宮さんの一族のしきたりの大変さや組織の結束の強さは知ってるから。

いきなり素性の知れない男が組織の上位になれる訳ないでしょ?僕は亀宮さんと敵対しない様に理由が欲しいんだ。オーケー?」

 

「ふふふふ、分かりました。大丈夫、大丈夫ですから」

 

 もの凄く不安だ。もしかして僕は早まったかもしれない……

 


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