榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第110話から第112話

第110話

 

「水谷ハイツ、まじキモイんだけど。私がお風呂に入ると必ず廊下で人の気配がする。このアパート、異常者が居るんじゃない?」

 

 某モバゲーの日記の記事だ。プロフィールを見ると神奈川県になっている。この書き込みの水谷ハイツとは違う建物だろうか?

 

 廊下に気配……

 

 あの部屋の風呂の位置では、外部の廊下には面していない。つまり気配を感じる事は出来ない。じゃ家の中の廊下か?

 それならば家に他に誰も居ない時に風呂に入ったら、誰かの気配を感じるって事だ。泥棒とかストーカーなら大問題だが、あのアパートから不法侵入で捕まった奴は居ない。

 

 やはり、この書き込みは怪しい。

 

 もし家の中に誰かが居ると思うなら、もっと大騒ぎする筈だ。彼女に何か有って続きが書き込めないのか?

 いや、日記こそ書いてないが新作のゲームに登録してたり他のユーザーとコメントのやり取りをしている。

 念の為、過去の日記やアルバムも見るが……見慣れた横須賀カレー祭りや地元の諏訪神社の写真がアップされており、コメントも地元の祭りに参加したと書いてある。

 

 少なくとも横須賀市内に住んでる筈だ。市外の出来事を地元とは言わないだろう……気にしなければ、どうでも良い事なんだが。

 妙に霊感に引っ掛かるんだ。一度日記に書き込みをしてみるか?しかし某は新規登録だから、直ぐ書き込みも怪しまれないか?

 それにプロフィールを正直に30代前半の男性にして、果たして女子高生かギャルみたいな彼女が答えてくれるのか?

 

 20代前半位にさばを読んで登録するか、敢えて女性として……ん?女性として?さっきのミンちゃんのプロフィールやコメントの遣り取りをもう一度見直す。

 

 少ない遣り取りの中で彼女は同性にのみ、コメントを返している。男からの書き込みには全く反応していない。

 

 何故だ?普通は異性の方にコメントしないか?

 

 相手の男達のプロフィールも確認するが、10代か精々20代前半だ。リアル写真は乗ってないが、プロフィールを読むだけでは避ける様な事は書かれていない。

 何となくだが、ミンとはネカマじゃないかな?ならば女性で登録して適当なゲームをやったり日記を付けたりして、来週辺りに接触してみるか……

 

「あれ、正明さんもモバゲーするんですか?さっきから真剣に携帯を操作して……」

 

 何故か結衣ちゃんがソファーの隣に座り、携帯を覗き込んでいた。気が付かなかったが、彼女がお風呂を出るのをリビングで待ってたんだった。

 彼女はTシャツにホットパンツ姿だ。髪の毛は洗面所で乾かしてきたらしい。天使の輪が出来てサラサラだし、仄かにリンスの香りがする……

 

「うん、次の仕事でね。このサイトの日記の書き込みがヒントになりそうなんで、登録して聞いてみようとおもってね」

 

 そう言って携帯の画面を見せる。体ごと僕に預けて画面を見詰める彼女。

 

「正明さん、既にサイトに登録して有りますよ。ほら、足跡履歴に……」

 

 僕の携帯を受け取ると何やら操作をして僕のプロフィールを見せてくれた。

 

 ハンドルネームはマサ。神奈川県在住、33歳独身・自営業。リアルな個人情報が載っていた。

 アバは初期のままだし、殆ど利用してないのが分かる。

 

「本当だ、何時の間に登録したんだっけ?」

 

 そう言えばマイページとか有ったっけ。全然気にしてなかったよ。

 

「私が紹介するとポイントが貰えるからって、頼んだ時だと思います」

 

 あー確かアクアリウムだとか何かのゲームで、アイテムが紹介で貰えるとか何とか……余り考えずに設定したんだった。

 

「そうだね、思い出したよ。足跡とか分かるんだ。僕は頻繁に見に来てるな……怪しまれるし暫く接触しない方が良いかもな」

 

 呟く様に口に出してしまった。こんな言い方をすれば、僕は全く気にしてない負い目が有る彼女なら

 

「私が聞いてみます。ちょっと携帯持ってきますね」

 

 そう言って私室に小走りで取りに行った。直ぐに戻ってきて、また隣に座る。今日はスキンシップが多い、嬉しいが何故だ?

 自分の可愛い携帯を操作し、モバゲーの画面を表示する。携帯には今時なのか可愛いクマのストラップが付いている。

 画面上でモーションしてるアバも可愛い感じだ。

 

「正明さんの履歴からミンさんを追いますね……彼女の日記、これですか?水谷ハイツの異常……」

 

 サクサクと操作して問題の日記迄辿り着く。

 

「その水谷ハイツが今回の調査物件なんだ。彼女は風呂に入ると廊下で人の気配がすると言ってる。詳細が知りたい」

 

 画面を此方に見せる為に何時もより近い。下を向くと彼女のささやかな胸を隠すブラが、Tシャツの隙間から見える。

 

 うむ、眼福眼福じゃ。

 

「日記に書き込みますね……んー何て書き込みしましょうか?」

 

 首を傾げながら考える仕草はとても可愛い。文面か……そうだな。

 

「水谷ハイツの近くに住んでます。まさか近所で、こんな怖い話が有ったなんて!

気配って痴漢とか空き巣ですかね?詳細が知りたいです……こんな感じかな?」

 

 僕ならそう書き込む内容を話す。

 

「分かりました。えっと……」

 

 結衣ちゃんは考えながらポチポチと携帯を操作して入力している。その速度は早い。

 彼女も今時の女の子なんだな。友達と遊びにも行くし携帯でゲームもする。少し前の無口で引っ込み思案な子供の面影は無いな。

 一緒に住み始めた時は僕の顔を伺って自分の要望を殺してたし、その前はリアル獣っ娘で襲いかかってきたし……

 良い方向に育ってるな。

 

「っと、こんな文面で良いですか?」

 

 感慨に耽ってたら文面が出来たみたいだ。

 

「市内の女子校に通ってます。友達の家の近所に、そんな怖い場所が有るなんて驚いてます。

友達に聞いても場所は知ってるけど、そんな事は知らないって言われました。でもとても気になりますので、どんな事が有ったのか教えて下さい」

 

 僕の語学力はイマイチだったんだ。コッチの方がネカマ君には堪らないだろう。

 

「うん、コレでお願い。あと彼女だけどネカマっぽいから気を付けて」

 

 フレンドリーに話し掛けて、奴が勘違いをしたら大変だ。結衣ちゃんにストーカーなんてしたら、僕は奴を胡蝶に喰わせてしまうだろう……

 

「大丈夫です。危ない様ならブラックリスト登録も出来るし、運営側に通報も出来ますから」

 

 流石に僕より全然詳しい。運営側に連絡とかブラックリストとか……出会い系みたいな感じで登録してる奴も居るんだろうな。

 

「はい、書き込みました。返事が来たらお知らせしますね。

それと念の為、正明さんを友達リストから外しておきます。調べられて疑われたら良くないですから」

 

「確かに無言で足跡を付け捲る奴の友達から書き込みが有れば怪しまれるか……僕じゃこの手の奴は全く分からないから助かるよ」

 

 そう言って結衣ちゃんの頭をクシャクシャと撫でる。静願ちゃんに勝るとも劣らない素晴らしい手触りだ。

 

「これ位しか恩返しが出来ませんから。明日は旅行ですし、早く寝ますね」

 

 そう言ってヒラリと立ち上がると私室に行った。うーん、最近彼女からのスキンシップが多いのは、静願ちゃんへの対抗意識かな?

 何にしても嬉しい限りだ。時計を見れば、既に22時を過ぎている。明日はいよいよ旅行だし、早く風呂に入って寝ようかな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今日は結衣ちゃんと一泊旅行だ。移動は電車、これは彼女が気を使ってくれた。

 

「旅行でお酒を飲めないのも辛いでしょうし、のんびり温泉に浸かりたいです」と……

 

 だから最初は大雄山に有るアサヒビール工場を見学。出来たてのスーパードライが試飲出来るんだ!

 敷地内のレストランでバーベキュー&出来たてビールで昼食。次に結衣ちゃんお薦めの県立生命の星地球博物館を見学。

 

 なんでもマンモスの骨格標本や多くの化石が有るそうだ。彼女は宝石よりも化石に興味深々のご様子。

 何時かは宝石の方にも興味が移ると思うけどね。

 

 最後に箱根湯本温泉郷の商店街を冷やかしてから旅館へ行く事にした。

 

 翌日は芦ノ湖まで足を延ばして遊覧船に乗ったり箱根関所跡を見学する予定。箱根には彫刻の森美術館とかガラスの森美術館とか有るけど、結衣ちゃん的にはイマイチらしい。

 個性派ミュージアムも色々有るが、僕も芸術は理解力が乏しい。美しいロリを愛でるのが、何よりの芸術鑑賞だろ?でもこれは、彼女が僕に気を使ってると思う。

 女の子なら色々と人気の有るスポットも多いのに、こんな社員旅行みたいなコースは正直どうかな?と思う。

 

 その分、旅館は奮発した!

 

 某有名な老舗旅館の部屋付き露天風呂の有る四人部屋を二人で使用する。洋間のベッドと和室の布団に分けて寝るんだぜ。

 最初はシングル二部屋にするつもりだったが、部屋食や部屋付き露天風呂を希望したから無理だったんだ。

 部屋食も創作懐石料理で飛騨牛の石焼きステーキとか伊勢海老のお造りとか有るコースにした。

 

 一泊15万円だが後悔は全く無い。

 

 それに結衣ちゃんがニッコリと「普段から一緒に住んでるのに、今更部屋を分けなくても良いです」の言葉を有り難く尊重しました!

 

 これで実績を作れば、後々誘い易くなるし。因みに家族風呂も有料だけど貸切予約してます。これは彼女に広い温泉にゆっくり入って欲しいから。

 部屋に露天は確かに有る。だけど大浴場の爽快感を味わって欲しいんだ。ここの家族風呂は湯船だけでも8畳位の広さだし、洗い場も6人分も有る。

 ちょっとした温泉宿の内湯位の広さだ。深夜0時を過ぎて空いていれば、宿泊客なら誰でも利用出来るそうだ。

 僕はその時に利用すれば良い。目覚まし時計に7時30分キッカリに起こされた。

 鳴り響くベルを止めて布団から起き上がり、大きく欠伸をする。簡単に身嗜みを整えてからキッチンに降りると、既に結衣ちゃんが朝食を作っている。

 

「おはよう、結衣ちゃん。今朝のメニューは何だい?」

 

 シンクに向かい調理していたが、振り返って笑顔で挨拶してくれる。今朝は珍しくキュロットスカートにパンスト、それにセーター姿だ。

 

「おはようございます、正明さん。今朝はほうれん草とベーコンのオムレツに具沢山のシチュー、それにロールパンです」

 

 手際良くオムレツをひっくり返してます。トースターを見れば未だロールパンは入ってない。

 パンを焼く位は手伝おうかな……

 

「結衣ちゃんはロールパン幾つ食べる?僕は六個かな」

 

「私は一個で良いです」

 

 フライパンからお皿にオムレツを移す彼女の手際は本当に良い。軽くケチャップを塗れば完成だ。

 トースターに無理矢理ロールパンを七個押し込みスイッチをオンにする。

 次に牛乳をいれたマグカップを電子レンジへ。設定温度は70℃だ!

 

「ミルクに何入れる?珈琲か砂糖か」

 

「砂糖を二つお願いします」

 

 僕も同じホットミルクにするべく角砂糖を二個いれて掻き回す。マグカップを彼女の前に置いて、大皿にロールパンを積む。

 冷蔵庫からバターを取り出すとオムレツが完成し、シチューが深皿によそわれていた。食卓に美味しい匂いが充満する……

 一人暮らし時代では考えられない充実した食生活!思わず結衣ちゃんを拝んでしまう。

 

「「いただきます!」」

 

 先ずはオムレツをパクリと一口。

 

「うん、オムレツ美味いね。バターとベーコンの相性は抜群だね」

 

 次に具沢山シチューをスプーンでかき混ぜて掬う。チキンとジャガイモ、コーン・人参・玉ねぎ・アスパラが入ってる。

 チキンは皮や余計な脂は取ってある。脂肪の気になる中年には嬉しい気配りだ!

 

「そう言えば書き込みの返事有ったかい?」

 

 パンをシチューに浸して食べながら、何気なく聞いてみた。

 

「はい、有りました。凄い長文で……」

 

 どうやら相手が食い付いたみたいだな……

 

 

第111話

 

 ミンと言うハンドルネームの奴に、結衣ちゃんが書き込みをしてくれた。女性にしか返信しないネカマと疑っている怪しい奴。

 やはり女性の書き込みには直ぐに反応した。食後のお茶を淹れて貰いながら、結衣ちゃんの携帯を見せて貰う。

 ピンク色の携帯だが、飾りはクマのストラップだけだ。

 

 何故クマ?

 

 桜岡さんも僕をクマ扱いだが、彼女に感化されたか?それは置いて返信の内容を読む……因みに結衣ちゃんのハンドルネームはユイだ。

 

「ユイちん初カキコありがとねー!

水谷ハイツ気になる?チョー怖かったんだよ。私がお風呂に入ると廊下で人の気配がするの。

もち家族じゃないよ、留守ん時だから。お風呂から出ると誰も居ないし、荒らされた形跡も無いのよね。

絶対ユーレーだよ!隣の住人も怖いって引っ越したんだよ。ユイちん友達申請して良いかな?

ガンロワとかやる?紹介するから戦友になろーよ」

 

 ビンゴだ!

 

 隣の住人が引っ越したんだって、幽霊騒ぎで引っ越したのは401号室だけ。隣はあの餓鬼の部屋しかない。

 文面も良く読めばギャルっぽくしてるだけで違和感が有る。こうやってネカマを演じ女性の友達を増やしてるのか……

 幽霊騒ぎはガセの疑いが濃厚だ。念の為に月曜日に盛り塩や日本酒を確認するけど、奴の狂言に引っ越した家族はやられたのか?

 

「結衣ちゃんビンゴだ!コイツは問題の部屋の隣に住んでる餓鬼だ。ネカマなのも間違い無い。

隣が引っ越したんだって角部屋の家族の事だ。その隣は奴の家だからね」

 

 携帯電話を返しながら、結衣ちゃんに説明する。

 

「良かった、お役に立てて……念の為、友達登録しますね。また何か聞く事が有るかもしれないですし」

 

 携帯電話を受け取りながら嬉しそうに言ってくれた。でも、あの餓鬼が結衣ちゃんとモバ友?何となく気持ち悪いんですけど……

 

「いや、ソイツはネカマだし危険だから止めよう。知りたい事は大体分かったから平気だよ」

 

「でも正明さんのお仕事が終わる迄は友達で居た方が良くないですか?大丈夫、変な事をするならブラックリストに登録しますから平気ですよ」

 

 そう言って携帯を操作しモバ友になってしまった。

 

 因みに申請の文面は

 

「ミンさん宜しくお願いします。ガンロワ?とかやらないので、それは遠慮しますね。

また新しいお話が有れば教えて下さい。私も友達に教えておきますから」

 

 当たり障りの無い内容だが、奴が結衣ちゃんに絡むには水谷ハイツの情報を教えるしかない。だが、ガセ疑惑が有るから嘘をつかれる場合が有るよな。

 有る事無い事言い出しそうだ……しかし静願ちゃんを強引に誘ったり、結衣ちゃんとモバ友になったりと許せん餓鬼め。

 

 何時か泣かせちゃる!

 

 コイツの話は此処までだ。今日は楽しい二人切りの旅行だからね。実は下調べはバッチリだし、店には予約を入れてあるのだ!

 まったりと結衣ちゃんと話し込んでしまったが、時計は9時を過ぎている。

 

「さて10時8分の快速三崎口行きに乗るよ。久里浜駅からJR横須賀線に乗り換えて、更に大船駅で東海道線に乗り換えだね。

更に小田原駅から大雄山線に……結構乗り換えが多いな」

 

 僕は割と鉄道好きだが、彼女は人混みが苦手だ。在来線の乗り継ぎは厳しいかも知れない。

 

「家を9時55分に出ましょう。荷物は纏めて有りますから着替えるだけです」

 

着替え自体も上着を羽織る位だから、洗い物をして貰ってる間に戸締まりをするか……結衣ちゃんの指定した時間に家を出る事が出来た。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 在来線を乗り継ぎ、やっとJR大船駅で東海道線の快速アクティに乗る事が出来た。流石に車内も大きな荷物を持った旅客がチラホラ。

 僕らも何とか座る事が出来た。丁度向かい側の窓は海側、暫く走れば湘南バイパス沿いの海岸が見える。

 

「そう言えば結衣ちゃんと電車で旅行は初めてだね。大抵は車で日帰りか……」

 

 隣に座り此方を向いている彼女に話し掛ける。

 

「そうですね。一緒に新幹線に乗ったのは、私を里子として迎えに来てくれた時以来ですね。あの時は色々有って殆ど話もせず俯いてばかりでしたから」

 

 少し寂し気な笑顔を向けてくれる彼女を見ながら、昔を思い出す。結衣ちゃんのお祖母さんが老衰で亡くなった時、遺言で僕に連絡が来る様に手配して有った。

 それは行き着けの病院にも連絡して有ったし、彼女のお祖母さんも何かにつけて僕の事を周りに言っていた。

 

「何か有ったら神奈川のお坊様を頼れ」

 

 僕は僧籍を持っており、大抵の場合の社会的信用は高い。意識不明になる直前、つまり危篤状態の時に医者から連絡が有った。

 何故なら病院で亡くなった場合、遺族が即日引き取らないとダメだから……

 葬儀の手配・遺体の搬送・医療費の清算・役所への手続き等、遺族がやらねばならない事は多い。死亡届が行政に廻ると銀行口座も凍結される。

 未成年の結衣ちゃんでは、生活が成り立たなくなるんだ。松尾の爺さんと相談し、細波家の遠縁の親族と結衣ちゃんの今後についても交渉した。

 

 ぶっちゃけ話で、お祖母さんの遺産は殆ど無い事。(勿論、遺産は全て結衣ちゃんだけが相続する権利が有る。彼女が放棄しない限り親族は手に入れられない)

 

 葬儀代金諸々を僕が肩代わりしてる事を説明すると、誰一人結衣ちゃんを引き取るとは言わなかった……彼女と共に借金まで相続はしたくないと言う事だ。

 勿論、僅かばかりの貯蓄や家財道具一式を処分した金は、彼女名義の通帳に入れてある。成人したら渡すつもりだ。

 

「そうだったね……来週はお祖母さんの墓参りに行こうか?月命日が近いし丁度良いかな」

 

「ええ、お婆ちゃんのお墓まで此方に用意して貰って、本当に正明さんにはお世話になりっぱなしですよね。早く働いて返したいです」

 

 お祖母さんのお墓は、市内の寺の永代合祀墓に納めて有る。三十三回忌までは寺で供養してくれるんだ。総額で80万円もしたが、その分手間が掛からない。

 

「初めて会った時は避けられてたし、次に会った時は噛みつかれたね。お返しなんて家事全般を任せてるんだし必要無いよ。

僕の方がお礼をしないとダメだ。毎日美味しい御飯が食べれて、家は綺麗に掃除して貰ってる。それだけで十分さ」

 

 本音はお礼なら結婚して欲しい。16歳になったら直ぐに!何て事が言えない僕は、33歳になってもシャイボーイだ。

 まだ何か言いたそうな彼女の気を紛らわす為に話題を変える。

 

「ほら、海が見えるよ。冬の海だからサーファー位しか居ないね」

 

「本当ですね。鎌倉辺りの海岸には古い時代の磁器や、波に洗われて丸くなった硝子が拾えるらしいですよ。今度行ってみませんか?お弁当、作りますから」

 

 冬の海・美少女と波打ち際を探索・手作りお弁当……僕は今、勝ち組の中でも上位に食い込んでいる!

 

「そうだね。もう少し暖かくなったら行こうか?」

 

 まったりと電車の旅を楽しんだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 アサヒビール工場は近代化され機械化が進んだハイテク工場だ。

 

 基本的に見学者はガラス張りの通路を歩き工場内を見学するが、働いている人間を見る事は無い。殆どが自動化された流れ作業……

 確かに衛生的にも効率的にも素晴らしいが、日本酒みたいに酒蔵の人が全ての工程を殆ど手で造るのに比べると温かみが無い様な気がする。

 30分程見学し、お楽しみの昼食だ!敷地内に有るレストランは予約済み。窓際の四人席に案内された。 

窓から見える景色も芝生が綺麗に刈られ、人口の池がキラキラと光っている。時刻は12時30分、丁度お腹が空いてきた時間だ。

 

「さて、先ずはビールだが出来立てのスーパードライをジョッキで。あっ結衣ちゃんはダメだよ。ソフトドリンクだよ」

 

「ふふふふ、私は未成年ですよ。勿論、オレンジジュースにします」

 

 予約時に食べ放題プランを頼んでいたので遠慮無く肉を注文する。先にドリンクが来たので乾杯する。続いて頼んだ肉が来た!

 タン塩・カルビ・ハラミ・ロース、それにサニーレタスを5人前ずつだ!内蔵系は結衣ちゃんが苦手そうだから遠慮した。

 焼き肉奉行でも有る僕が、トングで肉を網に乗せていく。最初はタン塩、次にロースで最後に脂の強いカルビとハラミだ。

 

「正明さん、私が焼きましょうか?食べるのに専念された方が?」

 

 僕の忙しい食べっ振りに、流石の彼女も呆れ気味?

 

「大丈夫、結衣ちゃんも沢山食べてね」

 

 そう言って適度に彼女の取り皿に肉をのせる。暫くすると下の名前で呼び合う凸凹コンビに、周りの客からの注意が集まって来た。

 ムキムキのオッサンとロリロリ美少女。仲良く食事をしているが、明らかに家族でも兄妹でも無さそうだ。

 

 一体どんな関係なの?

 

 向けられる視線は、そんな感じかな。家族以上恋人未満だろうか?

 最初に頼んだ肉を食べ切り、僕は〆にカルビクッパを頼み結衣ちゃんはハーフ冷麺を頼んだ。肉は殆ど僕だけが食べたが、彼女も二人前位は食べた筈だ。

 

「もうお腹一杯です。少し体を動かさないと、旅館での夕食が食べられませんね」

 

「次は結衣ちゃんのお薦めの博物館だよね。化石が好きとは知らなかったよ」

 

 お泊まり情報を暴露したら、周りの空気が微妙になったか?犯罪チックな二人に向ける視線が痛いので早々に退散するか。

 ジョッキに残っていたビールを飲み干し伝票を持ってレジへ向かう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 一旦大雄山線でJR小田原駅に戻り箱根登山鉄道で風祭駅に向かう。駅を降り線路と平行に走る国道を渡れば、県立生命の星地球博物館だ。

 この手のアミューズメントは大抵ガラガラなのだが、結構な人が来ている。順路に沿って見学するが、マンモスの骨格標本と触れる糞の化石が面白かった。

 

 因みにリアルなアジア象の糞も比較展示されていたが……食後で良かったと思う。

 

 お土産コーナーで、結衣ちゃんが化石の標本に食い付いていた。見れば小さな3㎝位のサメの歯の化石と5㎝位のアンモナイトの化石だ。

 共に3000円か……

 

「化石って思ったより楽しいね。流石に恐竜の化石は無理だけどね」

 

 そう言って彼女が見比べていたケースを取りレジへ向かう。

 

「あっいえ、大丈夫です。私が自分で……」

 

 結衣ちゃんには生活費の他に必要経費として月50000円ほど渡してある。携帯代・衣類・文房具・日用品とか、生活必需品を買う為だ。

 それにおこずかいを含んでいる。一般の中学生としては多い方だが、彼女は残りをちゃんと貯金している。

 

 多分だが20000円程度しか使ってない。だから買おうと思えば問題無い筈だ。

 だが旅行中は漢として、エスコート中の女性の財布を開けさせてはダメだ。

 レジのお姉さんに贈り物だからとラッピングして貰う。可愛くデフォルメされた恐竜の包装紙にプテラノドン型のシールを貼って貰った。

 

「はい、何時もお世話になってるからお礼だよ」そう言って彼女に渡す。

 

 嬉しそうに受け取ってくれた。新たな結衣ちゃんの趣味を発見出来た一日だ!今後変わった化石が有ればプレゼントしよう。

 余り高いと逆効果だが、魚や葉っぱの化石は比較的安価に買えるみたいだ。

 プレゼント効果なのか博物館から駅まで歩く間中、彼女は僕の腕に抱き付いてくれた。腕を組むには身長に差が有りすぎるので、手首の上の辺りに抱き付く感じだ。

 

 周りの野郎共のホノボノとした視線は……仲の良い父娘だと思ってるだろ?実は違うんだぜ!

 桜岡さんが抱き付き癖が有る所為か、最近女性と腕を組む機会に恵まれて居る気がする。静願ちゃんもそうだし……

 これだけ恵まれていると、何時か嫉妬に狂った野郎共に襲われそうだな。

 気を付けないと駄目かも知れない。

 

 

第112話

 

 あれから箱根湯本駅まで行き、地元商店街を冷やかしながら本日宿泊予定の老舗旅館に到着した。

 干物を焼いて食べさせる店とか昔ながらの塩分の高い梅干しとか、試食だけでもご飯が欲しくなりました。

 到着時刻は4時を少し過ぎた所だ。

 

 流石は老舗旅館!

 

 門から本館に入る迄に石畳を渡り、手入れのされた庭園を見る。本館に入ったら従業員が総出でお出迎え。

 僕がチェックインの手続きをしてる間に、結衣ちゃんには貸出用の浴衣を選んで貰っている。彼女は淡い青のグラデーションに魚の模様の浴衣を選んでいた。

 帯は濃紺、足袋や巾着まで借りれるらしい。近くで夜祭りをやってるらしく浴衣のまま出掛けて良いそうだ。後で行ってみよう。

 

 案内された部屋は8畳の洋間・10畳の和室、それに4畳の小部屋に繋がる部屋付き露天風呂が有る。因みにユニットバスも完備され、どちらも使える様になってます。

 中居さんが部屋に付くとお茶を煎れてくれて、簡単な館内及び避難通路の説明をしてくれた。因みに男用の浴衣は5L迄有り、僕も借りてみた。

 肩幅が広いのでイマイチ似合わないのだが……

 

「結衣ちゃん、何を部屋の中をぐるぐる廻りながら確認してるの?」

 

 仲居さんが居なくなった後、彼女はクローゼットから備え付けの金庫迄を開けて確認している。さながら新居に連れてこられた猫みたいだ……

 

「えへへへ、全部確認しないと気が済まないみたいな?」

 

 何故、最後が疑問系?

 

「わぁ!窓から庭園が見渡せますよ。池に大きな鯉が居ます。あっカルガモも」

 

 窓を全開にして外を見ている彼女の隣に並ぶ。なる程、部屋は二階だが十分庭園を見渡せる。

 大きな池を中心にコの字形の木造二階建ての本館、向かいには近代的な鉄筋コンクリートの四階建ての別館。別館は少しリーズナブルな設定だ。

 

「池の廻りに遊歩道が有るね。明日の朝にでも歩いてみようか?」

 

「そうですね!正明さん、先に温泉に行って下さい。私は少し休んでから行きます」

 

 結衣ちゃんは大浴場は自傷の跡が気になって入り辛いだろう。その為の部屋付き露天風呂と貸切家族風呂なんだ。

 

「僕は長湯だから一時間は戻らないよ。結衣ちゃんは先に部屋の露天風呂に入りなよ。

家族風呂は21時から一時間借りているから、寝る前に入ると良い。この旅行は結衣ちゃんの労いの為だからね。じゃ僕は露天と内湯、サウナも楽しむから」

 

 そう言って着替えを持って大浴場へ向かう。幾ら結衣ちゃんでも部屋に僕が居たら入り辛いだろう。

 それに露天風呂って次の間の和室から丸見えなんだ!一応ガラス張りで障子を閉めれば隠れるけど、障子が風呂側からは開け閉め出来ない。

 ラブホの風呂みたいな構造だった。アレは次の間の電気を消せば、障子の隙間から盗み見てもバレない。

 

 非常にけしからん造りになってるぞ!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 正明さん、私の傷跡に気遣ってくれたんだ。

 

 部屋に露天風呂付きの旅館なんて初めて。5時半まで戻らないって言い切ったのは、それまでに入りなさいって事。お言葉に甘えてお風呂に入ろう。

 着替えとタオルを持って脱衣場に向かう。

 

「こっこの障子、開けると露天風呂が丸見え……」

 

 なななな、何て恥ずかしい造りなの?正明さんが早く帰ってきたら見られ……だからキーを持たずに大浴場に行ったんだ。

 彼は私に凄い配慮をしてくれる。私は正明さんにとって、何なんだろう?

 

 里子だから義娘?

 

 年齢的には義妹?

 

 それとも家族?

 

 湯船には既にお湯が溢れ出てるのは、説明に有った源泉掛け流しなのだろう。服を脱いで浴室に入ると少し肌寒い。

 露天と言いつつ空の一部しか見えない。当然だわ、ホテルや民家が見えたら向こうからも見えるって事だし。

 軽く掛け湯をしてから体を洗う。スポンジにボディソープを垂らし泡立てて、左腕から洗い始める。

 両手両足を洗ってから首廻り、お腹から背中。平坦な胸を洗う時は霞さんの牛の様な乳を思い出す。

 

 何を食べたらあんなに育つんだろうか?

 

 ムニムニと自分でボリュームを確かめてみる。うん、足りない。圧倒的に脂肪が足りないの……

 まだ中学生だし未来が有るよね?でも私は獣っ娘だから、野性的なスレンダーボディのままかも。

 正明さんはグラマーが好みかな?余り性欲が有りそうな感じがしない、何時も見守ってくれている優しい人。

 

 女性の影が殆どなかったのに、霞さんとか静願さんとか……最近、巨乳率が高い知り合いが増えてばかり。

 男の人って大きな胸が好きって友達が言ってたし……正明さんも胸の大きな娘が好みなのかな?

 

「くちゅん!ああ駄目だわ、考え事をしてたら風邪ひいちゃうよ」

 

 何度か掛け湯をして冷えた体を温める。お尻から前を洗い最後に顔を洗い、全身を泡まみれにする。

 シャワーで髪の毛を揉む様に洗いながら、全身の泡を流す。お湯で良く洗い流しシャンプーは少しだけ使う。

 後はコンディショナーを髪の毛に刷り込み、少し待ってから良く洗い流す。タオルで軽く顔と髪の毛の水分を取って、頭に巻いてから漸く浴槽に浸かる。

 

「ふー……お風呂は命の洗濯と、逃げちゃ駄目な立場の男の子が言ってたわね。確かに分かる気がする……」

 

 桧造りの浴槽は私だと足を延ばしても余裕の広さ。

 

「うーん、温泉って良いな。こんな高級老舗旅館に泊まれるなんて、正明さん。私の為に奮発したのかしら?」

 

 お金の事は余り言わないけど先月も1000万円近い入金が有ったとか言ってた。電話で話してるのを聞いてしまったんだけど、高額所得者の割に堅実な暮らしだよね。

 周りの友達と余り変わらない生活環境なのは良いと思う。でも高校を卒業させて貰ったら、少しでも働いて返さないと駄目ね。

 正明さんの仕事を手伝えたら良いのだけど、未成年は法律で決まってるから駄目だって……でも私の力を活用すれば、少しは役に立つかな?

 

 忌まわしい細波一族の異能力……獣っ娘。

 

 本気で能力を使いこなす努力をしようかな。浴槽から見上げた空はまだまだ明るい。遠くに鳶が旋回しているのが見える……

 

「本当に良い気持ち……夜は内湯の家族風呂を予約してくれてるって。でも私だけで入るのって、正明さんに悪くないかな?でっでも一緒に入るのは恥ずかしいよ」

 

 ズルズルと沈んで鼻まで湯に浸かり思わず咳き込む。

 

「けほけほ……でっでもバスタオルで巻いて隠せば?それじゃ体は洗えないわ。水着なんて持ってきてないし……」

 

 色々考えてみたけど混浴は難しいかも。うーん、ならば部屋付き露天風呂で背中を流してあげるのは?

 その時の私の衣服は?服を着ては濡れて駄目だから、下着にバスタオルを巻くのかな?

 どれも現実的には恥ずかしくて駄目だわ。混浴も背中を流すのも無理よね……せめて風呂上がりにマッサージ位かしら?

 

「うん、そうだわ!肩や腰を揉んであげよう。前にマッサージ機が欲しいって言ってたし」

 

 そうと決まれば部屋に戻ってきたら早速……そう思い壁掛けの時計を見れば、既に5時25分?

 

「いけない!考え事をしてたら時間が……」

 

 急いで風呂から上がり、掛け湯をして体に付着した温泉成分を洗い流す。体を拭いて下着を付けて髪の毛をドライヤーで乾かして、急いで浴衣を着る。

 部屋に戻ると直ぐに扉がノックされ、正明さんの声が聞こえた。

 

「結衣ちゃん、ただいま。鍵を開けてくれる?」

 

「はーい、ちょっと待ってて下さい」

 

 どうやら間に合ったみたいだわ。鍵を開けて正明さんを出迎える。普段は洋服だし袈裟を着るのは殆どないから、浴衣姿が新鮮。

 でも下にTシャツを着るのは似合わないと思う。彼を部屋に入る為に、体をずらして道を空ける。

 

「あれ?額に汗をかいてるよ。はい、フルーツ牛乳だよ」

 

「ひゃ?」

 

 冷たい瓶を額に当てられた。ヒンヤリして気持ち良い。額に当てたままで両手で受け取る。私はフルーツ牛乳派で正明さんは白牛乳派。

 

「ありがとうございます」

 

 中々マッサージしますと言えず、取り敢えずテレビを一緒に観る流れに……部屋食は6時半からだし、そんなに時間も無いわ。

 正明さんはニュースを見ながらビールを飲み始めてるし……

 

「そっ、そうです!私、正明さんにマッサージしてあげます」

 

 唐突にマッサージしますって言葉に、キョトンとした顔を向ける正明さん。少し可愛いと思っちゃいました。

 

「えっ?いや、大丈夫だよ。そんな事をしなくても……」

 

「折角旅行に来たんですし、遠慮しないで下さいね」

 

 正明さんを座布団を四枚並べた簡易布団に寝かせる。5Lの浴衣はムキムキの彼でも肩廻りとか余裕が有る。

 

「じゃ肩から揉みますね……うんうん、固いです」

 

 両肩を掴む様に揉み始めたけど、思った以上に重労働だわ。獣っ娘姿の本気噛みを弾いた筋肉は、とても固いです。

 まるで仏像の様に固くて実がミッチリ詰まっている感じで……そうだわ!

 

「なっ!結衣ちゃん?数珠を外しちゃ駄目だろ!」

 

 正明さんは私がやる事に気付いたみたい。そう、獣っ娘に変身するの。左手首に巻いた数珠を外し、精神を集中して心のリミッターを外す。

 獣みたいに四つん這いになり、体全体を振ると……狐耳とフサフサの尻尾、それに手袋と靴下みたいな獣毛に覆われた手足。

 これが細波一族の血を濃く引いた私の本当の姿。

 

「ゆっ結衣ちゃん、浴衣のお尻が捲れてるよ」

 

「あっ!だっ駄目です、見ちゃ駄目ですから……」

 

 私の尻尾は60㎝位有って、腰とお尻の中間辺りから生えるんです。フサフサモコモコでボリュームが有るから、変身するとショーツをずり下げて浴衣を持ち上げるから……

 とっトンでもないセクシーポーズになっちゃいました!

 

「みっ見ない、見てないから……」

 

 座布団に顔を押し当てる様に俯せになる正明さん。でっでも一瞬ですがガン見してましたよね?

 

「そっ、それじゃマッサージを続けますね」

 

 正明さんの腰に跨り両肩を掴む様に揉んでいく……今回は力強さが上昇してるので、大分楽だわ。

 

「うん、良い気持ちだ……結衣ちゃん、肩甲骨の下辺りが凝ってるんだ」

 

 正明さんが気持ち良いと言ってくれると嬉しい。つい尻尾が揺れてしまう……

 

「はい、この辺ですか?確かに固いですよ。本当に凝ってますね」

 

 爪で傷付けない様に慎重に揉んで行く。正明さんも気持ち良さそうにしているし。少しは恩返し出来たかな?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 今日の結衣ちゃんは少し変だ。急にマッサージをするとか、獣っ娘形態に変身するとか……旅が彼女を大胆にしているのかな?

 彼女の獣っ娘形態は狐耳にフサフサモコモコな尻尾、それに手足に手袋や靴下みたいに毛が生える事だ。

 尻尾はボリュームが有るので、彼女の可愛いお尻が丸見えになる位に浴衣をはだけさせショーツがずり落ちていた。

 

 うん、眼福じゃ!

 

 一瞬、真っ白なお尻を目に焼き付けてから視線を逸らす。しかし力加減が絶妙なマッサージだ……

 僕の体は筋肉で固いから本職のマッサージ師も苦労してたからな。流石は獣っ娘と言う事か。

 しかし肩を揉んで貰うなら座った方が良くないか?腰に結衣ちゃんの柔らかお尻の感触と、パタパタ揺れる尻尾のくすぐったい感触が……

 

 とっても癒やされます。

 

「失礼します。夕食の御用意をさせて頂いて宜しいでしょうか?」

 

「ヤバっ!結衣ちゃん、次の間の方に……はーい、どうぞ」

 

 余りの気持ち良さにボーっとしてしまったが、時刻は6時半に近い。部屋食の準備に中居さんが来てしまった。

 流石にアレを見られては、美少女にコスプレさせて腰の上に跨がせている変態にしか見られない。

 慌てて次の間に入る彼女を見届けてから、扉を開けに行く。どうやら間に合ったみたいだ。

 廊下にはカートに美味しそうな料理が乗っている。

 

「では準備させて頂きます」

 

 テーブルに料理を並べている時に、身嗜みを整えた結衣ちゃんが戻ってきた。何とか誤魔化せた様だ……

 

 


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