榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第107話から第109話

第107話

 

 久し振りの結衣ちゃんと二人切りの生活。二人だけの夕食。向かいに座る彼女は時間が無かったのか、未だ制服を着ている。

 白のブラウスに紺と深緑のチェックのスカート、エプロンは外していた。色合いは地味だがデザインは有名なデザイナーを起用したそうだ。

 

 夏服は色も変わる。

 

 何時も家事をしてくれる彼女に感謝の気持ちを込めて、何処かに遊びに行こうかと誘った。幸運の女神が微笑んでくれたのか、何故か一泊旅行に行く事に!

 だがしかし、幸運の女神は災いの女神だったかもしれない?彼女がポツリと言った質問だが、仲の良くない静願ちゃんの為に学校に言った事を教えてないんだ。

 この状況を切り抜ける為に、某CMで昔流行ったライフカードを脳内オープンした!

 

 

 ライフカードオープン!

 

 

①「うん?行ってないよ」

 

②「そう、結衣ちゃんの様子を見にね」

 

③「えっ、誰から聞いたんだい?」

 

④「うん、静願ちゃんの面接の付き添いを頼まれて」

 

⑤「そんな事より温泉何処行きたい?」

 

 

 頭の中に五枚のカードが思い浮かんだ!けど駄目だ、どれもハッピーエンドじゃねぇ。

 

①は駄目だ!

 

 彼女は友達から聞いたと言ったが、実は本人かも知れない。ああ、目立つ鍛え抜かれた肉体が恨めしい。

 

②は一見はベストアンサーだ。

 

 だが、①の予測の通り本人が見ていたら、静願ちゃんと一緒なのを隠していたと思われる。又は本当に友達から聞いたとしても、隣にセーラー服美少女が居たと教えていたら?

 

③は学校に居た事を肯定し、探りまで入れてるから駄目。

 

④は正直に説明する、か……

 

⑤は誤魔化そうと言う気持ちがバレバレだ。

 

 使えねーライフカードだな……だが、突然神の啓示でも受信しなければ奇跡的な受け答えなんて出来ない。

 お茶を一口飲んで口を湿らせてから、④を選択し本当の事を正直に説明する。

 

「うん、昼過ぎに静願ちゃんの三者面談で学校に行ったんだ。彼女の母親が急に仙台から来れなくなって代わりにね。一応僕は身元保証人だからさ」

 

 結衣ちゃんの表情を伺いながら説明するが、普通だ。特に変化も無い……

 

「それで彼女は高等部に編入出来そうなんですか?」

 

 不安そうな感じで、此方を上目使いに聞いてくる。この表情と仕草はクラッと来るな……

 

「多分だが、大丈夫だと思う。三者面談は問題無かったし、編入試験もバッチリだと言ってたからね」

 

 結衣ちゃんは心配そうな表情から一転、ニッコリ笑って

 

「良かったですね」そう言ってくれた。

 

 元々優しい彼女だから、心配のし過ぎだったかな?でも良かった、気を悪くしてないみたいだ。

 その後は桜餅を美味しく頂き、お茶もお代わりした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夕飯の片付けを終えて先にお風呂に入らせて貰った。部屋に戻り濡れた髪をドライヤーで乾かす。

 自分を写す鏡は木製で鎌倉彫が施された化粧ケース。まだ中学生だからリップ位しかお化粧品は持ってないけど、これは正明さんからのプレゼント。

 蓋の内側に有る鏡は、不安な顔の私を映している。

 

 そう、私は不安なの……正明さんが連れてきた母娘の事を考えると不安で仕方ないの。

 

 小笠原静願……

 

 初めて会ったのは、彼女が母親と一緒にウチに挨拶に来た時だった。私より少し年上だけど妙に艶の有る少女。

 彼女の母親は、私のお母さんに似た雰囲気が有った。外見は似ても似つかない、優しい感じの女性。でも女の媚びを振り撒く女性……

 

 正明さんがやんわりと拒絶してるのに、何度か接触しようとしてた。

 

 あの時の正明さんは本当に困った顔をして、でも彼女達を傷付けない様に配慮していたのが、私でも分かった。つまり、あの母親は正明さん狙い。

 彼女も正明さんを父親を見る様な目で見てた。あの母娘は正明さんを狙っている女狐なの!

 

 ちょ、ちょっと待って!私も数珠を外せばリアル狐っ娘だから女狐の表現は嫌。

 

 泥棒猫……

 

 そう泥棒猫がちょうど良いわね。正明さんは優し過ぎるから、誰にでも救いの手を差し伸べてしまう。

 それは良いの、彼の魅力だから……私だって、その優しさが有ったから今の居心地の良い場所に居られるの。

 でも、あの母娘は駄目。お世話するのは良いの……でもそれ以上の接触はして欲しく無い。

 

 正明さんと結婚するのは、私か霞さんのどちらかなの!霞さんも大阪に修行に行く時に私に言った。

 

「結衣ちゃん、榎本さんと私の仲は振り出しに戻っちゃったけど……私が居ない間に、変な虫が付かない様に見張ってね」

 

 何故、あれだけ結婚を匂わせていたのが御破算なのかは教えてくれなかった。正明さんも普段通りに霞さんと接していたから、喧嘩とかで駄目になった訳じゃない筈よ。

 それは霞さんも先走ってしまったんだ。まだ正明さんはフリーで、将来を約束した人は居ない。

 つまり私にも未だチャンスが有り、あの母娘はお邪魔虫と言う事なの。

 

 正明さんは……ツルペタの私では不満かもしれない。

 

 まだ私は未成年だし、せめて高校は卒業したいから少なくても後5年は待たせてしまう。彼の連れてくる女性は、皆さん立派な胸を持ってるし。

 でっでも、たまにエッチな目線で私を見る事も有るから全く貧乳を受け付けないわけじゃない!昔、エロい人は言ったわ。

 

「微乳は美乳、女性はバランス勝負だって!」

 

 大きければ良い訳じゃないの!私には未だ未来が有る筈なの……今回の旅行で少しアピールしてみようかな。そう考えると鏡の中の私は、少し微笑んでいた。

 

「くすくすくす……そうだ、巷で噂の猫耳コスプレをしてみようかな?

正明さんなら猫耳&尻尾付きのメイド服を着た私を可愛いと言ってくれるかな?確か正明さんの部屋に、そんな写真集が有った筈だわ……」

 

 折角の変身能力だし、正明さんが喜ぶなら試してみよう!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 平成町のアパート。

 

 山崎不動産が開店する前に近くまで様子を見に来た。今回の場所は知っているし横須賀中央の事務所からなら、自転車で20分位だ。

 何時も通りに9時に出勤し荷物を置いてから、自転車で現地に向かう。車に積んでいる折り畳み式自転車だからスピードは出ないが、朝だし付近の様子を見るだけだから問題無いと思う。

 雲一つ無い青空、風は少し吹いているので未だ肌寒いが、ペダルを漕ぐ運動は適度に体を暖めてくれる。駅と逆方向だからか、すれ違う人しか居ないな。

 暫く走ると平成町に到着。比較的新しい建物が多く、出勤時間帯を少し過ぎている為か人通りも少ない。

 

 先ずは問題の建物の周辺をゆっくり走る。

 

 交通事故が有ると道路沿いに、お地蔵様が有る場合が多い。幹線道路から路地を一つ入った場所だが、賽の目に配置された道路は迷い易い。

 同じ様なマンションや建売住宅が続くからだ。アパートを中心に半径200m程度を確認するがお地蔵様も無いし、神社・寺院も見当たらない。

 周辺の家を見ても火事が有ったりとか長年空き家な物も無い。此処まで取っ掛かりが見付けられない物件も珍しいな。

 ガセか狂言の場合も可能性として考えないと駄目かもしれないな。最後に問題のアパートの前まで行ってみる。

 丁度向かいに自動販売機が有ったので、折り畳み式自転車を前に停める。

 

 暫し自動販売機のメニューを選ぶが、飲みたい物はココアだ!まだ肌寒いし温かいココアが良いんだ。糖分は疲労も回復するんだよ。

 

 お金を入れてボタンを押す。取り出したココアをその場で飲みながら、問題のアパートを観察する。

 洒落た洋風建築の三階建てのアパート……一階は二部屋、二〜三階は三部屋で合計八部屋か。エントランスは全世帯分のポストが見える。

 

 管理人は当然居ない……

 

 六世帯住んでる筈だが、洗濯物やら窓が開いてるやらで確認出来たのは四世帯だけだ。時計は9時45分を過ぎているのに人の気配を感じない部屋は、既に出勤してるのかな?

 なけなしの霊感には、何も感じない。おっ、三階の住人がベランダに出て洗濯物を干しだしたな。30代位のポッチャリした女性だ。

 

 向けていた視線を逸らし、ココアを飲み干して空き缶をゴミ箱に入れる。折り畳み式自転車に跨り、その場を立ち去る。

 途中一回だけ視線を向けて確認したが、特に此方を見てはいなかった。さて、今回は全く手掛かりも無いと来たな。そのまま山崎不動産まで行ってみるか……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 大型チェーン店不動産屋で無い山崎不動産は、地元密着型の不動産屋だ。店は京急線堀之内駅前商店街の中に有る、地元で30年以上続けている不動産屋だ。

 個人所有のビルの一階が不動産屋、二階と三階が山崎さんの住居となっている。一駅分を自転車で走ったが、特に疲労は無い。

 時刻は10時過ぎ、平日の開店早々だから未だ忙しくは無いだろう。自動ドアを潜り

 

「お早う御座います。社長居ますか?」とカウンターに座っていた飯島さんに声を掛ける。

 

 彼女は20代後半、Eカップ巨乳美人だが山崎さんの愛人だ。何となくだが色情霊が付いている様な気がする、気怠い色気を振り撒いている。

 因みにお金大好きで、愛人契約を複数結んでいるらしい。本来の好みは年下美少年から20代美青年らしく、僕は全く対象外だ!

 

「あら、榎本さん。お早う御座います。社長は二階に居るわよ。今、内線で呼ぶわね」そう言って山崎さんに連絡してくれる。

 

 誰にでも気立てが良く、マメに世話を焼いてくれるので人気は有るみたいだ。彼女が電話をしてくれるのを見ながら、何となく事務所を見回す。

 普段は男性社員も何人か居るのだが、ホワイトボードには外出・休み・外出となっている。

 

「榎本さん、奥の応接室に……飲み物はコーラ?」

 

 普段は賃貸契約者とはカウンター越しに対応するが、土地の売り買い等の大口顧客・クレーマー・常連様は応接室に通される。今回は周りに聞かれたく無いからだろう。

 

「ありがとう、コーラが良いな」

 

 飯島さんに一声掛けてから、奥の応接室に入る。直ぐに飯島さんがコップと500㎜lのペットボトルを出してくれた。

 お礼を言ってから直接ペットボトルからコーラを飲む。運動した後だし、室内は暖房が効いてるので冷たいコーラは美味い!

 

「ああ、おはよう。早いな、どうしたんだ?」

 

 接客業故かビシッと上下をスーツで固めた山崎さんが、入って来た。向かいに座るのを待って話し出す。

 

「今回の依頼ですが、ざっと調べた限りでは怪しい所が有りません。実際に先程現地も行きましたが、特に何も感じなかったし……もう少し詳しく情報を教えて欲しいのです」

 

 個人情報保護法とか色々難しいが、住人の情報を教えて欲しいんだ。

 

「ふむ……コピーは渡せんが、見せる事は出来る。今ファイルを持ってくるからな」

 

 そう言って山崎さんは席を立った。ガセにしろ狂言にしろ場所を特定し張るしか無い。

 最悪は、その引っ越したと言う部屋に泊まってみるか……色々と案を練っていると薄いファイルを持って来た。

 

「これだよ、このアパートは新築当初からウチが担当してたんだが……代替わりしてから微妙でね。

複数の不動産屋に仲介を頼み始めた。ウチとしても手を引くにしろ変な噂が有るままにしたくない。信用問題だからな」

 

 ああパソコン検索で複数の不動産でヒットしたのは、そう言う訳か……ファイルを最初から読み始める。

 入居者の一覧情報と契約書のコピー。何世帯かは入れ替わりが有るのか……六世帯目の契約書を見ている時に備考欄に赤字で

 

 ※「幽霊が見えると騒ぎ解約・移転」そう書いて有った。

 

 この家族が最初の被害者?なんだな。

 

 

第108話

 

 山崎さんから依頼されたアパートの心霊現象を調べていたが、初日から壁にぶつかった。全く怪しい物が無いんだ。

 これは何から調べて良いのかも分からない。お手上げ状態だ……

 仕方無く個人情報保護法に抵触するが、引っ越しした家族と現在住んでる家族の資料を見せて貰った。

 

 そして最初に引っ越した家族の資料だが……夫38歳・妻35歳・息子17歳の三人家族だ。息子?じゃあミンと言う名前の娘は未だ住んでるのか?

 

 再度資料を読むが現在住んでいる方々の家族構成でも、年頃の娘は誰も住んでない。何故だ?あの日記は嘘なんだろうか?

 

「どうした?難しい顔をして……珍しいな、お前さんが悩むとは」

 

 向かいに座わる山崎さんが、ジッと此方の様子を伺っている。依頼人に不安感を与える様じゃ駄目だな。

 

「ええ、下調べではネット上ですが若い女性と思われる口調の書き込みが有りまして。彼女が住む部屋が分かれば、調査の足掛かりになると思ったんですけどね」

 

 やはりガセか狂言の可能性が高いな。

 

「若い女性か……うーん、30代前後の奥さん達と子供は全て男だと思ったな」

 

 山崎さんの記憶も曖昧だ。だが、幾ら仲介してるとは言え全ての顧客を覚えてる訳じゃないだろう。

 

「あのアパートで誰か亡くなってませんか?」

 

 部屋でなくとも住んでいた人が病気等で他で亡くなった場合、家に憑く事は有った。

 

「いや聞かないな……」

 

 即答したな、事前に調べてたのか?山崎さんの表情には自信が見られる。

 

「本当に?あのアパートで無くて病院とかでも?」

 

「大家から聞いている。店子が亡くなれば弔電や香典位は出す。

だから、あのアパートでは住人は死んでない。同居で無い親戚は知らないがな」

 

 なる程、大家から言われて今回の調査を始めたのか。仲介業者より大家の依頼なら説得力が有るからね。

 

 最悪の場合は大家の名前を出せば良いか……

 

「初見ではガセか狂言だと思いますね。それも可能性に入れて調査します。先ずは引っ越した家族の住んでいた部屋が怪しい。

部屋を調べさせて欲しいです。仲介業者と客を装い部屋を見に来た感じで、一度行ってみたいですね。

中に入って何も感じなければ、短期で入居して調べてみたい」

 

 勿論だが、ゴーストハウスに呑気に泊まる気は無い。比較的安全な昼間に各種機材を設置して記録を取りたいんだ。

 納得出来るまで調べて、何も起こらなければ……最後は数日泊まって確認する。奴らは初めての人間が来ると暫く様子を見る場合が有る。

 

「ふむ、相変わらず慎重だな。良いだろう。大家には一ヶ月の猶予を貰うよ。その間は仮契約中として他の顧客には入らせない。それで良いか?」

 

 調査期間は一ヶ月か。僕の概算だと120万円位かな。

 

 基本契約では人件費・調査機材・報告書のセットでそれ位だ。除霊が必要なら力に応じてだが+30万円。大体150万円ってとこか。

 如何に小原氏の件が破格だったか分かる。まぁお金の為だけじゃないし、今回は胡蝶も手伝ってはくれないだろう。普段通りに仕事を進めよう。

 

「分かりました。では基本契約書から宜しいですか?」

 

 何時もの基本契約書を鞄から取り出す。

 

「全くしっかりしてるな。ああ良いだろう。じゃ契約を交わすかい」

 

 この辺の遣り取りは何時もの事だ。常に用意している基本契約書に必要事項を記入して印紙を貼り山崎さんに渡す。捺印後お互いの控えを貰い契約成立。

 

「では現地に行きたいのですが、何時なら良いですか?」

 

「うん、手が空いてるなら今からでも良いぞ」

 

 そんな話をしながら応接室から出ると、店内に小笠原母娘が居た。そう言えば午前中に不動産屋に寄るって言ってたっけ……

 僕を見付けると静願ちゃんが椅子から立ち上がって手を振ってくれる。気持ち嬉しそうだ。

 

「榎本さん、おはよう」

 

 彼女は今日もセーラー服姿。珍しく黒のパンストを履いている。うん、大人びた顔にメリハリボディな素直クール女子高生だ。

 そう言えば寝間着以外には、着物かセーラー服しか見ていないな。

 

「おはよう、静願ちゃん。それと魅鈴さんも」

 

 軽く手を上げて応える。何となく彼女達の近くに行く。カウンターは出口付近だから必然的に近付くのだが……

 

「榎本さん、何故此処に?」

 

 少し変わった口調の静願ちゃんが質問してくる。昨日会ってる時は、僕が此処に来るのを言ってない。

 だから不思議に思うんだろう。まぁ別れてから山崎さんから依頼されたんだけど。

 

「僕の方は仕事だよ。昨日別れた後に山崎さんから相談が有ってね。これから現地に行くんだ」

 

 魅鈴さんが書類にサインや捺印をしてる脇で、静願ちゃんと雑談をする。魅鈴さんの対応は飯島さんがしている。

 彼女はマルチに仕事が出来るから、男性社員が居ない時は接客も契約も行うんだ。

 

「お仕事なの?」

 

「ああ、ちょっとね。詳細は教えられないけど、これから現地に行ってくるよ」

 

 何か考え込みながら此方を見る彼女……除霊手順を教える約束をしてるからな。まさか一緒に行きたいとか言わないよね?

 

「わたっ私も……」

 

「榎本君、じゃ行くかい?車を廻して来たぞ」

 

 何かを言いかけた静願ちゃんの言葉を遮りながら、山崎さんが正面入口から入って来た。裏口から出て社用車を店の前まで廻してくれたんだな。

 

「了解です。じゃ静願ちゃん、魅鈴さんまた来週」

 

 彼女達は来週仙台から引っ越して来る。暫くのお別れだ。

 

「榎本さんの仕事、邪魔しないから一緒に行きたい」

 

 ああ、やっぱりだ……左腕に抱き付いて見上げながらお願いされる。だけど何も調べてない危険かも知れない場所に、準備無く連れて行くのは駄目だろ?

 

「それは……」

 

 彼女を傷付けない言葉を探す……

 

「ああ、良いだろ。近いし見るだけだから1時間位だろ?」

 

 僕が断る前に山崎さんが了承してしまった。

 

「静願、お母さん待ってるから行ってらっしゃいな。遅くなる様なら喫茶店にでも居るわ。榎本さん、娘を宜しくお願いします」

 

 保護者からも依頼人からも頼まれてしまった。仕方無いなと言う感じで、彼女の頭を右手でクシャクシャと撫でる。

 久し振りのサラサラな感触だ。彼女も嬉しそうに僕を見上げていた……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 問題のアパートに向かう。僕と静願ちゃんは親子と言う設定。仕事の関係で此方に引っ越して来るので部屋探しだ。

 途中コンビニで紙の皿とワンカップの日本酒を買う。清めの塩は常に持ち歩いているが盛り塩用の皿は無い。

 それと簡単に霊の存在をしる方法として、部屋の真ん中に日本酒を置いて一日以上放置するというものがある。

 その日本酒が変色してたり少し飲んで味が変なら……何か居るんだ。100%じゃない探査方法だが、やらないよりはマシ。

 

 アパートの前に車を停める。山崎さんも馴れたものだ。

 

「お客さん、このアパートですよ。空きの部屋は一階と三階、どちらが良いですかね?」

 

 普通の不動産屋とお客さんの設定をこなす。勿論、何時誰が見てるか聞いてるか分からないからだ。

 

「うーん、道路に面してるし防犯を考えても一階は嫌だな。三階を見せて欲しい」

 

 そう言って予定通りの部屋に案内して貰う。三階建てだからエレベーターは無い。階段を上がって行くと、途中で二階の廊下を掃いている中年女性を見掛ける。

 山崎さんに挨拶したって事は顔馴染みか……彼も一言二言言葉を交わして別れた。

 

「今のは201号室の北山さんと言って一番長く住んでる人だ」

 

 隣に並び小さな声で教えてくれる。つまり、このアパートでの情報を一番詳しく知っている人。

 そして301号室を調べるならば、仮住まいの時に挨拶に行ってそれとなく話を聞ける訳だ。

 

「ここです、301号室。角部屋だから窓が二方向に有って陽当たり良好。南側にベランダが有りますよ」

 

 そう言って部屋の鍵を開けた。

 

「静願、お父さんが見てるから廊下に居なさい」

 

「うん、分かった」

 

 移動中に車の中で彼女に言い聞かせていた。初めて乗り込む場所だから、彼女は中には入れない。山崎さんは不動産屋だから外で待つのは不自然。

 彼を守りながら静願ちゃんまでは守る自信が無い。

 

 だから誰かに聞かれたら「お父さん中で不動産屋さんと話し込んでつまらないから出て来た」とでも言って誤魔化す様に頼んだ。

 

 玄関の中に入り山崎さんに清めの塩の入ったペットボトルを渡す。

 

「山崎さんは此処に居て下さい。何か有れば僕に構わず塩を撒いて逃げて下さい」

 

 そう言って靴を脱ぎ部屋の中へ……玄関から廊下が真っ直ぐ伸びて左側に扉が二つ。

 手前がバス・トイレ、その奥がキッチン。正面の扉がリビングで他に洋室が二部屋有るそうだが今は見えない。

 靴箱の上のブレーカーをONにして廊下の電気を点ける。先ずはバス・トイレの中を見るが普通だ。

 

 良く排水口に長い髪が!とか霊を思わせるヒントが有るが綺麗に掃除されている。

 

 念の為、水を蛇口を捻り流すが綺麗な水が出た。血の色みたいな赤錆だらけの水も出ない。

 バスルームには窓が無い。書き込みには風呂に入ると気配がと有ったが、気配とは脱衣場にか?

 覗きやストーカーの類は無さそうだな。室内に迄入り込んでいたら犯罪だ!次はキッチンに向かう。

 キッチンはリビングとカウンターで繋がっている。人造石のシンク台に吊り戸棚、それに備付の収納棚も有る。

 吊り戸棚も収納棚も全部開けて確認するが、綺麗に清掃され何も残ってない。カーテンが閉めっぱなしなので薄暗いリビングに入る。

 

 フローリングのガランとした6畳程の室内……右側に扉が二つ有るが閉まっている。

 カーテンを開けて窓も開ける。午前中の強い日差しが室内に入る。見回しても特に何もないな……二つ並んだ扉の左側を開ける。

 

 4畳程の洋間だ。収納棚も無く窓が一つだけだ。右側にも入るが、作りが同じ4畳程の洋間。部屋数は有るが一部屋が狭いな……

 

 特に何も感じないので、簡易探査を準備する。キッチンに戻りカウンターの上に紙の皿を並べる。

 清めた塩を三角錐の形に整えて押し固める。それを各部屋の窓際やバスルーム・キッチンに置いて行く。

 次に未開封のワンカップをリビングの中心に置いた。カーテンを閉めてからブレーカーを落とす。

 

「山崎さん、終わりました。来週月曜日に確認に来ましょう」

 

 玄関で待機していた彼に話し掛けて終了する。特に怪しい気配は無かったな……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 折角お父さんの仕事振りが見れると思ったのに。私は玄関の外で待機……ちゃんと説明はしてくれた。

 初めて乗り込む場所だから、何が有るか分からないから待機。お父さんの事前調査は本当に慎重だ。

 私なら様子見と言うか、直接乗り込むと思う。残念だけど、言う事を聞かず我が儘をする訳にはいかない。

 玄関を見詰めてても仕方無いから、手摺を掴んで外を見る。

 

 比較的新しい建物が多い住宅密集地を見渡す……この辺は地元宮城県と余り変わらない。

 

「あれ、君は誰だい?住人じゃないよね?」

 

 声を掛けられた方を見る。廊下にコンビニ袋を持った若い男が此方を見ている。観察する様な嫌な目だ……

 

「そこの部屋を不動産屋で紹介された。中でお父さんが担当の人と話してる。つまらないから出て来た」

 

 最初から用意していた台詞を言う。ジャージ上下にサンダル履きコンビニ袋から想像するに、彼はこの階の住人なのだろう。

 

「ふーん、そうなんだ。つまならいならウチに来るかい?隣の部屋なんだ」

 

 そう言って扉を指差すが初対面の男の部屋にホイホイ入る女は居ない。

 

「いい、此処でお父さんを待ってる」

 

 拒絶の意志を乗せて言葉にした。

 

 

第109話

 

 お父さんの仕事に付いて来たけど、危険だからと外で待たされていた。暇だから外の景色を眺めていたら、知らない男に話し掛けられた。

 いきなり部屋に誘うなんて危ない奴。だらしないジャージ上下にサンダル履きの男。

 

「いい、此処でお父さんを待ってる」

 

 拒絶の意志を乗せて言葉にした。断ると一瞬だが嫌な顔をした。

 

「暇なんだろ?良いじゃん、対戦ゲームしようよ。新作有るんだ」

 

 今まで五歩位離れてたのに目の前まで近付いてきた。若い男が平日の昼間っから部屋でゲームって……彼は典型的な駄目男だ。

 

「お父さんが不動産屋さんと話が終わったら、直ぐ帰るからいい」

 

 近過ぎて身の危険を感じた。この人は嫌だ!

 

「じゃじゃじゃ、少しだけ話そうよ」

 

 手を伸ばして来たので、反射的に一歩下がる。

 

「何だよ、良いじゃんかよ!」

 

「何が良いんだ、ああ?」

 

 更に手を伸ばしてきたので、その手を払おうとしたけど何かに遮られた。大きい背中が私の前に有り、あの男が見えなくなっている。

 

 お父さんだ!

 

 彼の手をお父さんが掴んでる。あの嫌らしい男は絶対的な力の差に絶望的な顔をしている。

 

「ちょ、ちょちょちょチョット話をしてただけだって!離せよ、離してくれよ」

 

 本気で私の為に怒ってくれてるのが嬉しくて、後ろからお父さんの腰に抱き付き顔だけ出して様子を伺う。

 情けない男はジタバタしているが、お父さんは片手だけで抑えてるのにビクともしない。ガッチリして逞しい。

 

「お客さん、離してやりなよ。彼は隣に住む進藤さんの息子だよ」

 

 山崎さんが言うと、お父さんは手を離した。

 

「なっ何だよ!話し掛けただけじゃんか?」

 

 思いもよらず素早い動作で部屋に入り、鍵を閉める様な音が聞こえた。

 

「静願、何ともないかい?」

 

「うん、平気。もう行こう、此処は嫌だ」

 

 お父さんの左腕を抱きかかえながら、階段の方へ引っ張る。お父さんは少し困った顔、山崎さんは嬉しそうな顔をしている。

 

 そんなに不自然かな?

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 あの餓鬼、進藤とか言ったな。ウチの愛娘に不埒な事をしやがって。取り敢えず平静を装い情報を仕入れる。

 

「山崎さん、隣の……進藤さんですか。何か苦情とかは言ってないんですか?問題の部屋の隣ですけど……」

 

 運転中の為、此方に一瞬だけ視線を寄越す。

 

「特に無いな。

あの子は進藤貴也(しんどうたかや)、両親は共働きでな。高校を卒業してフラフラしとる。親も甘やかして育てたんだろう」

 

 ふーん、引き籠もりじゃ無いみたいだが、定職に就かず予備校にも行かずね。

 

「ニート?親に寄生虫?」

 

 静願ちゃん、毒がキツいよ。

 

「いや完全に引き籠もりでも無いし、バイトはやってるらしいな」

 

 面倒を見てくれる親に頼りきりか……だが殆ど家に居るなら、隣の家族が出て行った理由位は分からないのかな?

 

「ポルターガイストの原因として有名な説は、子供がストレスを発散させてる事も有るそうですよ。

所謂サイコキネシスとか超能力の類ですね。霊能力者と超能力者……どちらも実在します。

まぁ彼から力は感じなかった。その線は薄い。何故、引っ越す程の理由が出来たのか?来週の結果次第ですね」

 

 週末は結衣ちゃんと楽しい楽しい旅行だ。帰って来たら対応するか……

 

「結果が出てなかったら?どうするんだ?」

 

 山崎さんの心配ももっともだ。さっきのは簡易的な調査方法だから、ハズれる場合も有る。

 

「入居しますよ。勿論各種センサー類やカメラ、集音マイクを配して24時間調べます。それで何もなければ、何日か実際に泊まります。

それでも異常が無ければガセでしょう。周りに対してはお祓いをする事で安心させましょう。

ちゃんと法衣を纏ってやりますから大丈夫です。ああ、顔が割れてるから他の坊主を頼みますか?」

 

 目立つ僕が何日も彷徨いて住むんだからね。同じ人物が法衣を纏ってお祓いしたら良くないな。

 

「そうだな……地元の真行寺にでも頼むか。そうすると仮押さえから短期入居か。来週の結果次第で大家に説明に行くかい」

 

 どんな結果にしろ調査で最後は泊まらなければならない。慎重に調査しても結局は、テープ交換等で出入りはしなくちゃならないんだよな。

 ケーブル引いて別の部屋でモニターを見たいけど、隣も下の階も入居してるから無理だ。それに内々で調べて欲しいみたいだし……

 

「お父さん。この仕事、私は手伝えないの?」

 

 後部座席で大人しくしていた静願ちゃんが、やはりと言うか一緒に調べたいと言ってきた。

 

「うーん、駄目だな。最初に約束したよね。仕事で君を連れ回すのには問題が有る。魅鈴さんから仕事を請けた時に一緒にやろうって……」

 

 この仕事に対する熱意と意欲をあの餓鬼に見習わせたい。静願ちゃんは本当に良い娘に育ってるな。

 結衣ちゃんとも仲良くして欲しいんだが、何故か二人の間には緊張感が漂うんだよね……過去に何度か顔を合わせたけど、全てお互いよそよそしい表情だったし。

 会話も殆ど無かった。お互い人見知りタイプだから仕方無いのかな?

 

「むぅ、愛娘が一生懸命お願いしてるのに……でも正論だから文句も言えない」

 

 ほらね!希望は言っても聞き分けは良いんだ。

 

「さぁ魅鈴さんに連絡してみて。もう山崎不動産には居ないと思うから、あの近くに喫茶店って……」

 

「準喫茶レジェンドだな。あそこは近いし商談でも待ち合わせでも使うから、飯島君が教えてるだろ?」

 

 準喫茶レジェンド……

 

 昭和レトロ感が漂う怪しい伝説級の喫茶店なんだ。赤い絨毯にソファー、クラッシックしか音楽を流さない拘りを持つ老夫婦が経営する喫茶店。

 何気にナポリタンが美味いんだ。

 

「お父さん、お母さんやっぱりレジェンドって喫茶店に居るって」

 

 やっぱりな、一時間位掛かったからね。幾ら客でも不動産屋に長居は出来ないよな。

 

「じゃあ喫茶店の前で停めてあげるよ。お嬢さん、もう芝居は良いんだよ。榎本君もお父さん呼ばわりだと傷付くだろ?

コイツは未だ若者のつもりなんだ。ムキムキのオッサンなのにな」

 

「はいはい、僕は若作りのオッサン。静願ちゃん位の娘が居ても不思議じゃないオッサンですよ」

 

 ヤバかった……ナチュラルにお父さんと呼ばれてた。静願ちゃんにも念を押しておかないと、何時かボロがでそうだ。

 彼女もシマッタ的な顔してるし。

 

「仲良き事は良い事なり……榎本君も早く身を固めろ。なんなら紹介するぞ」

 

 そのニヤニヤ笑いは、松尾の爺さんに似ている。悪気は無いが、からかうネタとしては楽しいのだろう。

 

「そうですね。僕のタイプの娘を紹介してくれるなら、考えても良いですよ」

 

 僕の好みを知ってるだろ?だったら合法美少女ロリを探してこいよ!

 

「お前さんは好みが煩いからな……無理だ、自分で探せ」

 

 あっさり放棄しやがった!やはり合法美少女ロリとは架空の存在なのか?漢の夢と浪漫を砕きやがって……

 

「おとっ、榎本さんの好みのタイプって?やっぱりグラマーなお姉さん?」

 

 静願ちゃんの中での僕の好みは……桜岡さんや亀宮さんのイメージなのか?

 確かに性格的にもスタイル的にも良い人達なんだけど、性的興奮はしない。山崎さんは笑いを噛み殺している。

 この人は僕が酷いロリコンなのを知ってるからな。

 

「「…………………」」

 

「何故黙るの?」

 

「さっ、さて着いたぞ。じゃ榎本君、来週月曜日に連絡をくれ。大家の方には伝えておくからな。じゃお嬢さんもな!」

 

 ちょうど準喫茶レジェンドの前に到着したので、途切れた会話を誤魔化せた……筈だ。車を降りて歩道に並んで、山崎さんを見送る。

 

「榎本さんの好みの女性のタイプは?」

 

 まだ聞いてくる彼女の頭をクシャクシャと撫でて店内に入る。サラサラの髪は癖になりそうな程、気持ち良い。

 それにシャンプーかリンスか分からないが、良い匂いだ。

 

「むぅ、誤魔化されてる」

 

 カランと扉に付けてある鈴が鳴った。店内を見回すと窓際のボックス席に魅鈴さんが居た。

 てか他に客は居ない……彼女が此方に気が付いて、軽く手を振ってくれる。

 踝(くるぶし)まで埋まりそうな毛の長い真っ赤な絨毯の上を歩き、こちらも真っ赤な合皮のソファーに座る。

 豪華なんだか安っぽいのか分からない内装だ。席に座るとマスターが注文を取りに来た。

 ビシッとタキシードを着こなし、見事なロマンスグレーの髪をオールバックで纏めている。マスター拘りの衣装だ。

 

 しかも見計らった様なタイミングでオーダーを取りに来るとは……魅鈴さんの隣に静願ちゃんが、向かいに僕が座る。

 

「アイスカフェオレ、静願ちゃんは?」

 

「私も同じ物にする」

 

 静願ちゃんはマスターから目を逸らし下を向いたままだ。

 僕はお冷やとオシボリを置いて去っていくマスターを見送りながら、此処まで演出過大なのに昼前でガラガラだが経営は大丈夫なのか心配する。

 オシボリで何気なく手を拭きながら、普段なら顔を拭いて更に首の後ろまで拭くのは自粛。一応レディの前だからね。

 アレは男性陣は普通にやるけど、マナー違反らしい……

 

「静願、榎本さんと同行してどうだったの?」

 

 魅鈴さんは珈琲を飲みながら聞いてくる。彼女はブラック派なんだな……

 

「うん、外で待機。榎本さんの仕事運びは慎重。

今日は盛り塩と日本酒による探索の準備だけ。来週の結果で本格的に機材を入れて調査するって」

 

「まぁ機材?榎本さん、どんな機材を使うのかしら?」

 

 やはり話は除霊に関してだけだ。彼女達の関心事は業態変更する事だから、他人の除霊手順は気になるのかな……

 

「そうですね……集音マイクで音を拾います。画像は赤外線暗視カメラと普通のカメラを。後は温度センサーかな」

 

 何時もの手順を思い浮かべながら説明する。

 

「まぁ!野生動物の生態系観察みたいですわね。榎本さん程の力をお持ちでも、其処まで警戒する相手ですの?」

 

 僕程ね……胡蝶が協力的な今でこそ多少の余裕が有るけど、昔はこれでも危ない位だったんだ。

 

「過信・慢心は即死亡ですよ、この商売は……だから調べる事は調べられる迄行う。それから直接対決です」

 

 ニコニコ笑う母娘は本当に分かってるのかな?この世界は簡単に人が死ぬし、相手は既に死んでる人達だ。

 霊媒師よりは危険度は高い、それは悪意ある霊と対峙する時が有るから……

 

「カフェオレ、お待ちしました」

 

 ちょうど重たい雰囲気を払う様に、頼んだ飲み物がきた。

 

「本当に慎重派なんですね。逆に安心しますわ。榎本さんの事は悪いですが色々調べました。

信用と実績、慎重さと実力に裏付けされた実行力。小原邸での除霊の素晴らしさは、静願から聞いていますから」

 

 過大評価も甚だしい!

 

 そんなに期待されても困るんです。なので曖昧な笑顔しか出来ませんでした。

 

「もう僕の事は良いでしょう。除霊方法を教えるには、少なくとも魅鈴さんから仕事を請けなければならない。

それが静願ちゃんが動ける条件です。だから今は見学だけだよ」

 

 未成年を連れ回すだけでも大問題なんだ。それを雇用するのは無理。だから施主の娘さんが彷徨いている事にするしかない。

 契約行為が無ければ青少年育成保護条例をすり抜ければ大丈夫。教育に宜しくない場所に連れて行ってはならない。

 仕事場に勝手に来てしまったんだ!だから帰そうとしたが、一人で帰すのも問題だ。

 だから僕の仕事が終わるのを待って貰い、送り届ける事にした。

 母親にも連絡済みで了承を貰っている。これなら何とかなると思うから……

 


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