第104話から第106話
新章に入ります、細波結衣の章です。
どんどん影の薄くなる桜岡霞……この章での活躍は有りません。その代わりに小笠原母娘が登場します。
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第104話
季節は春、卒業式・入学式シーズン真っ盛り。最近は温暖化の所為か桜の開花が早い。
そして細波結衣は中学三年生へと進級が決まり、小笠原静願は……何故か同高校二年へと編入する事になった。
私立のエスカレーター式の女子校。
「ごめんなさい。お母さん急に予定が入って。面接に間に合わないから同伴を代わって貰って……」
「いや構わないよ。丁度予定が空いてたからね。間に合って良かったよ」
三者面談に魅鈴さんが間に合わず、急遽代役を頼まれたんだ。静願ちゃんは何故か結衣ちゃんと同じ女子校に編入を希望した。
一択での希望。
比較的偏差値の高い学校なのだが、学力的には問題は無かったみたいだ。編入試験を終えて午後から三者面談。
だが彼女の母親は仕事の関係で仙台から面談の時間に来れなかった。それなりに固定客が有るみたいだが、最近は紹介が無いと仕事は受けないそうだ。
一見(いちげん)の客のマナーが悪くて嫌らしい。
女性だと相手も舐めて掛かる連中も多いそうだ。確かに霊媒師として故人の霊を呼び出しても、本物かどうかなんて証明出来ないからね。
僕は一応身元保証人だから、面接に同行しても問題は無い。此処は入学や編入に際して、両親以外の別居し定職の有る身元保証人が居ないと駄目なんだ。
僕は登記簿上は調査会社で登録してるから、社会的身分は有る。その点では、流石に私立はしっかりしている。
「構わないよ。結衣ちゃんの時以来だから二年振り位かな……女の子ばかりだから、気恥ずかしいけどね」
校内の廊下を彼女と二人で歩く。
平日で有り各教室では授業中で有り廊下に人通りは無くとも、筋肉ムキムキの僕は女子校の中では場違いなんだよね。
しかも彼女は未だ制服が無いから仙台の高校のセーラー服だ。グレーのセーラー服に紺色のソックス。
スカート丈が意外に短くて、彼女のボディラインを良く表している。そんな彼女がムキムキな僕の左腕に抱き付いているから……
「お父さん、綺麗な学校だね。流石は都会」
うん、親子に見えます。どう見ても親子。たまに擦れ違う先生方も、微笑ましい父娘だと思って無警戒だし。
「面接上手く言って良かったね」
筋肉ムキムキ野郎の腕にぶら下がる美少女。本当にバッチリ親子にしか見えない。
「うん。お父さん、校長と親しそうに話してた。それに向こうが遠慮してるみたいだったよ」
この子は結構周りの連中を観察している。毒舌だからこそ、相手をちゃんと見極めて適切な毒を吐く。
困った子だ……
「前に結衣ちゃんが喧嘩と言うか、あるグループから虐めを受けたらしいんだ。私立の先生は見なかった振りはしない。
直ぐに当事者と両親を交えての話し合いになった。僕は知り合いの弁護士の松尾の爺さんにも来て貰った。暑い夏の日でね……」
あの時は公立で虐めを受けて転校させたのに、私立でさえ虐めで彼女を悲しませるのかと準備万端で向かったんだ。
「暑い夏?弁護士?関係有るの?」
興味津々と僕を見上げてくる。これから自分が通う学校の事だし気になるのだろう。
「和服を着た眼光鋭い小柄な老人。ムキムキ筋肉、黒服の僕。部屋に入ったらエアコンが効いててね。
上着を脱いだんだ。力みすぎて半袖のYシャツがキツかったな。暑くて目つきも悪かったかもしれない……」
遠い目をして彼女に説明する。その時、既に先方の三人と両親は揃っていた。部屋に入った時は向こうも敵愾心に溢れてた。
まぁ数も多いし言い分も有ったのだろう。結衣ちゃんは僕に迷惑を掛けてしまったと、自分を責め続けていたんだ。
落ち込んで殆ど話す事も出来ない状態の結衣ちゃん……彼女を悲しませた連中を許す訳にはいかない。
最初に扉を開けた瞬間からガン付けたよ。全力全開で!
ムキムキのヤクザが入ってきて睨み付けられ、その次にヤクザの親分みたいな松尾の爺さんが入ってきたんだ。
室内から音が消えた。相手の連中の表情も消えたけどね。
「お父さんの恫喝は慣れが有るから。相手が可哀想だよ」
「恫喝?まさか、そんな事はしないよ。僕は躾の行き届いたクマさんだからね。
平和的な対話を尊重したんだ。そう、お話し(ohanashi)をしたんだよ」
顔面蒼白な連中を前に、結衣ちゃんを真ん中に左右に僕等は座った。感情を込めないで淡々と話すのが良いんだ。
「僕は彼女の保護者の榎本です。此方は専属弁護士の松尾さん。なにやら多数でウチの結衣を虐めたとか?
今日は、その辺の事実追求と対策と補償、それに詫びを入れて貰おうと来ました」
そう挨拶をしたら、力みすぎてYシャツの袖が弾けたんだ……筋肉でね。それで相手の子達が泣き出して、結衣ちゃんが宥めた。
流石は結衣ちゃん、虐められた相手にだって気遣えるんだ。その後は彼女達と仲良くなったので、雨降って地固まるだ!
松尾の爺さんも訴訟から入るとか散々親を脅したからね。今思えば全く大人気ない……反省だ。
「それで?解決したの?」
「勿論だ!彼女達は仲良くなったよ。雨降って地固まるだね」
校舎を出てグランドの脇を歩く。桜が散り始めて、吹雪の様に舞っている長閑な午後……体育の授業だろうか?
ソフトボールの練習に励む生徒達が、青春の汗を輝かせている。素晴らしい光景だ!
「ふーん……きっと相手は萎縮したと思う。お父さんが本気で怒ると怖いもん」
絡めていた腕を放し、早歩きで数歩前に出る。確かに本気で怒ってたけどね。静願ちゃんが怯える程、怒った所は見せてない筈だけどな?
三歩程、先を後ろ向きに腰に手を当てて歩いている彼女は楽しそうだ。霊媒師と言う少し変わった特技が有るが、この学校では秘密にしている。
ただ家業を手伝う事が有ります、とだけ面接で答えていた。今時、家の手伝いをするなんて素晴らしい!
そう、感心されたから本当の事は言わない。嘘は言ってないから……
前の学校で静願ちゃんがハブられた原因を言う必要は無い。楽しそうに前を歩く彼女には、有意義な学園生活を送って欲しいから……
「駅まで送るよ。遅れて魅鈴さん来るんだろ?」
「うん。来週に引っ越しするから手続きに来る。山崎さんに良い物件を紹介して貰えたから」
どうしても直ぐに引っ越すと頑張られて、得意先の山崎不動産を紹介したんだ。社長は小笠原母娘が気に入ったのと、僕の紹介だからと良い物件を紹介した。
美女と美少女だから彼が断る訳が無いけどね。しかもウチの近くを勧めやがった……教員用駐車場に停めてある愛車の前に立つ。
新しい愛車「日産cube」だ。
リモコンでロックを解除し、助手席に静願ちゃんを乗せる。彼女の母親を迎えに、JR新横浜駅まで行かなくてはならない。
同じ車種とは言え新車故に慎重に運転をする。そう言えば、この車が来る時も一悶着有ったんだ……
◇◇◇◇◇◇
前回の除霊で高野さんが僕の愛車を運転してバンパーとかを凹ませた。ディーラーに修理を頼んだのだが、小原氏が手を回し新車を納車させた。
行き着けの日産ディーラーの担当者、篠原さんが困った顔で書類一式を持って自宅に訪ねて来たんだ。
「修理と伺いましたが、事故の相手から悪いから同じ車種の新車を贈りたい。そう強く言われて困ってます」と言ってきた。
車を売ったり買ったりには、取得者が書かないと駄目な書類や手続きが有るからね。ただ買って渡すだけじゃ駄目だ。
その場で小原氏に電話したが、執事の定岡さんにしか繋がらず押し切られた。
しかも銀行へ初回の除霊費用520万円(成功報酬・基本報酬・雑費)の他に、廃ホテルでの除霊費用390万円(何故か成功報酬・基本報酬・雑費)が振り込まれていた。
廃ホテルの分は三日間の人件費と立て替えの機材リース費の40万円を請求したのにだ。
「主は榎本様に感謝なされてました。色々と立場の難しい方なので、御礼として思い付いたのは金銭しか無かったのでしょう。
前妻の親族とも和解が成立しそうですので、其方の分も含まれています。有り体に言えば口止め料込み。そう言う訳で御座います」
有り難いお話だが、税務署は納得しないんだ。確定申告で贈与とか不法収益とかになるんだよ。
そう言って断っても、先方の捺印済みの契約書を送ってきた。自費で調べていた調書の注文依頼書と請書のセットだ。
これなら興信所に頼んだから、入金だけでなく支払いも発生する。つまり僕が元請けとして小原氏から依頼された調査を興信所に頼んだ事になる。
此処までされては断るのも失礼なので、有り難く受け取った。しかし、確実に借りが出来てしまったんだよ。
今度何か頼まれても、断る事が難しい弱みを握られたと同じだ。むぅ、流石は小原氏と言う事か……
◇◇◇◇◇◇
JR新横浜駅に到着、近くのパーキングに停める。新幹線の到着時間まで30分位かな?
「静願ちゃん、そろそろ到着だから改札で待ってようか?」
車から降りて真っ直ぐ僕の腕に掴まり、ニッコリ笑いながら見上げる。
「うん、お母さん着いたら電話するって言ってたよ」そう嬉しそうに話す。
実は僕が静願ちゃんの母親に会うのは二回目なんだが……物凄く苦手なタイプだ。
年齢は多分、僕より少し上だ。30代後半、匂い立つ様な色気を振り撒く美女だ!僕の好みの対極の存在だ!
しかも彼女は天然なのか、微妙に近い位置取りで接してくる。旦那が他に女を作って逃げ出したと聞くが、一般的な美意識から言えば何とも勿体無い事だろう。
何か性格の不一致とか、他に原因が有りそうな気がするけど?予定では新幹線の到着10分前になった。
改札前の壁に二人で寄りかかっているが、そろそろ腕を組むのは止めた方が良いかな。
「静願ちゃん、そろそろ魅鈴さん来るから腕を……」
「うん。お母さん、最初会った時に榎本さんの事を年の離れた彼氏だと思ったって」
スルリと腕を放し、握り拳一個分ほど距離を置く。どう言う訳か、彼女は僕に絶対の信頼を寄せている。
つまり普段の態度が、端から見れば気持ちが通じ合った男女みたいらしい。そこへ腕を組んだりしてたら、魅鈴さんから見れば年の差カップルだ。
しかもお父さんとか呼ばれた日には、余計混乱するだろう。下手したら僕が魅鈴さんと再婚したいから、静願ちゃんを手懐けたと勘違いすると思う。
僕に全くその気が無くてもだ!
年齢的には、其方の方が釣り合ってるから……暫く待つと静願ちゃんの携帯が鳴り、改札から魅麗さんが手を振りながら近付いて来た。
僕は待ち合わせには良い目印なのか、大体先方が先に見付けるんだ。小さ目なトランクを引きながら、彼女は目の前まで歩いて来た。
「静願、お待たせ。榎本さん済みません。今日は無理を言ってしまいまして……」
凄い媚びを含んだ表情だ。これを意識しないでやってるらしい。
セーラー服の美少女とシックなワンピース姿の美女は周りから注目を集めるのには十分だ。
「いえいえ、お気になさらず。僕が紹介したんですし、校長とは面識も有ります。静願ちゃんは頭も良いし面談も問題なかった。編入は大丈夫でしょう」
「お母さん、私頑張ったんだ」
母子家庭で育った彼女達は非常に仲が良い。親子関係は良好なんだろう。見てると、ほのぼのしてくる……
「立ち話も何ですから移動しましょう。今晩は横須賀市内のホテルに泊まるんですよね?車で来てますから送りますよ」
注目を集め捲る状況を打破する為に早めの移動を促す。
「ええ、榎本さん。これから宜しくお願いしますね」
「榎本さん、行こう」
色々な意味で取れる宜しくを笑いながらスルーして、愛車へと案内する。どうも魅鈴さんは苦手だ……
第105話
静願ちゃんの三者面談に立ち会い、魅鈴さんを迎えに新横浜駅まで来た。合流した見目麗しい母娘は、周りの視線を集め捲っているので取り敢えず移動する。
彼女達は来週には仙台から引っ越して来るので、不動産屋の手続きも有るそうだ……愛車cubeの後部座席に並んで座って貰い横須賀方面に移動中だ。
◇◇◇◇◇◇
何が珍しいのか分からないが外の景色を見ながら、へーとかフーンとか関心している魅鈴さんに話し掛ける。
「明日、山崎さんの所に行かれるんですよね?このまま横須賀に向かって良いのですか?」
そう言えば、未だ彼女達の行動予定を聞いてなかったな。
「はい、不動産の手続きは明日の10時。15時の新幹線で帰る予定です。
今日はゆっくり横須賀の街を歩こうと思いますわ。これから住む街ですし……」
僕の問い掛けに、前を向いて答えてくれた。なる程、新居の周りをチェックする訳だ。
ただ余り時間は無いから、大した場所は見れないだろう。ならば一旦ホテルでチェックインさせて、荷物を預けた方が動き易いか……
「では一旦ホテルまで送りますよ。何処のホテルを予約したんですか?」
横須賀中央付近だと、トリニティ・ホテル横須賀・セントラル辺りか?あれ?黙っちゃったぞ……
「あら嫌だわ、予約するの忘れちゃって……」
バックミラーで魅鈴さんの表情を見る限りでは、そんなに困ってる感じじゃない。右手の人差し指を頬に当てて首を傾げる仕草は、本当に困っているのか?
いきなり地方から出て来て、今夜の宿を探すのも大変だろう。信号で止まった時に携帯を操作し、じゃらんNetを開く。
今日の宿・横須賀・二名・一泊でキーワード検索をすると、11件ヒットした。
パッと見ではビジネスホテルが有ったが、海の家みたいな民宿やお勧め出来ない木賃宿みたいな物も意外に有るんだ。だが最初は彼女達に選んで貰おう。
「静願ちゃん、この中から選んでくれる?横須賀市内だと当日宿泊は限られるんだ」
信号が青に変わったので、彼女達に選んで貰う事にする。
「うん。お母さん、何処が良いかな?」
携帯電話を受け取り、スクロールしながら探している。じゃらんNetは宿の紹介記事の他に、口コミや写真も見れるから、大体のイメージは分かる。
「あら、最近は携帯で宿も予約出来るのね……お母さん、温泉に入りたいわ」
後ろでワイワイ話し合ってるのを聞きながら、時間が無いので高速道路を使い急ぐ事にする。暫くすると宿が決まったみたいだ。
「榎本さん、この……観音崎京急ホテルに決めたい。SPAも使えるみたいだよ」
観音崎京急ホテルか……確か最近女性向けのアジアンテイストなSPAを作ってたな。
東京湾に面して全部屋オーシャンビューだ。地元故に泊まった事は無いが、来客を紹介し好評だった筈だ。ハズレでは無いだろう。
「分かった、ちょっと待ってね。予約するから携帯かして」
高速道路を利用する前だったので、路肩にハザードを点けて車を停めてから携帯を預かる。予約の確定をして確認メールを受け取る。
朝夕食事付きのプランを選んだなら、母娘水入らずで過ごすんだな。チェックインは15時で夕食は19時。
このまま行けば16時前には着くな。少しは探索の時間が取れるだろう……
◇◇◇◇◇◇
東京の資産家の除霊依頼が来た時、本当は断るつもりだった。霊媒師とは、あの世とこの世を繋ぐ橋渡しが仕事。
故人を遺族に会わせ会話するのが本来の姿。悪霊を祓う事を望むとは、私達を理解していない。
霊媒師の私に悪霊の退治を依頼して来るなんて、何の冗談かと笑ったわ。でも静願が、これからは霊媒師じゃ先行きが不安だからと試しに行くと言い出した。
複数の霊能力者の合同らしいので、それなりに安心だと思い送り出してみたけど……この筋肉の塊の方に師事するからと、嬉しそうに帰って来た。
確かに当初の依頼を並み居る同業者を出し抜き一晩で解決。しかも強力な悪霊を一撃で祓ったそうだ。
脳筋かと思えば最初に契約を結び、仕事は警備員を巻き込んで探索方法を構築する慎重派。
興信所の様な調査・霊能力に頼らない索敵方法など、私の知ってる同業者と一線を画している不思議な人。
自身が強力な力を持ちながら、慎重・確実・迅速ときている。私達が除霊へと業態変更を行う事になるなら、学ぶには理想的だろう。
だが静願の願いにも労働基準法とかを持ち出し、夜間の仕事にダメ出しする良識も有る。お坊様らしいが、それ故に面倒を見てくれているのか?
試しに、それとなく女を出して近付いても……やんわりと拒絶される。そう、拒絶だ!
10代半ばの静願と30代半ばの私を拒絶するのは、酷いペド野郎か熟女好みのどちらかだ!まさか20代限定とかじゃないだろう。
自慢じゃ無いが私だって見ようによっては20代後半で通用する容姿だし……又はホモ?
仏教では衆道とかも有るらしいし、気を付けないと……だけど本気で心配してくれてるのは分かるし、面倒見も凄く良いのよ。
ホテルを決めてないと言った途端に、直ぐにお世話出来るのも気遣いを感じますし……
不動産屋の社長や私立学園の校長にまでコネを持ってるなんて、一介の霊能力者とは思えない人脈だわ。
実社会に確実な地位を築いている彼は、詐欺とか言われる胡散臭い我々では有り得ない事なのよね……榎本さんって、本当に何を考えているのかしら?
考えれば考える程、不思議な人。でも私も静願の親として、彼に甘えたままじゃ駄目なのよ……
◇◇◇◇◇◇
観音崎京急ホテルは、東京湾に面した海岸沿いに有る二階建ての建物だ。本館の隣に新設したスパッソは、アジアンテイストなSPAだ。ホテル併設の駐車場に停める。
「到着です。予約は榎本になってますので、静願ちゃん。宿帳には僕の事務所の住所と電話番号書いて。
ちゃんと女性二人で予約したから平気だよ。あと、横須賀中央付近に行くなら送るよ。このホテルはバスしか無いし、僕も事務所に戻るから序でに送ろうか?」
風光明媚な場所故に、交通手段は限られる。バスで最寄りの京急線の浦賀駅・馬堀海岸駅に出るしかない。
「お母さん、どうする?おと……榎本さんにこれ以上迷惑掛けるの嫌だよ」
静願ちゃん、うっかり呼んじゃ駄目だよ。お父さんは!
「おと?そうね、榎本さん。有難う御座いました。後は私達だけで大丈夫です。タクシーでも呼びますから」
遠慮は要らないのだが、彼女達には彼女達なりの予定が有るのだろう。無理強いしても意味は無いだろう……
「そうですか。では何か有れば連絡を……静願ちゃん、またね」
母娘並んで手を振って、お見送りしてくれた。さてと……事務所で仕事の続きをしたら、お土産買って帰ろう。
静願ちゃんに付き合うと結衣ちゃんが、ご機嫌斜めと言うか……二人は余り仲良くならなかったんだ。
もしかして僕が好きだから、取られると嫉妬を?と思ったが、里子VS自称娘みたいな感じだ。
どちらも普段は我が儘言わない良い娘達なんだけど、反りが合わないのか?
年頃の娘達との付き合いは、難しいぜ……
◇◇◇◇◇◇
榎本さんの車を静願と一緒に見送る。遠慮しないで、とか言わずに引き上げたわ。
この距離感は良く私達を思ってるのね。予約の確認の時に朝晩の食事をワザと付けた。
夕食を一緒にとか誘わずに、母娘水入らずも良いですよね!そう言ったのは、先迄考えての事だわ。
明日も特に聞かれなかったのは、私達の自由に行動してくれって事ね。
私達に恋愛や愛欲の感情を抱いていたら、なるべく一緒に居るとか夜にお酒とか飲もうって話にしたい筈だもの……
「静願……榎本さんって本当に良い人なのね。お母さん、狙って良いかしら?」
冗談ぽく言って娘の反応を見る。私に内緒で付き合ってるなら良い顔はしない。
「お母さんが?んー榎本さん、桜岡霞ってお茶の間の梓巫女と付き合ってるみたいだよ。
少なくとも向こうは好意が有るみたい。榎本さんは……親友みたいに接してたけど」
あらあら?
静願にとっては榎本さんは恋愛対象外かしら?しかし、桜岡霞と言えばヌレヌレ梓巫女の高飛車な女よね。
彼の好みとは到底思えないのだけど……静願は榎本さんが父親になる事には反対しなかった。
つまり、彼に恋愛感情は無く父性を見出してるのかしら?確かに頼り甲斐も有るし優しいし、理想的な父親像よね。
この子は五歳で父親から捨てられた経験が有るし、下手に彼と引き離さない方が良いわ。
除霊方法を指導して貰うのだから、憧れの父親みたいな感じが良い結果を生むと思うの。
相手も好意を持って接すれば、親身に教えてくれる筈だし良い師に巡り会ったわね。
しっかり頑張るのよ、静願……
◇◇◇◇◇◇
結衣ちゃんへの土産は、三國屋善五郎茶屋の玉露だ。中学生には渋すぎるお土産だが、彼女はお茶好きなので良いだろう。
お茶請けには坂倉本舗の桜餅を買った。彼女の土産をソファーに置いて、上着も脱いで隣に置く。
半日程事務所を空けてしまったが、インターホンにも防犯カメラにも来客は無かったようだ。
次にデスクに座り、パソコンを立ち上げる。不在中のメールや留守番電話をチェックする。パソコンのメールに山崎さんの名前を発見しクリック、内容を確認する。
多分、小笠原母娘の事で冷やかしでも書いているのだろう。軽い気持ちで読み進める。
「榎本君。
東北美人を二人も紹介するとは、中々どうしてやるな。彼女達の希望の家は破格の値段で売るから安心しろ。
しかし魅鈴さんは魅力的で色気ムンムンだな。お前の嫌いなタイプなのに珍しいよな。好みを変えたのか?
さて、本題だ。
私の扱っている集合住宅で幽霊騒ぎが起きている。場所は地図を添付してあるが、横須賀市内の平成町だ。
埋め立て地だし、事故物件でも無い。だが、一家族が引っ越しを行い管理人に苦情が何件か来ている。
資料は添付してあるが、全てだ。一度調べて欲しい」
平成町は、この10年で埋め立て地を利用した街づくりをしている場所だ。殆どが新築物件だし、事故物件なら山崎さんは必ず教えてくれる。
つまり不自然に人は死んでいない物件だ。
「水谷ハイツか……
鉄筋コンクリート造地上三階建て、8部屋全て2LDKの比較的若い世帯をターゲットにしている価格帯だ。現在6世帯が住んでいる」
気を付けなければならないのは人が住んでいる物件を調べる場合、その連中からの依頼なら良いが……違う筋からだと、揉める場合が多い。
だから、なるべく住人に知られない様に調べなくてはならない。誰だって胡散臭い連中が、自分の住んでる場所を調べてるのは嫌だ。
逆に事故物件だと賃下げ交渉をする奴とか居る。Googleを開いてパスワード検索をする。
「横須賀市・平成町・水谷ハイツで検索」
267件ヒットした、結構有るな……だが殆どが普通に住宅情報だ。半分位見ても、既にタイトルだけで分かる。
空きの2世帯の入居者を募集している。オーナーさんは山崎不動産以外にも委託してるのかな?
キーワードを追加する。
「横須賀市・平成町・水谷ハイツ、それに心霊現象を追加して検索」
ヒット数は0、だな。
心霊現象を消して異常を入れて検索……
1件ヒットした。
某モバゲーの日記だが、書き込みされたのは三週間も前だ。
「水谷ハイツ、まじキモイんだけど。私がお風呂に入ると必ず廊下で人の気配がする。このアパート、異常者が居るんじゃない?」
「ぎゃはは!ストーカーだよ、警察に通報だ」
「ミンちゃんを狙ってるんだよ。気を付けなよ」
ミンちゃんね……公開してるプロフィールを見ると高校生らしい。ギャルっぽいイメージだ。
それに女性がお風呂に入ると現れる覗き魔幽霊?途端に胡散臭い感じがしてきた。確かに色情霊とかも居るには居るけどね……
第106話
水谷ハイツ。
山崎不動産の社長から調べて欲しいと依頼の有ったアパート。具体的には、このアパートは変だと言い廻って引っ越した家族が居た為に、事実を確認する事。
周りの住人も騒ぎ出すと資産価値が下がり家賃も値下げをするか、最悪の場合は住人が引っ越してしまう。インターネットで調べた限りでは、ミンと言うハンドルネームの女子高生の書き込みだけ。
風呂に入ると気配がする……その後の本人の日記には、水谷ハイツの異常は書き込まれて無い。
まぁ彼女が今も住んでいるのか、引っ越しをした住人なのかも不明。
次に旅行死亡人データベースを検索し、周辺での不審死を調べる。これは官報掲載の旅行死亡人を纏めた物で、亡くなった身元の分からない人達の一覧を見れるんだ。
これによると、アパート付近で身元不明な人は死んでいない。
此処まで怪しい所が無いのも珍しい。埋め立て地だけに、神社・寺院・庚申塚・地蔵等も無いだろう。
「今回はインターネット上じゃ話題になってない。つまり……現地に行って周辺調査から始めるしかないか」
大体の方針を決めたら、明日にでも山崎さんの所に打合せに行こう。現在住まれている家族の情報とか、引っ越した家族の情報とかを分かる限り見せて貰おう。
家族構成の中にミンと言うハンドルネームの子に該当する女子高生が居れば、調査の取っ掛かりにはなる。彼女の部屋を張れば、怪奇現象に遭遇出来るかも知れないからね……
時計を見れば5時を少し過ぎていた。自分ルールで9時から5時を勤務時間としている。そろそろ帰ろう。
結衣ちゃんのお土産を持って事務所を後にする。春先とは言え、5時を過ぎれば薄暗いし肌寒い。温かな夕食を思い浮かべながら、帰路を急ぐ。
結衣ちゃんの手料理、今晩は何だろう?
◇◇◇◇◇◇
車を自宅の駐車場に停めて玄関に廻る。郵便受けを確認すると夕刊と手紙が入っていた。
手紙は……亀宮さんからだ。亀宮さん、手紙とは古風だな。和紙の封筒に綺麗な毛筆で書かれた手紙を見る。
何か、香水と言うか……お香の匂いがする。
流石は700年も続く名家だ!彼女の手紙をポケットに入れて玄関の鍵を開ける。
防犯上、僕が居ない時は施錠して貰ってるんだ。扉を空けて中に入ると、キッチンから結衣ちゃんが迎えに出てくれた。
今日は制服にエプロンだ!うむ、ナイスなチョイス。とたとたと近くまで小走りで近付いてくれた。
「ただいま、結衣ちゃん。はい、お土産だよ」
「お帰りなさい、正明さん。有難う御座います。あっ桜餅ですね!デザートに食べましょう」
受け取った包みを開いて中を確認して、嬉しそうに笑ってくれる。八王子の事件解決後、桜岡さんは実家の大阪に帰った。
何でも力不足の為、修行をし直すそうだ。彼女の荷物は置きっぱなしだから、修行が終われば帰ってくる気だと思う。
まぁ、それは良いけど……久し振りに結衣ちゃんと二人切りだ!
「6時半に夕食にしますね。少しお部屋で休んでいて下さい。迎えに行きますから」
キッチンで鍋の中身を確認し、オタマで味見しながら気遣いの言葉をくれた。お言葉に甘えて、部屋で休ませて貰おう。
自室へ戻り部屋着に着替えてから、うがい手洗いをする。部屋に戻ってから、亀宮さんの手紙を改めて見る。
和紙製の封筒だ。桜色をベースに桜の花弁が押し花の様に散りばめられている。住所氏名は毛筆で女性らしい優しいタッチで書かれている。
所謂、達筆だな。封筒全体から良い匂いがするが、お香を焚きしめた感じだね。
流石は700年も続く旧家のお嬢様だ。歴史だけなら胡蝶を祀った榎本家も700年か?
ハサミで丁寧に切ってから中身を出す。便箋も和紙だが、此方は毛筆で無く万年筆かな?
達筆過ぎて分からない所も有りそうだ。折り畳まれた便箋を開き読み始める……
◇◇◇◇◇◇
「拝啓、榎本様。八王子以来ですが、お変わりは有りませんか?
私は、あの後に一件程除霊を行いました。旧華族の別荘に出没する地縛霊でした」
やはり亀宮さんは上流階級の顧客相手なんだ。一般に視認出来る程の霊獣が居るんだ!
普通ならテレビ局が放っておかないネタだよ。亀ちゃんだけで幽霊等を否定する輩は何も言えないだろう。
論より証拠、人を乗せて飛べる霊獣以上に証拠は必要無いからね。
「その方は三代前の一族の亡くなられた方で、病気の為に隔離され……そして療養していた別荘に地縛霊として憑いてしまったのです。
亀ちゃんに食べられた時、悲しみが伝わってきました。お付きの老人以外に誰とも話せなかった。忘れられるのが我慢ならない、と。
今までは祓う対象の事など考えなかったのですが、愛子さんの事を知ってしまうと色々と考えさせられます」
うーん、旧華族とかサラッと出て来たな。顧客層がまるで違うや……彼女は元々優しい性格なんだろう。
除霊対象に感情移入は諸刃の剣なんだ。除霊と違い浄霊が出来る人達は、霊の悲しみを祓うらしいが……
除霊しか出来ない僕は強制的に祓うんだ。納得済みか強制的かの違いは大きい。
僕は御仏に仕える僧侶だから、霊が現世に留まるのを良しとしない事を知っているので匙加減が出来る。
自分の力の限界を知っているから、無理と思えば割り切れる。自分本位な偽善者なんだよ。亀宮さんや桜岡さんは基本的に善人で優しい。
だから何でもかんでも同情するのは危険だ。そんな気持ちを抱かせた僕は、亀宮さんにとっては害悪だったか?
「今回のお供の方は、除霊対象に感情移入は不要。依頼を達成する事こそ重要だと叱られました」
一族全体でバックアップしてる亀宮さんには、的確なアドバイザーが居るのね。しかし当主の心情の変化を的確に捉えてるなんて、監視されてる様で嫌だな。
この辺は僕も返事でやんわりと触れておこう。基本的に霊が現世に留まるのは良くない、と。
今は苦しくとも成仏する事で彼らは悲しみや苦しみから解放されるんだ。愛子さんの場合は施主の意向を受けていたので、特別なんだよ。
気持ちの揺らぎは最強の守護霊獣を持つ彼女でも……
「それとメリッサから電話が有り、報酬が振り込まれたが幾らだったのか?しつこく聞かれました。
彼女は400万円だったそうです。私は500万円でしたわ。私達は実は幼なじみなんです。
メリッサなんて名乗ってますが、彼女の本名は柳鶴子(やなぎつるこ)。通称お鶴さんなんです。
私の本名は篠原梢(しのはらこずえ)です。
一文字も亀が入ってないのが不思議でしょ?私達一族で亀の文字は現当主のみが名乗れるのです。
私が亀宮の名を踏襲してから中学校で鶴亀と馬鹿にされたものです。嫌な思い出ですわ。だから喧嘩が絶えないのです」
鶴亀コンビ?意外だな……彼女達は幼なじみだったのか。だからリアルキャットファイトが出来たのね。
メリッサ様の本名はお鶴さん!駄目だ、今度会ったらギャップで笑いそうだよ。
「近々ですが、元大臣の方から大規模な除霊依頼が来そうなんです。それも原因究明が必要な探査系のお仕事が……
家の者が折衝してますが、亀ちゃんは専守防衛タイプですし、私達には不向きな条件です。しがらみで請けざるをえない時は、お力を貸して下さい。お願いします」
おいおいおい……
国家権力を握ってる連中の秘密を探る様な事は嫌だぞ!心霊絡みの秘密なんて、必ず人の死が絡んでるんだ。
公に出来る内容じゃないのを調べれば、僕が抹殺されない?
「私の顧客層でも、榎本さんは話題になってます。問い合わせも何人か有りましたわ。
「あの亀宮を抑えられる人物が居る。それを本人が認めている」
それだけでも大変な事なんですね。では、お会い出来る時を楽しみにしてますわ」
何を言ってるんですか!
そんな当世最強の貴女に匹敵する人物みたいになってますよ?彼女に悪気は無い、悪気は無いんだ……丁寧に便箋を畳んで封筒に入れてデスクにしまう。
気疲れが多くて目眩がしたので布団に倒れる様に横になる。ボフンと巨体を受け止めてくれる布団は、お日様の匂いがする。
俯せで枕に顔を埋めると、更に柔軟剤の匂いが……結衣ちゃん、ベッドメイクをしてくれたんだな。
本当に世話ばかり掛けてるよね。炊事・洗濯・掃除の殆どを彼女に依存してる。
今度の休みにでも一緒に遊びに行こうかな?
時期的には花見だ。
だが花見だと料理を作るとか言い出しそうで、返って手間を掛けさせてしまう。
これじゃ労りにならない。旅行を一泊で……無理か?流石にお泊まり旅行はチキンな僕では、誘いたいが誘えない。
イチゴ狩り……駄目だ、食べ物から離れろ!
ショッピング……桜岡さんが居ないからアドバイスが貰えない。
映画を観る……無難だが今彼女好みの映画がやってるのか?
何で初デート前の中学生みたいな悩みなんだ!ゴロゴロと布団の上で悶えると、ノックされてドアが開いた。
「正明さん、夕飯の支度が出来ました……えっと、何を悩んでるんですか?」
両手で頭を抱えて横になってれば、悩んでると思うよね。そのまま見上げながら
「あー、うん。仕事で一寸難しい物件が有って、ソレがぁ……うん、悩んでるんだ」
僕の日本語がヘンなのは理由が有る!寝転ぶ僕、頭の前に立ち見下ろす結衣ちゃん。学校の制服に丈の短いエプロンを着ている。
そう、彼女はスカートなんだ。ほんの2秒にも満たない時間で目に焼き付けた映像は……
結衣ちゃんも桜岡さんの影響で下着な部分もお洒落になったんだ。
うむうむ、眼福じゃ。体を捩り、俯せの体制から立ち上がる。
「お腹空いたよ。早く夕飯を食べよう」
彼女の背中を軽く押しながらキッチンへと向かう。細くスベスベとした太股の付け根は、アダルティなショーツで守られていた。
しかし色は白、これ重要!だが、太股には自傷した傷も見てしまった。
彼女をモノにしたい欲望と、その衝動から正気を保つ為に彼女自らが付けた傷を見て複雑な気持ちになる。
前は傷が癒えても包帯で隠していたのに、今は晒してくれている。間違い無く彼女は僕を信頼してくれてる。
それを欲望に塗れた目で見てしまった事を激しく反省する……
◇◇◇◇◇◇
夕飯は結衣ちゃん渾身のメニューだ!
豆ご飯・肉豆腐・鯵の南蛮漬け・インゲンの卵炒め・海草サラダ・大根と油揚げの味噌。独身男性の胃袋を鷲掴みにするメニュー。
昔、エロい人が言った。お堅い男は胃袋から攻めろ、と……
彼女が向かい側に座ったのを確認して「「いただきます」」と手と手を合わせて結衣ちゃんと食材に感謝する。
基本的に食事中は余り喋らない。結衣ちゃん自身も積極的に話し掛ける方では無いので、どうしても僕が喋り掛けて彼女が応えるのが殆どだ。
「結衣ちゃん、久し振りに週末二人で出掛けようか?何処か行きたい所は有るかい?」
結局、連れて行く場所が思い浮かばす直接聞く事にした。
彼女は少し首を傾げながら「正明さんが行きたい所で良いです。最近忙しそうでしたし、のんびり出来る所が良いですね」彼女は大抵の場合、僕に気を使い自分の希望を言わない。
「のんびりか……温泉とか入りたいな……」
つい本音をポロリといってしまった!
「温泉……そうですね、箱根辺りで一泊すればゆっくり出来ますね」
あれ?あれれ?僕と一泊旅行なのに嫌じゃないのかな?表情を伺っても嬉しそうな気がする。
「そっそれじゃ宿の方は僕が探して予約するよ。貸切湯の有る所が良いよね……」
平静を装い一泊旅行を決定!
「はい、お任せします。楽しみです。じゃデザートの桜餅を用意しますね」
ヨッシャー、一緒に一泊旅行だー!桜餅を小皿に乗せてくれて急須でお茶を淹れてくれる彼女をボーっと見る。
二人で旅行か……初めてじゃないかな?
「正明さん……」
「何だい?」
湯呑みを見ながら彼女が何気ない様に言った。
「今日学校に来たんですか?正明さんを見たって友達が教えてくれました。はい、どうぞ」
無表情で湯飲みを渡してくれた。どっ、どどどどうして?結衣ちゃんと静願ちゃんはイマイチ仲が良くないんだ。本当の事を言ったら気を悪くするかな?
ラッ、ライフカード……ライフカードオープン!
①「うん?行ってないよ」
②「うん、結衣ちゃんの様子を見にね」
③「誰から聞いたんだい?」
④「うん、静願ちゃんの面接の付き添いを頼まれて」
⑤「そんな事より温泉何処行きたい?」
頭の中に五枚のカードが思い浮かんだ!