榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第4話から第6話

第4話

 

 横須賀に有る、施主が資金繰りに困って建設中止になっているマンション。こんなご時世なら良くある話だ。

 しかし再開の目処が有るのか?債権者が事業を受け継ぐのか警備を開始した。

 何時も世話になっている長瀬総合警備保障の社長から、その物件での怪奇現象について相談が有った。

 何でもバイトが一人辞めてしまったので調査をしてくれ!そう頼まれて、早速下調べをしてから乗込んだ。

 

 現在その怪奇現象を起こした本人(霊体?)を確認。先制攻撃とばかりに、愛染明王の真言をぶつけてみたが……

 全く効果が無く、現在見詰め合っています。

 

「あがっ……あががっ……」

 

 奴は右腕を此方に伸ばしながら、ゆっくりと歩き出している。ちゃんと全身を現し、足を使い律儀に歩いて……

 

「これは、戦略的撤退!」

 

 駄目元で清めの塩をばら撒き、振り向いて逃げる。出入口に落としておいた、ケミカルライトを目印に部屋を出て左通路を見る。

 通路沿いに置いたランタンも正常に点いている。

 ダッシュで階段迄走り、後ろを振り向くと……奴が、丁度部屋から出て此方を向いて歩き出すのが見える。

 

「坂崎くん!奴が追ってくる。取り敢えず現場からも離れるぞ!」

 

 先に逃がした彼に檄を飛ばし、階段を駆け下りる。一階まで到着、後ろを振り返らずに一気に外まで出た所で、坂崎君に追いついた。

 肩に手を置いたら「ひぃぃ」とか騒いだが、僕を確認すると走りだす。

 2人で仮設ゲートの前まで到着し、少しだけ気が落ち着いたので後ろの建物を振りかって見れば……真っ暗な建物の3階部分だけ、僕が設置したランタンの灯りが窓から漏れている。

 その窓からユラユラとした人影が3階の角部屋に見えた。

 

「彼はあの部屋に御執心みたいだな。自縛霊かと思ったが、愛染明王の真言が全く効かなかった。まるで何も無い空間に飛ばしたみたいに……

坂崎君、明るくなるまで中には入れない。夜が明ける迄は此処で待機だよ」

 

 本当は、昼間でも心霊現象は起こる。別に連中は夜型ばかりじゃないって事なんだ。

 でも、態々怖い思いをさせるわけにも行かないから、日が出たら再度一緒に行こうと誘う。

 朝の八時になれば、交代要員が現場に来る。その前に再度、現場を確認し装備を回収する。

 今も、問題の3階を見詰めながら話しているが、彼はまだユラユラと窓際に立ち竦んでいる。

 まるで此方を見ている様に……取り敢えずは落ち着く為に、清めの塩を使い円陣を書く。その中に坂崎君が休憩用に持ち出していたパイプ椅子を置いて座る。

 危険を感じたら、直ぐに自転車で逃走出来る準備もしてある。 

 しかし夜通しあんな影が窓から見えていると、噂になるな間違いなく……

 へたり込んでいる坂崎君に、なにか暖かい飲み物を買ってきてくれと千円札を渡しお願いする。彼は少し現場から離した方が良い。

 僕から受け取った千円札を手に、フラフラと外へ出て行った……最悪、彼が戻って来なくても良い。こんな経験をして、戻って来る方が異常だろう。

 清めの塩で簡易な結界を張ったが、一応愛染明王の印を組んで置く。

 

 そして考える……今も3階でフラフラしているアレ……只の霊体じゃない。

 

 乏しい経験から導き出したのは、「生霊」だ!パジャマ姿と言う事は、こんな時間だし本体も就寝中なんだろう。

 無意識に寝ている時に生霊を飛ばしている可能性も有る。顔は酷くやつれて落ち窪んだ眼窩をしていたから、本体の顔を特定するのは無理だろう。

 本体もあんななら、それは酷い状態だ!しかし、入院中って線も……

 

「あっ熱っ……ああ、坂崎君か。脅かさないでよ」

 

 熱々の缶を頬に当てられ驚いて現実に引き戻される。

 

「アイツ……まだ居ますね」

 

 坂崎君は此方を見ずにポツリと零した。アレだけ怖い目に合ったのに戻って来るとは、大した奴だ。

 

「ああ、どうやらあの部屋に問題が有るんだろうね」

 

 熱い缶のプルトップを空けて一口飲む。

 

「んっ?坂崎君、なにコレ?カレーリゾット?はぁこれ何なの?

カレーは飲み物とか大食いタレントが言ってたけど、まさかダイドードリンコって、ええ?」

 

 ショート缶だから、てっきりコーヒーかと思えばカレー?缶をマジマジと見れば、ダイドードリンコの「とろとろ煮込んだカレーリゾット」だと!

 ツブツブのコンニャクの食感がまた空腹を促すのか?流石はダイドードリンコ!

 ネタで仕込むには最高のドリンクだよ……

 そんな彼の手には、伊藤園の「なめこ・ワカメ・ネギ入りみそ汁」を持っている。

 

「伊藤園さん……ダイドードリンコさん……企業的にアリな戦略商品なんですかコレ?」

 

 そのまま椅子に座り込み、残りを飲む……薄口のサラサラしたカレー味で飲みやすいかな?

 インパクトはデカかったが、味は基本を抑えていたので飲み干した。驚かされたが、まぁ美味しいと言って良い商品だった。

 しかしカレー臭が少し口に残るかな……

 

「何処で売ってたの?このキワ物商品、初めてみたよ」

 

 坂崎君もみそ汁を飲み干して

 

「ああ、その先の懐かしい雑貨屋みたいな商店の自動販売機に有りましたよ」

 

 雑貨屋?昼間来た時に入った、ロリッ子が店番していたアレか!流石に外の自販機の商品まではチェックしてなかったな。

 結衣ちゃんの為に、今度ネタで買っておくか……

 そんな馬鹿話をしながら時間を潰していると、午前3時半過ぎに問題の影は消えた。明け方、周りが明るくなってから再度建物に突入する。

 

「坂崎君、怖いなら外で待っていてくれても良いよ。今日は資材を回収したら引き上げだから。長瀬社長には、僕から連絡をいれるから」

 

 建物の入口に少し入り、外に居る彼に話し掛ける。大分怖い思いをしたんだから……

 

「榎本さん……僕、今晩も警備のシフトに入ってるんですよ。今晩はどうしたら良いのか」

 

 そう良いながら、建物の中に入って来る。結構肝は据わっているんだろう。

 初めてじゃない心霊体験だが、普通なら怖くて仕方ない筈なのに、なんの対抗手段も持ってないのに。

 

「いや、今晩は建物の外部からの警戒にしよう。僕も、もう少し調べてみるから……危険な奴が、本物の心霊現象が発生したのは確かだ。

でも、公表すると面白がってくる奴とか興味本位でくる馬鹿が必ず居るから。君はそいつ等を建物に侵入させない事が仕事だよ」

 

 溜め息をつきながら、これからの事を考える。

 

「交代の連中は7時半に来ますが……彼らは昼間は建物内に入っても平気ですかね?」

 

「昼間の連中も中には入れない方が良いよね。理由は……教えないほうが良いかな。

また辞めちゃう奴が出るかも知れないし。7時を過ぎたら、長瀬社長に報告をするから交代要員に指示して貰おう」

 

 階段を登り、3階のフロアまで登ってきた。室内の窓から朝日が差し込み、廊下の部分を照らしている。

 朝もやの中に、幾つもの光のラインが走っている……幻想的だけど、奴はもう居なくなったのかな?

 問題の部屋の前に来る。気休めだが、数珠と清めの塩を構えてから中に入る……

 何も無い、誰も居ない室内。夕べ奴が立っていた、叩いていた壁の部分を見る。

 特に問題は無さそうな……

 

「アレ?これ何ですかね。何か壁に書いてありますよ……ローマ字に数字かな?でも掠れて……何て書いてあるんだろ」

 

 彼の見ている部分を覗くと

 

「ん……FL+1.000か。これは仕上りのフロアレベルから1m上の高さを示しているんだよ」

 

 関係無さそうだな。

 

 もう一度、周辺の床や壁を見たけど気になる部分は何も無い。叩いていた壁には窓用の開口が有り、外の景色が良く見える……

 角部屋だと2方向が外部に面しており、採光が取り易くそして値段も高くなる。

 この室内の広さと最上階の角部屋と言う立地を考えると、相場でも4000万円台かな。正面の大きな開口は海を一望出来る作りになっており、此方の窓は山側……

 丁度、ロリッ子商店の通りが見渡せる。

 ああ、アレが妖しい商品を売っている自販機か。丁度ロリッ子が店から出てきて、母親かな?

 女性と2人でタクシーに乗込んで行った……平日の早朝にか?

 

「榎本さん?とうしました?ボーっと窓の外を見て……何か有りましたか?」

 

 坂崎君が不審な顔で此方を見ている。

 

「ああ……さっき君から貰った、妖しい缶ジュース?アレはあの自販機で買ったんだね?」

 

 窓の外を見ながら聞くと、ヒョイッと覗きながら

 

「そうですよ。昼間は良く買い物に行くんですよ。結構な美人の奥さんが店番してるんですよね、えへへへ」

 

 彼は、年上のお姉様属性で、多分M男君だと僕は予測している。時代の最先端はロリなのに、流行に逆らうから彼女が出来ないんだぞ……

 

 全く、ロリは正義!

 

 日本の未来を背負うのはロリと、それを尊重する紳士だけなのだ。育ちすぎた女性は、出産率の低下やシングル率も高いのだよ。

 昔エロい人が言ったではないか。

 

 人は石垣、人は城。生めよ育てよ、と……もっと若い段階で結婚を奨励した方が良いのだよ。

 

「榎本さん……言葉が駄々漏れしていますよ。そして間違っています。

女性とは熟成してこそ、その美に磨きが掛かるのです。ダイヤの原石とか言いますが、磨かなければタダの屑石と変わらないのです。

昔エロい人が言いました。

肉も果物も女性も、腐り掛けが一番美味しいと……発酵食品を見てください。納豆・チーズ・ヨーグルトいやケフィアです。

全て美味しい物では有りませんか!

青い果実など、苦くてしょっぱくて食べれませんね」

 

 こっコイツ……腐ってやがる、年上お姉様趣味かと思えば……

 更に高みに登りやがった。

 熟女だと……無理、無理だよ僕には……

 

「食わず嫌いと思われても、僕はフレッシュな?もぎたての果実が食べたいんだ」

 

 話は平行線に突入したまま、全ての機材を収集に建物を出る。時計を確認すれば、午前7時少し前……では長瀬社長に電話を掛けるかな。

 内ポケットから携帯を取り出し、登録している番号を検索して彼の携帯に連絡する。

 何度目かの呼出音の後に繋がった

 

「……おはよう、榎本君。昨夜はご苦労様だったね。で、どうだった?」

 

「昨夜、坂崎君も確認しましたが……居ましたよ、痩せこけた中年の男が。しかし霊体かと思いましたが、愛染明王の真言が通じなかった……

僕は生霊かと思います。ええ、お払いは出来ませんでした。これは、調査が必要なので警備については建物の廻りだけで」

 

「……君から見て危険かい?」

 

 危険か、危険でないか……

 

 心霊現象など危険以外の何者でもないと思うけどね。

 

「危険だと思います。残念ながら、僕の通常の技では効果が無い。ならば、原因を探って対策を講じるか……」

 

「……より強い霊能力者をぶつけるか、かい?」

 

「そうですね。しかし強さと金額が比例するとは限らないこの業界ですから……」

 

 無論、本物は居る。しかし彼らは総じて高い除霊料金を請求する。

 己の命を賭けて挑む事と、自身の技術に自信が有るから……

 

「榎本君で何とかならないかな?日数は掛かっても構わない。とは言え、うちの警備期間は今月中だから……正味3週間だけどね」

 

 3週間か……生霊の人物の特定と、その怨嗟の根本を探し出すにはギリギリかな。

 

「やるだけの事はしてみますが……見通しが立つまでは、警備を外周のみに限定して下さい。

多分、昨夜一晩中3階のフロアに徘徊する影が居ましたから……興味本位な連中が来る可能性が高いですよ」

 

「それで構わない……出来れば原因を突き止めて欲しい。駄目なら、次の警備会社に申し送りをするまでだが……」

 

 そう言って電話を切った。

 

「さて、調査しますかね……」

 

 

第5話

 

 長瀬総合警備保障㈱

 

 主に商業ビルの巡回警備を請けている警備会社だ。社員60人の中小企業に分類されるが、社員教育が充実していて商品を扱うテナントを擁するビルオーナーからも信頼は厚い。

 

「榎本君にして、難しいか……」

 

 長い付き合いの中で、彼に頼んで解決出来なかった物件は無い。

 逆に他で調べて貰って問題有り・解決出来ない、と言われた案件も霊障が無くなったと報告を受けた事が有る。

 つまり彼が何もしていない・調べても何も無いと報告を受けた。確かに、その後に霊障は治まっている……

 どんな案件でも、彼が関われば治まっている。もし自身が解決したならば、正規に報酬を要求するし此方も払う用意が有る。

 他で危険と判断された物件を解決したのだ。

 個人事務所としても、随分な宣伝になるだろう……彼は個人経営だからと経費は掛からないと、相場よりも安いし明朗会計だ。

 ちゃんと必要経費や使った機材の項目を記載した見積書を出してくる。あやふやな表現も無いし、労務費だって実働日で換算している。

 心霊を抜かして調査事務所として一般会計に廻せる内容なんだが、彼は有名になる事・注目を集める事を極端に嫌がる。

 良く居る自称霊能力者の一式幾らで、成功したら報酬を吊り上げたりもしない。

 

「何故なんだろうねぇ……危険な仕事なのに商売っ気が無いのは、気になるんだけどね。

生霊か……たしか生霊や死霊を得意とする霊能力者が居て、仕事を紹介して欲しいって言っていたな……

梓巫女の桜岡霞か、お試しで使ってみるか。

偉い美人さんらしいし、榎本君も殺伐とした霊障現場が華やぐから嬉しいだろう」

 

 そう言って彼女に連絡を入れる事にした。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 夜勤明けで自宅に戻ると、台所に朝食が用意してあった。 

 結衣ちゃんが、オニギリを3個と甘めの卵焼きを作ってテーブルに用意しておいてくれたんだ。

 急須と湯飲みもセットされている。彼女は既に学校に行ったんだろう。大人しく自己主張の無い彼女は、昔から苛められていた事が多かったらしい。

 最近のガキは不良でなくても、苛める側に廻るのなんて普通だ。少しでも他と違えば、イジメに発展する。

 しかも陰湿ときていやがる。

 先生達も事なかれ主義でイジメを絶対認めないし、有ったとしても知らなかったとか平気でほざく。

 だから筋肉同盟の友人や、その筋の仕事関係者を集めて運動会に参加したんだ。

 自慢じゃないがイケメンでも何でも無いオッサン集団だが、厳つい顔と肉体には自信が有る連中だ。

 結衣ちゃんを苛めたら、筋肉馬鹿の集団が何をするか分らないからな?

 まぁロリッ子を囲む肉体派の連中の輪をみて、彼女をどうこうしようとは思うまい。逆に彼女が孤立してしまうかと心配もしたんだが、何人かの友達もできたみたいだ。

 もし苛める奴がいたら、構わず相手に呪いを掛けるけど。

 結衣ちゃんは実の母親とその交際相手の男達に、家庭内暴力を受けていた過去があるから……

 嫌な過去を思い出させる様な奴には、死ぬほど後悔させてやる。

 

 急須のフタを開けると、ほうじ茶の茶葉が入っている。ほうじ茶を美味しく淹れる方法は、沸騰したお湯を一気に入れる事で香ばしい香りが引き立つ事。

 多めにお湯を急須に入れて茶葉が開くのを待つ。

 茶葉が開くまで暫く待ち、その間に電子レンジでオニギリを暖める。

 30秒程待って湯飲みにお茶を注ぐ。

 

 良い香りだ……

 

 オッサンはお酒とお茶が大好きだからね。電子レンジからオニギリを出して一つを齧る。

 具は梅干か。彼女は必ず複数の具を用意するから、他の2つは違う具材だろう。

 立ったままで一つ目のオニギリを食べ終え、残りと湯呑みをお盆にのせて応接セットに向かう。

 ソファーに座り、ボンヤリと先程の調査について考える……

 

 生霊……

 

 箱が反応しなかったのは、大した相手ではないのか食指が動かなかったかのどちらかだ。つまり、アレによる強制終了は無い。

 有っても生霊とは、文字通り生きている相手がいるのだから後味が悪いから……情報を整理しよう。

 先ずは奴の服装だが、青白ストライプのパジャマだ。これで特定は難しい。

 病院のお仕着せのパジャマだったら直ぐに特定できるが、良く有る市販品らしいパジャマでは……

 それこそ付近の病院の入院患者を虱潰しで探すしかないし、毎日同じ柄を着ているとも限らない。

 表情だが、見たのは落ち窪んだ暗い眼窩の顔で有り、これも特定は難しい。

 生霊の表情は千差万別で、酷い顔をしていたり怖い顔をしていたり……逆に普通だったりもする。

 つまりは、見た目では個人の特定は出来ない。

 

 次は、奴の行動だ。

 3階の角部屋に固執する意味が分からない。あの部屋の中で、何か心残りな出来事が有ったのか?

 工事中の建屋の中での事だと、工事関係者と考えられる。建設に携わった連中で、長期療養中の奴が居るか?

 この建物は、内装が手付かずだ……それにあの部屋に入れる工事関係者も絞られる。

 具体的には現場監督・型枠大工・鉄筋工・鳶土工・墨出工、後は埋設配管を行う電気・設備工の連中だ。

 これは、当時の現場監督を探し出し金を握らせて調べさせるのが一番だ。

 当時の作業日報や作業員名簿とかも有るだろうから、名前が分かれば調査はし易い。

 最悪は資料だけ貰って、別枠で興信所を使っても良いか長瀬さんに相談してみるか……

 

 あと考えられるのは、窓の外の景色だけど。これも特定は難しいな。

 見える景色全てを調べてたら3週間じゃ終わらないよ。

 考えに耽っていたら、全てオニギリを完食していた!

 折角、結衣ちゃんが作ってくれたのに味わう間も無く完食って?温くなったほうじ茶を飲み干してから、食器を洗い乾燥器の中に入れておく。

 さて、風呂に入ってから仮眠をとるかな。寝不足では、考えも纏まらないだろう……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 携帯電話の目覚まし機能の電子音で目が覚めた。時刻は、午後3時……

 そろそろ結衣ちゃんも帰ってくるだろうから、グウグウ寝ている訳にはいかない。ベットから起き上がり、部屋着に着替えて簡単な身嗜みをする。

 イケメンでない分、清潔感は持たなければ!

 窓の外を見ると、雨雲が広がっており今にも雨が降り出しそうだ。テレビを付けて、天気予報がやっているかを調べる。

 ケーブルテレビのお天気専門チャンネルを見れば、神奈川県東部三浦半島は……雨だ。

 明日の午前中まで、降水確率は80%を越えている。

 

「やれやれ、坂崎君も大変だな。雨なのに外で一晩中警備をするのか。途中で様子を見に行こうかな……」

 

 昨日の今日で、一人で心霊現場に夜間警備じゃ可愛そうだからね。差し入れ位はしてあげましょう。

 結衣ちゃんにお帰りを言う為に、1階の居間に移動しようとしたら、携帯が鳴り出した。

 ディスプレイを確認すれば「長瀬総合警備保障㈱長瀬社長」となっている。

 

 何か有ったのかな?

 

「もしもし?榎本です」

 

「ああ、榎本くんか。今、電話は大丈夫かい?」

 

「ええ、仮眠から起きたところです。何か有りましたか?」

 

「ふふふふ、榎本君に良い知らせだよ。生霊に詳しい専門家をそちらに送るよ」

 

「それでは今回の件は、その人に引継ぎをして完了で良いですか?」

 

 生霊の専門家なら、お任せして平気だろう。長瀬社長が頼む位だから、裏は取れてる本物なんだろう。

 

「いや、今回は彼女と協力して当たって欲しい。梓巫女の桜岡霞君だ。本物だったら、今後もお付き合いを願いたい相手なんだ。宜しく頼むよ」

 

 桜岡霞?「本当に有った怖い○○」とか「信じるか信じないかは貴方次第です」とかに出てくる霊能者じゃないか!

 

「長瀬さん?そんな大物なら僕は要らないですよね?面倒くさいから嫌ですよ」

 

 僕自身が脛に傷を持つ身なんだ。お茶の間の有名美人霊能力者なんかと一緒だったら、悪目立ちしてしょうがないぞ。

 

「そこを何とか頼むよ。彼女はかなりの美人らしいし、恩を売るのは良い事だと思うぞ?」

 

 彼女のプロフィールを思い出す。

 巫女さん……日本美人……巨乳……性格はドS……お姉さん属性……却下だ!

 僕はロリっ子が大好きなんだ!でも坂崎君にはご馳走だね。

 

「霊能力者同士は共闘は難しいんです。お互いに、同業者には秘密にしたい事が有りますから。

どうしてもと言うなら、今回は僕が辞退しますが……申し訳有りません」

 

 そう電話越しだが、頭を下げる。

 

「そうか……では仕方ないな。僕は榎本君の方を信用しているから、残念だが彼女の方を断るよ。引き続き調査を頼むよ」

 

 そう言って電話を切られた……申し訳ないけど力有る霊能力者と共闘すれば、箱の秘密がバレるかも知れない。

 危険は犯したくないんだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 やれやれ、まさか辞退する程に嫌がるとはね……今、売り出し中の美人霊能力者を遠ざける意味が分からない。

 業界の先輩として、榎本君は本当の霊能力を持ち安くて堅実で有名なんだ。

 彼は自分では思っていないだろうけど、この業界では「困ったら榎本心霊調査事務所へ」って言われてるんだよ。

 大手各社は専属の霊能力者を抱えているから触手は伸ばさないが、機会が有れば紹介して欲しいと依頼も有る。

 彼が嫌がるなら、彼女を断るのは構わないのだが……

 

「電話で話した感じでも、かなり気の強い女性だった。先任者から協力体制は嫌だからなんて言っても、引き下がるかどうか……」

 

 気が重いが、仕方ないか。デスクに貼ってある付箋に、彼女の携帯電話と事務所の電話番号が書いてある。

 

「先ずは、事務所から掛けるかな……」

 

 気が重いためか、指はかなりゆっくりとボタンを押していく。仕事を頼んで直ぐにキャンセルだからな……

 

 

 

 結果だが金は要らないが、この件には関わると強く押し切られた!

 

 

 

 すまない、榎本君。君は、その、かなり恨まれてしまったよ。先程の彼女の剣幕を考えても、実力不足で断られたと思ったんだろう……

 

「俺の仕事に口出しするな!」

 

 それ位、言われたと受け取っているぞ。あれなら今晩にでも、現場に押しかけるな。

 さてどうするか……もう一度、榎本君にあやまりの電話をかけるのも億劫だし。なるようになれば良いかな?

 僕は、桜岡君の依頼は取り下げた。だから彼女が、その後にどう動くかは彼女の自由だな。

 

 うん、そうだ!

 

 もう良い大人の男女なんだし、あとは彼らの問題だ。なにか有れば、榎本君も連絡してくるだろう。

 彼らの事を頭の隅に追いやり、次の仕事の事に頭を切り替える。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「結衣ちゃん、おかわり!」

 

 元気よく茶碗を彼女に差し出す。

 

「はい、どうぞ。たくさん食べて下さいね」

 

 ご飯を大盛りによそった茶碗を渡してくれる。

 今夜のメニューは、八宝菜・揚げだし豆腐・ホウレン草の御浸し、それと卵焼きに油揚げとジャガイモの味噌汁だ。

 昨夜は揚げ物だったから、色々と飽きない様にメニューを考えてくれる。

 この八宝菜も、豚肉・チンゲン菜・椎茸・人参・竹ノ子と具沢山だ!野菜をちゃんと食べる様に考えているのだろう。

 オッサンに配慮したメニューが多い。

 勿論、僕は彼女の手料理は何でも残さず食べるけどね。

 

「そうだ!今晩も様子見だけだけど、昨日の現場に行ってくるよ」

 

 坂崎君の様子見と、適当なホカ弁でも買って差し入れよう。

 

「大変なんですね。体に気を付けて下さいね。何か残り物で、お夜食を作っておきますから」

 

 はにかみながら、仰って下さいました!ええ子やなー、結衣ちゃんは……

 やはり家庭的なロリっ子ってサイコー!

 彼女との幸せな同棲生活?を守る為にも、変に目立たない様に気を付けなければ駄目だね。

 

 

第6話

 

 長瀬社長からの電話を切ってから、デスクの椅子に深々と座り考える……外を見れば、暗い雲が立ち込めてきたわね。

 今夜は雨かしら?

 先程の話を噛み砕いて考えてみる……この私に一度仕事を依頼して、直ぐにキャンセルするなんて……

 先方は理由を濁したけれど、先約の霊能力者が私との仕事を嫌がったのだろう。

 

 榎本心霊調査事務所……

 

 調べてみても、大した事も無い弱小の部類でしかない。本人一人だけの個人事務所でしかないし、大手企業と専属契約を結んでいる訳でもない。

 ただ数少ない本物の霊能力者である事は確からしい。しかも、この業界では珍しく明朗会計と言う変な事務所らしい。

 何が有るか分からない、命懸けの仕事をテンプレートみたいな価格設定で行っているとは、欲が無いのか馬鹿なのか?

 

 しかし……

 

 長瀬社長は、私よりも相手を取った。私の実績は知っている筈だし、彼が調査して霊障は生霊が原因だと報告し生霊の対処は不得意と知りながらあえて私の方を断った。

 何か彼に有るのだろうか?安いから?長年の付き合いから?私が女だから?

 何か、私では勝てない要素が有るのかしら……

 私だって厳しい修行に耐えて、この力を手に入れたの。霊障で苦しんでいる人達を助ける為に!

 それでお金が貰えるなら一石二鳥だしね。

 でもついカッとなってしまい、お金は要らないけど、この件には関わると言ってしまったが……

 

「後悔させてあげるわよ。この私を袖にしたんですからね。おーっほっほっほー!」

 

 桜岡除霊事務所内で響き渡る高笑い……

 所長室の隣で待機していた電話番のバイト薊 菊里(あざみ きくり)と田鶴 更紗(たずる さらさ)の2人は頭を抱えていた。

 

「また霞さんの高笑いが始まったわね」

 

「うん。今日は一段と切れが良いわ……よっぽど良い事が有ったのかしらね?」

 

 実はテレビにも出ている桜岡霞は有名人だ。しかも美人だし巫女服だし、胡散臭い霊能力者だし……

 だから引切り無しに電話やメールが届く。

 仕事の依頼だけでなく、冷やかし・嫌がらせ等の迷惑な問い合わせが殆どだ。

 中には、他の(自称)霊能力者からの果たし状?や見た目に騙されたのか結婚の申し込みとか……

 サインと実印を押した結婚届が送られてきた時にはドン引きした。

 添えられた写真は……本人の名誉の為にも伏せなければならない人物だったとだけ、言っておく。

 あと馬鹿に出来ないのが、郵便物と小包だ。これも封を開けると、言葉に出来ない不思議な物が多々有る。

 流石に爆発物とかは無かったが、嫌がらせの剃刀やゴミなどは当たり前。怪しい人形や、どう見ても危険な手作りの何かも送られてくる。

 これらは金属探知機に掛けて、知ってる人以外で送られてきた食べ物は殆ど捨てる。

 人形やら呪術的な品物は、霞さんに見て貰い相手に返す。相手が分からなければ、お払いするか……捨てる。

 一寸した貴金属やブランド物などは勿体無いと思ったが、呪術の中には一寸した金品に呪いが掛かっており、知らずに受け取ると呪いが発動するとか……

 しかも、その呪いは持ち主に富を与えるが代償を求められる。

 その代償を知らずに携帯すると、呪いが発動するという巧妙さだ。なんて嫌な世界なんでしょう……

 でも大抵の物には、そんな物は掛かってないので内緒でリサイクルショップに引き取って貰っている。

 結構な金額になっていて、良い臨時収入です。等と考えていたら、霞さんが所長室から出てきて

 

「今夜は仕事で出掛けるから、私は先に帰って仮眠するわ。貴女達も定時になったらお帰りなさいな」

 

 そう言って、事務所を出て行った。

 

「今夜はテレビ関係の仕事も無かったわよね?」

 

「そうね……予定表にも、除霊現場の仕事は無いわ。急に何か有ったのかしらね?」

 

 私達は顔を見合わせながら考えたが、特に問題ないと思った。

 私達は、あくまでも電話番のバイトであり霊障現場には同行しないのだから……

 

「更紗ちん、今日帰りに上大岡のタカノフルーツパーラーに寄っていかない?」

 

「いいわよ。特製パフェを二人で食べましょう!」

 

 3000円もする巨大なフルーツてんこ盛りなパフェを思い浮かべながら、残りの手紙のチェックをする手を早めた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 彼女達に指示を出し、地下駐車場に停めてある愛車に向かう。

 スカイラインR34-GTターボ!

 AT仕様だが何ちゃってスポーツカーが気に入っている。

 この手の車でAT仕様なのは何だかなーって思うけど、マニュアルはかったるいし別に走りに拘りが有る訳でもない。

 駐車場を出て、のんびりと国道を自宅へと走る……15分ほど走るとフロントガラスにポツポツと水滴が付きだした。

 

「ああ、降り出したわね。雨って嫌いなのよね、濡れると髪が重くなるし服は透けるし……」

 

 前にテレビの除霊現場で豪雨に合い、只の自然現象だったのに霊障とか騒ぎ出して……びしょ濡れのままで撮影を続けたのよね。

 

 あのエロディレクター!ジロジロと私を視姦しやがって!

 

 今、思い出しても腹が煮え繰り返すわね。

 その回の視聴率が高かったのは、除霊の内容でなく私の透けた巫女服だとか言いやがって!

 あれからよね、変な手紙やメールが来る様になったのは……

 

「梓巫女霞・濡れ濡れ除霊スペシャル」ってどんなエロビデオのタイトルなのよ!

 

 ゴールデンタイムで、こんな特番を放映するから大変なんだからね。

 TV局の役員を軒並み下痢にさせたら謝罪会見をしたけど、世間に定着した私のイメージはガタ落ちだわ!

 しかし正式な除霊には、決められた手順が必要だし精神集中にも欠かせないので仕方ないのよ。

 しかも今夜は、同業者に宣戦布告みたいな事をしなければならないのだから……

 バッチリ正装で行かなければならないわね。今夜の対策を考えていたら自宅に着いた。

 新興住宅街に有る低層マンションが私の家。

 巫女が神社でなくて、近代的なマンションに住むなんて変だと思うかも知れないけどね。

 

 私は巫女と言っても、神社で奉仕する緋袴の巫女とは違う。現代の巫女は神職ではなく神社に奉職する女性の総称だ。

 梓巫女とは古来より特定の神社に所属せず、各地を渡り歩いて人々を助けた女性達だ。

 吉兆の占い・厄落とし・口寄せを行う先代の梓巫女に師事し、適正があった厄落としと口寄せが免許皆伝となった。

 誰も居ない一人暮らしは気楽な物だ。玄関を開けて、セコムを解除しベッドにダイブする。

 今夜は仕事だから、このまま眠ってしまいたいが……化粧を落としてお肌の手入れをしなければ大変な事になる。

 只でさえ不規則で有りストレスの多い仕事なんだから、お手入れを怠ると大変なのよ。

 菊里や更紗みたいにピチピチして水を弾く肌でなく、私はしっとり肌なんですからね!

 疲れた体に鞭を打ち、バスルームに向かう。

 夕食?勿論デリバリーよ!手作り?ナニを女性に幻想を抱いているのかしら?

 最近は蕎麦屋か中華屋やピザやデリバリーガスト等、色々有るから迷っちゃうわ。

 あと欠かさないのは焼酎ね!百年の孤独や森伊蔵が最近のお気に入りよ。

 

 ワイン?シャンパン?カクテル?なにそれ?かったるい飲み物ね!

 

 今夜はピザのカレーモントレーのMサイズに焼酎の抹茶割りで決まりね!

 残念ながら、彼女は見た目は美人だが中身はオッサンだった……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 愛車のR34-GTターボで問題の建物の前の仮設ゲート前に横付けする。シトシトと降る雨の中、問題の建物を見上げれば……

 確かに禍々しい何かを感じるわね。

 特に3階の角部屋が怪しいと言っていたが、残念だが私には其処まで特定出来る力は無い。

 見ただけで場所や原因が特定出来るなら苦労はないのだけど……そんな万能な霊能力者など歴史上の有名人物くらいだろう。

 ボーっと見上げていたら、ゲートのくぐり戸から誰か出てきたわ。

 彼が、あの榎本……じゃないわね。

 警備員の服装だから、彼は長瀬総合警備保障の社員かしら?

 

「あのー?ここは私有地で立入禁止なので車の移動を……って、あれ?お姉さんもしかして桜岡霞さんですか?」

 

 馬鹿ヅラ下げて私を凝視する彼は、私の事を知っているのね。まぁ悪い気はしないわね、私の知名度も大した物だわ。

 

「ええ、そうよ。この建物で問題があるとお宅の社長から聞いたのよ。だから調べにきたの」

 

 にっこりと笑顔のサービスをしてあげるわ。

 勿論、仕事は断られたけど話を聞いたのは本当だから嘘はついていないの。

 

「ああ、そうでしたか。そろそろ榎本さんも来るので、共同で除霊するんですか?」

 

 アイツ、そろそろ来るのね。そうね、直接対決の前に情報を仕入れておこうかしら……

 

「共同戦線を張るのは相談次第かしら?それで榎本さんって、どんな人なのかしら?どんな力を持っているのか教えて欲しいわ」

 

 胸を強調する様にお願いする。案の定、鼻の下を伸ばして私の胸元を見つめているわ……

 全く男って奴は、みんなスケベで下品で最低だわ。

 

「榎本さんですか?そうですね……筋肉質の短毛種で、愛染明王の力を借りて除霊をするそうですよ」

 

 愛染明王って事は、真言系仏教宗派ね。泉涌寺派かしら?

 

「個人の除霊事務所を構えていると聞いたけど、お坊さんなのかしら?」

 

 どこかの寺に所属しているなら、調べようは色々有るわね。ただ正式に何処かのお寺に所属しているのに、単独の事務所を構えるのは問題が有る筈よ。

 

「在家僧侶って言ってましたよ……ここは濡れるので、中に入って下さい。榎本さんから建物の中に入るのは禁止されてますが、テントを用意してありますから。

ささ、どうぞどうぞ此方へ……」

 

 見ればアウトドアで使う様なテントが設置され、椅子が幾つか置いてあるわね。

 こんなシトシト雨の降る吹き曝しの場所で、立ち話もなんだわね。車のエンジンを切って中に入ろうとすると、微妙な顔をされたわ?

 

「どうかしました?この場所に駐車するのは邪魔かしら?」

 

 一応警備員だし、職場の前に不法駐車は問題だったのかしら?

 

「いえ、榎本さんは退路の確保を重視していて……車やバイクは霊障で動かなくなる場合が有るから、現場近くに車を停めて自転車できますから」

 

 ああ、なる程ね……確かに霊障で、電子機器が壊れるのは聞くわ。

 車だって電装品がイカれればエンジンが掛からないわ。

 

「確かに慎重な方なのね。でも何故自転車なのかしら?」

 

 私は自転車は乗れないの!悪いけど、運動神経は良くないの!

 

「自分の肉体のポテンシャルだけで最高40km位のスピード出せますし、何も危険は霊だけでないから?」

 

 何故、疑問系なの?

 

「霊だけでない?」

 

「いや、ヤクザや不法侵入者・キチガイや浮浪者とか危険は人間の方が多いって。だから、逃走手段は十分に用意するそうです。

でも結構な武闘派だから、一人二人位なら肉体言語でKO出来る人ですよ?」

 

 筋肉馬鹿の武闘派って……確実に脳ミソ筋肉君じゃない!そんなのと共同戦線なんて嫌だわ!

 只でさえ人気の無い所ばかり行くのよ。私の美貌にクラクラっときたら?か弱い私では抵抗も出来ないのよ!

 

「結構危険な人なのね……私、怖いわ……」

 

 貞操の危機だわ!私を監禁して陵辱するかも知れないわ……

 

「大丈夫ですよ!あれで紳士だし、女性には優しい人ですから……噂をすれば来たみたいですよ」

 

 彼の目線を追えば、折り畳み自転車をゲートの中に入れている男を見た。

 なんて言うか……見た目は普通のオッサンだわ。

 

 


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