榎本心霊調査事務所(修正版)   作:Amber bird

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第48話から第50話

第48話

 

 桜岡さんと彼女の荷物を乗せて自宅に向かう。時間短縮の為、最寄りのインターから高速道路に乗って80キロ巡航。

 都心と逆方向に向かっているせいか、道は空いている。これなら50分と掛からず自宅に着くだろう。FM横浜を聞きながら多少の眠気を誤魔化す為に珈琲を飲む。

 何時もはミルクと砂糖inだが、仕方無くブラックだ。チビチビと飲みながら運転していると、気遣いながら彼女が話し掛けてくる。

 

「榎本さん。本当に良いのですか?この件は既にテレビ局の依頼から逸脱してますわ。私だけが狙われていますから……」

 

 珈琲を買った時に渡した彼女の分はフルーツオレ。未だ蓋も空けてないペットボトルを握る手に力が入っているのが見て取れる。

 

「いや。君が寝ている時に馴染みの興信所に調査を依頼したんだ。その時、僕の事を調べている奴が居る事を聞いた。

既に相手は僕の事も知っているんだ。だから手を引く訳にはいかない」

 

 どの時点で目を付けられたか分からない。しかし対応が素早いのは侮り難い相手に違いない。

 

「榎本さんまで?でっては、私が榎本さんの家に行くのは却って良くは無いのでは有りませんか?それに結衣ちゃんにも危害が……」

 

 どちらにとっても対象者が一カ所に集まれば対応し易い。当事者が集中してれば、周りに被害が及ぶ可能性も有るよな。

 桜岡さんも中々考えているね。珈琲を一口飲んで唇を湿らす。

 

「結衣ちゃんにはガードを付けたよ。彼女を巻き込む訳には行かない。桜岡さんのガードは僕がするよ。

どっちにしても調査で一緒に行動するし、八王子に調査用の拠点を設けないと移動時間が勿体無いしね」

 

 ウィークリーマンションか何かを借りるかな。ホテルや旅館は夜に出入りをするには不向きだし、深夜ばかり出歩くのは不自然だからね。

 その点、部屋を借りれば自由度は増す。滞在費用を抑える為にもマンションを借りた方が安いだろう。

 ネットで相場を調べてから現地の不動産屋に行くか……防衛拠点としての立地条件も考えないと駄目だな。

 いっそのことお寺か神社に間借り出来ないかな?

 既に神域としての結界が有るから、補強すればかなりの力になる。実際にお寺に間借りするとお勤めの手伝いとかやらされるからなー。

 特に僕は僧籍持ってるし。中々考えが纏まらない。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「興信所?ガード?えっ榎本さんが私を護る……そっそれって、コッコッコッ告白……」

 

 突然、携帯電話の呼び出し音が鳴り響く。私の携帯電話だわ。全くタイミングが悪すぎるわ。

 表示されたディスプレイを見れば、マネージャーさんからだわ。

 

「もしもし、桜岡ですわ」

 

「おはようございます、石川です。あれから連絡が無くて心配したんですよ」

 

 いけない、忘れてしまってたわ。

 

「連絡が遅くなってごめんなさい。実は自宅にまでアレが追ってきて……今は避難中なんです」

 

 榎本さんのお家に呼ばれたんですとは、流石に言えないわ。

 

「えっ?大丈夫じゃないじゃないですか!何を呑気に」

 

「その辺は心配しないで。私も本職ですから対策は練ってます。ただ私個人を攻めてきてますから、企画の継続は要相談ですわ。

自力で……いえ、榎本さんと何とかしますから暫くは様子を見て下さい。西川さんには私から説明します」

 

 私独りでは何とも出来ないけど、私には彼が居るから心配してないの。

 

「分かりました。じゃ落ち着いたら連絡してよね。分かった?」

 

 言い含める様に言われてしまったわ。ハイハイと言って電話を切る。随分話し込んでしまったのか、周りの景色を見れば佐原インターを下りる所だわ。

 確か榎本さんの家までは、此処から一般道を10分位ね。

 

 あっ!忘れていたわ、バイトの子達の事を……

 

 今の時間帯は学校よね。一度事務所に行って彼女達と話をしないと。この件が解決する迄はお休みよね。

 私の事務所も調べれば分かるだろうし、結界も弱いから……榎本さんに相談して一度来て貰った方が良いわ。

 頼りの男を見れば欠伸を噛み殺していた……余裕が有って頼もしい。

 でも昨夜は殆ど寝てないみたいだし、榎本さんの家に着いたら仮眠をとって貰わないと駄目かしら?暫くすると二階建ての洋風な個人邸の前に停車したわ。

 ガレージの門を開けて、車を入れる。ガレージの中には、可愛い感じのスクーターに折り畳み式自転車。

 壁には幾つものスチール製の棚が並んでいる。あれらには何時も持ってくる秘密道具が入っているのかしら?興味が有るのだけれど、榎本さんはズンズン進んでしまう。

 後に着いて行けば玄関の前。鍵穴は二つ、しかもディスクシリンダーね。防犯カメラも有るし、やはり自宅の警備は一般・心霊共にしっかりしている。

 これは見習わなくてはならないわ。

 

「さぁどうぞ!狭いけど気にせずに。三浦の家よりは綺麗だからね」

 

 彼の自宅に初めて招かれた。全体的に落ち着いた色合いの洋風建築ね。お坊様なのに和風の家じゃないなんて、何か不思議だわ。

 

「お邪魔致しますわ」本当は「ただいま」なんでしょうけど、一応ね?

 

 結衣ちゃんが学校に行った為に戸締まりのされていた雨戸を榎本さんが開けて行く。玄関の脇のリビングに外の明かりが入ると……

シックで品良く纏められた空間だわ。どちらのセンスなのかしら?

 

「桜岡さん、何飲む?お酒は駄目だからね」

 

「日本茶をお願いしますわ。それと持ち込んだお酒ですが、榎本さんは晩酌はなさるのですか?」

 

 日本茶は結衣ちゃん譲りで淹れ方は本格的だ。先ずは急須・湯呑みにお湯を淹れて温める。これは玉露の茶葉は熱湯でなく50℃と低いお湯が最適な為、それ以上冷やさない様にする為だ。

 茶葉は柳川茶房の新茶の玉露を用意。大さじ一杯に約80ccのお湯を注ぐ。二分程待ってから最後の一滴まで注ぐ。

 この一滴が一番美味しいんだ。二煎目はお湯を入れたら待たずに注ぐ。一回の茶葉で三煎目までは美味しく飲める。

 

 一煎目は桜岡さんに、二煎目を自分に……

 

「はい、粗茶ですが……晩酌はするけど、結衣ちゃんとご飯を食べる時は余り飲まないよ。精々がビール一本位かな」

 

 茶道も習っているのだろう綺麗な姿勢でお茶を飲み

 

「あら?これ玉露ね……榎本さんが茶の湯に詳しいなんてビックリだわ。ちゃんと玉露の味を引き出しているし」

 

 日本人は熱々のお茶をフーフー言って飲むのが普通と思っている人が多い。温いお茶は失礼と。

 でも茶葉にはそれぞれ適温が有るんだよね。だから茶の湯の分かりそうな人にしか玉露は煎れないんだ。

 

「確かに家族でも中学生の前でお酒を飲むのは、控えた方が良いのかしら?」

 

「後は晩酌してから夕飯を食べたら時間が長くなるからね。後片付けとか大変だから、なるべく一緒に食べ終わるようにしないと」

 

 基本的に後片付けは手伝おうとするが、結衣ちゃんなりの恩返しで断られるからね。彼女が居ない時は片付けるけと、普段はお任せだ。

 

「大切にしているのね。結衣ちゃんは幸せで羨ましいわ。やはり私達の養女にした方が……でも姉妹の方がしっくりきますし……」

 

 なにやら頷きながらブツブツ言ってるが……ようじょ?幼女?養女?桜岡さんも幼女趣味なのか?彼女の向かい側のソファーに座り、今後の行動を相談する。

 

「さて、今後の事を話そうか?」

 

 玉露はお持て成し用の一杯目だけ。お代わりは普通のほうじ茶を入れた急須とポットを持ってきた。

 お茶請けはミカンと柿ピーだ。お昼前だし軽い物で。

 

「榎本さん、少し休まれた方が良く有りませんか?昨夜から仮眠をとってないですわよね?」

 

 ん?眠気は有るけど、先に話をしておかないと。ミカンを剥きながら考える。

 

「打ち合わせが終わったら、風呂に入って少し寝るよって言いたいけど……結衣ちゃんが帰ってくるまでは頑張るよ。まさかお客様を招いているのにホストが寝てるのは、ね?」

 

 流石に桜岡さんを独りにしてグーグー寝るのは問題だろう。

 

「そんなに気を使わなくても、これから一緒に暮らすんですから……」

 

 一瞬同棲みたいな言い回しにドキリとしてしまったが、桜岡さんの事だ。男女間の事に疎いから、本人も深い意味では言ってないだろう。

 

「まぁそれは置いておいて……先ずは管理人とその仲間と思われる宗教団体。これは本職に任せた。

次に稲荷神社は桜岡さんのコネで。神社については僕の方で調べてみる。古地図を当たって駄目なら郷土史研究家に聞いてみる。

彼らなら池に纏わる伝説も知ってるだろうし。これが基本方針だ」

 

「確かに問題だろう宗教団体・稲荷神社・不思議な神社に池はOKだけど……前に榎本さんが言っていた祠と近隣の集落はどうします?」

 

 そうだった!

 

 あの祠と、それを祀っているだろう集落。ホテルとの関係とかも調べるんだった。

 

「そうだったね。集落についてはGoogle EARTHで調べたんだった。でも周囲の山々にそれらしい物は分からなかった。道らしき物と平地は確認出来たけど……」

 

「大体の住所が分かれば調べようは有るわ。業務用の地図には世帯主の名前の載った物が有るそうよ」

 

 業務用の地図?アレか、宅配業者とかが持ってる奴か……

 

「個人情報の五月蝿い時代だし、素直に見せてくれるかな?いや業務用地図を出版元から買えば良いか……」

 

「それとも祠の後ろに有った獣道。その先に行ってみます?」

 

 分からなければ直接行けば良いってか?最悪は、いや一度は行かないと駄目だろう。聞き込みもしたいし……

 

「先ずは調べて駄目なら現地に行ってみるか」

 

 勿論、桜岡さんは留守番だが今は言わない。言えば駄々をコネるのは目に見えてるから。

 

「そうですわ。でも私も同行しますから。榎本さん独りでなんて駄目ですからね」

 

 睨まれたぞ!もしかして考えがバレてたのかな……

 

「それは安全が確保出来てからね。まぁ情報化時代だから調べられるさ」

 

 ミカンを食べ終わり、もう一つ食べようかと手を伸ばすと……

 

「アレ?ミカンが無いんだけど……」

 

 八個あったんだぞ。桜岡さんを見ても、上品に柿ピーを食べてるだけだが……手前にコンモリとミカンの皮の山が。ドンだけ早食いなんだ?

 

「ミカン……お代わりいるかい?」

 

「もう直ぐお昼ですわよ?」

 

 最後の柿ピーを食べながら言われてしまった。温くなったお茶を飲み干し、新しいほうじ茶を煎れる。彼女の湯呑みにも注ぐ。

 

「テレビ局だけど、明日にでも西川氏に説明するか。桜岡さん、アポ取ってくれるかな?」

 

「そうですわね。松尾のお祖父様にも同行して貰います?」

 

 爺さんか……確かに拗れそうな内容だからな。企画自体を中止にしたい位だし。

 

「そうだね。じゃ爺さんには……」

 

「打合せ時間の調整も有りますし、私から西川さんとお祖父様に連絡しますわ。でもお祖父様へのお礼は私側から出します。義母様にも言われてますから」

 

 お母様、ね。彼女の母親ならさぞかし上品なマダムなんだろう。時間調整も有るし、お願いするか。

 

「じゃテレビ局への対応は桜岡さんに頼むかな。勿論僕も行くからね」

 

 彼女が頷くのを見て、これで大体の方針が決まり明日からの行動の目処もたった。興信所の報告は一週間はかかる筈だ。

 相手を特定出来る迄は、大人しく調べ物をするしか無いな。うー眠気覚ましに風呂にでも入るかな。僕は財布と出前のお品書きを桜岡さんに渡して風呂に入る事にした。

 桜岡さんと同じ物をと頼んだから、何人前くるか楽しみだ。二人で十人前は確実だろう。

 

 

第49話

 

 桜岡さんの安全の為に自宅に招いたけど、何故に妙に馴染んでるの?仲良くキッチンに並んで立つ二人。

 

「結衣ちゃん、これ位の大きさで良いかしら?」

 

「はい、霞さん。後は水にさらして灰汁を抜きます」

 

 風呂上がりにソファーでうたた寝をしてしまい、起きたら二人で料理を始めていたんだ。今夜の料理は野菜カレーにダンドリーチキン。

 玉葱サラダにデザートは杏仁豆腐らしい。

 

「あの……何か手伝おうかな?」

 

「いえ、榎本さんは休んでいて下さいな」

 

「そうですよ。お疲れなんですから、もう少し休んでいて下さい」

 

 桜岡さんと結衣ちゃんにダブルで断られてしまった……すごすごと私室に引き篭もり不貞寝しようかな。

 その晩の夕飯は、野菜の形や大きさが不揃いだったが美味しかった。晩酌は缶ビールを1本ずつだが、カレーは5杯ずつ食べた。

 次の休みには大きな鍋を買う事になるだろう。何故ならば、我が家には10人前以上を作れる鍋が無いそうだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ソファーでだらしなく昼寝をする榎本さんを見て思うわ。昨夜から大分無理をしていたのでしょう。軽くイビキもかいていますし……

 お風呂でサッパリして出前のカツ丼・親子丼・中華丼にザル蕎麦を食べたからかしら?直ぐにうつらうつらし始めたと思ったら、パタリと倒れて寝てしまった。

 お腹一杯になったら寝ちゃうなんて、本当にクマさんよね。私が仮眠している間も起きて何やらしてたみたいですし……暫く彼の寝顔を見ていた。

 

 30過ぎのオッサンだけど、年齢差は10歳も離れてないから良いわ。

 

 でも全然手を出さないって、本当にシャイですわよね。あれだけの事をしてくれてるんですから、私の独り善がりでは無い筈だし。

 何時になったら、ちゃんと話してくれるのかしら?じゃないと先に私が手を打ちますわよ?もう時間の問題なんですよ?等と幸せに浸っていたら、結衣ちゃんが帰って来たわ。

 

 でも、あの制服は見た事が有るのよね……

 

「お帰りなさい。結衣ちゃん、久し振りですわね」

 

 玄関の鍵を開ける音が聞こえたのでお出迎えに。声を掛けた時、一瞬驚いて固まったけど直ぐに気が付いてくれたわ。

 

「霞さん、いらっしゃい。えっと、正明さんは?」

 

 スーパーの袋を二つも持っていたので受け取ると、大量の食材が入っていたわ。

 

「こんなに……休みの日に車で買い出しにはいかないの?」

 

 榎本さんも気が利かないわね。女の子に買い物を任せっきりなんて……靴を脱ぎキッチンに向かう結衣ちゃんについて行きながら話し掛ける。

 流石に持ちますと言われても、年上だからお断りしましたわ。テーブルに食材を並べ、手際良く種類別に収納していく。

 

「いえ、正明さんから霞さんがウチに来ると聞いて……食材が不足気味かなって。正明さんも霞さんも沢山食べてくれるから」

 

 ハニカミながら可愛い事を言ってくれるわね。思わず結衣ちゃんを抱き締める。やはりこの子は妹が良いわ。

 決めた!義母様に相談しましょう。

 

「かっ霞さん、苦しいです……」

 

 思わず力を入れてしまったわ。腕の力を緩めて解放する。

 

「ごめんなさいね。つい、結衣ちゃんが可愛くて抱き締めてしまったわ」

 

 真っ赤になって下を向く彼女を見て、なる程榎本さんが過保護にするのも分かる気がしましたわ。

 

「結衣ちゃん、私ね。一人っ子だったから妹が欲しかったの。結衣ちゃん、私の妹になってね」

 

「霞さん、それって?」

 

 唐突過ぎたかしら?少し不安げに此方を伺う表情だし……

 

「暫くこの家にご厄介になるんですからね。姉妹の様に接して欲しいのよ。駄目かしら?」

 

 黙って頷いてくれた結衣ちゃんをもう一度抱き締めてから「結衣ちゃん、料理得意ですわよね?お姉ちゃんに教えてくれるかしら?私、全く料理が駄目なのよ。お願い」こうして二人で夕食を作り始めたの。

 

 この子の手際良さや料理のレパートリーは義母様に似ている。一般的で少し古風な家庭料理……聞けば亡くなった祖母から料理を習ったそうですわ。

 身寄りは行方不明の母親だけの彼女を榎本さんが引き取ったのよね。結衣ちゃんは話さなかったけど、榎本さんから断片的に聞いた話では良くない類の親だったって……何人も男を引き込み、彼女を虐待していたって。

 こんなに可愛い子を虐待なんて……もしも見つかっても親権を取られない様に、松尾のお祖父様にも相談しないと駄目だわ。

 まだ接し方がぎこちないけど、凄く気を使ってくれているのが分かるわ。義母様がゴネたら私と榎本さんの養女でも良いわね。結衣ちゃんとなら上手くやっていけそうだわ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 突然夜中に飛び出して行って帰ってきたら霞さんを連れて来た。余り女性の気配が無かった榎本さんだけど、霞さんとは良く会ってる。

 仕事の付き合いと言うけど、夜中に助けに行ったりウチに呼んだりと……私、霞さんに嫉妬と憧れが有った。

 同じ異能を持ってる女性なのに、霞さんはテレビでも活躍してるのに、私は榎本さんの庇護に甘えている。

 どうしてそんなに誇らしげに力を振るえるんだろう?どうして人に力を見せる事に抵抗が無いんだろう?人と違う事を見せたら、それだけで排除されるとは思わないんだろう?

 榎本さんは、僧籍としての実績も有るし霞さんは梓巫女。

 

 私の力は……細波家は代々獣憑きの家系。

 

 お婆ちゃんは殆ど力が無かった。お母さんは獣の衝動だけを引き継いだ。だから発情期には色んな男の人を引き込んだし、乱暴で自分勝手で我が儘で気紛れで……

 欲しい物は何としても手に入れようとした。だからサラ金から限度一杯まで借りては逃げる生活。サラ金で駄目なら闇金に手を出し、最後はお金持ちのパトロンさんを探した。

 お母さんは野性的な美人だったから、何時も違う男の人と居た。足枷の私は嫌いだったと思うけど、最低限の面倒は見てくれたわ。

 

 だから私はお母さんと一緒に居た。ささやかな優しさでも嬉しかったから……

 

 私、私の力。細波家の血を濃く引いてしまった私の力。耳と尻尾が生えて、獣の身体能力を得られる。でも一緒にお母さんと同じ様な獣の習性も芽生えてしまう。

 だから、だから発情期には自傷して衝動を抑えないと、私が私でなくなるの。榎本さんと初めて会った時は、真っ裸で獸人化した時で……腕に噛みついたけど筋肉で弾かれたんだっけ。

 

「ふんっ!」とか言って力こぶを作くられたら、ガチガチで噛めなかったの。そして取り押さえられた。

 

 獣は負けた相手に服従する。人に害する獣憑きとして討伐されても仕方ないと思った。でも正明さんは優しかった。

 そのまま力を封じ込める数珠をくれて、お婆ちゃんの元へ届けてくれた。そして、お婆ちゃんが亡くなった時、葬儀から里親の手続きまでしてくれた。

 聞けば、お婆ちゃんから頼まれていたそうだけど……独身男性が、いくら里親といっても女の子を引き取るのは抵抗か下心が有ると思った。

 確かにイヤらしい目で見る時が有るけど、必死に隠すの。それに必要以上に触らない様に気を付けてるし。

 

 多分、善意だけで引き取ってくれたけど、やはり男性だからつい見てしまうのよね?だから恥ずかしいけど、家では少しだけラフな格好をしようと思ってる。

 せめてもの恩返し。でも獣の牙が通らない上腕二頭筋って、どれだけ鍛えてるんだろう?榎本さんに出逢って、この数珠を貰ってから衝動を抑える事が出来るから。

 やっと人並みの生活になったわ。

 

「結衣ちゃん、真っ赤だけどどうしたの?」

 

「えっ?いっいや、何でもないです。その、昔の事を思い出したら恥ずかしくなって……」

 

「……?刃物を使う時は意識を集中しないと危ないわよ。いくら慣れててもね」

 

 いけないいけない。つい考え込んでしまったわ。素直に謝って料理に集中する。霞さんは暫く居るそうだし、色々と教えて貰おう。

 同じ異能を持つ女性だし、色々アドバイスしてくれる筈よね。だって正明さんが付き合ってるんですもの。

 あの筋肉のお兄さん達と同じ、良い人に違いないわ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 桜岡さんを家に招いてから暫く経った。テレビ局には、桜岡さん自身が霊障に見舞われて廻りにも影響が出るかもしれない。

 だから暫くは自費で調査、出来れば除霊するので企画自体を保留にして欲しい。先方の管理者には事前調査でトラブルが有り対応中の為、暫く様子を見るからと連絡をして貰った。

 返答は「そうですか、分かりました」と、素っ気なかったそうだ。もう少しゴネるかとも思ったが、拍子抜けだな。

 西川氏は、テレビ局として携わると呪いが其方にも行くかも知れないと脅した。カメラさんと音声君の証拠映像や音声が有るから、信憑性は高かった。

 誰でも恨み辛みの声を聞けば怖くなるだろう……明日は第一回目の興信所からの報告が有る。それと関西から桜岡さんの母親も上京してくるそうだ。

 何でも稲荷神社の件で報告が有るらしい。僕らの調査については、これから郷土史研究家の佐々木氏に会う予定だ。

 Google EARTHで調べた集落は業務用の地図を購入して照らし合わせた結果、現在でも10世帯程度の住民が住んでいるのが確認出来た。名前と大体の住所が分かれば、後は簡単だ。

 最初の調査から一週間振りに、八王子駅に来ている。公共機関を利用すれば、それだけ特定は難しいし人混みに紛れるのも可能だ。

 

 それに今回は同じ八王子市内でも廃ホテルには行かないから。JR八王子駅は規模の大きい駅だ。周辺には大学のキャンパスが点在し、駅前にはそごう・西部百貨店が有る。

 駅周辺の商店街も開けているしバスターミナルも有るので賑やかだ。先方に指定された時間は10時。

 通勤時間とは外れていた為、電車内での混雑は避けられたが中途半端な時間に駅に着いてしまった為に駅中のベッカーズで時間調整中。

 小腹が空いたので軽く朝食を食べる。向かいに座った桜岡さんは、ホットミルクにバタートースト。僕は珈琲にホットドックだ。

 

「榎本さん、今日お会いする方……佐々木さんでしたか。どの様な方なのでしょうか?」

 

 彼女はポンチョやマント系の服が好きなのか?チェック柄のポンチョに、淡い桜色のブラウスとお揃いのミニスカート。黒のストッキングに編み上げのブーツ。

 今回は伊達メガネをかけて髪をお下げの様に左右に分けている。何とかって髪型なんだが、一度聞いたけど忘れた。

 学生の街でも有る八王子で大学生でも通用しそうなファッションだ。実際に席取りで一人で座ってた時、大学生と間違えられてナンパされてたし……

 

「お姉さん、大学どこ?気晴らしにサボって遊びにいかない?」

 

「後ろの彼氏が許可すれば良いわよ?」

 

「ああん?何だ、何を許可すんだよ?」

 

「はぁ?彼氏?こっこのヤクザが?申し訳有りませんでした……」

 

 僕は濃紺のスーツに黒のコート。彼女と対照的に凄く地味だ。しかし、見た目はヤクザかボディーガードか?全く失礼な餓鬼め。何て遣り取りも有った。

 

「佐々木氏かい?八王子周辺の豪族と北条氏との繋がりとか、戦国時代が専攻なんだけど。

他に適当な郷土史研究家が居なくてね。まぁ好きでやってるんだし、専攻でなくても知ってるかなって?」

 

「適当なって……でも祠の御神体には姫とか領主とか書いてありましたし、案外戦国時代かもしれませんよ」

 

 まぁ池と祠の事を聞ければ御の字か。怪しい神社の件は、僕の方で坊主ネットワークで伝手を探せばよいかな。其処まで打合せたら丁度時間だ。

 

「さて、佐々木氏の家に行きますか」

 

 手土産の横須賀カレーサブレを持って立ち上がる。何故、カレーサブレかって?それは地元横須賀が、海軍カレー発祥の地だからさ!

 

 

50話

 

 八王子の郷土史研究家、佐々木氏の家を訪ねる為にタクシーに乗って向かっている。駅前から5分も走れば田舎然とした風景が見れる。

 遠く山々が見え大きな川も有り田畑も多い。車窓から外を眺めていると、桜岡さんが話し掛けてきた。

 

「榎本さん、電車内で読んでいた本ですけど……アレは何だったのですか?」

 

 東神奈川駅から横浜線に乗り換えて一時間程の道のりだが、ずっと本を読んでいた。

 

「これから訪ねる佐々木氏の著書だよ。殆ど市場に出回らない本だったけどね。こうした本を探してくれるサービスが有るんだ。

専門書とか学術書って、定期的に発行されないし部数も少ない。だから佐々木氏の著書も、10年位前に出版された物だよ。だから手に入れるのに苦労した」

 

 鞄から件の本を取り出して見せる。

 

「そんなに貴重な本なんですか?」

 

 貴重と言うか、全く売れないから大変だったと言うか……

 

「佐々木氏は昔、大学の短期教員として招かれたかしたんだろう。その時の講義に必要な指定図書として発行したのが、この本なんだ。定価は2100円だけど、ブックオフの100円ワゴンで見つけたそうだよ」

 

 多分、当時の講義を受けた学生が売り払ったんだ。

 

「ワゴン?100円?どうやって榎本さんは手に入れたんですか?」

 

「一般の人には価値が無いけど必要な本って有るでしょ?タイトルや出版社とかの情報を掲載して希望購入額を入れるとね。

古本屋巡りの好きな人が探してくれるんだよ。因みに希望購入額は5000円だったけど、切欠作りには安いもんでしょ?」

 

 マイナーな郷土史なんて、興味を持ってると思わせれば色々と教えてくれる。基本的に彼らは、自分が調べた事を聞いて欲しいからね。

 

「そんな方法が?榎本さんって何でも知ってるんですね!見直しましたわ」

 

「桜岡さんは、僕の事を脳筋とか思ってるけどね。一応、人生の先輩だから。少しは尊敬しなさい。さて着いたみたいだよ」

 

 タクシーが個人邸の前で停まったので、話を切り上げて清算する。料金は1730円!勿論、領収書は貰いますよ。確定申告に必要だからね。

 呼び鈴を鳴らすと初老の女性が出迎えてくれた。年の頃は60歳位か?何故か嬉しそうに室内に招いてくれた。応接間に通されてソファーを勧められる。

 

「直ぐに主人を呼びますので……」そう言われて部屋を出て行った。

 

 応接間を見回すと、なるほど郷土史研究家と言うだけあり膨大な書籍に埋もれている。書斎兼用か、たんに置き場無く溢れかえっているのか凄い本の数だ。

 

「榎本さん、凄い本の数ですね」

 桜岡さんは単純に驚いている。ざっとタイトルに目を通せば時代小説から古典類、果ては料理本などジャンルはバラバラだな……

 

「うん。多方面にアンテナ張ってる人かもね。戦国時代一本って訳でも無さそうだ」

 

 そんな感想を漏らしたら「ほぅ。私が戦国時代好きとは知ってるみたいですな。榎本さんですか、初めまして」先ほど女性が出て行った扉から、車椅子の老人が現れた。

 

「初めまして、榎本です。今日は無理を言ってすみません。少しお話を聞かせて頂きたくて」

 

「こんにちは、佐々木さん。桜岡霞と申します。宜しくお願いしますわ」

 

 社交辞令の挨拶と手土産を渡す。簡単な挨拶と自己紹介が終わると、佐々木さんの奥さんがお茶を煎れてくれた。

 珈琲だがインスタントでは無い芳醇な香りがする。佐々木氏が目を細めて飲んでいるのを見れば、彼は珈琲党なんだろう。ひとしきり香りを味を楽しんでから問い掛けてきた。

 

「それで、現役を引退した私にお話を聞きたいとか?それに其方の女性はテレビに出られている、梓巫女の桜岡さんでは?」

 

 ほう?佐々木氏は心霊系しか出ていない桜岡さんを知ってるのか。

 

「はい。先ず事の始まりは、今年の夏の特番で八王子に有る廃ホテルの怪奇現象を調べる依頼が彼女に来たのです。

心霊調査とは眉唾かも知れませんが、彷徨う魂を鎮める事と思って下さい。彼女は巫女として正式に神道を修めていますし、私も真言宗の僧侶です」

 

 先ずは胡散臭い心霊関係を鎮魂の為と言い換え、僕らの身分を巫女と僧侶と重ねて説明する。そして名刺交換をする。

 今回は僧侶の方の名刺だ。自称霊能力者よりは、まだマシだろう。佐々木さんの名刺の肩書きは郷土史研究家となっている。

 

「ほう!榎本さんが僧侶ですと?僧兵の方が似合いそうですな」

 

 流石は戦国好きだな。僧兵ね……熊野系密教修験者とは言われたが、それも近いかもね。

 

「はっはっは。確かに普通の坊さんよりは鍛えてますからね。武蔵坊弁慶みたいな形(なり)ですし。

でも厳密に僧兵とは僧形の武者で有り、修行した僧侶では有りませんから。でも僕は愛染明王を信仰し修行してます。自称愛の戦士なんですよ」

 

「ぷっ!クマさんなのに、愛の戦士って変ですわ」

 

 切欠作りにおどけたのに、桜岡さんが食い付いたよ。まぁ佐々木氏も苦笑いしているが、堅苦しい雰囲気は解れたかな?

 

「それで愛の戦士殿は、桜岡さんの為に戦うと?」切り返しもイタいな。

 

 確かに彼女の為であり、「箱」から強制された僕の為でも有る。

 

「そうです。問題の廃ホテルを実際に調べましたが……かなり危険なのです。彼女一人では心配だ!

ホテル自体も放置された稲荷神社や自殺・他殺・不自然な事故も多い。周辺でも、曰わく有り気な祠や池。僕はホテル開業以前の……

それこそ歴史に絡む原因が有るのでは?と感じて、八王子の歴史に詳しい佐々木さんに助力を願おうと訪ねました」

 

 そう言って廃ホテル周辺の地図を見せた。祠と池、それに集落にはマーカーで赤く印を付けている。

 変に嘘を付くより真実を語った方が良い場合も有る。今回は祠と池、出来れば集落の情報が欲しい。

 

「ほぅ……この印の場所が問題の廃ホテルに、祠と池。この集落の印は?」

 

 あからさまに付けた印に食い付いてくれた。

 

「佐々木さんの著書には、戦国時代の悲劇や悲恋も書かれてますよね。有名な八王子城の落城など……だから、この祠や池についても知っているかな、と。

特に祠に祀ってある石碑には、掠れて読み辛かったのですが領主や姫と刻まれていました。これは何か池に伝説が有り、祠は関係する何かを鎮めた物ではと考えまして……」

 

 そう言って、佐々木氏の著書を取り出す。「八王子市の歴史と編纂」と言う、良く有りそうなタイトルだが古本故に読み返した様な跡と、幾つか付箋紙を貼り如何にも貴方の著書を読みました的に演出している。

 佐々木氏は、僕が自分の著書を取り出した時に嬉しそうな顔をしたから成功だろう。

 

「確かに私の書いた本には、八王子城の落城の悲劇とかも書いてますな。分かりました。暫くお待ち下さい。調べてみましょう」

 

 そう言うと、奥さんを呼んで応接間から出て行った。多分書斎か何かで調べるのだろう。暫く時間が掛かりそうだな。

 温くなった珈琲を一口飲む。そして無言の桜岡さんを見れば、ボーっとした顔をしている。

 

「何だい、ボーっとした顔をして?何か不審な点でもあったのかい?」

 

 珈琲を飲み干してから聞いてみる。彼女も上品に珈琲を飲んで

 

「榎本さんって見た目が脳筋でクマさんなのに、何であんなに話術が上手いんでしょうか?それに愛の戦士で私の為にって……本気なんでしょうか?」

 

 此方をウルウルした目で見詰めている。桜岡さんも女の子だからな。白馬の王子様とかに憧れてるのか?

 

「本気だよ。今更引くに引けないし」

 

「そっそっそれは、わたわた私が、すっすっすき……」

 

「珈琲のお代わりは如何ですか?」

 

 桜岡さんが何か話し掛けてきたが、佐々木氏の奥さんが新しい珈琲をトレーに載せて来た。カップが三つなのは、佐々木氏が調べている間は奥さんが対応してくれるって事かな?

 

「いただきます。美味しい珈琲ですね。豆は何を?」

 

 奥さんの為に話題を振ってみる。案の定、向かいに座りカップを差し出してくれる。

 

「主人も私も珈琲が好きでして。この豆も大磯自家焙煎珈琲店から取り寄せなんですよ。

花ブレンドと言ってお店のオリジナルブレンドですが、エチオピア産の珈琲豆をメインにしてます」

 

「ほぅ?コロンビアやブラジルは有名ですが、エチオピア産ですか!」

 

 全く珈琲豆に興味は無いが、話を合わせる為にミルクも砂糖も入れずに飲む。

 

「確かに名前通りに仄かにフレーバーな……大磯とは湘南の?」

 

「そうです。エチオピア産は香りが強い品種なんです。

このお店は最近出来たのですが、他にも鳥ブレンドと言ってアメリカンに合うサッパリした味わいのも有りますよ」

 

 花?鳥?不思議なネーミングだが楽しそうだな。

 

「大磯は良く通るんですよ。箱根の温泉が好きでして。

ああ、僕は横須賀に住んでますから逗子・鎌倉・江ノ島と海岸線をドライブしながら箱根に行きますので……」

 

「まぁ、箱根ですか!私達も主人の足の治療の為に良く箱根の温泉に行きます。最近は入浴介護の設備の整った貸切温泉も有りますので」

 

 確かに車椅子での旅行は大変だ。幾らバリアフリーとは言え、浴槽には段差が必ず有るからね。それを簡易リフトみたいに湯船に浸からせてくれる設備が有る温泉宿も有る。

 

「箱根だと天成園が確か貸切風呂に介護設備が有りますよ。まだ行かれてなければどうですか?園内に滝が二カ所有りますし、最近改装したので綺麗です」

 

 結衣ちゃんとの温泉旅行に行きたいけど、彼女は自傷の傷痕が有るから無理なんだよな。貸切にしても一緒に入れないし部屋は別々になるし……

 

「榎本さんは珈琲にも温泉にも詳しいのですね!主人と話が合いそうですわ」

 

 和やかに会話は弾む。一時間程、待っただろうか?漸く佐々木氏が応接間にやって来た。

 その間に奥さんから珈琲三杯に茶請けとして手土産の横須賀カレーサブレ、それに自家製の漬け物やらを振る舞われた。

 

「榎本さん、分かりましたぞ……おや?随分と家内と会話が弾んでいた様子ですな。折角ですし昼食も食べて行ってくだされ。

老人だけだと寂しいので、たまには若いカップルと話もしたいのでな」

 

 カッカッカ、とか水戸黄門張りに笑わないで下さい。

 

「そうですね。少しお待ち下さいね。直ぐに何か作りますから……」

 

 奥さんが遠慮する間も無く、いそいそと台所に向かってしまった。

 

「いえ、そこまでお構いなく……」

 

「この年になると息子夫婦も家に寄り付かんし、寂しいんですよ。遠慮無く食べていって下さい。さて、これが件の廃ホテルの周辺の伝説や言い伝えを纏めた物です」

 

 そう言うとA4の紙を何枚か渡してくれた。どうやらパソコンに情報を纏めているのだろう。同じ物が二部有ったので、桜岡さんにも渡して読み始める。

 最初は、あの池についての言い伝えだ……

 

「鷺沼(さぎぬま)……池でなく沼なんですね。遊女と庄屋の息子との悲恋か。でも、もう一つは疫病による人柱?この2つは関連してるのかな?」

 

 江戸初期、庄屋の息子が遊廓で傍惚れした遊女を身請けして連れ帰った。彼女の名前はお鷺。

 しかし偶然か運が悪いのか、その年に疫病が流行ってしまった。昔の人は何か原因を探さないと納得しない。本当は病気だから病原菌を調べなくてはならないのに、そんな知識も技術も無い。

 ただその年に普段と違う事が、原因と考えた。庄屋の息子が都から遊女を身請けした。ソイツが村に疫病を流行らせたんだ。

 暴徒と化した村人は庄屋宅に押し込み、遊女を連れ出して名もない沼に沈めてしまった。

 

 これが鷺沼の云われ。

 

 しかし疫病は収まらず、人々は遊女の祟りと恐れ人柱を沼に捧げる様になった、か……

 

「これが、あの池の伝説か。昔だからこそ有り得た酷い話だ……」

 

 やはりあの池には人が何人も死んでいたのか。

 


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