オリ主が一人転生しただけの簡単な二次創作です   作:騎士貴紫綺子規

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第九箱 「……やっぱ邪魔だなァ、黒神めだか」

 驚きの新事実を目の当たりにしたとき、人間というのは一時的に思考が中断してしまう。そしてそれは、和も例外ではなかった。

 

「……へえ、それはそれは。んじゃあ君のハジメテを貰ったってことでいいのかな?」

「いいわけなかろう」

「痛い痛い、冗談だからね、冗談だから。その俺の頭を握りつぶさんとばかりに力の込められている右手をどうにかしましょうかというか放して下さいごめんなさい」

 

 大嘘憑き(オールフィクション)じゃないんだから俺のスキルじゃ生き返らないんだよ多分、と思いながら右手を開放するように頼む。常識を逸脱するのだから不死か不老かはたまた死者蘇生か。どれか、もしくは全て出来るのかもしれないが、実験してみたことはないししてみたくもない。京が一にも死んで終わりだったら転生前より生きた時間短いじゃないか。自分のスキルの効力がどれくらいなのかわからない和にとって、大嘘憑き(オールフィクション)を持っている球磨川が来るまで早々死ぬつもりはない。いや来ても死にたくはないが。むしろ殺されそうだが。

 

「……にしてもハジメテ、か……」

「ああ。それがどうした?」

 

 そう言われていや、と返しながらも原作を思い返す。都城王土が行橋(ゆくはし) 未造(みぞう)と出会ったのは何時だったのだろうか。

 

 出会いのエピソードはもちろん回想シーンでしかない。喜界島(きかいじま) もがなとの勝負でのあのシーン、行橋と王土との初めての出会いはゲームセンターだった。

 

 人生に絶望しかけている――正確にはしていたのだろうが――行橋は王土と出会うことで救われた。それは間違いないだろう。

 

 ではいったい何時出会ったのか。

 

 思い返してみると描写はなかった。「ある日」とか昔話的な描写しかなされていなかったように思う。……とすると。

 

「なあ王土。お前、心を読む人間に会ったことあるか?」

「? いや、ないが。王である俺以外に心を操る人間がいるのか?」

「いや、この場合は操るんじゃないんだけど」

 

 そう言いながらも思いつく限りの簡単な情報を提示していくと、案の定彼は面白そうに口を歪ませた。

 

「ほう。そんな奴がいるのか」

「うん。多分ゲーセンにでもいるだろうから探してみれば? ある種の有名人らしいし」

「そうだな。では行ってくるとしよう。和、褒めて遣わす」

 

 顔に手を当てて自分を指差してくる王土に、少なからず歓喜をおぼえた。いやMじゃないけど。

 

「行ってらっしゃーい……」

 

 オイ、HRに顔出しに来たんじゃないのかと思いつつも後姿を見送る。あれ、これ俺教えてよかったのかなと後から考えてその思考を放棄した。どうにでもなれ。

 

 

   ☆   ☆   ☆

 

 

 膨大な敷地面積を誇る箱庭学園。フラスコ計画なんてトンデモ実験を行っている非人道的な学園ではあるが、それを知らない通常(ノーマル)特別(スペジャル)には全く関係ない、それどころか自分の望みや夢をかなえるのに最適な学園だと考えるだろう。

 

 そして学園である以上、学校行事は多数存在する。原作で言うと、体育祭や文化祭などがそうだ。

 

 また描写はなされていないが、遠足や修学旅行といったイベントも存在する。

 

 存在は、する。

 

「……和、お前良かったのか?」

「何が?」

「いや……、遠足」

 

 五月某日、この日箱庭学園の全一年生は古都に遠足に行くことになっていた。全員、すなわち通常(ノーマル)特別(スペジャル)はもちろんのこと、十三組生(アブノーマル)も含まれる。しかし空洞と和は生徒会の仕事上、また十三組生(チームトクタイ)としてからも同行していなかった。

 

 もともと十三組生が学校行事に積極的かと聞かれたら、答えは当然否である。大刀洗斬子の立ち上がりを見たいなどという特別なことでもない限り、自分の利潤や興味を引かない事項に十三組生は動かない。

 

 空洞が仕事を一人で引き受けるから行ってきてはどうかと言われた和だが、当然彼一人に任せるわけにはいかないと考えた。運で適当に決まったとはいえ、曲がりなりにも和は副会長なのだ。

 

「行きたかったら一人でも行くし、空洞一人には任せられないよ」

「……サンキュ」

「いいえ」

 

 顔を綻ばせながら笑った空洞に、不覚にも和はキュンときた。ヤバイ、どうしよう。自分よりも図体の大きい、しかも男を可愛いと思う日が来るとは思わなかった。

 

 あれ、これBL? ボーイズでラブってる? とも思ったが、あくまでこれは友情だろうと思い直した。これはいわゆるあれだ。大型犬を可愛がるのと同じことだ。

 

 そう思いながら手元の書類に目を落とす。黒神めだかは本編でたくさん事件を解決していたが、実はあんなに頻繁に事件は起こらない。苦情や修理はまああるが、生徒会にそこまで仕事を回さない、というのが一つの考えでもある。

 

 主人公補正ではないが、やはり黒神めだかは主人公なのだろう。彼女が立ち回らなければ、箱庭学園は平和そのものなのだ。

 

 

 そう考えると、やはり和も椋枝教諭と同じ考えの持ち主だということが分かる。彼女は人間の「個性」を変える。その人間の「本質」を変える。そして二人とも、その変化に嫌悪を抱いている。

 

「……やっぱ邪魔だなァ、黒神めだか」

「? 何か言ったか?」

「いや、何も」

 

 人当たりのいい笑顔でそう返すとそうか、と言って目線を下に戻した。

 

 ああ、いっそのこと全てを滅茶苦茶にぶち壊したくなる。

 

 中学時代の破壊臣を考えて、和は自分を嘲笑した。

 

 いつか自分も、黒神めだかに改心されられるのだろうか。

 

「……それは嫌だなァ」

 

 たとえこの世界が彼女を中心に回っていたとしても。いくら彼女が正しいとしても。

 

 須木奈佐木和は一生彼女を好きになれないだろうと思っていた。それは彼女が「黒神めだか」であり「『めだかボックス』の主人公」であり。

 

 他人を改心させる存在である限り。

 

 和と一生相容れることはないのだろう。

 

 

 




 BLタグは念のためです。別に男性キャラと恋愛するわけないです。あくまで友情です。
 「めだかボックス」で主人公が苦手でサブキャラが大好きな私。これからもそういう路線で進めます。

 若干だれてきましたね。次書く内容は決まってますがしばらく潜って質あげるので、次はちょっとあきます。ご了承ください

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