オリ主が一人転生しただけの簡単な二次創作です   作:騎士貴紫綺子規

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 ……難産だった。あまりいいエピソードが思いつかなかったのでゲストを使った。



第四箱 「支配者を支配すれば」

 

 時は流れて中学生になった和と咲。二人はそれぞれ別の中学校に通っている。和は結界(けっかい)中学、咲は一升(ひとます)女子中学だ。箱舟中学に通おうかとも考えたのだが、小説版のジュブナイルがイマイチだったので却下した。それで、作中出てきた中学校の内から、一番面白そうなところを選んだのだ。全盛期の球磨川禊に会ってみたかったが、()るだけならいつでもできると思い、止めておくことにした。……一番の理由は、安心院なじみに会いたくなかったからなのだが。

 

 

 入学して一か月が過ぎたころ。妹の咲が部屋を訪ねてきた。

 

 

「……兄貴。ちょっといいか?」

 

 

 数年前から一人称が「俺様」になり、口調も乱暴になった咲。ああ、原作に近づいてきたと嬉しく思う反面、同時に兄としては不安になった。初めて呼ばれた「にー」から始まり、「兄さん」を経たのが「兄貴」になったのだ。呼ばれたときは泣いた。号泣した。勢いよくマスクを投げつけてしまったが仕方ないだろう。

 

 

「いいぞ。どうした」

「……ちょっと相談があってな」

 

 

 基本家ではマスクを外している咲だ。後の「ビーストアイドル」らしくいつもギラギラと野性的な雰囲気を醸し出しているが、珍しく今日はしおらしい。

 

 とりあえず部屋に招き入れて座らせる。自身も椅子から立ち上がり床に座った。

 

 

「…………」

 

 

 座っても口を開かない咲。時計の秒針の音がとても大きく感じる。

 

 黙って待つこと数分。ようやく口を開いた。

 

 

「……学校のことなんだけどよ……」

「一升女子中?」

「ああ」

「……楽しくない、とか?」

「いや楽しいぜ。楽しいんだけどよ……」

 

 

 尻すぼみになっていく口調。本当に咲らしくない。何かあったのだろうか。イジメられているわけではなさそうだが。

 

 

「クラスメートが……あ、蛇籠(じゃかご) (あき)っつーんだけどよ」

「……うん」

 

 驚かなかった自分を全力で褒め称えたい。なぜここで出てきた、蛇籠飽。

 

 

 

 

 須木奈佐木咲と同じくめだかボックス外伝、グッドルーザー球磨川にて水槽(すいそう)学園生徒会長として初登場。"遊酸素運動(エアロバイカー)"のスキルホルダーで、球磨川に螺子伏せられ入院。めだかボックス完結後のグッドルーザー球磨川完結編にて、咲に操作令状(エラーメッセージプレート)を体中に刺され再登場したが、またもやで螺子伏せられた残念キャラである。

 見た目や言動がお嬢様っぽかったが、まさか一升女子中に通っているとは思わなかった。黒神めだか含む主要キャラならともかく、外伝のメインキャラの出身中学なんぞ描写されていなかった。しかし数年後には咲に支配され、さらに球磨川に螺子伏せられるのかと思うとかわいそうに思えなくもない。

 

 

「(……まあまだ咲は操作令状(エラーメッセージプレート)を持ってないんだけど)」

 

 

 そう思いながら話を促す。

 

 

「ソイツはさ、クラスの中でも人気があるわけよ。美人だし、頭いいし、性格は……いいのかな。知らねえや。とにかく有名なわけ。んでその人気は学校中に広まってんだけどよ」

 

 そこで咲は一回区切った。深呼吸すると、再び口を開く。

 

「一年でもう学校中で人気だから先生も頼りにしてるらしくてさ。なんか生徒会選挙で会長に立候補するらしいんだ」

「一年で生徒会長に?」

「ああ」

 

 随分だなと和は思った。黒神めだかみたいな生まれながらの異常(アブノーマル)なら分からなくもないだろう。まあそんな彼女でも、支持率百パーセントは不可能だったが。そしてどうして咲はそれで悩んでいるのか、和にはわからなかった。

 

「いや俺様も別に蛇籠が生徒会長になろうがなるまいが知ったこっちゃねーよ?たださ、いくら有名だから、人気があるからって言っても、蛇籠はまだ一年なんだよな」

「それが不満なのか?」

「いや一年がやることに不満はねーんだよ。問題は、一年が生徒会長になることに二・三年が不満を持ってるってことなんだ」

「……なるほどね」

 

 ようやっと和は理解した。そうだ。思い出してみれば、咲の目的は「学園の平和の維持」だ。蛇籠飽が生徒会長になることに不満はないが、それによって先輩たちが荒れることには不満があるのだろう。彼女は支配者が誰であろうと、学園が平和であればそれでいいのだから。

 

「かと言って先輩方に人望があるかって聞かれるとはっきり『ねえ』って答えられるしな」

「だったら咲は、蛇籠って人に生徒会長になって欲しいって思ってはいるわけだ」

「ん? まーな」

 

 ……だとしたら、咲が悩んでいることは一つしかない。先輩たちの不満を抑えることができたらそれでいいのだ。

 

「……だったらさ。咲が学園を支配しちゃえば?」

「――はあ? 兄貴頭大丈夫か?」

 

 思いっきり心配された。近い将来妹が実際にすることなのに、こちらの心配をされては泣けてくる。

 

「俺様は生徒会長なんざしたくねえっつってんだろ?」

「いやそうじゃないよ。生徒会長には蛇籠さんがなればいい。――いや。ならせればいい」

「……どういうことだ?」

 

 訝しげにこちらを見る咲に、原作の咲みたいな顔で笑って言う。

 

「生徒会長っていうのは言うなれば学園の支配者だ。人望があるところを見ると、蛇籠さんは本当に支配者に向いているんだろう。……だが、恐らくそれ止まりだ」

「……つまり?」

「生まれつき誰かを支配するのに向いている人ほど、誰かに支配されるのにはひどく敏感だ。つまり、支配者を支配すれば、学園を思い通りに操れる」

 

 自分でもあくどい顔をしているなと思う顔で言ってやる。咲は目を丸くしていたが、しばらくして歯を見せて嗤った。

 

 

 ああ、『殺気姫』という名に相応しい、『ビーストアイドル』の異名に相応の。

 

 須木奈佐木咲の笑顔が、そこにあった。

 

 

 

 そしてこの出来事が、咲に、支配者を支配するスキル、操作令状(エラーメッセージプレート)を産み出すこととなったのだった。

 

 

 

 

 





 これから先およそ六年間咲ちゃんに支配されるのか、蛇籠飽さん。

 次回からは箱庭学園です!……まあまだ一年生なんだけど。


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