(仮)第501統合戦闘航空団専属家政婦エミヤシロウ   作:にんにく大明神

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すごくグダっちゃいました。
全部芳佳ちゃんのせいだ。


この世界で――
召喚


miyahuzi yoshika

 

 

 

「ーーて!、-きて芳佳ちゃん!起きないと遅刻しちゃうよ!」

 

 とおくでぐわんぐわんと誰かの声が響く。聞こえてないふりをするにはちょっとうるさすぎるから、仕方なく返事を返す。

 

「うぅ……、もうちょっとだけ

 

 そんな私のちょっとしたお願いは、聞き覚えのある力強い声にはじき返された。

 

「今日は朝から坂本少佐の訓練だよ芳佳ちゃん!」

 

 坂本少佐という単語とともに、一人の人物が頭の中に浮かんでくる。眼帯をした彼女はとても怖い顔で怒号を飛ばそうとした。そのイメージから逃げるように私の頭はびっくりするほど素早く覚醒した。

 

「おはようリーネちゃん! ごめん、すぐ仕度するから!」

 

 

 

 

 背景、お母さんとおばあちゃん。あとみっちゃん。

 私がここ第501統合戦闘航空団にきてから一週間ほど経ちます。

 最初は軍人さん達と仲良く出来るか心配だったけど、みんなとっても優しいし、イメージしてた軍人さんとは全然違いました。学校の友達から聞いていたような立派な戦士達、ではなく、同じ年ごろの女の子って感じです。あ、もちろん立派でもあります!

 この間ネウロイが出たときには501で最初の友達もできました。正直この私にとって未知の場所で友達が出来るかどうかが一番の不安だったのでとりあえず一安心です。

 その友達っていうのは、今日も朝早くに私の窮地を救ってくれた――

 

「ハッ、ハッ――」

 

 いまもゆさゆさゆさゆさと、隣で走ってる女の子。……うーん相変わらず素晴らしい。

 

 いけないいけない。またつい見入ってしまった。

 そう、それは今も隣で一緒に走っている、リーネちゃんことリネット・ビショップ軍曹です。

 リーネちゃんは、おっぱいが大きくて、大きな青い目、茶色がかったグレー、……よく分かんない色の長い髪を後ろでおさげにしているとってもおっぱいの大きい可愛い女の子です。歳はたぶんおんなじくらいなのに、故郷のブリタニアを守るためとっても頑張ってます。

 えーと、あと射撃がすっごくておっぱいもおっきいです。

 

 

「はぁ……はぁ、芳佳ちゃんなぁに? はぁ…はぁ、ケホっ」

 

「い、いやなんでもないよアハハ」

 

 おっぱいへの視線を感じたのかリーネちゃんが息も絶え絶えに聞いてきたけど、華麗にスルーします。そこへ後ろから鋭い声が飛んできました。

 

「よそ見とは余裕があるなあリーネ! 10本追加だ!」

 

「へぁ!? はあい!」

 

 こんな感じで私は今日も元気で――あ、もうダメ……。関係ないことで気を紛らわす作戦失敗……。

 頭の中に広げていた便箋を閉じる間もなく、土いっぱいの地面がゆっくり近づいて……。

 

 

「坂本少佐! 芳佳ちゃんが倒れました! 虚ろな目でブツブツ言ってます!」

 

 

「みやふじいいいいいいいいいい!!」

 

 

 

 

 

「んん……。ここは……」

 

 目を覚ますと、私は清潔感のあるベッドに寝ていた。微妙に硬い枕の寝心地が悪くて、頭の位置を直しながら目を開けると目にいたいくらいの光が飛び込んできた。

 まぶしすぎる天井の白色電球から目を逸らすと、石造りの窓からもう夕闇に呑み込まれた暗い空が見える。

 

「そうだ、私坂本さんの訓練中に倒れたんだった」

 

 ここは、たぶん一階にある医務室かな?

 入ったことはなかったけど、扶桑の学校にあった保健室の雰囲気にどことなく似てるきがする。

 頭がまだ少しぼーっとしてたけど、いつまでも寝てるわけにもいかなイなと思い始めた時、大事なことを思い出した。

 

「そうだ夕飯! 今日はリーネちゃんに肉じゃがを披露するって約束した日だ!」

 

 焦ってベッドから跳ね起きようとすると、ベッドのわきでうつらうつらと船をこいでいるリーネちゃんに気が付いた。すやすやと寝息を立てる様は猫みたいでとってもかわいかった。看病してくれたのかな。

 

「起きて、リーネちゃん。こんなところで寝てたら風邪引いちゃうよ」

 

「ん……。あっ!芳佳ちゃん目覚めたの?大丈夫? どこか痛くない!?」

 

「大丈夫だよ。リーネちゃんは心配性だなあ」

 

「もう、芳佳ちゃん! 倒れそうならちゃんと言わないと!」

 

 私の言葉に対して身振りも大仰に反応するリーネちゃん。眉にしわが寄っているのが見えて、結構本気で怒らせてしまったと私も少し反省。

 

「うぅ、ごめん……」

 

 項垂れる私と怒るリーネちゃんの間に、微妙に気まずい空気が流れた。

 その時、奥のカーテンのかかったベッドの方からもそもそ音が聞こえた。リーネちゃんも私も音に反応してそっちの方を向くと、ちょうどガラッとカーテンが開いた。

 

「うるさいなー、もー寝れないじゃん。……おっ宮藤とリーネじゃん。やほー」

 

 そう言ってビシっとだらしない声と共に敬礼したのは、501のエース、ハルトマンさんことエーリカ・ハルトマン中尉だった。

 おっぱいが控えめで金髪のショートヘアーが似合う、私と同じくらいの年齢に見えるハルトマンさん。だけど実はすごい人で、帝政カールスラント出身のスーパースターなんだとか。

 おっぱいは控えめですが、なんでもこの間撃墜数が200機を超えたらしいんだけど……、正直私にはどれくらいすごいのかいまいちよくわかってない。

 

「ハルトマン中尉もおけがをされたんですか?」

 

「私? 私はただの昼寝だよー。……トゥルーデが起きろ起きろってうるさいからねー。避難してきたのだ! にしし」

 

 ブイっとピースをするハルトマンさん。

 ベッドにゴロゴロ転がったままなのであんまり決まってない……。もう夜ですよとは教えない方がよさそうかな。

 

「ん、トゥルーデさん? そんな人501にいたっけ」

 

「バルクホルン大尉のことだよ、芳佳ちゃん」

 

 リーネちゃんにそう言われて一人の人物を思い出す。ゲルトルート・バルクホルン大尉。自分にも他人にも厳しくて、特に規律のこととなると扶桑の鬼も裸足で逃げ出すほど怖くなる人だ。よくハルトマンさんが怒られているところを見かける。

 そういえばバルクホルンさんも501のスーパースターで、ハルトマンさんとは同郷だそうだ。

 バルクホルンさんといえば、私はバルクホルンさんに嫌われているのかな。

 たまに怖い目で見られたりするんだけど、思い当たることが無くて本当に心配。私何かしちゃったのかな?

 あ、そういえばたしか501の部隊長のミーナ中佐もカールスラント出身だった。

 

「お二人のおっぱいは、……まだ見たことはありませんがきっとなかなか素晴らしいと思います! でもリーネちゃんだって負けて無いよ!」

 

「……芳佳ちゃん?」

 

「フフ、なんでもないよリーネちゃん」

 

 私が自分のつぶやきを曖昧にごまかすと、リーネちゃんは不思議そうに小首を傾げた。その横ではハルトマンさんが腕を組んで大物のように頷いていた。きっと私たちは心の中で通じ合っていると思う。

 

「宮藤も分かっとるね」

 

「え、何がですか? ……ねえ芳佳ちゃん何の話?」

 

 リーネちゃんは頭に疑問符を浮かべて、オロオロと私とハルトマンさんを交互に見る。私はあえて何も言わずハルトマンさん同様うんうんと頷いた。

 その時、私はふと肉じゃがのことを思い出した。

 

「そうだ! リーネちゃんごはん、夕飯作んないと! もう夜だよ」

 

「え? あ、あーもうこんな時間だね。……でも芳佳ちゃんは今日はいいよ。休んでて」

 

「えー! ダメだよぉ。今日は扶桑料理の肉じゃがを披露するって言ったじゃん!」

 

 あくまで私を気遣ってくれる優しいリーネちゃん。

私としては身体に何も異常は感じられないし、元気いっぱいだってことを一生懸命説明してるんだけど……

それでもまだリーネちゃんは心配そうだなあ。

 

 

「でもやっぱ

 

 

「じゃが? もしかしてイモ料理!? 食べたい食べたい! 今すぐに!」

 

「……いやあ、まさか扶桑にもイモ料理があったとは、やっぱりイモは偉大だねぇ!」

 

 

!?

今まで奥のベッドにいたハルトマンさんが飛び上がってこっちまで走ってきました。

いつものどこかやる気の無い表情から一気に活力に満ちた顔をしています。

 

こんなに食いついてくるなんて、もしかしてハルトマンさんイモ好きなのかなあ。

リーネちゃんは急にテンションのあがった上司にびっくりしています。

 

……ふふ、かわいいなあ。

 

 

「ほら、はやくう!」

 

 

そう言ってハルトマンさんは私と未だに呆然としているリーネちゃんを引っ張っていこうとします。

……うわ、ハルトマンさん力強い!

 

「あああ、今行きますからそんなに引っ張らないでください!」

 

 

ベッドから降りた私とまだオロオロしているリーネちゃんは、ゆっくりハルトマンさんにひきずられていきました。

 

 

 

 

 

 

医務室のドアを私が開こうとしたときのことです。

 

 

「ふざけているのかミーナ!!」

 

 

バルクホルンさんの怒鳴り声が私たちの飛び込んできました。

 

 

「ひっ……」

 

 

リーネちゃんはまたびっくりして私の後ろに隠れます。

……それにしても、どうかしたのかな。

バルクホルンさんがミーナ中佐に怒るところなんて見たことないや。

 

 

私はチラリと私の手をまだ掴んでいるハルトマンさんの顔を見ましたが、さっきまでの嬉しそうな表情はなりを潜めていて私には表情が読み取れませんでした。

 

そして、ハルトマンさんは表情とは裏腹に軽い調子で

 

 

「ううー。やってるねー。最近虫の居所が悪かったトゥルーデがついに爆発したよー。」

 

 

ハルトマンさんは相変わらず心配してるともとれるような無表情で言葉を続けます。

 

「ほらほら宮藤、ドアちょっと開けて様子見しようぜ」

 

「は、はい!」

 

「ちょっと、芳佳ちゃん静かにしないと。見つかっちゃうよ」

 

後ろからはリーネちゃんの押し殺したような切羽詰まった声がしました。

私の服の裾が強く引っ張られているのを感じます。

あはは、可愛いなあリーネちゃんは。

ちょっとイタズラしちゃおうかな、あいたたたたた。

つねらないで! しないから! しないから!

 

「ほら早く開けろって宮藤、終わっちゃうよ」

 

「あ、すみません……今開けますね」

 

私は扉の軋む音がバルクホルンさん達に聞こえないように、ゆっくり慎重にドアノブを回します。

 

廊下には、今日は本部に行っていたミーナ中佐、あと坂本さんがバルクホルンさんと向き合って話していました。

バルクホルンさんは少し興奮しているようで大きな身振りで何かを訴えようとしており、ミーナ中佐は困ったような顔、そして坂本さんは眼帯で隠していない方の眼を瞑って腕を組んで黙っています。

 

耳をそばだててみると、

 

「頼む冗談だと言ってくれミーナ……、そんなバカげた命令聞く必要ないだろう!」

 

「いいえ、これは冗談じゃないわトゥルーデ。……別にリスクはそんなに大きなものではないし、断ることもないでしょう? それに、結構強めに上から言われてるのよ」

 

「しかし! あまりにもバカげている!! たかが一冊の本を信じてそんなメルヘンな作戦を決行しようだなんて……。私達ウィッチーズはあの上層部の老害共のおもちゃではないんだぞ!!」

 

「……バルクホルン大尉。口を慎みなさい」

 

言い争う二人をよそに、坂本さんは目を閉じたまま口を開こうとしません。

キッと真一文字に結ばれた唇から、私には坂本さんが何か難しいことを思案しているように見てとれました。

 

 

「メルヘンな作戦ってなんですか? ハルトマンさん」

 

「さぁ、こればっかりは分かんないなぁ……、たぶん今日ミーナが伝えられてきたものだろうし……」

 

「あっ、もしかして本ってこの前ルッキーニちゃんが拾ってきた本のことじゃないかな芳佳ちゃん」

 

「あぁ! あれあたたたたたごめん! 静かにする! 静かにするから!」

 

 

あ、坂本さん眼を開いた。

 

「なにをそんなにイライラしているんだ? バルクホルン。ミーナの言う通りこんなことは大したことではないだろう。……それにもし成功したらネウロイとの戦いに大きな進展がみられるぞ? はっはっはっは!!」

 

「笑い事ではない!!」

 

「す、すまん……続けてくれ」

 

坂本さん……。

 

「とにかく! そんな、我々の魔法力を使って英雄を呼び出して使役する、などという今時夢見がちなリベリアンの子供でも考えんようなメルヘン作戦絶対に認めん!! そんな余計なことをしている暇があったらガリアなりカールスラントなりの奪還作戦を考えたほうが余程有意義だ!」

 

バルクホルンさんリベリオン合衆国のこといったいなんだと思ってるんでしょうか……。

 

「だがな、バルクホルン。その英雄に縁の物さえ用意すれば狙った英雄を呼び出せると本には書いてあるそうじゃないか。彼のアーサー王やジャンヌ・ダルク、ヘラクレスに宮本武蔵もウィッチだったと聞く。彼らが味方なら心強いとは思わんか? はっはっはっは!!」

 

「茶化さないでくれ、少佐。私は真面目に話しているんだ」

 

「美緒、ちょっと黙っててもらっていいかしら」

 

「す、すまん……」

 

坂本さん……。

まずアーサー王もヘラクレスも宮本武蔵も男性ですよ。

でも、今の話は本当なのかな?

とてもにわかに信じられるような内容じゃなかったけど……。

 

唐突に話を切り上げるように、ミーナ中佐がパンパンと手を叩いて言いました。

 

「とにかく、この作戦については明日の午前にミーティングを開き本作戦について説明、そして同日1600時に実行します」

 

「ミーナ!!」

 

言外にもう異論は受け付けない、と意思表示をしたミーナ中佐にバルクホルンさんが悲痛な叫びをあげます。

その声にも反応せずに立ち去ろうとするミーナ中佐に坂本さんが呼び止めました。

 

「それにしてもミーナ、ずいぶんと急じゃないか? さすがの私でもその時間までに武蔵に縁のものは用意で……いやなんでもないすまん」

 

坂本さんが言い終わる前に自重するのも分かるなぁ。

ミーナ中佐今すっごく怖かった。

あと武蔵呼んでどうするんですか坂本さん……。

 

そうしてバルクホルンさんが怒ってずんずん歩き始めたのをきっかけに、廊下に集まっていた三人は解散して行き、後には月明かりが誰もいなくなった廊下を照らし続けていました。

 

帰り際に坂本さんが、

 

「私の扶桑刀でいけるか? いや、しかし武蔵だぞ。……クソ、小次郎なら庭の物干し竿でいけると思うが、奴は気に食わんし」

 

などと呟いていたのは気のせいだと思いたいです。

 

 

それにしても――――

とんでもないことを聞いてしまった。

ハルトマンさんの顔を横目で見ると、今度はショウウインドウのなかのトランペットを見つめる少年のようなキラキラした瞳をしていました。

気のせいか私の腕を掴む手も少し震えている気がします。

 

しかし、正直なところ私もワクワクしていました。

昔話に出てくるような英雄かぁ……。

会ってみたいなぁ。

 

「なぁ宮藤、リーネ……、聞いたろ? ……おんもしろいことになってきたぞー!!」

 

うおおおおと雄叫びを上げるハルトマンさん。

踊らないで下さい。

まだ召喚できると決まったわけではないですし……。

ね、リーネ…ちゃん……?

 

 

「ハルトマン中尉」

 

 

「んーなにー。リーネは誰がいい?私はーんージークフリートとかかっこ良さそうだなー! いやヘラクレスも筋肉すごそーだしー! とても選べないよー! 宮藤はどう? 誰がいいかな?」

 

 

「私はやっぱり扶桑の英雄がいいです!! 義経とか金太郎とか! リーネちゃんは?」

 

「……芳佳ちゃんもハルトマンさんも少し落ち着いて下さい」

 

私とハルトマン中尉はこれから起こるかもしれない素晴らしいことへの予感に打ち震えます。

私もまだ完全に信じられたわけではないけど、やっぱり……ん?

リーネちゃんの様子がおかしい……。

英雄の話そんなに信じられないかなぁ?

いやでもそういんじゃないような……

 

「リーネは信じてないのー? 今の話ー」

 

ここにきて私の違和感は確信に変わりました。

ハルトマンさん、危険です今のリーネちゃんに突っ込むのは!!

 

「いえ、そんなことないですよー。ただ、中尉や芳佳ちゃんはここがどこか分かってないのかなぁと思って。……うふふ」

 

あ、ぞわぞわってきた、背中がぞわぞわってきた今!

見たことないくらいニコニコしたリーネちゃんにさすがのハルトマンさんも何か気付いたようです。

 

「ブ、ブリタニアだよね? リーネ……ちゃん?」

 

「あ、そ、そっかブリタニアだもんね、そりゃアーサー王だよな、リーネ?」

 

「………………違う」

 

「えっ、あっリーネ今なんて?」

 

ぼそっと呟くリーネちゃんにハルトマンさん……ですが、

これはまずい! ハルトマンさんが気付かないうちに選択をミスしてしまったらしい!

…………あっ、死んだかもこれ。

 

「……違う違う違う違うでしょ!? クー・フーリンでしょ! 私達ブリタニア人はみんな生まれたときからケルト神話の大英雄赤枝の騎士団一番槍で太陽神ルーの息子で光の御子、クー・フーリンに憧れて生きていくの!! …………え、知ってるよね、よね?」

 

ひぃっ!

……まずい、知らない人だ。

どうしようハルトマンさ……ん?

あれ、もしかして逃げた? ……逃げた! カールスラントの黒い悪魔一瞬で逃げたよ!? しかも新人を囮にして!

 

目の前のリーネちゃんだったものは、相変わらずうつむいたままブツブツとうわごとのようにそのなんとかさんについて語ります。

あぁ、私の友達はどこにいってしまったんだろう……

私は無意識のうちに後ずさりしていたようで、気付くと背中に固い医務室のドアを感じました。

もう逃げ場はない、……どうしよう、今ならいきなり振り返ってドアを開けて、逃げ……られないよね。

だって後ろに下がってたのにリーネちゃんとの距離が変わってないってことはしっかり距離を詰められてるってことだもん、……たぶん振り返った瞬間に終わっちゃうよねあはは。

 

もうこれは素直に知らないと言うしかない、……でもきっと大丈夫。

あの夕陽の中抱きしめたリーネちゃんを思い出す、……よし、リーネちゃんのおっぱいに勇気をもらった!

言おう!

 

「ごめんリーネちゃん! 私その人知らないの!」

 

あっ、死んだか……

 

―――いや、

 

「……そっか、芳佳ちゃんは扶桑の人だし知らなくても仕方ないよね。うん、それなら仕方ないよ、……仕方ない」

 

た、助かった!

うつむいたまま

……でも許してくれている言葉のはずなのに、自分に言い聞かせているように見えるのはなんでだろう。

 

「うふふ、……そうよ、これから知ればいいんだ。これから知ればいいんだよ芳佳ちゃん!」

 

いきなりガバっと顔をあげて私の両手を包み込むように握るリーネちゃん。

その和解の証が私にはどうしても犯罪者につなぐ手錠、もしくは獲物を吊るすロープに見えるたのはどうしてだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして私はその日の睡眠時間と引き換えにクー・フーリン博士となった。

リーネちゃんの好感度も少し上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眠い……

命からがら自分の部屋に逃げ帰った来た私は少しでも睡眠をとるために真っ直ぐベッドに向かい、そしてそのまま倒れこんだ。

 

朝日を見るとリーネちゃんは正気に戻った。

正直もうしばらくクー・フーリンという言葉は見たくも聞きたくもない。

 

昨日は肉じゃがを披露するはずだったのに、私は何も口にしていない。

それはもちろんあの後リーネちゃんの部屋にこもりきりだったからだ。

みんなちゃんとご飯食べれたのかな……

 

目を閉じると無意識のうちにまたリーネちゃんの講習が再生されてしまって私はたまらず跳ね起きる。

 

よし! もう切り替えよう!

 

 

気合を入れるため私は顔をパンとたたいてから、少しでも栄養を摂取するため食堂にむかいました。

リーネちゃんが先に向かって作ると言っていたので、きっと今頃はいつものリーネちゃんのおいしいご飯が待っていることでしょう。

さすがに今日の朝はご飯を作る気がしませんでした。

ごめんねリーネちゃん。

 

食堂のドアの前でシャーリーさんと、ルッキーニちゃんに出会いました。

 

「おっ、宮藤おはよう!」

 

「おっはようっ、よっしかー♪」

 

「あ、シャーリーさんにルッキーニちゃん。おはようございます」

 

「ん、なんか元気ないな宮藤? どうかしたか?」

 

元気に挨拶をしてくる二人に私は中途半端にしか返事をできませんでした。

シャーロット・イエーガー大尉、通称シャーリーさん。

シャーリーさんはリベリオン合衆国出身の、……確か中尉だったかな。

凄まじい、おそらく501で一番のおっぱい戦士です。

フランチェスカ・ルッキーニ……階級は忘れちゃいました。

ルッキーニちゃんはロマーニャ公国……だったかな、の出身で確か少尉。これまた正反対がっかりおっぱいですが、未来を感じる夢見るおっぱいです。

二人には私がここにきてすぐから仲良くしていただい」

 

「宮藤のやつ相当キてるな。虚空を見つめて一人言なんて大分ヤバいぞ。……そっとしておこうなルッキーニ」

 

「うん……、そだね」

 

 

気付いたらシャーリーさんもルッキーニちゃんもいなくなっていて、私は一人ぽつんと食堂の前に取り残されていました。

いついなくなったんだろう……。

 

 

 

食堂で、何故か真正面に座っているバルクホルンさんに怯えながらパンをかじっていると、ミーナ中佐と坂本さんが食堂に入ってきました。

それを見るやいなやペリーヌさんが急に立ち上がって、奇声を上げながら坂本さんに駆け寄っていきます。

 

「おはようございます! 少佐ぁ!」

 

「おぉ! ペリーヌは朝から元気がいいな! うむ、おはよう! 今日も絶好の訓練日和だなぁ。はっはっはっは!」

 

「少佐ぁ!」

 

朝からペリーヌさんは騒がしいことこの上ありませんね。

寝不足で頭痛がひどい私としては脳内にキンキン響くようで大変ふかいです。

この苦痛はいつまで続くのかとうんざりしていると、ミーナ中佐がそれをいさめます。

 

「美緒、今日は何の日だったかしら」

 

「……と、思ったがよく考えたら今日はあんまり訓練日和ではないな。……すまん」

 

「そんなぁ……」

 

 

坂本さん……

 

 

あっそうそう坂本さんの紹介をしてませんでしたね。

坂本美緒少佐は我が扶桑海軍が誇る女サムライで、

その眼帯で覆われた右目の魔眼でネウロイのコアを見破り、背中に提げた扶桑刀でネウロイなりペリーヌさんのハートなりなんなりを一撃で斬って捨てる(・・・)すごい人です。

おっぱいは意外とすごい501のダークホースです。

 

そうそう、実は私も坂本さんのおかげでここにいるんですよ。

 

……あぁ、ペリーヌさん? あーペリーヌさんは、ガリア復興に命をかける名門お嬢様で坂本さんを崇拝してますね。

私のことはあまりお気に召していないようです。

おっぱいはがっかりです。おわりうふふふ」

 

「折角サーニャと朝ごはん一緒に食べられるのに、隣の奴がブツブツうるさくてかなわないんダナ」

 

「……エイラ? 宮藤さんがどうかしたの?」

 

「なんでもなーい」

 

あ、隣エイラさんとサーニャさんだ。

サーニャさんはオラーシャから来たナイトウィッチです、毎日夜間哨戒お疲れさまです。

おっぱいはたぶん普通です。

エイラさんはすおむす……だったかな、なんかそんな感じのとこから来たらしいんですけど、まだよく分かりません。

でもきっとおっぱいは身体のサイズにたいして黄金比を保ってるゴールデンパインです、ゲヘヘ。

 

ふぅ……、これで501は大体紹介できたと思います。

まだみなさんについては知らないことが多いのでこれからもっと」

 

「シャーリぃぃ! よしかがこわーいぃ!」

 

「よしよし、大丈夫だぞールッキーニ。こんど少佐に相談しようなぁ?」

 

 

 

食事も終わろうかというとき、ミーナ中佐がテーブルの端に立ってみんなの注目を集めるように喋り始めました。

 

「みんなちょっといいかしら? ……はい、では今から本日の流れを説明します」

 

「んー? 今日なんかあったっけー?」

 

 

シャーリーさんは椅子にぐったりと寝そべるように腰掛けていました。

右手では隣に座っているルッキーニちゃんのツインテールをいじりながらミーナ中佐に尋ねます。

 

「いいえ、これは昨日本部から通達されたばかりの命令についてよ」

 

 

 

 

あっ、昨日の話だ!!

やっぱりやるんだ!

 

昨日の光景を思い出し、心配になってバルクホルンさんを見ると、いかにも不満そうな顔で眉間にシワを寄せ、眼を閉じ黙って座っていました。

まだ怒っているんでしょうか……。

 

「えー、まず本日の訓練は全面的に中止となりま

 

「ぃやったああ! シャーリーシャーリー! ロマーニャに遊びにいこ!」

 

「待つんだールッキーニ、まだ中佐は非番だなんていってないぞ? 世の中そんなに上手くいかないんだ」

 

「うえぇー、なんでー?」

 

はしゃぎ始めるルッキーニちゃんとそれをなだめるシャーリーさん。

この光景はいつ見ても姉妹か母娘にしかみえないんだよなあ。

 

「コホン、……いいかしらルッキーニさん? シャーリーさんが言ったように、今日は非番になるというわけではありません。二時間後の1100時にミーティングを開くので、みなさん作戦会議室に集合して下さいね。なお、作戦に支障が出るので今日はなるべく魔法力および体力はできるだけ温存してください。つまり本日は自主的でも訓練は禁止です、……分りましたか坂本少佐?」

 

「あ、あぁ……」

 

「よろしい。それでは、今ここにいない人には各自伝えておいてください。……サーニャさんは…………いますね。……ということは今いないのはフラウだけね、……それじゃあトゥルーデお

 

突然バルクホルンさんがバン! と机をたたきました。

食堂の中にいた皆がその音につられてバルクホルンさんの方を見ます。

 

「私は!! ……………まだ納得していないからな、ミーナ」

 

そう言ってバルクホルンさんは立ち上がりずんずん食堂からでていきます。

みんな呆然とその姿を見送ることしかできませんでした。

……やっぱり普通の怒り方じゃないよなぁ。

今回のこと以外にも、バルクホルンさんが怒っていることがあるのかもしれないと私は思いました。

 

「……もう、それじゃ宮藤さんハルトマン中尉にお願いね。たぶん寝てるだろうけどたたき起こしてもかまわないわ」

 

「は、はい!」

 

「ありがとう、それじゃあみんな解散していいわ」

 

 

 

 

 

 

みなさんの食器をリーネちゃんと洗っていると、後ろからシャーリーさん達の話し声が聞こえました。

 

「それにしてもバルクホルンの奴やけにイライラしてたなぁ……。あいつ食堂に来てからずっと目瞑ってムスーっとしてただけだぜ」

 

「そうか? 大尉はいつもあんなかんじダロ」

 

「エイラ……、そんなこと言ったら失礼よ」

 

やっぱりみんな気になってるみたい……

リーネちゃんもさっきから難しい顔をしています。

 

 

食器を洗い終わった後、私はなんとなく話しかけづらいリーネちゃんを後に残して、ハルトマンさんを起こしに行きました。

 

ハルトマンさんの部屋の前まで来るとなにやらなかからゴソゴソ物音がします。

あれ、もう起きてるのかな?

 

「ハルトマンさーん?宮藤です。入りますよー?」

 

私は木製の扉をゆっくりあけ……、重い! この扉なんかすっごく重い!

精一杯押してかろうじて開けた隙間に体をねじ込むと、そこには見渡す限りのゴミ……ではなくてハルトマンさんの私物の山でした。

扉が重かったのはこの本が引っかかってたからか……

 

「お、宮藤じゃーん。手伝いに来てくれたのー?いやーさすが扶桑の軍人は気がきくねー」

 

……部屋の中にハルトマンさんは見当たりませんでした。

もしかしてあの奥で蠢いているごみ山の中にいるんでしょうか。

 

「いえ、あの、ミーナ隊長に1100時に作戦会議室に集合というのをハルトマンさんに伝えてほしいと言われたので。……その、なにしてるんですか?」

 

「いやー、昨日の話でさあ、英雄に縁の物があればとか言ってたじゃん? それっぽいもの持ってたような気がしてさー。あと集合の話はわかったよー」

 

相変わらずハルトマンさんは見えない。

時間もあるし手伝ってあげようかな。

 

「あのぅ、手伝いましょうか?」

 

ポスっと音がしてハルトマンさんが例のごみ山から顔を出しました。

頭にズボンがひっかかってる……。

 

「ほんと? サンキュー! でっかくて赤い宝石っぽいやつだから、よろしくねー」

 

……さて、探すついでに少しこの部屋を片付けちゃおう。

 

 

 

1100時までに探し物は見つからなかったので、一端探すのをやめて私はハルトマンさんと二人で作戦会議室へ向かいました。

 

そこであった説明は、やはり昨日のメルヘン作戦についてでした。

ミーナ中佐も正直信じられていないらしいけど、本部の人たちから本当に強く言われてたみたいです。

作戦内容は簡単で、1600時にストライカーを装着してハンガーに集合、その後魔法陣上で、501のみんなで20パーセント程度の魔法力を魔方陣に流し込んで呪文を唱えるそうです。

呪文を唱えるってなんかおとぎ話に出てくる魔法使いみたい!

 

みんな最初にその話を聞いたときは呆気にとられていたけど、意外と乗り気な人が多いみたいです。

ペリーヌさんは、ありえませんわ! とかなんとか憤慨して、リーネちゃんはやはり難しい顔をしたまま、バルクホルンさんは終始黙ったまま一番後ろの席でムスっとしていました。

そのあと私はまたハルトマンさんのおへ」

 

 

 

「うむ……、これがミヤフジ病か……、確かに少し」

 

「ええ、虚ろな目とか確かにちょっと怖いわね……」

 

「だろー? ルッキーニが怖がっちゃってさあ」

 

 

 

 

1530時になったのでそろそろかと思い、私はハンガーに向かいました。

ハンガーの外では、整備士の男の人たちがせわしく動き回っていました。

魔方陣を描いてくれているそうです。

自然に発生するものじゃないんだ……。

 

ハンガーの中には既にあらかた人が集まっていて、みんなこれからする作戦の話に夢中になっていました。

 

 

「だーかーらー、エクスカリバーはビーム兵器だったんだって! ネウロイのやつみたいなー! ただ丈夫だったり幸運になるだけの剣で侵略者は倒せるわけないじゃん。こう、アーサーが剣振ったらチュドーンってな感じに!」

 

「そんなバカな話あるわけありませんわ!」

 

「いやー分かんないぞーペリーヌ。アーサー王はウィッチだったのかもしれないぞー、なあルッキーニ」

 

「んー、ビームきらぁい!」

 

「なあっはっはっは! そうか、ルッキーニはビーム嫌いか! ……それよりハルトマンの持ってるのって、もしかして例の遺物か? そんなでっかいルビー見たことないぞ」

 

「えぇ、確かにこれは一級品ですわね。微かに魔力もかんじます。……一体どの英雄の遺物なんですの?」

 

「これかー? これはなぁ、おそらく大英雄ジークフリートの魔剣、バルムンクの柄にはまってた宝石さ! これでもうでてくる英雄は決まったも同然だなー、にしし」

 

ペリーヌさんもなんだかんだですっかり信じる側に回っちゃったみたいですね。

それにしてもハルトマンさんの宝石ってそんなにすごいものだったのか……。

あ、坂本さんとミーナ中佐だ。

 

 

「しかし武蔵は冗談にしても呼び出す英霊は女性の方がいいでしょうね。女性ならウィッチの適性もあるかもしれないけれど、下手に剣術とかが優れた男性だとネウロイ相手には役に立たないんじゃないかしら。特に武蔵とか武蔵とか、あっあと武蔵とかねぇ……」

 

「うぐっ……、しかし……、武蔵にふかのうは……、あっいやなんでもない」

 

ミーナ中佐少し坂本さんにきびしすぎじゃないかな……あはは。

でも確かに女性の方がいいかもしれないなあ。

 

「サーニャはどんな英雄がいいんダ?」

 

「私は……優しい人がいいわ、……エイラは?」

 

「わ、私もそう思ってたんダ! 一緒ダナ!」

 

私も優しい人がいいなあ。

そろそろ隅でしょぼくれてるリーネちゃんを励ましに行こうっと。

 

「リーネちゃんどうしたの? 朝から元気ないけど……」

 

「芳佳ちゃんどうしよう……。手に入れられなかったの、触媒」

 

「あー、クー・フーリンに縁の品がみつからなかったんだね」

 

あれだけ好きなんだからそれはショックだろうなあ。

私もちょっと会ってみたかったな。

リーネちゃんの必死さに少しびっくりしちゃったけど、確かにクー・フーリンの話はとってもかっこよかった。

 

「お姉ちゃんがたしか家に伝わるイヤリングを持ってたんだけど、すぐ連絡取れないし……」

 

 

 

ハンガーには既にバルクホルンさん以外全員がそろっています。

相変わらずハンガー内は騒がしいけど、もうみんなストライカーを装着して魔導エンジンを起動させ始めていました。

少し油臭いハンガーの空気が、レシプロストライカーのプロペラでかき混ぜられていきます。

ここでこんなに大勢でストライカーを起動させるのは初めてかもしれないなー、とシャーリーさんがつぶやいた時、紙がまわってきました。

へー、これが呪文かぁ……。

全然意味分からないよ……。

 

 

 

「ミーナ、結局バルクホルンは来ないつもりなのか?」

 

「分からないわ。来るようには言ってあるのだけれど……。本部が言うには10人いれば足りるらしいから、作戦実施に支障はないの、でもそれはあまり良くないでしょう? ……私たちは家族なんですもの」

 

「あぁ、そうだな。ところで私見だが、……最近のあいつはどこか焦っていないか? だんだん飛行のキレも無くなってきている。このままだとその内実戦で命を落としかねないぞ」

 

「美緒! めったなことを言わないで頂戴。……たぶん、クリスさんのことが気に

 

「坂本少佐! 準備ができました」

 

「うむ、ごくろう! ……ミーナ、この話はまたあとで」

 

「えぇ、そう。」

 

どうしよう、バルクホルンさん大丈夫かな……。

それにクリスさんって誰なんだろう。

 

「ホラ、宮藤魔法陣できたってサ。さっさと行くゾ」

 

「宮藤さん、行きましょう」

 

「エイラさんにサーニャさん……。うん、行こう」

 

 

ハンガーをでると滑走路の中心に、一つの円のなかにいくつかの円と図形、文字が描かれている魔方陣がありました。

これは……チョークかな。

 

普段私達ウィッチが使うシールドの魔方陣も、国ごとにちょっとずつ図形が違ったりするものなのですが、この魔方陣は普段私達が自然に発生させるそれとは根本的に意味するものが違うような気がしました。

 

 

 

1600時まであと5分くらいかなというときです。

レシプロのプロペラ音とみんなの話し声に負けないよう坂本さんが声を張り上げました。

 

「それでは! 時間は少し早いがメルヘン作戦を開始しよう!」

 

え?

 

「坂本さん! まだバルクホルンさんが来てません!」

 

「あいつはおそらく不参加だ。しかし支障は

 

「あります! バルクホルンさんはきっと来ます! 時間まででいいんで待ちましょう!」

 

不思議と言葉が口をついて出てきました。

でもそんな仲間外れみたいなこと私はしたくなかったのです。

 

「えぇ、待ちましょう美緒。時間はまだあるのだし」

 

「……まぁ、それもそうか。すまん! みんな今のは無しだ! はっはっはっは!」

 

坂本さん!

 

「別に待つ必要なんかないよー」

 

ハルトマンさんなんで……

 

「もう来たから。……遅いよトゥルーデ! もう待ちくたびれちゃったよー」

 

「トゥルーデ!」

 

「バルクホルンさん!」

 

「何を言うハルトマン。まだ時間ではない。……すまない、ミーナ。武装に手間取った」

 

ストライカーを装着して飛んできたバルクホルンさんは見たことないほど重装備でした。

でも良かった……。

 

 

「別にいいわ。それよりなぁにその重装備?」

 

「はっはっはっは! 一人で戦争でもしにいくのか、バルクホルン?」

 

「そうだ。もし億が一召喚できたとして、そいつがマトモな奴である保証はない。もし不審な動きをしようものなら、その瞬間に蜂の巣にして冥土に送り返してやろうと思ってな」

 

「もう、トゥルーデったら……」

 

本当に良かった……。

バルクホルンさん少し元気出たのかな。

でもこれでやっと11人揃った!

 

 

「うむ。宮藤の言った通りだったな。はっはっはっはビックい ……よし! 時間だ。準備はいいな?」

 

坂本さんは懐中時計をしまい、そうみんなに呼び掛けました。

 

 

 

触媒候補たちを円の外に置き、私達は魔方陣の周りをそこを除いて取り囲みました。

うわ、結構みんないろいろ持ってきてるなぁ。

 

ハルトマンさんの宝石を始めとして、シャーリーさんはゴーグル、エイラさんはタロットカード、やっぱり坂本さんは扶桑刀おいてますね、ルッキーニちゃんは……虫!?

あっ取り上げられた。

ちょっと可哀想かな、ふふ。

 

きっと何も起こらないだろうけど、なんかこうしてるだけで楽しくなってきちゃいました。

 

 

「それじゃあ始めましょう。みんな遊び気分でやらないように。魔法力は自然に流れていくみたいだから、特に力まず呪文をみんなと合わせることを気にかけてください。いきますよ?」

 

 

そうして召喚は始まった。

 

 

「「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ」」

 

 

みんなの声が重なりあう

 

読み上げると共に魔方陣が光を放ち始める

 

一言発するごとに体の大切な何かが流れていくみたいな気がする

 

これが魔法力が自然に流れ出るということなのだろうか

 

 

 

―――――気持ち悪い

 

 

 

 

 

 

詠唱は続いていく

 

「「「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」」」

 

 

気が遠くなっていく

 

自分は本当に声を出しているのだろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと紅い荒野を幻視した

 

丘に刺さる無数の剣、空に浮かぶ歯車

 

今にもこの世界は壊れそうではないかという漠然とした恐怖が襲いかかってくる

 

丘の上に人がいる

 

そのどこか寂しそうな背中に、あなたは一人じゃないと声をかけてあげたい

 

それが何を意味するかはわからない

 

ただ、それがひどく大事なことに思えて

 

手を伸ばそうと……し……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーチャーをお願いね」

 

 

そんな声を聞いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いけない!

意識が飛んでた。

幸い口は止まってないし、覚えてないはずの呪文がスラスラ口から流れていく。

 

 

 

 

 

 

 

呪文は終わりを迎えようとしていた

 

 

「「「「「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者」」」」」

 

 

 

全員の心が一つになっているのが分かる

そして何かを引っ張りあげているかのような擬似感覚

 

 

 

 

「「「「「「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

物凄い光と風が魔方陣の中から流れ出してきます。

あまりに凄いので、私は思わず後ろに尻餅をついてしまいました。

 

そして魔方陣の中にはどこかで見たような、いや見たことは絶対ないんですけど、一人の男性が立っていました。

 

 

 

 

 

 

 

褐色の肌に逆立てられた白髪、上下に別れた紅の外套。

黒のボディアーマーに、ベルトのたくさんついた男性用長ズボン。

 

 

しかしその奇抜な出で立ちのなかで何より目立っていたのは、

見るものを射抜くその鷹のような鋭い眼。

 

 

 

 

 

 

そして彼は呆気に取られている私達にこう告げました。

 

 

 

 

 

「サーヴァント、アーチャー、召喚の儀に 応じて参上した。お手柔らかに頼むよ、マスター」

 

 

 

 




こんな感じで1人称を交代していくので
すごく読みづらいかもしれませんすみません。

次はグダらないといいなぁ。




こっそりと上の方からちょっとずつ修正しております。
途中から別人が書いたみたいになっていますが、しばらくしたら完全に別人になるので……。

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