ハリー・ポッターと魔法の本   作:Syuka

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第31話 「ソフィアからの課題」

 この部屋には、自分1人だけしかいないはずだった。いや、現実に誰かがいるわけではないのだ。部屋を見回してみても、自分以外には誰もいない。たぶん、うたた寝でもしていて、寝ぼけたのだろう。このところ、集中して本を読みすぎたせいだ。

 あくびをひとつ。そして大きく伸びをしながら、ハーマイオニーは、そう考えた。いったいいまは、何時ごろなんだろう。

 学校の図書館ほどではないが、十分に広い部屋。そして、そこにあるたくさんの本。量のほうは、さすがに学校の図書館の方が多いような気がするが、内容については、ひけをとらない。ハーマイオニーは、そう思っていた。

 

(こんなところだったなんて)

 

 大きめのテーブルには、いすが6脚。閲覧用だと思われるテーブルの上には、本が山積みとなっていた。もちろんハーマイオニーが積み上げたものである。読むために本棚から持ってきたものだけでなく、読み終わって本棚へ戻さねばならないものなど、ごちゃ混ぜだ。それらを見て、改めて部屋中を見回す。

 部屋のドアが開く音は、聞いていない。そんな音はしなかったはずだ。だから、自分以外の誰かがこの部屋にいるはずはないのだ。なのに、その誰かが部屋の中を歩いていた。うとうとしていたのは確かだが、そんな気配を感じたのだ。

 

(だれもいないんだけどね)

 

 いなくて当然なのだ。だから、いくら見回しても誰かの姿はない。目に入るのは、壁一面の本棚と、そこに収められた書籍の数々。それらをみて、ハーマイオニーはため息をついた。

 

(残念だけど、とても全部は読めそうにないわ。もう、学校も始まるだろうし)

 

 結局ハーマイオニーは、実家には帰らず休暇中をずっとクリミアーナ家で、いやこの部屋で過ごしていた。そのためか、今日が何日なのか正確なところがハーマイオニーには、わからなくなっていた。この部屋に閉じこもってばかりいたからだが、2~3日前から、もうそんな頃であってもおかしくはないとは思っていた。

 

(アルテシアは、きっとこの本を全部読んでいるのよね。もの知りなはずだわ)

 

 アルテシアは、生まれたときからずっと、これだけの本に囲まれて生活してきたのだ。なんとうらやましい環境だろう。ゆっくりと目を閉じる。そして、ハーマイオニーは考える。アルテシアは、すべて読んでいるのだ。だから、あんなにもいろいろと知っているのだ。

 そのとき、部屋のドアをノックする音が聞こえた。顔を上げる。今度は、ちゃんと音が聞こえた。ややあって、ドアが開かれる。

 

「アルテシアだよね?」

「ええ、そうよ。本は、たくさん読めた? そろそろ夕食にしようかと思ってるんだけど、食堂に来ない?」

 

 顔を見せたのは、アルテシア。いつもどおりのにこやかな表情のまま、部屋の中に入ってくる。

 

「ああ、そうね。ねぇ、アルテシア。あなたは、いまここに来たのよね?」

「そうだけど? ああ、またなにか変な質問してわたしを困らせようっていうのね」

「違う、そういうんじゃないわ。ついさっきだけど、この部屋に誰かがいたような気がしたのよ。誰かはわからなかったんだけど」

 

 ああ、なんだそんなことか。そのときのアルテシアからは、そんな声が聞こえてきそうだった。少しも気にしたようすはない。

 

「そんなの、気にしなくていいわ。わたしは経験したことないけど、同じ思いをした人は何人かいるわよ。それよりハーマイオニー、明日のことなんだけど」

「いいえ、アルテシア。見過ごせないわ。この家には、あなたとパーバティとパルマさんがいるだけなのよね?」

「そうだけど、いまパルマさんは台所よ。パーバティはそれを手伝ってるし、わたしはあなたを呼びに来たところ。それで、ほかになにか疑問はある?」

 

 アルテシアの表情は、ほとんど変わらない。入ってきたときのままで、ハーマイオニーのとなりに座る。そのいすにも数冊の本が置いてあったのだが、それはアルテシアが手に取り、抱え込んだ。

 

「でもほんとうなのよ、アルテシア。たしかにあたし、誰かがいるって思ったんだから」

「それが誰なのか。あえて言うのなら、この家かもね」

「え? あなた、何を言ってるの」

「クリミアーナには、不思議がつきもの。このへんの住民なら、誰もがそう言って納得してくれてるんだけど、ここではときどき、不思議なことが起こるらしいんだ」

「どういうことなの?」

 

 その疑問は、もっとも。それゆえかアルテシアも、二度ほどうなづいてみせた。

 

「この家には、いろんな魔法がかけられているわ。あなたが経験したことは、そのためなんだと思う。たまにこの家では、なにか不思議なことが起こるのよ。わたしの勉強不足ではっきりとしたことは説明できないんだけど、危険なことには絶対にならないから心配しないで。それだけは断言できるわ」

「家に魔法って、それってどういうことなの」

「クリミアーナのご先祖によるものなんだけど、ほとんどが保護魔法だと思うんだ。だからこの家を壊すことなんて誰にもできないし、火をつけることだって不可能。なかにいる人の安全は守られる。たとえば侵入者を防ぐ魔法なんかもかけてあるから、簡単には家の中に入ってこれないしね」

「じゃあ、あたしが誰かいるって感じたのは? あれもそのためなの?」

「そうだと思うよ。たぶんあなたのようすを見に来たんじゃないかしら。これもクリミアーナの不思議ってことで納得してくれると助かるんだけど」

 

 本ばかり読んでいるハーマイオニーを心配してのことだとする、そんな説明で納得したのかどうか。ハーマイオニーの表情を見ている限りでは、どうやらいまひとつといった感じなのだが、アルテシアにしてもこれ以上の説明となると、まだわかっていないことも多く、難しいのだ。

 

「ごめんね、ハーマイオニー。ちゃんと説明できなくて」

「ああ、いいのよアルテシア。でも、すごく不思議な気分だわ。本ばかり読んでて気づかなかったんだとしたら、もったいないことしたってところかな」

「どういうこと?」

 

 笑って答えず。ハーマイオニーは、笑顔を見せただけで、席を立った。そして、とことこと歩き、あの魔法書を収めてある書棚の前に。

 

「この本が、魔法書なんだよね。読んでもいい?」

「え?」

「さすがにこの本は、あんたに断ってからのほうがいいだろうと思ったから、まだ見てないのよ。ね、いいでしょ?」

 

 これにはアルテシアも、返事に困った。なにしろ、明日から学校なのだ。明日はホグワーツ特急に乗らなければならない。なのでこの書斎から連れ出す必要があるのだ。だから、あまり興味を引くようなことはしたくない。さて、どうするか。

 アルテシアも、その書棚の前に歩いていく。そして、一冊を手に取った。

 

「明日から学校だよ、ハーマイオニー。今夜はゆっくり寝たほうがいいと思うんだけどな」

「ああ、やっぱりね。そろそろ、そんなころなんじゃないかとは思ってたんだけど」

「パーバティは、きっと忘れてるよって言ってたわよ。でも、覚えてたんだね」

「そりゃあね。でも、あと1週間、せめて10日くらいはここにいたいわね」

 

 それが1カ月であっても、ハーマイオニーは歓迎しただろう。だがそんなことはできないと、ハーマイオニーもわかっているらしい。そのことに一安心のアルテシアは、手に持った本を開いてみせた。魔法書は何冊かあるのだが、いま開いているのは、アルテシアが3歳のときから読んでいた本である。すぐにハーマイオニーが、のぞき込む。だがマクゴナガルのときと同じく、ハーマイオニーにも、そこに何が書いてあるのかはわからないようだ。

 

 

  ※

 

 

 休暇が終わり、学校に生徒たちが戻ってきた。アルテシアとパーバティは、無事にハーマイオニーを学校に連れてくることができて、ほっとした様子である。ただハーマイオニーは、学校に着くなりロンとハリーがどこかへ引っ張っていってしまったので、いまここにはいない。誰もが夕食のため、大広間へと向かっているときだというのに、3人でどこかへ行ってしまったのだ。

 食べてからにすればいいのにと、アルテシアはパーバティとそんなことを話しながら大広間へと向かっていた。そこへ。

 

「すこし、お時間いただけますか」

 

 アルテシアたちの前に顔を見せたのは、ソフィア・ルミアーナだった。アルテシアのクリミアーナ家とは、何らかの縁があるはずのルミアーナ家だが、アルテシアには、その詳しいところはなにもわかっていない。だがソフィアのほうはどうなのだろう。ルミアーナ家には、なにか伝えられていることがあるだろうか。ソフィアは、そのあたりのことを何か知っているのだろうか。

 今度ソフィアに会ったなら、そのことを聞いてみたかった。知っているのなら、そろそろ教えてくれてもいいころだろうと、アルテシアは思っていた。そんなことも考えていたところであり、ちょうどいい機会ではあっただろう。だが。

 

「まことに申し訳ありませんが、パチルさんは席をはずして欲しいんですけど」

「え? ああ、いいけど」

 

 パーバティはそう言ったのだが、アルテシアは承知しなかった。

 

「そういうことなら、またの機会にするわ。いまはパーバティと夕食に大広間へ行くところだから」

「それは承知していますけど、そこをなんとか、お願いできませんか。早めにお耳にお入れしたいこともあるものですから」

「いいよ、アル。あたしは先に行ってるから、話をしてきなよ。あんたがいつも気にしてることがわかるかもしれないよ」

「でも、パーバティ」

「いいからいいから。じゃあ、先に行ってるね」

 

 パーバティは、そう言って足早に行ってしまったのである。こうなれば、もうこうなるしかない。

 

「すみません。空き教室までご一緒願います」

 

 その言葉が終わった瞬間、アルテシアはどこかの教室のなかにいた。たぶんソフィアの仕業だ。アルテシアはそう思った。魔法による転送。事前にイメージしていたのには違いないが、こんなに鮮やかな転送ができるとは、ソフィアの魔法もなかなかのものだと思わずにはいられない。

 

「それで、話というのはなに?」

 

 パーバティのことがあったからか、いくぶんいらついてるようだ。そんな口調のアルテシアを、ソフィアはめずらしいものでもみるかのように見ていた。

 

「大きくわけて2つあるんです。でも、ちょっとすねたりもされるんですね。意外というか、新鮮な感じがします」

「そんなことはいいから、話をすすめて」

「ええ、それはもちろん。じゃあ1つめですけど、休暇中に家に戻り、母に報告をしたんです。でも母にも、よくわからないようでした。なので休暇の間、なんどか相談をしました。結果だけを言うなら、判断はわたしに任されました。わたしが決めてもいいということです」

「何を決めるの? わたしのことを報告したんでしょうけど、なにかわからないことがあるのなら、なんでも聞いて。できるかぎり説明はさせてもらうわよ」

 

 その返事に、ソフィアは笑顔をみせた。満足できるような返事だったのだろう。

 

「そうですね。いずれは、そうさせていただくかもしれません。ですがいまは、わたしなりの方法で。ともあれ、2つめのことを話させてもらいます。夕食のこともあるので、あまり長話にはしたくありません」

「どうぞ」

「どこから手に入れたものかは知りませんが、それは、グリフィンドールの寮生が持っていました」

「え?」

「ですので、別のグリフィンドールの人が持っていったとしても仕方ないのかな、とは思うんです」

「もう少し、詳しく説明して」

「はい」

 

 いまのこの2人の関係を、どのように表現すればいいのだろう。互いに相手のことをどう思っているのか。少なくとも、出会ったころと同じ印象のままではないはずだ。なにかしら変化をしているであろうことがこの会話からも感じ取れはするのだが、さて、それぞれはどう思っているのだろう。

 それはともかく、ソフィアがわざわざアルテシアのところへこのようなことを言いに来たのには、なにか目的があるはずなのだ。もちろんアルテシアも、そのあたりのことは気になっている。ソフィアの印象も変わってきてはいるのだが、なんとかその目的を聞き出さなければと、そんなことも考えていた。

 

「3階の女子トイレ。以前に猫が襲われた事件がありましたが、そのすぐそばにあるトイレです。もちろんご存じですよね?」

「ええ、場所は知ってるけど、それがどうしたの?」

「そこのトイレを利用したことは?」

「なかったと思うけど」

 

 2人の身長は、ほぼ同じくらいだろうか。体格的にもほぼ同じように見えるのだが、1学年上であるアルテシアのほうが、小柄だと言えるのかもしれない。

 

「嘆きのマートルのことはご存じですか?」

「いいえ、知らないわ」

「いま言ったトイレに住んでいるゴーストの呼び名なのですが、このゴーストがいるため、あのトイレはほとんど利用されていないんです。そのトイレでのことです」

「まって。マートルはどうしてトイレなんかでゴーストに?」

「その件は、いまは、はぶかせてください。いずれはおわかりになると思いますから」

 

 それを知らないからなのか、それとも、教えるつもりはないのか。どちらにしろ、これから話そうとしていることには、直接の関係はないのだろう。

 

「人が寄りつかないので、目につかない。捨て場所にはちょうどいい。あるいは、すぐにも手放したい。その人は、そう考えたんでしょう。トイレに流してしまったのですが、そこにはマートルがいた。自分へのいじめであると思ったマートルは、その本を外へと押し戻してしまったのです。おかげで床は水浸し」

「本を?」

「本というより、ノートでしょうか。黒い表紙の、薄い小さなノートです。床から拾いあげたのは、ハリー・ポッター」

「え! ハリーがそれを」

「そうです。ハリー・ポッターが持って行ってしまいました」

 

 

  ※

 

 

 大広間では、夕食の真っ最中。アルテシアは、グリフィンドールのテーブルへと歩きつつ、後ろを振り返った。そういえば、いまだにソフィアの所属寮を聞いていないのだ。なので彼女がどこのテーブルに座るのかを見ていようと思ったのだが、その姿が見当たらない。一緒に大広間まで来たのだが、どこに行ったのか。

 各寮のテーブルをじっくりと見てまわりでもしないかぎり、食事のときに大広間で探すのは難しいようだ。いやそれよりも、各寮の知り合いにでも聞いてみるほうがてっとりばやいかも。スリザリンならダフネ、レイブンクローならパドマがいる。ハッフルパフにはそんな知り合いはいないのだが、ダフネとパドマにさえ聞けば大丈夫だ。2人とも知らなければ、ソフィアはハッフルパフということになる。

 もちろん本人に聞けばいいことなのだが、ソフィアと会っているときは、他の話にかまけて聞くのを忘れてしまうのだ。

 

「アル、早く食べないと夕食時間終わっちゃうよ」

「あ、うん。すぐ行く」

 

 ソフィアとはそれなりに話し込んでしまったので、夕食の時間も後半の後半くらいになっていた。だがまだ、十分に食べ物は残っている。

 

「ソフィアだっけ、あの子。何を言いに来たの?」

「課題をだされたっていう感じかなぁ。そんなこと言われなくても、なんとかしようとは思ってたんだけどね」

「課題って、まさか、襲撃事件のことでなの?」

「うん。とにかく秘密の部屋は閉じておかないとね。いろいろ危なそうだし」

 

 まさに、課題であった。だが、なぜそんなことを言われなければならないのか。ソフィアは、なぜあんなことを言うのか。

 そういう思いは当然のようにある。仮にソフィアが何も言わなかったとしても、アルテシアは、あの件をほおってはおかなかっただろう。そんなこととは関係なくアルテシアは、なんとかしようと考えていたのだ。休暇中にも、パーバティとそんな話をしていたのである。

 ソフィアは、母親から判断を任された、と言っていた。それが何を意味し、どういう意図があるのかまではわからないが、おそらく今回のことは、ソフィアが判断材料を得ようとしてのことなのだろう。食事をしながら、アルテシアはソフィアの話を思い返していた。ソフィアは、襲撃犯が誰なのかを知っているらしいのだ。

 

『それが誰かは、お教えしません』

 

 だがソフィアは、教えてはくれなかった。ハリー・ポッターもそれを知らないのだから、というのが理由だ。そのうえで、この事態にアルテシアがどう対処するのか、それを見させてもらうのだという。

 

『いろいろと、言いたいことはおありだと思います。でもわたしも、母を納得させねばなりません』

 

 もちろん、その目的は何なのかと聞いてみた。それに対しての、ソフィアの答えがこれだ。結局のところ、ソフィアからはこれといった情報は提供されない。ただ、状況の説明がされるだけ。そのうえであなたはどう行動するのか、それをみせてもらうと、そういうことなのだ。

 この場合、どうすることがソフィアの意にかなうのか。解決か、それとも、さらなる混乱か。そのどちらであるにせよ、ソフィアがそれを口にすることはないのだろうし、アルテシアも自分の考えを変えるつもりはない。ソフィアが何を思い、どんな判断をしようが、アルテシアは、アルテシアの思うがままに行動するだろう。

 

『あの黒い表紙の本には、なにか秘密がありますよ。妙なものを感じます』

 

 ソフィアによれば『見守っていた』ということになるのだが、アルテシアの普段の行動を見ていたとき、その“なにか”を感じたのだという。おかしな“なにか”はあの本から感じるのであり、持ち主がおかしな行動をしているのに気づくまで、しばらくの時間を要した。そしてついに襲わせているところを目撃したのだという。襲って、ではない。襲わせて、だ。

 

『なんとか、防ぐことはできなかったの?』

『なにしろ、あっという間のことでしたので。事前に何が起こるのかを知っていたなら、対処のしようもあったのでしょうけど』

 

 ジャスティンと首なしニックとが襲われたときのことだ。なにしろ、突然のことで対処のしようがなかった。だが予備知識を得た今ならば、違った結果を導ける。ソフィアの言うのは、そういうことだった。

 予備知識ゼロでは対処は難しいのだと、自分でそう言っておきながらも、ソフィアはそのとき何が起こったのかをアルテシアに話そうとはしなかった。ハリーにも、このことは教えないつもりだという。

 ハリーが入手した本については、ソフィアも実際に手にしたわけではないので、詳しいことはわからないらしい。だが、おかしな“なにか”は確かに感じるので、なにか秘密が隠されているのは間違いない。そこからさまざま情報は得られるはずだが、はたしてハリーが、その秘密を解き明かせるのかどうか。

 

「アル、どうしたの? どうやら、心配ごとが増えたみたいだね」

「ううん、そんなことないよ。とにかく秘密の部屋は閉じないと。危ないものは、ほおってはおけないもの」

「そうだね。あたしも手伝うからね。約束したよね」

「うん」

 

 パーバティとは、なんでも相談することにしている。お互いに力をあわせていくことにしているのだ。考えてみればパーバティは、いろいろなことを知っている。魔法書のこともそうだし、クリミアーナの魔法もそうだ。何度かパーバティの前でその魔法を使ったことがあるし、クリミアーナ家にも連れていき、墓地で先祖にも紹介した。すでに、よきパートナーなのだ。

 そういえばダンブルドアとも“相談”をしていくことになっている。パーバティとは違い、こちらのほうは報告と指示、そして行動制限が主となるものだ。約束なので仕方がないが、すべては話せない。ソフィアのことも含め、言えない部分はあるのだ。なので、ダンブルドアも認めてくれたように、話をするのはマクゴナガルが相手となるだろう。

 当然、マクゴナガルに話したことはダンブルドアへと伝わることになるのだが、100%そのままということはないとアルテシアは思っている。マクゴナガルが、うまく加減してくれるはずなのだ。そしてそれを、ダンブルドアも承知しているはず。

 

「寮に戻ろう、パーバティ」

 

 最後にかぼちゃジュースを飲み干して、アルテシアは席を立った。だが、すぐに行動開始というわけにはいかない。そのまえにマクゴナガルと話しておかねばならないからだ。それからダンブルドアへと話が行き、またマクゴナガルを介して戻ってくる。それを待たねばならない。

 もどかしいことには違いないが、アルテシアには、マクゴナガルを無視しようという考えはない。面倒ではあるが、省略しようとは考えない。それがダンブルドアの指示だったことは知っているが、魔法界へと誘ってくれたのはマクゴナガル。なにかと世話をしてくれたのはマクゴナガルなのだ。

 大広間を出る。

 そこでは、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人組が、アルテシアを待っていた。

 

「ちょっといい、アルテシア。大事な話があるの。一緒に来てほしいんだけど」

 

 3人ともに、少し緊張気味であるのか、どこか引きつったような顔をしていた。

 


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