家のメイドが人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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ジェノバさん悩む

 

ジェノバの朝は早い。

 

と、言うより彼女は人間のように眠る必要が無いためきっかり5時に行動を開始する。

 

いつものように抱きついている彼から腕を離し、起こさないようにそっとベットから降りて部屋を出た。

 

リビングに入ると自らの片腕を引き千切り、さらにそれを10等分程に分けると床に放った。

 

みるみるうちに欠片は肥大化し、人型に姿を変え、ついには翼と触手の無い人型のジェノバとなった。

 

それらは彼女が何も言わずとも、この広い屋敷を掃除するために散っていった。

 

ちなみにこんなに朝早くからやっている理由は少し前に彼が合計31体の彼女を同時に見た時、卒倒したためである。

 

彼女はお弁当を詰め込み、朝食の下準備を終えると長い食卓の端の椅子に座り頬杖をついて考え事を始めた。

 

議題は…。

 

"どうすれば彼と親密になれるか"である。

 

いつも彼は彼女に対して一歩引いていたり、明らかに脅えているので彼女としてもどうにか好感度アップを謀りたいところだった。

 

とりあえず3ヶ月ほど献身的に尽くしてはみたがそこまで変わった様子もない。

 

とするとやはり…。

 

彼女は片腕を10mほど伸ばし、手鏡を手に取って引き戻すと自身を見つめた。

 

これか………。

 

彼女は溜め息を吐いた。

 

ジェノバは本来、星の胎内の全生命の根源、そして星の命であるライフストリームを喰らう宇宙生物だ。

 

それによって得られるものは大きく分けて3つほどある。

 

1つは星の力、すなわちその星で原初の神と呼ばれる力。

 

2つは星の生命力、文字通り星が持つエネルギーだ。

 

3つは星の情報、つまり喰らった星の魔法や技術といった文明の記録、星の創造以来生まれ落ち死んでいった全ての生命の記録などの星の記憶の全てだ。

 

彼女の中の記憶が色褪せることは無い、よって数多の星を喰らって来た彼女にとって人間の扱いなど手に取るより早く分かっているのだ。

 

その莫大な情報から彼女は結論付けた。

 

彼に………異種姦の趣味はない。

 

勤勉で博学な彼女は何でも知っている。

 

星を一撃で無に出来るマテリアの製法から、対ウェポン用決戦兵器の図面、エロ同人、二次エロ画像、AVに至るまでどんなしょうもない情報であろうと彼女は知っているのだ。

 

ちなみに彼女がこの星で最初にネット検索したキーワードは性癖、異種、触手、青肌、人外娘である。

 

検索した結果はそういった性癖を持つ人間も結構いるということだった。横の閲覧注意が気になったがそれは無視した。

 

と、いうわけでその路線で攻めていたのだがどうやら検討違いだったようだ。

 

ならば路線の切り替えだ。

 

彼女のスカートの中から伸びる細い触手の表面に幾何学模様が浮かび、それを有線のLAN端子に直接を突き刺した。

 

するとWindowsの起動音が頭に響き、それから直ぐに彼女の頭に簡素なグーグル先生の検索エンジンが出現した。

 

それはネットダイブ等といわれるこの星に存在しない、超高等技術だ。さらにそれを生身でやっている辺り彼女の万能生物っプリが伺える。

 

しかし、ジェノバ細胞の無駄遣いである。

 

彼女が検索したキーワードは美人、画像である。

 

彼女は化ける人間を選んでいるのだった。

 

彼女の処理能力は日本が最高技術を誇るスパコンですら時代遅れのタイプライターに程度に思うほど高く、1秒程度で1000万枚ほどの画像に目を通していた彼女だったが、イマイチ化けたいほど彼女の目を引く人間などいなかった。

 

 

それもそうだ。彼女は"神城 羅市"という人間だけに興味と好意があるのであり他の知的生命体など低脳な食料程度にしか思ってないからだ。

 

彼女を人間と仮定するなら人間は彼女にとってプランクトン程度の存在なのだ。正直、食料にすらなるかも怪しい。

 

最もそのプランクトンの1人に好意を抱く彼女もどうかと思うがそれは彼女にとって運命とも言える出会いだった。

 

彼の細胞一つ一つが彼女にとってまるで"彼女の細胞に刻まれていたように"彼女が全てを擲っても尽くしたいと本能が震えたのだ。

 

人間でいうところの三大欲求の代わりに彼女には星を喰らうという本能がある。それすらも塗り替えるほど彼は彼女にとって至高の存在なのだ。

 

結局、擬態する人間は見付からずにLANから触手を引っこ抜いた。

 

彼女は溜め息を吐くと、この星の人間で探すのを止めた。

 

考えてみればなりたくもない容姿をコピーするより、別の星で自分が印象深く覚えている者になった方が自身のアバターとして使えるのでいいのではないかと彼女は考えた。

 

彼女は良く覚えているこの星の人間に似た女性型の知的生命体をピックアップし、日替わりで容姿を変えることに決めた。

 

ふと、時間を見ると既に彼を起こす予定の5分前だった。

 

彼女は10体のジェノバを召集し、リユニオンさせて腕に戻すと彼女の身体が歪んだ。

本来のジェノバは侵略しに来た星に自身より強い生命体がいた場合に身体を適当に分散させ、その星を牛耳る知的生命体に化ける。

 

そして、信頼を築いたところでそれらに自身のウィルスを植え付け、モンスター化させるというとてつもなく外道で効率的な手段を取る。

 

それこそが彼が彼女を恐れる最たる由縁なのだ。

 

それを知っている彼からすればいつまでもじれじれと自分との信頼関係を築いていること自体が裏があるように見えて仕方ないのだ。

触手は身体に吸い込まれるように引っ込み、翼は背中に溶けるように消えた。

 

深い蒼の肌は色白で人間味のある肌に染まった。

 

さらに銀の髪は胡桃色に染まり、どこか息子に似た前髪をした髪型になった。

 

最後に後ろ髪が独りでに蠢き、密編みを形作った。

 

「うーん…、よし!」

 

声も完璧に再現が完了した。

 

そこには白と黒の二色の鮮やかなメイド服を纏い、とある星の女性の細胞の99%に至るまで全く同じ身体の構造に変化した存在が立っている。

 

それは遥か太古の昔にジェノバを封印したセトラという種族、最後の生き残り。

 

同時にジェノバがその人生に終止符を打ち、思いだけになりながらもジェノバの理想を最後の最後に阻んだ張本人でもある女性。

 

"エアリス"と呼ばれていた女性がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女を待っていたのは…。

 

彼の盛大なツッコミの右ストレートという過剰かつ初のスキンシップだった。

 

 

 

 

 

 


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