俺達の戦いはこれからだ!に俺達の戦いはこれからだ!を重ねていくスタイル。
―――――奈落の底で、神樹の芽が開く。
「……君は本当に素晴らしい知見を与えてくれた」
真白の床、外壁、天井。
無機極まりない暗い実験室を飾るのは、数十匹のテラフォーマーの残骸。
全身に穴を穿たれた個体。
何かと激しく衝突したかのように無惨に砕けた個体。
煙を上げ痙攣している個体。
焼け焦げた個体。
外傷無く息絶えている個体。
バリエーションに富んだ死体の数々を検分するかのように踏み歩き、男は静かに呟く。
「そのおかげで、最後の実が見つかった」
暗闇の中、赤色灯だけがその姿を浮かび上がらせていた。
額から鼻辺り、顔面の左半分を覆う、眼を凝らさなければ分からない程度に微かに捻じれ曲がった肌。
穏やかな口調で、しかし隠しきれない小さな喜びの感情を示すのは、静かに揺れる、無機質で機械的な印象を与える尾のような器官。
役割を終え体内に沈んでいく、体のいくつもの箇所から生えた中空の槍。
感覚を確かめるように何度も握り開きを繰り返す右手とその根本の腕には、体内から赤く錆びた金属が析出し表皮を覆っている。
それと対を成す左の腕は、肩口から生えた緑色の細い繊維が無数に渦を巻き腕を形作り、先端で再び広がる奇妙な形状を成している。
返り血として浴びたテラフォーマーの体液が光を反射しぬらりと光る、歪で、ただ奇怪なその姿。
自身の肉体の各部位を満足げに眺めた後、彼はその手に持った武器を肩に背負う。
刃と呼べる部位が無い円錐状、大まかな形状としては
だが、まるで鳥籠を引き延ばしたかのような、幾重もの螺旋を描く格子によって編まれたそれと、その内側に閉じ込められるように充填された肉塊は、これが一般的な槍とは程遠い何かであることを示している。
「素晴らしい収穫だ…。本当に、素晴らしい」
噛みしめるような囁きと同時に、槍が、内部の肉塊が、
本人の感情に呼応するように爆発的に増殖し、男から生える尾に近い形状の繊維が無数に格子の隙間から外界に這い出で、ゆらりと揺れる。
それに気付いているのか、いないのか。
男は見向きもせず、暗い天井を見上げる。
まるで宝玉をはめ込んだような、美しい青の瞳。
人間と変わらない右の眼。
星空をそのまま映し込んだかのような、無数の小さな瞳が形成された、左の眼。
そこに、磨き抜いた泥玉のような一切の情動が見られない鈍い光を湛え、
神の泥人形は静かに微笑んだ。
盤面の戦争は終わり、盤外の戦争もまた終結した。
だが、世界を揺るがす災厄は、未だ何も終わってなどいない。
皮肉にも、盤面の戦争における人類の勝利が、それを成し得彼を一度討ち果たした聖者の姿が、回答を指し示してしまった。
至るべきただ一つの極点、その答えを得てしまった深淵の異形が、ここにひとつ。
――――――――始まりは白。
血濡れの聖槍を携えた泥人形は、白く淀んだ狂気と神樹の枝葉を世界へと覆い広げる。
『人喰らいエスメラルダ』 『月下薄刃』
『幻影に潜む略奪者』
『暴虐たる蟻王』
『臓腑に萌ゆる嬰児』
『輪を描く命、廻らない魂』
『白の楽園』
『紫色の枢機卿』
『知恵の果実』 『生命の果実』
「―――――ああ、イヴ君……君にはまた、直接会ってお礼が言いたいな」
―――かくして再び、人類の未来を賭けた聖戦の幕が上がる。
観覧ありがとうございました。
コラボ時空での対白陣営戦に続く……みたいなあれです。
章ワードはもし連載したらこういうのが……みたいな感じであります。
この後は拙作2部3章が終わった後、『コラボ時空での白陣営ラスボス戦、シモン(開示情報でわかる限りの全力モード)VSオリヴィエ(真ベース)』を2話くらいで書く予定です。
しばらく先になりますがもしよければお付き合いください!