【完結】CombatZone   作:Allenfort

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以前あとがきで新作書くと予告し、活動報告にてそれの読切版をおまけとして投稿すると予告。

その結果がこれです!

舞台は2090年。CombatZoneより遥か未来のお話になります。

それではどうぞ!


おまけ 読切版Gunslinger Knight

2090年。人類の生活圏は宇宙にまで拡大した。

 

5つの都市に宇宙エレベーターが建設され、そこに設置されている大型の太陽光パネルによる発電のおかげで、エネルギー問題は一定の解決を見せた。

 

そして、宇宙エレベーターの終点に作られた居住区画は、国家の主権が及ぶのは大気圏内までであるため、国際地球連合UENの管理下に置かれている。

 

そんな時、人類は地に足をつけて生きるべきと主張する国際テロ組織、テラ・マーテルは宇宙エレベーターの破壊を宣言。これに対しUENはエレベーターの破壊を断固阻止すべく、エレベーターを守備するUEN軍の増員を決定し、徹底抗戦の意思を見せていた。

 

ーーーーー

 

床に弾丸が当たり、小さな破片を辺りへ飛ばす。自分が狙われていると悟った函南良弥曹長はすぐにその場を離れて物陰に身を隠す。彼は黒いバトルスーツ、零式強化外骨格"震電"に身を包み、手には流線的なフォルムの狙撃銃、M37N"ファルシオン"が握られている。

 

日本の首都、東京の郊外からそびえ立つ全長36000kmの宇宙エレベーター"オロチ"の終点にあるヤマト・ステーション。その外側にある宇宙船の発着場、第2宙港では、テラ・マーテルのものと思われる戦闘ロボットとUEN軍が激戦を繰り広げていた。

 

「ガラハッド、聞こえるか? こちらパーシバル。」

 

良弥はインカムを使って仲間との連絡を試みる。パーシバルとは良弥のコードネームである。ほどなくして、仲間からの返答が来た。

 

「ガラハッドからパーシバルへ! 援護なら無理だぜ! 連中、ロシア製機械歩兵のコピー品をバカみたいに買い込んだらしい。頭数が多すぎて対応しきれない!」

 

通信の相手は鷹見和俊二等軍曹。良弥のチームメイトで、コードネームはガラハッド。

 

良弥は物陰から少し顔を出す。薄黄色の装甲板に覆われた機械歩兵、Mi-12Q"ゲオルギー"のコピー品があちこちでアサルトライフルM53"アロンダイト"を撃っているのが見えた。

 

「確かに多いな。電磁装甲付きか?」

 

「いや、コピー品だからアルミニウム合金装甲だ。お前のファルシオンなら2、3体まとめて吹っ飛ばせるだろ。グリフレッドはどうした?」

 

「こちらグリフレッド! 不甲斐ない男連中に代わって敵を釘付けにしてるよ!」

 

グリフレッドと呼ばれたのは若い女性兵士、長谷川彩香伍長。最近、良弥、和俊と3人でチームを組むことになった元気でお茶目なルーキー、が表の顔で、本当はとんでもない弾幕魔である。マシンガンを持った彩香の前に立ったものは、二度と日の出を見ることはできないと言われているほどである。

 

その弾幕魔っぷりを遺憾なく発揮し、ゲオルギーの大群を次々とスクラップに変えていく。それを見た良弥はアレにだけは絶対巻き込まれたくないと冷や汗を流した。

 

「威勢のいいやつだ……他の隊も苦戦してるな……」

 

良弥は目の前にホログラムディスプレーを表示させ、戦況を確認する。味方の反応より敵の反応の方が多い。

 

「とりあえず押し返そう。いいな?」

 

「ガラハッド了解。やられるなよ!」

 

良弥は通信を切ると、ファルシオンを構える。銃身上部に装着されているスコープは射手側に円形のモニター、銃口側にカメラやセンサーが搭載されており、自動で目標との距離、風速などを計測し、照準の真ん中に合わせて撃つだけで当たるように照準を調節してくれる。

 

照準をゲオルギーに合わせ、トリガーを引く。破砕徹甲弾と呼ばれる対ロボット弾は装甲を貫通した後に炸裂するようになっている。良弥が放った破砕徹甲弾、11.2mmUEN弾はゲオルギーの装甲を貫くと、金属骨格に覆われた動力源に命中し、小爆発を起こした。それによって動力源を破壊されたゲオルギーは青い火花を散らしながら倒れ、爆発する。

 

「ガラハッド、敵の移動砲台接近中、警戒しろ。」

 

「あいよ。」

 

和俊のところへ、敵の二足歩行型移動砲台が接近してきた。砲台前面は2門の砲を装備し、硬い装甲で覆われているが、側面や後部からは射手がまる見えである。

 

和俊は震電の手首に装備されているグラップルワイヤーを砲台後方の壁に打ち込み、巻き取る。体が引っ張られて宙に浮き、ものの数秒で砲台の後ろに回り込んだ。ワイヤーを壁から引っこ抜き、今度は砲台の射手にワイヤーを打ち込む。ワイヤー先端のアンカーが射手であるゲオルギーに突き刺さり、それを確認した和俊はワイヤーを巻き取る。

 

ゲオルギーは和俊のところへ引き寄せられた。和俊は飛んできたゲオルギーへパワーアシストで強化されたパンチを叩き込む。強烈なパンチでゲオルギーの装甲は砕け、動力源にもダメージが入った。和俊は止めとばかりに数発ハンドガンで撃ち、確実に機能停止させる。

 

「もーらい!」

 

移動砲台に彩香が乗り込み、敵へと砲撃を開始する。ゲオルギーごときでは移動砲台には手も足も出ず、次々と砲撃で破壊されていく。

 

「やるじゃんあの弾幕魔。」

 

和俊はそう言いながらもアサルトライフル、M372"デュランダル"を構え、敵を撃ち倒していく。対機械歩兵用に作られたこの銃は6.8mmUEN弾を使用し、機械歩兵の装甲を撃ち抜く威力を持ちながらも精度が良く、パワードスーツを着用すればほとんど反動の影響を受けずに撃てる汎用性の高いものだ。

 

高台から狙撃していた良弥は接近する新たな敵影を見つけた。ゲオルギーとは違い、3mほどの身長がある。

 

「おい、あのデカブツはなんだ? 見たことないぞ?」

 

良弥が無線でそう伝えると、ほどなくして彩香から返答がきた。

 

「あれ、ロシアのミール設計局が試作中のMi-104"ベストゥージェフ"じゃん。なんでここにあるのさ?」

 

「知らねーよ。何か知ってるのか?」

 

「まあね。あいつはベストゥージェフG型。背中に2つのロケットランチャー、手には重機関銃、RPK-91"サモセク"装備。背中から冷却のためにリアクターが露出してるよ。」

 

「ここまで情報筒抜けって……ミール設計局大丈夫なのか?」

 

「彩香なんかに新型の情報掴まれたとなったら、責任者はシベリア送りだろうな。」

 

「どういう意味よガラハッドー!」

 

その時、ベストゥージェフがミサイルを放った。狙いは恐らく彩香の乗る移動砲台だろう。

 

「おいグリフレッド、ミサイルに狙われてるぞ。」

 

「早く言えこのバカー!」

 

彩香は移動砲台から飛び降り、着地寸前で大腿部のスラスターを噴射、落下速度を落とし、ストンと着地する。そして再びスラスターを噴射し、床を滑るようにしてその場を離れる。

 

次の瞬間、ミサイルが命中した砲台が派手に爆発して粉々になるのが見えた。間一髪だ。

 

「和俊、やるぞ。」

 

「おう。」

 

良弥はファルシオンの側面のスイッチを押す。すると、ファルシオンは素早く折り畳まれ、ちょっとした辞書程度のサイズになった。良弥はそれを腰のホルスターに仕舞うと、Vを90度傾けたような形状のサブマシンガン、Mk98クナイに持ち替える。

 

良弥は走ってベストゥージェフに接近し、クナイを撃ちまくる。さすがにベストゥージェフの装甲を貫くまでには至らないが、気をひくことに成功。良弥を優先目標にしたようで、突進攻撃を繰り出してきた。良弥はグラップルワイヤーを壁に打ち込み、それを巻き取って突進の進路から退避する。するとベストゥージェフは良弥に向けてミサイルを放つ。これが良弥の狙いだった。

 

近くで待ち構えていた和俊は震電に装備されている"ゾーンシステム"を起動する。これは人間が集中した時に時間が遅く感じるゾーン現象を意図的に引き起こすための装置で、本来は着用者が危機にさらされた時に起動し、身を守るためにあるのだが、戦況を変えるのにも有効であるため、故意に起動することも可能となっている。しかし、人体への悪影響も否むことができないため、連続使用時間は限られている。

 

和俊はゾーンシステムを起動し、飛び交う弾丸すら目視できるくらいまで反応速度が上昇している。その間にベストゥージェフが放ったばかりのミサイルを狙い撃つ。ミサイルは爆発し、その爆発にベストゥージェフを巻き込んだ。

 

ベストゥージェフは爆発で深刻なダメージを受け、膝をついた。そこへ、良弥がグラップルワイヤーを打ち込み、それを巻き取ってベストゥージェフに急接近する。

 

良弥はワイヤーの巻き取りによる急加速とスラスターによる強化を受けた渾身の右回し蹴りをベストゥージェフの顔面に叩き込む。猛スピードでカーボンナノチューブによって作られた装甲板がベストゥージェフの顔面にめり込み、ベストゥージェフの頭部は首が折れて頭が転げ落ちた。その真正面へ接近してきた彩香がスラスターを利用したサマーソルトを繰り出し、ベストゥージェフの巨体を空中に蹴り飛ばす。

 

彩香は空中で反転しながらゾーンシステムを起動し、吹き飛ばされて背中を見せながら落ちていくベストゥージェフを狙う。背中のリアクターへと手にした軽機関銃、Mk.23ダーインスレイヴによる乱射攻撃を繰り出す。

 

ベストゥージェフは落下すると同時に、青白い火花を撒き散らし、最後に爆発した。

 

「エリアクリア。」

 

良弥がそうつぶやく。周りではUEN軍兵士たちが散らばってフロアの安全確認を行っている。第3宙港発着所確保。誰もがそう思っていた。

 

「よし。俺たちは上のフロアに行くぞ。ターミナルを確保する。いいな?」

 

「了解。」

 

「わかったよ。」

 

良弥は和俊と彩香を引き連れ、階段を上って発着所横のバルコニーへ登る。ここからターミナルへ向かうのだ。

 

「こちらアーサー、グレイハウンド隊、聞こえてる?」

 

司令部からグレイハウンド隊である良弥たち3人に連絡が入った。

 

「こちらグレイハウンド隊、パーシバル。どうした?」

 

「ええ。今回の事なんだけど、テラ・マーテルが動いた形跡がないの。」

 

「何? どういう事だ? この襲撃は連中の仕業じゃないのか?」

 

「ええ。どこの組織も動いた形跡はないし、一部エリアではUEN軍のロボットと交戦とのこと。」

 

「味方と?」

 

「専門家によると、ロボットが自我を持った可能性があるらしいわ。」

 

「ロボットが自我? どういうことだ!?」

 

「前々からその可能性は示唆されていたけど……ちょっと待って! 第2宙港発着所下部に巨大な熱源感知!」

 

良弥たちはその場に立ち止まって情報の詳細が送られてくるのを待つ。

 

「データ照合完了! 恐らく、オラニエンバウム設計局のIL-2"クトゥーゾフ"ね。要塞攻略用兵器として開発されたもので、一機で街一つ潰せるくらいの戦力になるわ。当然、大量破壊兵器として製造中止が議論されてる代物よ!」

 

次の瞬間、発着所の床が吹き飛んだ。そこのに空いた大穴から、巨人が這い出してくる。身長はビル4、5階分ほどで、一つ目。左手は花の蕾のように閉じ、右手には大型の機関砲。肩のカバーの下には大量の対人、対ロボット用のスマートミサイルが搭載されている。

 

「冗談キツイな。」

 

良弥はクナイを仕舞うと、ファルシオンを手に取り、スイッチを押して展開した。

 

下ではUEN軍兵士が戦闘を開始していた。が、クトゥーゾフは死角と言う死角に機銃を装備しており、近寄る兵士たちを次々銃弾の餌食にしていく。

 

バトルスーツの装甲を貫かれ、血の花を辺りに咲かせ、あるものは勇敢にも懐に飛び込んで足のジョイント部分に銃撃する。

 

クトゥーゾフは肘の内側や膝裏など、どうしても動くために装甲で覆えない部分が存在する。そこを狙うのだ。

 

「どうする良弥?」

 

和俊は既にデュランダルを持ち、いつでも戦えるよう準備している。それは彩香も同じだった。

 

「決まってるだろ。スクラップにしてやれ。」

 

「奴の機銃はお任せ!」

 

彩香はバルコニーから飛び降りると、スラスターを使って高速スライディングしながらクトゥーゾフの機銃を撃って破壊する。スラスター噴射とゾーンシステムを組み合わせ、相手の機銃では正確に狙えないくらいの高速で移動しつつ、自分は正確に狙い撃つという、彩香考案のテクニックだ。

 

しかし、これは電力消費が激しく、震電の背中に搭載されている小型リアクターがすぐにオーバーヒートしてしまう。もしオーバーヒートすれば、ゾーンシステムもスラスターもしばらく使用不可能となるため、使い所が難しい。

 

彩香はオーバーヒートギリギリでスラスターとゾーンシステムを止め、普通に走りながら撃つ。機銃弾が震電の装甲に当たって火花を散らす。彩香はその度に顔をしかめつつ、次々と機銃を破壊していく。

 

普通に走るとはいえ、パワードスーツを着ているのだ。パワーアシストが当然働いており、通常の2倍のスピードは出ている。

 

その間に良弥と和俊はクトゥーゾフの右肘の装甲に覆われていないところを狙う。すると、クトゥーゾフは持っていた機関砲を2人に向けて撃ち始めた。

 

咄嗟にまずいと感じていた2人はその場を離れ、物陰に隠れながらチャンスをうかがい、銃撃が途切れれば撃ち返す、これを繰り返した。

 

すると、クトゥーゾフの肩のカバーが開き、スマートミサイルが発射された。まるで流星群のように降り注ぐスマートミサイルを回避すべく、良弥は腰に引っ掛けていたチャフグレネードを取り出し、適当な場所に投げる。熱源めがけて飛ぶスマートミサイルはチャフグレネードから放出される熱を人の体温と勘違いし、そっちへと飛んでいく。が、チャフグレネードがミサイルを食らって破壊されると、今度こそ狙いは良弥と和俊に切り替わった。

 

「躱せ!」

 

「言われなくても!」

 

良弥と和俊は左右に散らばり、それぞれゾーンシステムを起動する。そして、降り注ぐミサイルを撃ち落としていく。

 

爆発したミサイルの破片が他のミサイルに当たり、当たったミサイルが爆発、それが連鎖的に起こり、良弥と和俊の元へ辿り着いたスマートミサイルは僅かであった。その爆風や破片も、震電の装甲によって防がれ、良弥と和俊はほぼ無傷であった。

 

「ぶちかませ!」

 

「おうよ!」

 

クトゥーゾフの肘からオイルが漏れだし、配線がショートしたのか青い火花を散らす。

 

そして、とうとうクトゥーゾフが膝をついた。そして、胸のカバーが開き、内部の赤いジェネレーターが出てきた。クトゥーゾフは損傷すると、自己修復機能が働き、損傷箇所を修復するのだが、それには莫大な電力を要するため、どうしてもジェネレーターを外に出して冷却する必要があるのだ。身を守るための装置のはずが、逆に窮地に追いやるというなんとも皮肉な装置である。

 

もちろん3人はジェネレーターを狙って集中砲火を浴びせかける。だが、クトゥーゾフの巨体を動かすだけあって、なかなか壊れない。そのうち、クトゥーゾフが修復を済ませて立ち上がってしまった。

 

「あーもー! 良弥! 囮代わって!」

 

彩香はグラップルワイヤーでバルコニーへ上がってくる。仕方ないとため息をついた良弥はクトゥーゾフの顔面にグラップルワイヤーを打ち込むと、バルコニーから飛び降り、振り子の要領でクトゥーゾフの背後へ飛ぶ。

 

すると、クトゥーゾフは良弥の方を向き、閉じていた左手を花のように開いた。

 

「あ、やべ。」

 

良弥はすぐにスラスターを噴射して床を高速移動する。次の瞬間、さっきまで居た所をクトゥーゾフのレイルキャノンから放たれた大口径砲弾が大穴を開けた。

 

「冗談キツイぞ!」

 

その間、彩香と和俊はクトゥーゾフの左肘を狙っていた。動く肘を狙うのは難しく、撃った弾の3分の2は装甲板に弾かれていた。

 

「さっさとスクラップになれ!このデカイだけのノロマ!」

 

彩香のこの言葉にクトゥーゾフがキレたのかどうかはさておき、クトゥーゾフは左腕を振り上げ、彩香へ向けて叩きつける。

 

「遅い!」

 

彩香はそれを紙一重で躱すと、クトゥーゾフの腕によじ登り、その上を走る。そして、肩の手前辺りで大腿部のスラスターを噴射し、飛び上がった。

 

クトゥーゾフは彩香に左手を向け、先端を花のように開き、中心の砲口から大口径の砲弾が彩香めがけて放たれる。

 

彩香は落下しながら身を捩り、その砲弾を躱す。2発目の砲弾は空中で掴み、ひっくり返した。

 

「お返しだよ!」

 

そして、クトゥーゾフの砲口にその砲弾を突っ込み、オマケとばかりに持っていたプラズマグレネードを砲口に放り込んで飛び降りた。

 

クトゥーゾフの左腕は爆発し、2つに千切れた。断面からはオイルが漏れだし、青い火花が散っている。そのまま膝を折り、ジェネレーターのカバーが開く。オイル漏れを修理しているのだろうか。

 

「撃ちまくれ! 容赦はするな!」

 

良弥が叫ぶ。

 

「合点承知!」

 

「言われなくても撃つよ! 弾代はどうせUEN持ちだもんね!」

 

火線がジェネレーターに集中する。ジェネレーターの外側から火花が散り、中の液体が漏れ出す。破砕徹甲弾を浴び続けたのだから、そろそろジェネレーターが壊れてもおかしくはないだろう。

 

だが、ジェネレーターは壊れるより前に冷却が完了し、格納されてしまった。良弥は舌打ちしつつ、弾倉を交換する。

 

「ねえパーシバル! キリないよ!」

 

「あと1回だ! 気合入れろグリフレッド!」

 

良弥の見立てでは、あと1回くらい集中砲火を浴びせればジェネレーターを破壊できる。

 

「頭壊せないか!?」

 

和俊はクトゥーゾフの頭部を狙う。が、表面から散る火花を見る限り弾丸は装甲に弾き返されているようだ。全く効いていない。

 

「おいおいおい!? 良弥! 効いてねーぞ!?」

 

「顔面中央の赤いセンサー部は壊せないか?」

 

良弥はファルシオンを構え、センサーを狙撃する。すると、表面がひび割れ、火花が散った。効果あり。

 

「やっぱりな。センサーを直接狙え。」

 

「わかった!」

 

「おっとやべえ。」

 

クトゥーゾフの機関砲が自分に向いたのを見た良弥はその場から離れる。次の瞬間にはさっきまでいた場所に大穴が開き、良弥は肝を冷やした。

 

和俊はクトゥーゾフの首にグラップルワイヤーを打ち込み、巻き取る。頭に接近しながらゾーンシステムを起動し、ありったけの弾丸をセンサー部に撃ち込む。

 

デュランダルに装填してある30発の弾丸を撃ち尽くした和俊はデュランダルを背中に引っ掛け、右腕のスラスターを起動し、クトゥーゾフの顔面にパンチを叩き込む。スラスターとパワーアシストで強化されたパンチは銃弾でひび割れたセンサーにさらにひびを入れる。

 

和俊はさらに左腕のスラスターも起動し、もう一発殴りつける。拳はセンサーのカバーを叩き割り、内部へめり込む。そのまま振り抜くと、クトゥーゾフの首がもぎれて頭が吹き飛んだ。

 

「おいおい、殴って壊すなんて正気かよ……」

 

スコープ越しにその様子を見ていた良弥はあり得ない、と言った表情を浮かべたが、すぐに思考を切り替えてジェネレーターを破壊することにした。

 

無数の火線がジェネレーターに集中する。表面のカバーはもうボロボロなのに、まだ壊れない。

 

「しぶといんだよ! とっととくたばれ!」

 

業を煮やした彩香はプラズマグレネードを取り出すと、それを握ったままスラスターを起動し、ジェネレーターに全力のパンチを叩き込む。グレネードがメリケンサックの代わりになり、拳はカバーを割って内部までめり込んだ。彩香はグレネードを手放してジェネレーターから手を引っこ抜くと、すぐにその場を離れた。

 

クトゥーゾフはジェネレーターの冷却を済ませ、ジェネレーターを格納し、カバーを閉じた。だが、彩香が突っ込んだプラズマグレネードが爆発し、ジェネレーターを破壊。その爆発で内部の配線やらが損傷したのだろう。立ち上がったばかりのクトゥーゾフは体のあちこちから青い火花を散らして倒れ、爆発四散した。

 

関節が吹き飛び、格納していたスマートミサイルやバッテリーパックに誘爆し、派手に吹き飛んだ。

 

「よし、アーサー、こちらグレイハウンド隊、パーシバル。クトゥーゾフを破壊した。次の指示を待つ。」

 

「アーサー了解。グレイハウンドは一時帰投して。面倒なことになりそう。」

 

「了解。ガラハッド、グリフレッド、帰投命令だ。行くぞ。」

 

良弥は2人を率いて待機エリアへと向かった。その後には無数のロボットの残骸が残されていた。

 

人間同士の戦争は終わった。これからは、ロボットと人間、またはロボット同士の戦争の時代だ。




以前、感想にて続編希望というのを見かけましたが……正直、もうネタ切れであります(涙目)

当面は東方と艦これと受験に全力を出し、ひと段落してからゆっくりこの作の連載版を書いていく予定です。

ちなみにこの作は文化祭にて図書委員主催の創作小説コンテストに出す予定です!(図書室の先生に出せ出せと煽られたのもありますが、最優秀賞5000円分の図書カードには勝てなかった……)

正直、まだ自分の文章に自信がない部分もありますが、精一杯やっていこうと思います!

ちなみに作中の設定を少々公開。

6.8mmUEN弾
UEN規格の小銃弾。6.8mmSPC弾の改良型の破砕徹甲弾。対ロボット用として作られたため、対人には少々威力過剰気味。

11.2mmUEN弾
主に軽機関銃や狙撃銃に用いられる破砕徹甲弾。対ロボット用であるため、炸薬量が多く、パワーアシスト無しには反動に耐えられない。

零式戦闘用強化外骨格"震電"
黒いバトルスーツ。あちこち緑に発光するラインが入っている。カーボンナノチューブ装甲で作られているいるほか、過酷な状況にも耐えられるよう、パワーアシストや生命維持装置を搭載。背部の小型リアクターより必要電力を補給している。

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