【完結】CombatZone   作:Allenfort

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epilogue 地に降りた鷹

「祐介さーん! 遅れましたー!」

 

「ああ、2分くらい大丈夫だ。暢のバカは10分遅れがデフォルトだからな。」

 

祐介は戦闘服ではなく、迷彩柄の長ズボンに灰色の長袖、その上から黒いミリタリージャケットというファッションで街中にいた。今日は青葉と待ち合わせして、買い物に行くのだ。

 

あれから、ギャリソンがテロの経緯を暴露し、求心力を失った国連は解体。そして、新しくUENとして生まれ変わることとなった。

 

UN軍解体に伴い、TF148も解体。祐介たちバルチャーチームも野に下り、今はまたシェアハウスでこの先の人生を考えている。

 

祐介の隣を頭一つ分小さい青葉が歩く。かつて銃を握っていた手は、今、隣を歩く少女の手を握っている。

 

「そういえば祐介さん、軍やめちゃったけどこの先どうするんですか?」

 

「あー……俺は……自衛隊にでも入ろうかな。PMC嫌いだし、今更新生TF148には戻れないだろうしね。」

 

祐介は少し困ったような表情を浮かべながら答える。

 

そんな2人を後方から見守り……睨んでいる奴がいた。

 

「おのれ……なんであいつだけリア充に……」

 

「抑えろ暢。バレたら死ぬと思え。」

 

「そうですよ。メリケンサック代わりに10円玉握ってたらどうするんです?」

 

いつものコメディ分隊員だった。

 

「おっとあぶね!」

 

「きゃ!」

 

金髪やんきー数名が自転車で歩道を逆走してきた。それを躱すため、祐介が青葉の手を引っ張った結果、抱き寄せるような形になった。

 

「っぶねーな前見ろバカ!」

 

祐介が自転車に怒鳴ると、次の瞬間、自転車が派手に転倒した。後続もそれに巻き込まれていく。

 

実は、隠れていた暢がパチンコで先頭の自転車を狙撃したのだ。

 

一仕事終えた暢が視線を祐介に戻すと、祐介が青葉を抱きしめてい(るように見え)た。ここで、暢はもう我慢の限界だった。

 

「おのれリア充! 野郎ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「あ、待てバカ!」

 

弘行が止めるのも一瞬遅く、暢は祐介にグーパンするつもりで突撃していく。

 

冷静に青葉を後ろに下がらせた祐介はブーツを片方脱ぎ、暢に投げつけた。

 

靴底が見事に暢の顔面を強襲。暢は派手にズッコケた。

 

「おーい、弘行と宮間さんも出てきた方が身のためだぜー。」

 

祐介は片足ケンケンで暢の所まで行き、ブーツを改修する。呼ばれた2人は両手を上げながら物陰から出てきた。

 

「おう、ここにいたか4人とも。」

 

祐介、暢、弘行、愛良には見覚えのある顔がそこにあった。青葉は誰かわからず首をかしげる。

 

「「「「げ、ギャリソン大佐!?」」」」

 

次の瞬間、4人の頭をバインダーアタックが襲った。

 

「いてっ!」

 

「ふぎゃ!」

 

「あたっ!」

 

「解せぬ!」

 

「お前たちに朗報だ。TF148に戻ってこい。」

 

「またあのブラック企業に……あたっ!」

 

暢の頭をもう一度バインダーが襲った。

 

「祐介さん、この人は?」

 

「ああ、元上官。」

 

「なんだ函南少尉、彼女か?」

 

「まだ付き合ってません。」

 

「ま、まだって……その……」

 

青葉が一気に顔を赤らめた。暢は妬ましいと言いながら祐介の脛をゲシゲシ蹴ったが、仕返しの股間蹴り上げを食らって再び黙った。

 

「祐介さん、あの……戻りたいんですか?」

 

「……必要としてくれるなら、な。」

 

「なら、戻った方がいいですよ……似合ってますし!」

 

「やれやれ……じゃ、俺は復職で。」

 

祐介は青葉に言われて一つ溜息をついた後で了解の返事をした。

 

「なら俺も。」

 

「げー、このトリガーハッピーもかよ……まあ俺もだが。」

 

「私も私もー!」

 

「なら、今度はバルチャー分隊改め、コメディ分隊な。」

 

「「「「却下!」」」」

 

祐介、暢、弘行、愛良、青葉、ギャリソンは笑った。いつかは消える命。だから、今を精一杯楽しめたらいいな、祐介はそんなことを考えていた。

 

笑う祐介の横顔を青葉が見つめる。そして、意を決し、祐介の頬にキスをした。

 

これが原因で、暢が乱闘騒ぎを起こすのは言わずもがな。

 

CombatZone second assault end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

epilogue2 遥か遠くの未来から

 

小説を閉じ、机に置く。何十年も前に眼下に広がる、青い青い地球で起きた戦いの記録。一部脚色は入っているのだろう。だけど、少しだけ面白いと思えた。

 

この"バルチャー"には謎が多く残されている。彼らがUN軍の頃の資料は無く、存在すら定かではないとされていた。ただ、UEN軍に同姓同名の兵士がいて、彼らではないかと目されているが、真実は全て暗闇の中。きっと、誰にも知られたくない事なのだろう。

 

机のスイッチを押すと、さっきまで透過して外の景色を見せてくれていた壁がただの白い壁に戻る。今日も楽しい夢を見れそうだ。出動要請が入らなければ、な。

 

そろそろ眠るために、部屋の片隅に置かれた睡眠用カプセルに向かう。誰にも邪魔されずにゆっくり眠りたい気分だったから、書置きを残しておく事にした。起こしたら殺す。特に彩香、とでも書いておくか。

 

「良弥ー! カフェ行こー! もちろん良弥の奢りでー!」

 

書置きを書く前からこの馬鹿はやって来た。少しは眠らせろ。

 

「おい、これから寝るんだ。俺じゃなくて和俊を誘えよ。」

 

「えー、アイツ誘ったら、ふざけんなバーカって言って部屋の鍵閉じちゃったんだもん。」

 

和俊の奴め。俺の言おうとしていたセリフ取るんじゃねえよ。

 

「あ、その小説貸して!」

 

彩香は貸せと言うより早く小説を掴んでいた。小説一つで安眠ならば安い出費だろう。

 

「なら、それ1人で読んでろ。汚したら殺す。」

 

「はいはい。それじゃおやすみー。」

 

あの馬鹿が部屋から出ていった瞬間、殴り書きで書置きをしてカプセルに入る。もう寝る。すぐ寝る今すぐ寝る。

 

カプセルに飛び込んだ青年のドッグタグには『Kannami Ryoya』と刻まれていた。

 




長々と続いたCombatZoneもとうとう最終回。見切り発車だった新章もどうにか書き終え、なんだか寂しさを感じております。

思えば高1の時、このサイトに出会い、いろんな人の作品を見て、自分も人気作家になりたいと思ったのがすべての始まりでした。

リア友に許可を頂いて、リア友をモデルにしたキャラを作ってみたり、自分なりにシナリオを考えてみたり……最初についた評価が2だったことにショック受けてたり、批評コメにどう返信しようか授業中にまでも考えていたり、新着感想の欄を見てwktkしていたり……打ち込めるものが一つ増えて、なんだか楽しかったです。

気づけばあれから2、3年。UA1万オーバー、お気に入り件数も103件(6月30日現在)そして、日間ランキング9位を一度獲得。嬉しくてたまらなかったです。それに、この小説を書き始めてから国語の成績が良くなりました。理系のくせに(苦笑)

もし、面接で3年間頑張ったことを聞かれたら、思わず「web小説を書き上げたこと」とか言ってしまいそうです。(苦笑)

さて、epilogue2の内容についてですが、これは受験終了+もう一作書き終えて(多分東方の方が艦これより先に終わるかと)からゆっくり書こうと思っているものです。

CombatZoneと同じ世界で、時は2090年。近未来SF+ガンアクションを書いてみようかと思っていたり……

さて。長くなりましたが、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました! 初期の頃から読んでくださってる方も、途中から読み始めた方も、非ログインユーザーの方、キャラ提供してくれた夢見の狩人さん、そして、愉快なバルチャーチームの面々の元となった人物へ。この場をお借りしてお礼申し上げます。

それではまたどこかで!

よろしければ、他の作もご覧ください。

Allenfort

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