【完結】CombatZone   作:Allenfort

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インフル疑惑かかってるなう・・・


File15 敵の目的

USSポセイドン艦内

 

 

疲れの溜まったバルチャーチームは久しぶりに艦内で休んでいる。嗚呼、今日の朝食は久しぶりのジャポニカ米だった。パサパサのインディカ米じゃない。函南は心から仕入れた人に感謝しながらコメをかみしめた。

 

鷹見はワークショップに出向いていた。グレゴワールが何か面白いものを作ったらしい。

 

「グレゴ、来たぞ。」

 

「おう弘行。これを見てくれ。」

 

グレゴが出したものは籠手のようだ。ただ、手首のところに刃が仕込まれている。

 

「暗器だ。お前にピッタリだろうと思って作ったんだ。使うか?」

 

「おう。」

 

鷹見は籠手をつけてみる。どこぞのアサシンのように、手首から小型のナイフが飛び出す。暗殺向けだな。そう思ってニヤリと笑みを浮かべる。

 

「使ったら感想を聞かせてくれ。改良するから。」

 

「ありがとよグレゴ。」

 

鷹見はしばらくの間、トレーニングルームに篭って暗器を使いこなせるように練習していた。これなら活躍できるな。そう思っていた。

 

「たーかみー。モリソンがちょっと面貸せってよ。」

 

そんな時、函南が呼びに来た。長谷川もいる。

 

「ああ、今行く。」

 

「何だそれ?新兵器?」

 

長谷川は鷹見に近寄ると、籠手をつつく。

 

「ああ。グレゴが作った暗器だ。」

 

刃を展開して見せると、函南と長谷川はおお、と感嘆の声を漏らした。

 

「暗殺者だな。お前にピッタリだ。」

 

「俺らを刺すなよ?」

 

「長谷川はともかく、リア充の函南は分からねえな。」

 

「リア充じゃねえってーのによ!」

 

そんないつも通りの言い合いをしながら小会議室を目指す。途中で合流した宮間は、何やらお通夜にでも参加してるような雰囲気だった。どうやら、AN-94がとうとう昇天してしまったらしい。機構が複雑で、プロでも完全なメンテナンスをすることができないのだ。そして、泣く泣くAEK-972に持ち帰ることにしたようだ。

 

小会議室に到着し、少し乱暴にドアを開けると、モリソンがコーヒーを飲んで一服していた。

 

「日本人は時間に正確なんだな。他の奴らが来ていないから少しゆっくりしていてくれ。あと、新しい装備、似合っているぞ。」

 

函南達は服装を一新していた。函南はグリーンの野球帽にヘッドセット、迷彩の入ったネックウォーマー。そして、タクティカルベストのベルクロに鷲と剣をあしらったTF148のエンブレムと、日の丸のワッペン。

 

長谷川はネックウォーマーとワッペン以外は変わりなし。

 

鷹見は黒いニット帽の上にヘッドセット。そして、函南達と同じくネックウォーマーとワッペン。

 

宮間は今は外しているが、ヘルメットを着用するようになった。

 

集合時間になると、小隊の面々がぞろぞろと集まりだした。

 

「お前ら時間にルーズ過ぎるぞ! バルチャーを少し見習え!」

 

「将軍、何故自分達は天から与えられた休日に呼び出されたのでありますか!?」

 

ベッカーが抗議する。

 

「それはな、ある事があってだ。そして、このTF148で一番信用できる部隊だからだ。」

 

あのパンデミックの後、第2の国連軍となったTF148は、海兵隊以外解散となっていた。そして、USSポセイドンも米軍からの借り物。返せと言われてしまえば、活動に支障が出る。

 

モリソンはノートパソコンを見せる。ラウが何やら掴んだ情報らしい。

 

「これを見ろ。」

 

そこには、グローバルリスクに関するデータがあった。

 

「これは・・・」

 

グローバルリスクに参加しているPMCは、パンデミックの時に国連軍として戦っていた。そんな情報だった。

 

「これには私も目を疑ったさ。各国の軍が集まるはずなのに、何故PMCを寄せ集めたのか・・・その答えは、どうやら我々にあるらしい。」

 

ラウが民主化政策の合間に中国軍のサイバー部隊を駆使(酷使)して掴んだ情報によると、各国は国連軍ではなく、TF148へ兵力を提供した。そして、国内の防衛に残りを充てたので、国連軍に割く兵力はほとんど残っていなかった。

 

そして、当時の事務総長は自らの権力の誇示が目的だったのだろうか、形だけの国連軍を編成し、大敗を喫したと言えよう。手柄は全てTF148に持って行かれてしまったのだ。

 

「それで、今度はそのTF148を国連軍にすることで、その権威を見せつけようと画策した・・・と?」

 

「鋭いな函南少尉。」

 

そして、今回の事件はどこか裏がある。もしかしたら、前回の作戦中にジェームスが呟いたことが現実になっているのかもしれないとモリソンは締めくくる。

 

「いいか、お前らには水面下で動いてもらう。信用できる奴が減ってきた今、お前たちが頼りだ。ギャリソンとトレバーにも水面下で動いてもらっている。口外はするなよ。」

 

そんな時、ノートパソコンに何やら着信。テレビ電話のようだ。

 

「お、お、繋がった! いやー、川口に選んでもらった日本製のPC、なかなかいいじゃないか!」

 

ラウからのテレビ電話だ。何やら新しいノートパソコンを買ったらしく、はしゃいでいる。

 

「おい、何の用だ?」

 

「ん、ああ、そうだそうだ。グローバルリスクがまた何やら良からぬことを企んでるぞ。解析そっちで頼む。あと、前回の作戦での情報の間違いだが、どうやら意図的に行われたものらしい。」

 

「おいコラ、それだけか?」

 

「これだけでも精一杯だよ! サイバー部隊酷使してやっと掴んだんだ! どこもかしこもガードが固いんだよ! そろそろ切るぞ。傍受が怖い。」

 

「ああ。またな。」

 

モリソンはすぐに送られてきたファイルをダウンロードし、トレバーに解析させることにした。トレバーは連邦準備銀行にハッキング仕掛けて、あと一歩で億万長者になっていたという大天才(大馬鹿野郎)である。

 

「あと、これからドイツに飛んでもらう。ドイツで人質事件だ。主犯はグローバルリスクと思われる。いいか、これは非公式の作戦だ。GSG-9に化けて作戦行動を行え。以上。」

 

小隊の面々は小会議室を出て、装備を整えに向かう。

 

「・・・バイナリードメインとCOMPLAN0987・・・COMPLANの存在をなぜ奴らが知っているのか・・・そして、バイナリードメインとはなんだ・・・?」

 

モリソンはファイルのかろうじて解読できる件名の部分を見て呟いた。

 

その一時間後。バルチャーはモリソンにまた呼ばれていた。

 

「今度はなんです? 長谷川がまた何かやらかしました?」

 

「皿を割った事については後で説教する。ちょっと渡したいものがあってな。」

 

説教されることを知った長谷川は青ざめた。寝ぼけて皿を落として割った。それだけでインタビューの危機に瀕している。

 

「安心しろ。特別反省室にぶち込むだけだ。」

 

さらに酷いものだった。ちなみに、Aコースだと、椅子に縛り付けられ、目の前にはホカホカのカツ丼を配置、そして延々とグルメ番組を見せられるという拷問。Bコースは一週間、特別反省室で反省と言う名の自己批判をさせられることとなる。

 

青ざめる長谷川をよそに、モリソンは4つのエンブレムを目の前に置いた。骸骨に食らいつく狼のエンブレム。そして、『BONE EATER』と刺繍されている。

 

「お前たちバルチャーは顔は知らずとも名は有名だ。今度の作戦の時にバルチャーのエンブレムを付けていたら正体がばれる。これを付けて行け。」

 

4人はエンブレムを受け取る。

 

「ボーン・・・イーター・・・」

 

鷹見は呟く。

 

「なんなら改名してもいいぞ。まあ、バルチャーの方が馴染み深いんだろうがな。」

 

「まあ、そうですね。」

 

函南は苦笑いを浮かべながら答えた。ただ、このエンブレムもかっこいいなと思ってはいた。


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