【完結】CombatZone   作:Allenfort

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艦これの小説を書き始めました!

新たな主人公を考えるのに以外と手間取りましたが。

3作ともしっかり書き続けます!


File14大規模攻勢

「制空権を確保! これよりヘリがそちらを支援する! 歩兵は前進、攻撃しろ! バルチャーを援護するのだ!」

 

川口の指示と共に丘を下り、幹線道路の脇にある壊れたレンガ造りの家を目指す。

 

「敵襲! 稜線から来るぞ!」

 

誰かが叫ぶ。稜線から敵兵が迫り、手頃な瓦礫や壁、装甲車に身を隠して射程圏内まで敵を引きつける。

 

「来るぞ!隠れろ!」

 

誰かが叫ぶ。すると、どこからともなく何かの音楽が聞こえてきた。

 

「ソビエトマーチ? 一体誰が・・・」

 

後ろを見た長谷川と、つられて振り向いたバルチャーの面々は硬直した。

 

ソビエトマーチを大音量で流しながら横一列に並んだMi-24の軍団が迫ってきていたからだ。

 

「あー、バルチャー? あのヘリは味方だ。安心しろ。」

 

川口からの通信が入る。

 

「なら、なんで流してるのがワルキューレの騎行じゃないんです?」

 

「あれ、ロシア軍だから。」

 

「納得。」

 

そして、一斉に機銃掃射を開始し、敵を一気になぎ払っていく。緑の地面がえぐれて茶色くなり、その上を赤い血でコーティングしていく。もうあいつらだけでいいんじゃないかと、その場にいた全員が思った。

 

「いいぞ! 敵の数が減った! これで大体互角だろう。」

 

「どうやら、203高地にはならずにすみそうだ。」

 

現在地から敵までの距離は約700m。既に鷹見とヘンリーは狙撃を開始し、敵兵を仕留めている。

 

「メメントモリは前進するぞ!」

 

ベッカーの合図でメメントモリ小隊が前進する。それに続いて装甲車も前進を始めた。

 

「撃ちかませやゴルァ!」

 

先頭を走る長谷川は狙うことなく弾幕を張り、敵を釘付けにする。運悪く数人が弾幕に巻き込まれて斃された。

 

「これだけ多いとどれから狙うか迷いますね♪」

 

戦闘狂に片足を突っ込んでいる宮間は走りながらもAN-94でしっかり狙って敵を斃す。凶悪な笑みを浮かべながらも射撃するその姿を見た鷹見は失神しそうになっていた。

 

函南はセミオートで正確に敵を狙い撃つ。無駄弾嫌いな性格が出たようだ。

 

そして、崩れかけたコンクリートの壁に身を隠す。敵との距離は約50m。長谷川はともかく函南にとっては何てことのない距離だ。

 

「ターゲット5!始末しろ!」

 

バルチャーが隠れた壁の正面には5人の敵。長谷川が制圧射撃で押さえ込み、3人は正確に敵を狙って倒していく。近くにいる他の隊もあっさりと敵を始末していた。

 

「いいぞ! 進め!」

 

「傭兵ってのはこの程度か!? 俺を殺したければ1kmスナイパー持ってこい!」

 

「長谷川さん、それを言った某殺し屋は本当に1km(に近い)スナイパーに殺られましたよ?」

 

「やべ、誰か俺のフラグをへし折ってくれ!」

 

「恋愛フラグならへし折ってやらんこともない。」

 

「くたばれ鷹見!」

 

軽口を叩いているうちに次の壁に到着。滑り込むように身を隠す。更に向こうの壁から敵がわんさかと出てくるのが見えた。タックゴーグルのモーションスキャンにバッチリ映っている。数は30ほど。

 

「多過ぎないか!?」

 

鷹見はそう言いながらも狙撃を始める。

 

「撃たなきゃ当たらないでしょ! 秘密兵器を使ってやらあ!」

 

長谷川はバックパックからアレを取り出した。長谷川の最終兵器、ラムネである。

 

「こんな時にラムネで一服してる暇があるんですか!?」

 

と言っている宮間は戦闘中毒者(バトルジャンキー)の血が騒いでいるのか、凶悪な笑みを浮かべて射撃している。敵が多いのなんて、的が多いくらいにしか思ってないのだろう。

 

「・・・!!!! ヒーヤッハァァァァァァァァ!」

 

「「やべ! 発狂しやがった!」」

 

函南と鷹見が青ざめる。長谷川のみ、ラムネを飲むと一時的狂気(もしかしたら不定の狂気かもしれない)が発動する。どうしようもない時の最終兵器だ。

 

「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

突然立ち上がった長谷川は腰だめでM249を構えて乱射しまくる。敵はさぞや驚いた事だろう。長谷川が仁王立ちになっても被弾しないのは、撃つ前にこの悪魔の弾幕に巻き込まれて敵が死ぬからである。(デパート事件の時に味方へ誤射しかけたのは内緒である。バレたらモリソンにラムネ禁止令出されるから。)

 

「僕ちゃんの弾幕はどこへでも飛んでいきマース!アーヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

とうとう胸に被弾し、仰向けに倒れた。だが、それでもトリガーを引き続け、空を撃ち続けた。トリガーハッピーの執念なのだろうか。

 

「ゲーハッ! こりゃ肋骨一本持って行かれたか〜?そんな君にはプレゼント!」

 

カーボンナノチューブ装甲がいくら硬いとはいえ、流石に衝撃までは防げず、鈍痛が胸に広がる。それでも長谷川は立ち上がった。どうやら頭だけでなく、痛覚もトチ狂っているらしい。

 

長谷川はM320(武器庫からパクって来たらしい)を取り出すと、迷うことなく敵兵目掛けてぶっ放した。

 

榴弾は敵の頭に直撃して爆発した。あまりのエグさに3人は顔を背けた。だが、1人狂っている長谷川は気分を良くしたのか、さっさと次の弾を装填し、再びぶっ放した。函南達はもうこいつ1人でいいんじゃないか? と思いながらも援護射撃を続けた。

 

「いいぞ! クリアだ! 長谷川、傷見せろ。」

 

戦闘救命士(コンバットライフセーバー)の函南は長谷川の傷を確認する。弾は装甲が防いでおり、胸に青白い痣。本当に肋骨がやられたようだ。

 

「多分ヒビ入ったな。大丈夫か?」

 

「行ける行ける。痛み止め打ってくれれば。」

 

函南はメディカルポーチから注射器と痛み止めを取り出し、長谷川に注射する。

 

「軍医の勧めで医療訓練受けててよかったぜ。次のチェックポイントへ行くぞ!」

 

リロードを済ませ、遮蔽物から飛び出し、死体を踏み越えて他の隊と合流する。余談だが、函南は戦闘救命士に必要な医療訓練に加え、衛生兵候補に混ざって医療訓練を受けていたので、治療技能は衛生兵並みである。衛生兵になったら戦闘に加われないという理由で衛生兵の資格を取っていないだけだ。

 

「メメントモリ小隊、全員無事か?」

 

「ヴィンペルは全員生存。キリルのスキンヘッドに弾がカスったくらいでな。」

 

「言うなよウラッド!」

 

「やれやれ。ユニオンは全員無傷。」

 

「ジャッカルはジャックが被弾。搬送された。急所はギリギリ外れたようだ。」

 

「バルチャーは長谷川が肋骨一本やられたらしい。まあ、ラムネと痛み止めのおかげでまだ戦えるようだ。」

 

「よし。いいか、目標の豪邸にヘリが向かった。逃げる気だろう。米露軍が敵さんを減らしてくれているが、まだ残りは多い。なんとか突破するぞ。いいな?」

 

oohrah! と全員が返事する。

 

「よし行くぞ!」

 

ベッカーに続いて斜面を駆け下りる。その先にはまた破壊された家の名残である石積みの壁。その向こうに敵。

 

「空挺戦車! 隠れろ!」

 

キリルの声。函南は咄嗟にタックゴーグルのモーションスキャンを起動すると、敵の張ったスモークの先にBMD-4が見えた。何故傭兵風情がそんな物騒なものを持っているのだろうか。

 

「本当に来やがった! 鷹見! 長谷川にRPGを!」

 

大荷物を持っている長谷川に変わってSMAWを運んでいた鷹見が背中からSMAWを下ろすと、長谷川に渡した。

 

「これと宮間軍曹の持ってるやつだけだ。外すんじゃねーぞ!」

 

「任せろよ! ロケランは外さねえぜ!」

 

長谷川は射撃が下手なわけではない。ただ面倒くさくて狙っていないだけだ。

 

「後ろに立つなよ! 焼き鳥にしちまうぞ!」

 

一応後方の安全確認をした後、BMD-4へと何のためらいもなく対戦車榴弾をブッ放し、文字通り鉄くずに戻してしまった。

 

「ヒャーウ! たまんねー!」

 

また、爆発に巻き込まれ数人の敵兵が吹っ飛ばされ、弾幕が薄くなった。TF側はここぞとばかりに攻勢に出る。

 

「援護!」

 

「了解!」

 

函南が長谷川に制圧射撃させると、壁伝いに敵の側面に回り込んで攻撃する。側面からの急襲に敵は混乱し、次々と斃されていった。

 

「撃方やめ! 撃方やめ! メメントモリ小隊集まれ!」

 

付近を制圧し、ヘッドセットからベッカーの声が聞こえてきた。指示に従って集合する。

 

「この先の豪邸だ。いいか、逃げられる前に捕まえるぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴を逃がすな!」

 

ベッカーが叫ぶ。豪邸に突入すると、捕獲対象がヘリで逃げようとしていた。ヘリは既に離陸しており、メメントモリ小隊のメンバーはヘリへ向けて撃ちまくる。

 

が、カサートカは銃撃を物ともせずに飛び去っていった。

 

「クソ・・・仕方ない。残ってるものを漁って帰るぞ・・・」

 

捕獲対象は慌てて逃げたようで、何か手がかりになりそうなものがいくつか残されていた。今回は一杯食わされるという結果になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、USSポセイドン 医療ステーション

 

 

「痛え・・・」

 

「はいはい。もうすぐ終わるから我慢してください。」

 

脇腹に被弾したジャックは医療ステーションで看護師のマリーに傷口を消毒してもらっていた。ちなみに、マリー目当てで医療ステーションにやってくる戯け者はドクターが片っ端から追い払っている。

 

「不覚だった・・・はぁ・・・」

 

「こんなこともありますよ・・・はい。消毒終わり。」

 

「ありがとよ。」

 

ジャックはマリーの頭を撫でる。27歳のジャックからすれば、16歳のマリーは妹のように思えるらしい。

 

「わわっ・・・えへへ・・・」

 

マリーは少し戸惑ったが、すぐに気持ちよさそうに目を細めて撫でられていた。

 

「んじゃ、そろそろ戻るよ。」

 

「あ・・・それじゃお大事に!」

 

ジャックはさっさと服を着て医療ステーションを出る。するとそこにはアラン達が待ち構えていた。

 

「おうジャック。ドクターに手荒く治療されて来たのか?」

 

「いや、マリーちゃんだった。」

 

「「「なんだとコラ! 俺達まだマリーちゃんに治療してもらったこと無いんだぞこの裏切り者め!」」」

 

「ひどい言い掛かりを見た!」

 

もちろん取っ組み合いが始まり、4人まとめてモリソンに怒られ、ドクターに手荒く治療されると踏んだり蹴ったりな結果になったとか。




今回は夢見の狩人さんの『黄昏に染まりし幻想郷』に登場するマリーちゃんに登場していただきました!

狩人さんの方に函南達も出張しているので、興味がある方はそちらもよろしく!

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