【完結】CombatZone   作:Allenfort

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さて、記念すべきCombatZone一周年!昨日、間違って投稿しちゃいましたが(汗)

それでは本編をどうぞ!


Chapter.2 少年の見たもの
一周年記念


「もうすぐ3年経つんだよな・・・」

 

函南は甲板で空を見上げながら呟く。

 

「あっという間だな。」

 

鷹見も感慨深そうに函南の隣で空を見上げている。

 

「昨日のことみたいだぜ。まさか、俺らが特殊部隊になるとも思ってなかったしな。」

 

長谷川も函南の隣で空を見上げている。

 

もうすぐ、あの事件から3年になろうとしている。あのバイオテロは人々の記憶に新しいが、前哨戦であるデパート事件を知るものは少ない。TF148が公開したデパート事件の資料も、彼らの証言から出来ている。

 

彼らは隠すこともなく真実を告げた。あの事件で犠牲になった者達へのせめてもの弔い、そして義務として、真実を伝えることにした。

 

忘れることのない、あの悪夢の事を。

 

函南は青く、高い空を見上げながらいちごオレの紙パックへ突き刺したストローを咥える。空には海軍のF/A-18Eが2機飛んでいる。

 

「なあ、もうすぐ休暇だし、あの時の場所に行ってみないか?」

 

鷹見が言う。函南と長谷川は少し考える。

 

「俺はいいぜ。」

 

「ああ、俺も。」

 

結局、2人もその案に賛成した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5/14

 

 

「なんで私がドライバーなんですかね・・・」

 

函南、長谷川、鷹見、宮間の4人は高速道路を北上していた。あの事件の場所へ向かって。

 

函南、長谷川、鷹見は17歳であり、一番誕生日が早いのは函南であるが、7月17日なので、ドライバーとして宮間も同行することとなった。

 

「サービスエリアにとまりまーす。あの懐かしの場所ですよー。」

 

愛良はやや乱暴にハンドルを切る。

 

「ちょ! もっと優しく!」

 

長谷川が叫ぶ。

 

「ペーパードライバーに無茶言わないでください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デパートは老朽化という名目で解体となっていた。しかし、解体作業中にパンデミックが発生。解体は途中のままになっていた。

 

そして最近、デパートは半分だけ取り壊され、デパート事件の犠牲者の慰霊碑が建てられている。

 

「ここのデパート、結構気に入ってたんですねどね。」

 

宮間は半分ほど取り壊されたそこを見てつぶやく。彼女にとっては何の変哲も無いデパートだった。しかし、函南達には忘れることもできない場所であった。

 

そんな中、函南は慰霊碑のある箇所を指で撫でていた。そこに刻まれているのは函南の家族の名前。いくら嫌っていたとはいえ、肉親であることに変わりはない。そもそも、嫌っていた理由さえ、無くなってしまっていたのだが。

 

函南は慰霊碑の前に道中で買った花束を置き、敬礼する。それに続いて3人も敬礼する。

 

「あれ? 函南?」

 

その声に反応し、振り返る。そこには函南の同級生がいた。彼は猪狩。日焼けした坊主頭の野球部員だ。そう。パンデミック発生時に道中で函南に声をかけた同級生だ。

 

「おっす猪狩。全然変わってねーなお前は。」

 

「そういうお前は変わったよな。なんたって英雄さんなんだからよ!」

 

バイオテロを収束に導いた英雄はアラン率いるジャッカルチーム、ウラッド率いるヴィンペルチーム、ジェームズ率いるユニオンチーム。そして、函南率いるバルチャーチームだ。彼らは広告塔という役割も果たしていたので、猪狩が知っていても不思議ではない。

 

「英雄って実感ねーけどな。お前は今何やってんだよ?」

 

「バイオテロのせいで一年やり直しになったからな。今年受験だよ!」

 

「どこ受けんのさ?」

 

「ふふふ、俺は自衛隊になるぜ! お前みたいな特殊部隊になりたくなったんだ!」

 

函南は少し笑ってバカめとつぶやく。

 

「言っておくが、特殊部隊なんて楽じゃねーぞ?」

 

「お前に出来んだから俺にも出来るってーの!」

 

「ならやってみやがれバーカ!」

 

函南は冗談と思いながらも、もしTF148に来るなら少しは面倒見てやるかと考えていた。

 

全て、ここで終わり、始まった。函南は今まで自分を捨て、特殊部隊となった事を誇りに思っていた。

 

それを選んだことを後悔したくはなかった。

 

「さ、行こうか。」

 

慰霊碑に背を向け、歩き出す。そんな時、函南は誰かに背中を押された気がした。後ろには誰もいない。

 

そして、吹き上げる強い風に混じって聞こえた気がした。

 

『お前は、俺の誇りだ』

 

振り向くが、そこには誰もいない。

 

函南は胸のポケットから懐中時計を取り出し、開く。オルゴールの優しい音色が響き、風が手向けの花を散らす。

 

そして、散る花びらの向こうに、薄っすらと人影が見えた気がした。

 

「・・・じゃあな。」

 

函南は歩き出す。

 

『まだ、終わってはいない』

 

函南にははっきり聞こえた。

 

「なあ、なんか聞こえたか?」

 

「いや?」

 

「全然。」

 

「何も?」

 

その時、今度ははっきりと聞こえた。もういないはずの・・・アイツの唸り声が。

 

「まさか!?」

 

長谷川が真っ先に反応した。壊しかけのデパートの2階から飛び出してきた奴・・・アンノウンに。

 

「バカな!?」

 

鷹見は一瞬狼狽えた。

 

「クソが! デパート事件の時に俺が交戦した奴だ! どっかに引っかかってたのか!?」

 

アンノウンは片腕がもぎれていた。恐らく、長谷川にミンチにされた後に回復、なんらかの理由で片腕をどこかに挟まれるか潰されるかしていたのだろう。それが、まるで待っていたかのように現れたのだ。

 

黒く変色した人体。その手首から先は鋭利なブレードに変形している。そして、目の前にいる4人を殺さんと猛ダッシュで距離を詰めてきた。

 

「死ねクソ野郎!」

 

函南はミリタリージャケットの裏側に隠していたMk.23を抜き、アンノウンへ発砲するが、止まらない。距離を詰めてきたところで横へローリングし、ブレードを回避した。

 

「宮間軍曹! どっかでウォッカ買って火炎瓶作って! それしかない!」

 

長谷川と鷹見も隠し持っていたハンドガンを取り出して応戦する。

 

「しばらく持ちこたえて下さい!」

 

宮間は近くのコンビニへ向かう。そして、銃声を聞きつけてやって来た民間人はアンノウンの姿を見るや否や、悲鳴をあげて右往左往する。

 

「バカが! 早く逃げろ!」

 

民間人が邪魔で撃てない。しかも、アンノウンが民間人へ狙いを変えたようだ。

 

「させるか!」

 

このままでは犠牲者が出ると判断した函南はアンノウンに後ろから組み付き、地面へと投げ飛ばす。そして、その頭へ至近距離から頭へ発砲する。

 

.45ACP弾はアンノウンの頭部を抉る。既に血液は流れ切ったのか、いくら撃っても出血がない。

 

(今度こそ・・・ここで因縁を断つ!)

 

函南はアンノウンを押し倒すと、頭へ渾身のストンプを見舞う。

 

固い頭蓋を踏み潰し、破片を飛び散らせる。これでアンノウンはしばらく動くことは出来ないだろう。

 

「・・・もう、あの事件は終わったんだ。今度こそ、完全に終わらせるんだ。」

 

「お待たせしました!」

 

10分も掛からずに宮間がウォッカを買ってきた。函南はそれを受け取ると、アンノウンに満遍なくかけた。

 

「・・・さ、もう眠れ。安らかに。」

 

函南はそこを離れると、鷹見がマッチを取り出して火を点け、アンノウンを焼却する。今度こそ、倒したのだ。

 

すると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。警察が来たのだろう。

 

この後、函南達は警察署で事情聴取を受け、始末書を提出する羽目になる。

 

それでも、函南、長谷川、鷹見は笑っていた。今度こそ、あの事件に決着をつけたのだと。




今回はプロローグにて長谷川が交戦したアンノウンが登場しました。

さて、小説を書き始めてから一年経ちましたが、思ったよりお気に入りやUAが増えているのを見て喜んだり、お気に入り件数が減って肩を落としたりと、楽しかったです!

さて、来年受験を控えているため、更新ペースは落ちると思います。ですが、失踪は絶対にしないので、気長に待って下さい。

また、最近『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』にハマり出したので、ある程度時間に余裕があったら書こうかと思います。また函南達を使う羽目になるかと思いますが。

さて、今更ですが、この小説を書くにあたって、主要キャラ4人、函南、長谷川、鷹見、宮間にはモデルとなった知り合いがいます。

個性豊かなキャラのモデルとなってくれた4人、ありがとうございました!(長谷川のモデル、ラムネで酔いますガチで。)

それでは、これからもよろしくお願いします!

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