函南「しっかり片付けろよ?」
書き取りか・・・
函南「とりあえず本編へ行くぞ。」
ウーラー。それでは本編をどうぞ!
17:26
(函南視点)
「起きろ! 荷下ろし手伝え!」
長谷川に叩き起こされた。どうやら駅前に着いた様だ。
俺は傍らに立てかけて置いたG36Cを取り、スリングで肩に掛ける。
そして、トラックから飛び降りると、そこにはテントが立ち並んでいた。基地にでもしているのか?
「撤退の用意をここでしてるんだとよ。物資を掻き集めてから基地まで運ぶそうだ。」
鷹見が解説する。
「成る程。」
俺達はその手伝いをすることにした。これから世話になるんだからそれ位当然だろう。
「ようルーキー共! 生きてやがったか!」
「アラン! 見ての通りピンピンしてるよ!」
「そいつはいい。祐介、ちょっと来てくれ。グリーンランド中佐がお呼びだ。」
「おいおい、中佐って、俺なんかやらかしたか?」
「いや、そう言うワケではないんだ。まあ、来てみりゃわかるさ。」
とりあえずアランについて行く。辺りではトラックから集めてきた物資を下ろしていた。
そんなこんなで1つのテントについた。他のところは屋根だけだが、ここだけは密閉式だ。
「中佐、函南を連れて来ました。」
「入りなさい。」
「失礼します。」
俺はアランに続いてテントに入る。そこには初老の男性が立っていた。
「君が函南君だね? 私はグリーンランド。ここの部隊を指揮している。モリソン将軍には基地で会えばいい。」
「函南祐介と言います。」
俺はそう言い、敬礼する。
「楽にしてくれ。あと敬語というものは難しくて理解できん。余り使わないでくれると助かる。」
「分かりました。」
「その程度なら分かる。さて、本題に入ろうか。まず、君を呼んだのは君達4人に頼みたい事があるからだ。」
「ただの民間人でよろしければ。」
俺達は正規軍じゃない。出来ることはたかが知れてる。
「君達はもう普通の民間人ではない。さて、明日13時に新幹線に荷物を積んで東京駅へ向かう。だが敵の攻撃が予想される。そこで、1つをダミーとし、兵士を乗せ、乗り込んで来た敵を殲滅する。その列車に君達も乗って欲しい。」
「なぜ私に? 年齢順で言えば宮間さんに伝えるものかと?」
「ドミトリエフ少尉からの報告では君がチームを率いていたとあった。それで君を呼んだのだ。」
ウラッドの奴・・・
「分かりました。明日の13時ですね?」
「そうだ。頼むぞ。コールサインはどうする?」
そんなもん決まってる。
「バルチャーでお願いします。」
「分かった。君のチームのコールサインはバルチャー
としよう。君の仲間にも伝えて置いてくれ。以上だ。」
「失礼します。」
俺は敬礼し、テントを出た。
そして、長谷川達の元へ向かう。
長谷川達はトラックの荷下ろしを終え、テントで武器の手入れをしていた。
「全員注目。グリーンランド中佐から命令だ。明日の13時に新幹線に乗る。俺らが乗るのはダミーの方だ。敵の攻撃が予想される。気を引き締めろ。」
「コールサインは?」
宮間さんが聞く。作戦の詳細よりそれか。
「バルチャー。いつも通りだ。他に無いならこれで終わりだ。」
俺は指示を伝え終わり、テントで休む。
「長谷川、ついでに俺の銃も頼む。ジャムられたらシャレにならん。」
「了解。照準の設定は?」
「いじるな。その設定が気に入ってるんだ。」
「あいよ。」
そんな時にアランが何かを持って走って来た。
「おーい、晩飯持って来たぜ! 食いな!」
「助かるよ。」
アランが食事を持って来てくれた。パンとオレンジジュースだ。俺はとっとと食べ、ダンプポーチの中の空のマガジンに弾を込める。バックパックに弾薬と空のマガジンが幾つかある。暫くは大丈夫だ。
「あと祐介、お前3時から見張りな。」
「おいおい、俺は早起きほど苦手なもんはねぇよ。」
「まあ頑張りたまえ、若き分隊長よ。」
アランはそういうと、笑いながら自分のテントに戻って行った。つくづくマイペースな奴だ。いい奴だが。
早起きか。気が重いぜ。
6/18
3:05
(長谷川視点)
俺は寝袋にくるまって寝ていた。だが、函南がもぞもぞと起きた時に起きてしまった。
見張りと言っても、駅の入り口は正規軍が見張ってる。函南は辺りを巡回したあと、その辺で見張りと言われたそうだ。
ちょうど巡回を終えたようだ。辺りは誰もいない。こいつと話をするには好条件だ。
函南は噴水の辺りに腰掛け、電池式のランタンを傍らに置くと、棒状の何かを口に咥えた。
「葉巻か?」
「長谷川か。違う。こいつはカルパスだ。お前も食うか?」
「1本。」
そういや、こいつはタバコの煙が大嫌いだったな。健康第一なタイプだし。
「なあ、祐介、俺、まだお前に話してないことがあるんだ。」
「名前で呼ぶとは珍しいな。一体なんだ?」
「お前の親父の事だ。」
やっぱり顔をしかめてる。だが、話さなければならない。そうじゃなければ、こいつは変わるチャンスを無くす。もう、苦しみ続けるこいつを見ているのは嫌だ。
「俺と弘行は前、お前の親父からどうしたらお前が心を開いてくれるか聞かれたんだ。」
「あの頑固者が? ありえねぇな。」
「確かにそう思うかもな。で、話を聞いてみたら、お前に今は苦しい目にあっても後でいい思いをして欲しくて厳しくしたんだとさ。」
「そうは思えないな。」
「そうかも知れないな。だがお前の親父はただ不器用なだけだったんだよ。」
「なら、俺の為って名目なら何でもしていいと?」
雲が月を隠す。ランタンの電池が切れ、辺りは再び暗闇が覆う。
「自分が壊れていくのを俺はただ見ているだけしか出来なかった。それなのに! あいつがそれに気付こうとするはずが無い! 気付ける訳がないだろ!」
声が震えている。やっと打ち明けてくれた。こいつは長い間、あれこれ1人で抱え込んで、ゆっくりと壊れて行った。やっと、誰かに打ち明けれたか。
確かに、こいつの親父が祐介が心を閉ざしたことに気付いたのはあの事件の2週間前位だ。遅過ぎたのだろう。
「それは否定できないな。でも今はどうだ? 俺や弘行は、お前を本当に信頼してる。もう1人で抱え込むなよ。俺らはお前に助けられてばかりだ。だから、こんな時ぐらいは力にならせてくれ。」
「助けられてんのは俺の方だ。あの時、お前の勘や制圧射撃、弘行の狙撃、その他色々なものに助けられた。」
「でもお前は俺らの治療をした。俺達をまとめ上げてここまで生き残らせた。お前がいなかったら、俺も化け物の仲間入りだったかもな。」
結局は貸し借り何てない。お互いの足りないところを補いあってここまで来た。
あいつらにない制圧力を俺が。
俺にない精密射撃を弘行が。
俺らに無い判断力と応急処置を祐介が。
そうして、持ちつ持たれつだ。
俺はポケットからチューブを取り出し、祐介のカルパスにちょいと細工する。
祐介は、涙を流し始めた。効いたようだな。
「・・・辛い。マジで辛い! 水よこせ!」
俺はペットボトルを祐介に渡す。
「おい! この水も辛い! 何しやがった!」
「ヒャヒャヒャ! お前の気づかないうちにカルパスに練りわさび塗っといたんだよ! あと、水はコンビニにあった"わさび水"だ!」
「てめぇ、あの殺人級の辛さのわさび水だと? さっきまでのシリアスさを返しやがれ!」
祐介は自分の水を取り出して飲み始める。
「あーあ、あのわさび水、やっぱり祐介に飲ませたのか。」
弘行が来た。こいつもどっかに隠れて聞いてたんだろう。
「たりめーだ! リアクション要員だからな!」
「勝手にリアクション要員にすんじゃねぇ! バカ!」
涙目で咳き込んでる。やり過ぎたか?殺人級に辛いと悪名高いわさび水だからな。毎日チャレンジャー共が買って行き、儚く散って行くんだとか。
「ま、俺らはどんな形であれ、笑ってるのが一番だ。楽しいだろ?」
「イテェし涙と胸焼けが止まらねぇぞ!」
でも顔は笑ってる。間違いない。本当に笑ってる。
実はこのイタズラ、宮間さんの入れ知恵なんだよな。
「ま、今更だが、これからもよろしく頼むぜ、分隊長。」
「まだいけるだろ? 相棒。」
「仕方ねぇ。最後まで面倒見てやるよ野郎ども!」
俺達は拳を合わせる。月が雲から出て、辺りを照らす。
月光を半身に浴びた祐介は、リーダーの威厳を感じさせた。
祐介の懐中時計のオルゴールが月夜に響いた。
函南「長谷川テメェ! シリアス返せ!」
長谷川の必殺シリアスブレイクですね。正直アレをやらないとどんどん暗い方向へ行ってしまいそうでしたし。
長谷川「わさび水か・・・考えたくもねぇな。」
今回は函南の過去についてでしたが・・・
函南「正直あまり思い出したく無いな。ロクな思い出がねぇ。」
長谷川「まあ、どっちも不器用なように見えるが、函南のダメージは予想以上だったな。」
戦闘能力は高いですが、あくまでも函南達は元々普通の高校生ですからね。本職の兵士のような鋼の精神では無いですし。
函南「まあな。」
さて、この辺にして。定期テストが近いので来週は更新出来ないかも知れません。
函南「数学が一番ヤバいんだろ?」
はい。それでは
「「「次回もよろしく!」」」