函南「結局眠れたのが4時ってどれだけ寝つき悪いんだよ?」
いつもはすぐに夢の中なのに・・・
函南「ま、どうでもいいがな。それでは本編をどうぞ!」
(函南視点)
17:21
「インターチェンジには来たが、一体どうする気だ?」
インターチェンジ前でドライバーの鷹見は俺に疑問をぶつける。
「東北自動車道を南下すると、途中で川の上を通るんだ。そこから南へ5kmのとこで高速を降りて、国道を戻る。」
「成る程ね。橋じゃなくて高速で川を渡るのか。」
鷹見はスッキリした表情。疑問が解決するとスッキリするもんな。
「俺達じゃ思いつかないな。流石分体長。頼りになるねぇ。」
地図ひっくり返したおかげで気付いた。やっぱ視点を変えるのは有効だな。
「本当ですよ。」
「いやいや、長谷川の勘には劣るぞ?」
「言えてる。エスパー並みの勘だもんな」
笑いながら俺に続けて鷹見は言う。
「そう言えば、長谷川さんって天気予報出来ましたよね?あれも勘ですか?」
「あれは勘じゃなくて雲の高度で予想してるんですよ。」
「お前高度なんてどうやって測ってんだ?」
今度は俺が疑問をぶつける番だ。
「写真を見てこれは何mか調べているうちに覚えたな。あと今の雲は3200m位だから降らないよ。」
「なんなのその記憶能力は?」
「一種の才能だな。」
全く。お前の興味あることにだけ異常に働く記憶能力はなんなんだ?鷹見も呆れたような顔で才能と言ってるし。
「そうそう鷹見、そろそろ運転と戦闘で疲れたろ?ちょっと行くとサービスエリアがあるから今日はそこで野宿しよう。」
「ガソリンもそろそろヤバいしそれでいいぜ。みんなは?」
「賛成。」
「そうしましょう。」
「なら、決定だな。」
空は夕焼けに染まっている。
その赤は、今日流れた血を思い出させる。
次は我が身か、それとも・・・
目を瞑り、その先は考えない事にした。
そうだ、アレを作るのを忘れていたな。
「長谷川!カゴから日本酒1つ取ってくれ!」
「オイオイ、飲むのか?」
「飲まねぇよ。別な事だ。あとビニールテープとティッシュも!」
長谷川から日本酒とビニールテープとティッシュを受け取ると、窓を開けて換気の用意。アルコールとタバコの臭いがちょっと苦手なのだ。
そして、日本酒の瓶の蓋を開け、捻じったティッシュを半分くらい瓶の中に突っ込み、蓋をして、ビニールテープで口を固定した。
「これで何だが分かるな?」
「「「知るか!!」」」
マジ?
「火炎瓶だよ!」
「汚物は消毒か。」
鷹見が苦笑いしている。
「朝に嗅ぐナパーム剤の匂いは格別・・・」
「カムバーック!!宮間さん!!そっちに行っちゃダメェェ!!」
長谷川が宮間さんにツッコミを入れる。
やっぱこいつらといれて楽しい。
バカ騒ぎして、ふざけて、笑って。
でも、束の間の平和は長くは続かない。
あと何回、仲間達と騒げて、
何度、仲間達と笑い合えて、
どれだけの時間、仲間達と共にいられるのだろうか。
変わってしまったこの世界で、
仲間の大切さを噛み締め、
別れに怯え、それでも、
俺達は、進み続ける。
この悪夢に終止符を打つか、
俺達が負けて、この心臓が止まるその時まで
それまでは、俺が必ず守り切る。
いつか終わりが訪れる。
それは誰も避ける事は出来ない。
もう1人の自分が言う。
・・・やめよう。
終わりばかり考えても何も始まらない。
「起きろ函南!いつまで寝てやがる!」
「ああ?」
鷹見に起こされた。寝ていた様だ。
いつの間にかサービスエリアに着いていた。
ちらりと腕時計を見る。
「17:35か、状況は?」
大あくびしながら聞く。
「駐車場には車が1台。他は無しです。」
「なら、鷹見と長谷川はスタンドで給油。宮間さんは俺と施設内を偵察だ。」
「アイアイサ。」
鷹見が返事する。長谷川はなんかM249をいじっている。どう頑張ってもアンダーバレルにM320は付けられないぞ?バイポッド付いてるし。
寝ぼけ眼を擦り、メット、ゴーグル、フェイスガードを装着し、G36Cを取る。
で、宮間さんと車を降り、入り口へ向かう。
電力は生きてるな。自動ドアが動いた。
売店内を2手に分かれ、偵察する。
・・・レジから物音。何かいる。
G36Cを構え、ゆっくりレジの中を見ると・・・
「頼む!撃たないでくれ!」
そこには30代位の男と、その娘らしき女の子がいた。
「なんだ民間人か。安心しな。撃ちゃしないよ。」
俺は直ぐに無線を使う。
「こちらバルチャー1、売店内にて民間人2人確認。敵は無し。」
「こちらバルチャー4、こっちもクリア。誰もいないです。」
「こちらバルチャー2、スタンドももぬけの殻。リッパーの1体もいないぜ!オーバー。」
「了解。給油が終わったら売店まで来い。」
「アイアイサ。」
長谷川が返事したとこで無線を切る。
「他にもいるのか?」
恐る恐る聞いてきた。
「ああ。全員武装してるが安心しな。撃つのは化け物だけだ。」
程なくして、全員が集まる。
そして俺達は1日中戦い続けて疲れていたので、その場にしゃがみ込む。
鷹見と宮間さんは壁により掛かって眠っている。
運転お疲れ様。鷹見。
俺は装備品を外す。ゴーグルはメットに引っ掛け、フェイスガードはポケットに入れた。
「俺は車で見張りに付くぜ。」
「助かる。宮間さんも寝ちまったしな。代わりにカレーパン食ってもいいぞ。俺の取って置きのをな。」
「じゃ、お前の食い物も持ってくるか?」
「あー、シャケおにぎり2つとオレンジジュース持って来て。」
「あいよー。」
長谷川、意外と気が利くな。
「なあ、あんたらはどういう関係なんだ?」
その男性は俺に聞いてきた。
「ああ、友達かな。」
「自衛隊員には見えないが、その銃は?」
デジタルフローラ迷彩だから間違っても自衛隊じゃない。これはロシア軍の迷彩だ。
「ま、色々あってな。」
「家族は?」
やっぱり聞くか。
「俺の家族はみんな死んだよ。あいつらは行方不明だそうだが。」
「悪い事聞いたな。すまない。」
「別にいいさ。その子は娘か?」
「ああ。そうだ。俺の一人娘だよ。8歳だ。」
「そうか。ほら、食べるかい?」
俺はそう言ってチョコバーを女の子に差し出す。
「ありがとうお兄ちゃん!」
俺は黒のフィンガーレスタイプのタクティカルグローブを外し、女の子の頭を撫でる。
妹を思い出す。
「函南〜、持ってきたぞ〜。」
「バックパックも持って来たのか?まあ、ありがとよ。」
外は暗くなっていた。
「長谷川、見張りは俺もやるぞ。」
「お、助かる。」
「2時間位したらそこの爆睡してる2人と交代しよう。」
「だな。」
俺は荷物を取ると車へ向かって歩く。
鷹見「あれだけあってやっと2日目終了かよ。」
まだ2日目は終わりませんがね。
函南「精神的にヤバくなって来そうだ。」
長谷川「お前はもうヤバくなってるだろ?安心しろ。お前が思ってるような事にはならない。」
宮間「そうですよ。もっと自信持って下さい!」
ほら、言われてるよ?
函南「ああ。これからもよろしくな。みんな。」
さて、今回はこの辺にしておきますか。それでは、
「「「「「次回もよろしく!」」」」」
函南「長谷川!これシャケおにぎりじゃなくて梅じゃねぇか!」
長谷川「チッ、バレたか・・・」