「本当に教室?」
Fクラスに着いた俺達は教室を見て、驚愕した。腐った畳、綿が入ってなさそうな座布団、今にも折れそうな卓袱台。これが本当に教室なんだろうか?しかも、窓ガラスが割れて風が吹き抜けている。
「早く座れ、このうじ虫!」
「な!誰だ!今言ったの!……って雄二じゃないか。何で教壇に立ってるの?」
「俺は、Fクラス代表だからな。いいから、座れ!」
「……雄二、僕の席はどこ?」
「特に決まってない、自由だ。適当に座っとけ。」
「席も決まってないの!」
さすが、Fクラス…。明久は、空いている席に座った。それと同時に覇気が無い教師が来た。教壇から雄二が立ち去り、かわりに教師が立ち自己紹介をする。
「担任の福原です。よろしくお願いします。」
黒板に名前を書こうとするが、やめた。チョークすらないのか…。
「では、そこの席の方から自己紹介をしてください。」
「木下秀吉じゃ。よろしくの」
最初に席を立ったのは、木下秀吉。爺くさい喋り方が特徴。演劇部のホープと言われ、声まねが得意。らしい…。よく女子に間違えられるほどの美人。
「………土屋康太」
この、口数が少ないのは土屋康太。趣味は盗撮、特技は盗聴。ある一点の教科だけ学校一かも知れない点数保持者。らしい…。
「島田美波。よろしくね。」
島田美波。ドイツからの帰国婦女子だ。数学が得意。明久を毎回、関節技できめてくる女。そんなことする度、殴ってやりたい。明久をいじめていいのは俺だけだってのに…。まあ、きめてきたとこ見たこと無いけど。
「吉井明久です。ダーリンって呼んでね。」
『『ダーリン!』』
「……忘れてください。」
明久が座る。俺は、明久の胸ポケットに移る。
「明久、何であんな自己紹介を?(小声」
「インパクトのある方がいいかなって…(小声」
「バカだ…あんな、挨拶したら友達いなくなるぞ……普通は」
「…僕らは普通じゃないの?」
「ああ」
「そんなきっぱり言わないでよ!」
小声で話し合う俺達。すると、ぼろいドアが開いた。
「お…遅れてすみません。」
「姫路さん!」
急に、明久が動いたのでびっくりした。なるほど、アイツがテスト中倒れたと言う奴か…。
「もう、大丈夫なの?」
「はい。吉井君のおかげですっかりよくなりました。」
確か、Aクラス確実の成績と言っていた。よく聞かされたから覚えている。
「ちょうど今、自己紹介中なので姫路さんもお願いします。」
「あ、はい。姫路瑞希です。一年間よろしくお願いします。」
「はい。質問があります。」
誰か知らない奴が質問してきた。
「どうして、姫路さんはAクラスじゃないんですか?」
そんな、質問か。まあ、そう思うよなぁ。
「……テスト中に高熱を出しまして…」
姫路がそう言った瞬間、クラス中からテストの言い訳が聞こえてきた。Fクラスらしい。
「あー皆さん仲良く…」
教師が机を叩くと、教卓は崩れた。どんだけ、ぼろいんだよ…。
「か、替えを取って来ますので待っててください…!」
そう言って、教室から出て行った。