何気に書いた二次作品集   作:青火

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ナルト×オリ主 2

 

 

 

 

「へい、いらっしゃい!」

「豚骨醤油ラーメン一つ」

「あいよ!」

 

ラーメン屋の店主が元気よくお客を迎い入れる。

豚骨醤油はこの店での自慢の一品。いや、どのラーメンでも自慢だが、その中で最も店主が好きな味でもあるそのラーメンを頼んでくれたことへの嬉しさで、店主は笑う。

湯切り網で茹でた麺の水分を追い払っている間、チラリと今しがた来た客を盗み見る。黒い口元まで隠れる装束に、鈴のついた笠を被った男性。とても怪しいが、店主とってはそれはどうでもいいこと。とにかく、良い商品を提供するのが店の仕事である。

暫くして、豚骨醤油ラーメンがその客の前に出される。

 

「あいよ、豚骨醤油ラーメン。箸はそこだから」

「ありがとう」

 

お?と店主は驚く。作っている間、何も喋らないのでそういう客かと思いきや礼を述べてきた。その事にも嬉しさを感じながら、いいってことよと返した。

客は笠を外し、隣の座席へと置く。素顔が露わになったと思いきや、仮面が出てきた。しかし、その仮面も客は外した。

怪しさ満点だった客だが、その素顔は普通の少年であった。

16、7ほどと思われる顔立ち。黒い少し癖っ毛のある頬まで長い髪に、青に近い黒い瞳。そして両頬に三本の傷がある。

 

「なんだ、意外だな」

「ん?」

「あ、いや。お客さん、そんな顔なんだなと」

 

言ってから店主は、何失礼なこと言ってるんだと自分を叱ったが、肝心の客はきょとんと驚いた後、ぶふっと吹き出した。そして笑い出す。

 

「あはははははははっ!!アンタ、面白いこと言うな!ははははっ!!」

 

いや、そんなに笑うことか。と店主は思うが、自身の失態を笑われた事にも少し自分でも笑ってしまった。

ひぃーと今だに目尻に涙を薄っすら浮かべて笑いを堪える客。

一通り笑い終わったのか、箸置きに手を伸ばしパチンと割り箸を割った。

 

「いやぁー、笑った笑った。アンタ名前は?」

「テウチだ」

「そーか、テウチさんか」

 

ズズズッと少しだけ冷めてしまった麺を啜る。

麺を食べた後はスープ、そして具材を。その順番で食べていった客は10分もしない内に食べ終わってしまった。

その食べっぷりに店主、テウチも肝心しながらラーメンの器を回収し、水にさらす。

 

「ごっそうさん。美味しかったよ」

「そりゃ良かった」

「また食べに来たいね」

 

おう!いつでも来いよ。と笑うテウチに客も微笑んだ。

ゴソゴソと懐を漁り、定価より少し多い金額を出してきた客から金を受け取った。どうやら丁度は持っていなかったらしい。

 

「テウチさん、少し聞きたいんだが」

「なんだ?」

「明るい金髪でこれぐらいの……そうだな、13、いや4か…それぐらいの子知らないかい?」

 

そんな子供。一人ぐらいしか知らない。

金髪はもう一人知っているが、あれはおとなしい色であり、明るいとなるとあの性格も明るい子供。

テウチは脳内にそれを思い浮かべながら、客をもう一度見た。

 

「知り合いか?」

「いや、そうでもないが。まぁ探し人だね」

 

そう笑った客をテウチは怪しむ。あの常連客でもある子供を危険には晒せない。

その子供が危険な職についていようとも、身内のように思っているのだから。

 

「悪いが、知らな「おっちゃん!ラーメン食べに来たってばよ!」……」

 

さっさと追い返そうと、知らない振りをしようとしていたのだか、本人のご登場によってそれは無駄に終わる。

テウチは自身の気も知らず意気揚々と現れた、金髪の子供、ナルトに拳骨を食らわしてやりたかった。

 

「ありゃ?先客?珍しいってば。朝にラーメン食いに来る人いないのに」

「そりゃ、朝に来るのはお前だけだろうな」

「え?そうなの?」

 

首を傾げるナルトに色々な意味で、やはりその顔を殴りたくなる。

抑えろ、自分の怒りを抑えるんだ、怒りからは何も生まれない!とテウチは自分の心を沈ませる。

客はナルトを見た後瞬きしながら、その頭を撫でた。

 

「すまないね、見つかったみたい」

「いやいい。俺も嘘をつこうとして悪かった」

「おっちゃんの知り合いか?ってやめるってば!子供じゃねぇってばよ!」

「あ、ごめん」

 

ぶーと子供扱いを嫌うナルトに謝りながら、客はパッと手を離した。

その顔にはいつの間にか仮面が付いており、テウチは酷く驚く。いつの間につけたのだろうか。

 

「じゃ、俺はこれで」

 

笠を拾い、頭に被って暖簾を潜った。

そして客は左右を見渡し、やがて右へと進んでいった。

その様子を見てテウチはハァアと一息つく。何か疲れた。

 

「テウチのおっちゃん、大丈夫だってば?」

「あぁ、んでナルト、ラーメン食べに来たんだろ?」

「あぁ!今日はタダ券持ってきたんだってばよ!」

 

嬉々としてタダ券を探すナルトに脱力しながらも、テウチは先ほどの客を思い出す。

さっきは気づかなかったが、あの客の顔……ナルトに似ていた気がした。

 

「(誰なんだ……?)」

 

しかし、テウチは一般人である。先ほどの客、恐らく忍であろう。

誰なんだろうか、と思うがそこまで詮索はしない。

確か他の人物に忍はなれるらしいので、その術かなんかだろうと思い込むことにした。

 

「(けど、探し人、ナルトと話さなくてよかったのか?)」

「な、ないぃいいいいいいい!!!!」

 

しかし、首を傾げたテウチを思考から引き戻したのは、ナルトの悲鳴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶねぇー。変化してなかった」

 

小さくそう呟く。

とにかく今、彼奴に会うのはダメだ。それに近くに三忍の気配もした。トメはハァとため息をついた。

三忍と謳われた、三人の忍は木の葉でも三代目火影の次に強く、各国にその名前が轟くほどの強者である。

戦えば勝てないこともないが、正直戦いたくはなかった。

 

「(強いやつと戦うのは楽しいけど、めんどくさいもんなぁー……)」

 

笠を深く被り直し、歩く。目立つはずの姿なのに何故か、道歩く人に注目されず、何処か馴染んでいた。スススッと人を最小限避けて、道を歩いた。

ラーメンも食べた。あとは甘味類かな、と団子屋へと向かった。確か、彼処にはイタチと鬼鮫もいるはずだ。

 

「(三色団子、あるかなぁ。あとみたらしとか、味噌焼きとかも)」

 

悶々と美味いもの、甘いものを思い浮かべたら、自然と早足になる。早く食べたい、その一心で団子屋へ向かったのだが、イタチと鬼鮫がいなかった。

はて?とトメは首を傾げる。一体、何処へ行ったのか。緑茶と三色団子がそのままである。

 

「あんた!」

「はい?」

 

突然声をかけられ、振り返るとこの店の店主らしき五十路の女性が、怒ったような顔でトメを見ていた。

ん?と首を先ほどと違う方向へ曲げる。

 

「あんた、さっきの兄ちゃん達の仲間やろ?その服、一緒やもんな!」

 

何故に関西弁。相変わらず世界観のわからない場所である。

その女性はビシッとトメを指差し、叫ぶようにして、代金払って貰うと告げた。

トメにしてはそれは良いのだが、唾が勢いよく飛んできたことには少々癪に触った。勿論、全部避けたが。

 

「やけど、兄ちゃん嫌な面つけてるんやね。此処じゃ皆その動物は嫌ってるんよ」

「あぁ、それね。よく知ってる」

 

金額を告げてきた女性に、先ほどのお釣りもあってか丁度あったので、その代金を手渡しで渡す。

その時女性がそう言ってきた。トメは少し驚いてから、深く頷いてわかっていると告げた。それには女性の方も驚いた。

 

「そうなのかい。まぁいいわ。その団子食べてっていいから」

「ありがとう」

「いいんやって。こうやって払ってくれたんやし」

 

ニカッと笑う元気なその女性に、トメも笑って返す。尤も仮面のせいで表情はわかならないが。

トメは団子を三つとも手に取ったあと、ふと辺りを見渡し、そして、あぁーと言葉になっていない声を漏らした。

 

「そうや、これもいるかい?」

 

女性が振り返ると、そこには誰もいなかった。周りを見渡しても、あの仮面の男性はいない。

はて?と女性は首を傾げたが、帰ったのかと見当をつけて、空になった皿とまだ湯気のたっている緑茶を手に持ち、厨房へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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