何気に書いた二次作品集   作:青火

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問題児×オリ主 6

「なっ!?」

 

 

 四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔---そして、水平に太陽が廻る世界だった。

 四人は同時に息を呑み、目を見開く。

 

 

「…そうか、白夜と夜叉。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか…」

 

 

 十六夜は、冷や汗をかきながら笑う。白夜叉は、フフッと笑い答える。

 

 

「如何にも。この白夜と湖畔の雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ。」

 

「これだけの莫大な土地が…ただのゲーム盤!?」

 

「如何にも。して、おんしらの返答は? “挑戦”であるならば、手慰み程度には遊んでやる。だがしかし、“決闘”を望むのなら話は別。魔王として命と誇りにかけて戦おうではないか。」

 

 

 四人は返答をためらった。勝ち目がないことは一目瞭然。自分達が売った喧嘩を取り下げるしかなかった。

 しばしの静寂の後、十六夜が笑いながら、ゆっくりと挙手した。

 

 

「参った。やられたよ、白夜叉。」

 

「ふむ? それは決闘ではなく、試練を受けると。」

 

「ああ。これだけのゲーム盤を用意できるんだからな、アンタには資格がある。いいぜ、今回は黙って試されてやるよ、魔王様。」

 

 

 『試されてやる』とは随分可愛らしい意地の張り方があったものだと、白夜叉は腹を抱えて哄笑をあげた。

 一頻り笑った白夜叉は笑いをかみ殺して他の三人にも問う。

 

 

「く、くく………して、他の童達も同じか?」

 

「……ええ。私も、試されてあげてもいいわ。」

 

「右に同じ。」

 

「僕は元々喧嘩、売ってないし。」

 

 

 一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、胸を撫で下ろす。

 

 

「も、もう! 皆さんお互いにもう少し相手を選んでください!」

 

「いや…僕、選んだよね?」

 

「も、もちろん満さん以外の人です!」

 

 

 満の問いに、慌てて否定する黒ウサギ。

 その時、彼方にある山脈から甲高い叫び声が聞こえた。その声に逸早く反応したのは、耀と満だ。

 

 

「何、今の声。初めて聞いた。」

 

「声の感じからして、幻獣だね。」

 

「よく分かったの。そこの童の言うとおり、幻獣じゃ。おんしら三人を試すには打ってつけかもしれんの。」

 

 

 チョイチョイと手招きをする白夜叉。すると、体長5mはあろうか巨大な獣が現れた。

 鷲の翼と獅子の下半身を持つ獣を見て、耀は声を上げた。

 

 

「グリフォン…嘘、本物!?」

 

「フフン、如何にも。あやつこそ鳥の王にして獣の王。“力”“知恵”“勇気”の全てを備えたギフトゲームを代表する獣だ。」

 

 

 グリフォンは白夜叉の元に降り立ち、深く頭を下げて礼を示した。

 

 

「さて、肝心の試練だがの。おんしらとこのグリフォンで“力”“知恵”“勇気”の何れかを比べあい、背に跨って湖畔を舞う事が出来ればクリア、という事にしようか。」

 

 

 白夜叉が双女神の紋が入ったカードを取り出すと、虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れた。

 

 

 

『ギフトゲーム名“鷲獅子の手綱”

 

 ・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

          久遠 飛鳥

          春日部 耀

 

 ・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。

 ・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。

 

 ・敗北条件  降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗をホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

                                         “サウザンドアイズ”印』

 

 

 

「私がやる。」

 

 

 読み終わるや否や、ピシッ!と綺麗に挙手したのは耀だった。

 

 

『お、お嬢……大丈夫か? なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど。』

 

 

 今まで、黙っていた三毛猫が耀に声をかける。耀は大丈夫、問題ないとシンプルに答えた。

 隣で呆れたように苦笑いをする十六夜と飛鳥。満はニコニコと笑っていた。

 

 

「OK、譲ってやる。失敗するなよ。」

 

「気をつけてね、春日部さん。」

 

「頑張ってね、耀。」

 

「うん、頑張る。」

 

 

 耀は頷き、グリフォンに駆け寄って行った。満は見届けるとクルリと白夜叉の方へを向いた。

 

 

「ねぇ、白夜叉。なんで、このギアスロールには僕の名前がないの?」

 

「ん? そのことか…おんしには、違うゲームを用意してある。心配するな。」

 

「ホント!? よかったぁ…僕だけ仲間はずれかと思ったよ。」

 

「心配するのそっちですか!?」

 

 

 見た目と同じく幼い思考を持っているようだ。仲間はずれが嫌だからと言って命がかかるようなゲームをしたいと思わないだろう。普通ならば…。

 

 

 

 

結果、耀の勝ちだった。それによって、耀はグリフォンのギフトを手に入れ、空を踏みしめて歩いてきた。

 

 

「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな。」

 

「…違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

「ただの推測。」

 

 

 軽薄な笑みのままの十六夜をフイッと避ける。すると途端に三毛猫が耀の傍に駆け寄って来た。

 

 

『お嬢! 怪我はないか?!』

 

「うん、大丈夫。指がジンジンするのと服がパキパキになったぐらい。」

 

 

 その向こうで拍手を送る白夜叉と感嘆の眼差しで見つめるグリフォン。

 

 

『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい。』

 

「うん。大事にする。」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。……ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった。」

 

「木彫り?」

 

『お嬢の親父さんは彫刻家やっとります。親父さんの作品でワシらとお嬢は話せるんや。』

 

「ふ~ん。彫刻家かぁ~。今度、僕の家の大黒柱にでも模様、彫って欲しいな。」

 

「え?」

 

 

 三毛猫の説明に答えたのは白夜叉ではなく、満だった。その場にいた全員が驚く。

 

 

「み、満さん。三毛猫さんと話せたのですか?」

 

「え? 言ってなかったっけ?」

 

「聞いてないぜ。ということは、そこのグリフォンとも話せるのか?」

 

 

 十六夜は、じっと満を見ているグリフォンを指す。

 

 

「うん。同じだもんね。」

 

『確かに、お前からは私と同じ感じがする。』

 

「ほら。」

 

「……ほらって言われても私達には分からないわ。」

 

 

 ふ~んと素っ気ない返事をしてグリフォンを見る。フフッと白夜叉は笑い話題を戻す。

 

 

「話がそれたの。して、その木彫りとやらを見せてくれんかの?」

 

 

 満を見ていた耀はコクンと頷き、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出す。

 白夜叉は渡された木彫りを見つめて、急に顔をしかめる。飛鳥と十六夜も隣から覗き込んだ。

 

 

「複雑な模様ね。何か意味はあるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えて貰ったけど忘れた。」

 

「………これは…」

 

 

 白夜叉だけでなく、十六夜と黒ウサギも鑑定に参加する。表と裏を何度も見直した。

 すると、グリフォンを撫でていた満はチラッとこちらを見て耀に問うた。

 

 

「それ、楠の神木でできてるね。耀のお父さんの知り合いに生物学者でもいるんじゃないかな?」

 

「うん。お母さんがそうだった。」

 

「生物学者ってことは、やはりこの図形は系統樹を表しているのでは? 白夜叉様。」

 

「おそらくの……ならこの図形はこうで…この円形が収束するのは…いや、これは…! これは凄い! 本当に凄いぞ娘!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! コレは正真正銘“生命の目録”と称して過言ない名品だ! おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

 

 興奮したように声を上げる白夜叉。

 

 

「ダメ。」

 

 

 耀はあっさりと白夜叉の手から木彫りを取り返す。白夜叉はしょんぼりした。

 さて、と黒ウサギがパンパンと手を叩き注目を浴びる。

 

 

「皆さん、まだ満さんのギフトゲームが残っております。白夜叉様、ギフトゲームの準備を。」

 

「うむ……忘れておったわ。おんしもいたのぉ。」

 

「忘れないでよ!」

 

 

 どうしようかのと頭をうねらせる白夜叉。しばらく経つとポンと手を叩いた。

 

 

「あやつがいいの。ほれ、グリフォンこっちに来るのじゃ。」

 

 

 白夜叉の呼びかけに応じるグリフォン。ドシドシと足を進め、白夜叉の隣に座った。

 白夜叉は、片手を上げて叫んだ。

 

 

「…ケルベロス。来るのじゃ!」

 

「なっ!? 地獄の番犬を呼べるのか!?」

 

 

 名前を聞き、驚く十六夜。白夜叉は、ふふんと胸を張り、誇らしげに答える。

 

 

「うむ。一応な。それに、ケルベロスは一匹とは限らんし、姿がなにも三つ頭とは決まっておらん。」

 

 

 白夜叉の言葉が終わると同時に離れたところから地面が盛り上がり何かが出てきた。ノシノシとこちらに歩んできたのは、赤茶の毛色を持つ体長2mはある犬だった。

 

 

「ヤハハッ、強そうだが頭一つじゃねぇか。」

 

『おい、小僧。ワシを侮辱したな。』

 

「やめ、ケルベロスよ。おんしの相手はあやつじゃ。」

 

 

 白夜叉は扇子を満へと向ける。満は一歩二歩とケルベロスに歩み寄る。

 

 

「こんにちわ。ケルベロス。僕が相手だよ。」

 

『弱そうなやつじゃ。晩御飯の足しにもならん。』

 

「あやや、言われちゃった。まぁ、耀の方が美味しそうだもんね…。」

 

 

 ビクッと耀は体を強張らせ、ささっと飛鳥の後ろに隠れた。それを見た飛鳥は満を怒鳴りつける。

 

 

「満君、春日部さんが怖がってるじゃない。」

 

「ごめん、ごめん。…でも本当のことだし」

 

 

 軽い口調で返す満。

 

 

「お喋りはココまでじゃ。」

 

 

 白夜叉はそう言うとまたカードを取り出し、ニッと笑った。

 

 

「第二ラウンドじゃ。」

 


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