古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

744 / 1001
鷺ノ宮様、bigbig様、Scotch105様、トマス二世様、黄金拍車様、ぶるぱん様、メイン弓様、障子から見ているメアリー様、緑のたぬき様、KAIN様、ひいろ33様、MG2501様、march12様、hirao様、daTeyaMa様、Riecshe様、通りがかりのオッサン様、mais20様、うたたね猫様、tokuhar様、瀬蓮様、SHV(元MHV)様、暁 九郎様、唯一王様、ヴーらーど様、ガリナオ様、神鳥ガルーダ様、vari様、八俣様、オロゴン様、high-G様、ねるネルnel寝様、ポポイ様、PONPONPON様、安藤一二三様、sk005499様、nao2631様、血豆様、Lelouch様、Alsion様、つづりちゃん様、黄金拍車様、赤い狸様、グリン様、伊原ゼナ様、Ace@様、ゆらぎみつめ様、竹馬の友様、fel様、ラオルク21様、消炭様。
何時も誤字脱字報告有難う御座います。非常に助かっています。
bigbig様、大量の誤字脱字報告有難う御座います。
今年の盆休みは8/10から8/18迄と大型連休ですが、酷暑に負けず京都方面に旅行に行ってきます。何故暑いの苦手なのに盆地に行く事になったのか……


第738話

 ラミュール殿の希望である、王都に住む民との交流は大成功のうちに終わった。そして捕縛した悪意有る陳情者は合計十三人、今は徹底的に背後関係を洗っている。

 勿論だが直接顔見せはせずに十分配慮した状況で、リゼルに頭の中の情報を読ませて裏付けの確認を進めているのだが……依頼者には、アーバレスト伯爵と仲間達も混じっていやがった。

 バニシード公爵と関係者は当然入っていた。彼等は常日頃から、僕への妨害や対策に人員を割いているので当然だろう。今は証拠を押さえ、反撃の準備を整えている最中だ。

 問題なのは侯爵七家筆頭の、アヒム侯爵が僕への伝手と攻撃材料としての陳情を二種類ほど用意していた。一つは単純に使用人の家族の体調不良の改善をラミュール殿に依頼し偶然同席する。

 その場には見舞いに来ていた、アヒム侯爵本人と秘蔵っ子であるらしいモンテローザ嬢が居るって流れらしい。もう一つは、僕に反発する火属性の宮廷魔術師団員の横暴への対策のお願い。

 証拠は無いが怪我をした平民は居る。そして加害者は、ニーレンス公爵に引き抜かれた者達らしい。個人名特定はせずに、そう名乗ったと聞いている程度の雑さだ。俺達はニーレンス公爵の配下だぞって言ったとか?

 普通なら確たる証拠を用意しろ!って言い返すが、平民達に囲まれた中で強硬な態度を取れば反発の芽が他の平民達の中に生まれる。しかも平民の陳情を受けたい、ラミュール殿も居る。

 彼女が証拠も無い証言だけの話に、可哀想とか何とかしてあげたいとか思えば纏まる話も拗れるだろう。アヒム侯爵は小手先の策だが、僕とニーレンス公爵との関係を危ぶんで引き離そうとした。

 公爵五家筆頭、財務系の最上位貴族と軍事関係の要の僕が組めば危険だと思ったのか?本当は、ザスキア公爵の方が一緒にしたら危険なのだが読み間違えたのか?やはり中立の関係が望ましいな。

 まぁ証拠を揃えて陳情者は、ニーレンス公爵に引き渡す。アヒム侯爵は愚かな手を打ち、僕とニーレンス公爵を敵に回した。公に敵対せず中立よりの敵対関係かな?だがそれは大した問題じゃない。

 気になるのは、今一番の才媛だと噂される彼の愛娘、モンテローザ嬢の存在だ。開戦前にウルム王国に嫁いだ女性陣を全員無事に連れ帰る手腕は、同世代では傑出している。

 その彼女と裏では明確に敵対する訳だが、此方にも負けないだけの人材は居る。リゼルが最近はギフトを使った仕事が無いとボヤいていたが、バーリンゲン王国の連中とは接触させたくないんだ。

 あの使節団を騙る馬鹿な連中は、未だエムデン王国の王宮に居るんだよ。早く帰れよ、邪魔なんだよ。親書の返事待ちって言うが、その内容はキツい拒絶と説教だぞ。

 勝手な事をするな!勝手な要求を突き付けるな!馬鹿な連中を寄越すな!言われた事だけをして余計な事はするな!全く宗主国の国王である、アウレール王の指示を何だと思ってるんだ!

 結果は馬鹿な事をした我が国の下級官吏共を散々脅して送り込むんだ。一定の能力は有るから要望と予定の通りだが、彼等は裏切れば極刑待った無しの状態だから懐柔は無理ですよ。

 もし裏切れば人質は極刑、僕自らが貴様等を断罪する為にバーリンゲン王国に乗り込むぞ!って脅した。僕と敵対した連中の末路を思い出せって言った時の怯えようは凄かったな……

 味方には優しいとか思われているが、僕は敵対すれば基本的に殲滅という容赦無い残虐性が有るんだぞ。

◇◇◇◇◇◇

 王宮内の僕の執務室に急報が入った。王都周辺に潜伏し行方を眩ませていた傭兵団の団長と副団長達が纏まり、近郊の村を次々と襲い始めた。

 王都周辺に監視の目を増やした為に、その周辺の街や村の警戒態勢が緩くなっていた。限られた人材で運用しているから仕方無いのだが、それは言い訳にならない。

 何故、潜伏して王都の安全を脅かしていた連中が王都を離れて略奪する?その村の領主は、ローラン公爵の派閥構成貴族だ。警備兵と自警団で撃退は出来たが少なくない被害が有った。

 辻褄の合わない理由を考えるのは後にして、今は直ぐにでも増援と復興部隊と周辺の監視体制の増員と見直しだ。急いで動ける、メルカッツ殿達に物資を持たせて急行させた。

 後方攪乱目的だろう、略奪よりも破壊行為に重点を置いている。だが増員し各方面に監視の目を増やしたので、被害は格段に抑えられているし何人か傭兵団の連中も捕らえた。

 問題は捕縛すると舌を噛み切って自殺してしまう事、つまり洗脳されている。じゃなきゃ欲望にまみれた奴等が、略奪をそこそこに破壊行為だけで終わる訳がない。しかも生き汚い奴等が潔く自殺?無いな。

「少し落ち着きなさい。最善の手を打ったのだから、どっしりと構えて待つのが司令官の在り方でしょ?」

 僕の執務室で寛ぐ、ザスキア公爵にたしなめられたが常に最前線で戦っていたのに今回は後方待機で落ち着かない。今回の件が陽動なのは分かる。

 だから本命が動く迄は王都から動かないのが正解なのは理解している。だが今回は後手後手に回っている、前は自分が攻める方だったから余計に歯痒い。

 逐次報告が上がって来るので情報は理解している。潜伏していた傭兵団の連中も、少しずつ倒して数を減らしているが捕縛しても口を割らないし自殺するので詳細な情報は得られてない。

「頭で理解はしていますが、身体が落ち着かないのです。王都の周辺の騒ぎは陽動、本命が動くのを待たねばならない。それは理解しています」

 組織として指揮官が自分で手を出そうとする事は良くないのは理解している。一つの事だけに集中せず、全体を見渡し指示する立場だから。

 だが落ち着かない、こんなにも現場主義だったっけか?陣頭指揮をするにしても、不良傭兵団の討伐など爵位や役職から言っても配下の仕事の範疇だ。

 失敗してないのに上司が手を出せば配下の面子はズタボロだし、仕事の範囲を犯す愚かな行為だよな。理屈は分かる、女性陣も呆れ顔だな。因みにだが、リゼルは別件で席を外している。

「もう、若いのにワーカーホリックよね。本当に落ち着かないと駄目だから、深呼吸して……ほら早く!」

 ちょ、近付いて来て後ろから抱き付かないで下さい。これじゃ深呼吸も出来ませんから!ザスキア公爵もストッパー役(牽制要員)の、リゼルが居ないからフリーダムだ。

 イーリンとセシリアは何時もの事だと溜め息を吐き、オリビアはワタワタと慌てている。ミズーリも最近慣れたのか、我関せずとスルーして仕事をしている。

 旧コトプス帝国の、リーマ卿の謀略がジワジワと発動し始めているのに未だ余裕が有るって事なのだろうか?何とか焦る気持ちが落ち着いたのは、彼女達のお陰だろう。

◇◇◇◇◇◇

 本日分の親書の返信を書いている時に、執務室に緊急の伝令が駆け込んで来た。報告書じゃなく伝令兵、書面に認める時間的余裕すら惜しい事態だ。

「伝令!王宮警備隊所属、モッズです。貴族街にモンスターが現れて暴れています。巡回中の聖騎士団と王宮警備兵が対応していますが、何故かモンスターが組織的に抵抗しています」

 取次もそこそこに執務室に駆け込んで来た。緊急事態なのを理解する。

「何だと?警戒態勢の貴族街に、モンスターが現れただって?」

 伝令は王宮警備の隊員だ。肩で息をしているのは鎧兜を装備して全力で走って来たからだ。貴族街にモンスターが現れたという、にわかには信じられない内容だ。

 だが彼等が嘘を言う事などない。口頭による緊急伝令だが正式な報告であり、原因の究明よりも先に現れたモンスターの討伐を優先するしかない。しかも上級貴族の集まる貴族街での襲撃事件だ!

 貴族街と新貴族街の巡回警備が功を奏し初期対応は最善だが、聖騎士団員はモンスター討伐も慣れているが王宮警備隊員は対人専門だから分が悪い。人型と獣との違いは、戦い方が全く違う。

「現れたモンスターの種類と数は?」

「アタックドッグが少なくとも五十匹以上、それとアーマータイガーにビッグボア、ポイズンラビットを数体確認しました」

 自然発生のアニマル系のモンスターだが魔法迷宮にも現れる。だが魔法迷宮でポップするモンスターは、迷宮の外では身体を維持出来ない。バンクからモンスターが溢れ出たという記録も無い。

 そしてアタックドッグが組織的に抵抗?元々は群れを成して狩りをするモンスターだが、何かが引っ掛かる。アーマータイガーやビッグボアは中級レベルの強さを持ち単独で群れない、ポイズンラビットは分からない。

 奴等はレベル20相当の戦士職が五人以上で対応しないと厳しい。街に現れた事など無く、森の中を狩り場としている連中だぞ。山里なら分かるが王都に?怪しい、人為的な作為を感じる。

「それで出現場所は?」

「目撃者によれば、シャルク伯爵の屋敷からです」

 シャルク伯爵だと?先代は亡くなり跡を継いだ兄殿は参戦して留守、今はルエツ殿が領地から戻って来ている。アタックドッグの異常繁殖に、モンスターを飼いたがる異常な趣味だと聞いた。

 もしかしなくても犯人は、ルエツ殿か関係者の可能性が高い。だが何故、彼がモンスターを王都に引き込み解き放った?国家転覆にしては杜撰だし、大した戦力でもないぞ。

 だが僕に対して敵意は有った。それは急激な出世による立場が逆転した事への不満で、馬鹿な行動を取らせる理由としては弱い。何故なら保身の手段を講じてないから、やはり洗脳されている?

「シャルク伯爵の屋敷に今回の件について重要な参考人となる、ルエツ殿が居る。確保してくれ!あとビーストティマーが居ると考えた方が辻褄が合う。周辺を捜索し捕縛または処分しろ。一応、魔法迷宮バンクにも通達。迷宮内からモンスターが街中に出ていないかの確認。それと僕も現地に……」

「駄目ですわ!リーンハルト様は現地での陣頭指揮は却下です。百匹程度のモンスターに負ける程、王宮警備隊や聖騎士団は弱く有りません。彼等を信じて任せなさい!これも陽動、ですから落ち着きなさいな」

「いや、しかしですね」

 ザスキア公爵が逆に敵の炙り出しの為の策を講じた。なる程、その可能性は高い。奴等の狙いは僕をおびき寄せて……

◇◇◇◇◇◇

「ワーバット!そっちはどうだ?」

「アドム!勝手が違うが大丈夫だ。犬ッコロなんかに負けるかよ。だがポイズンラビットが素早いし死角から狙って来るのが厄介だ。コイツ等、モンスターの癖に連携してきやがるぞ」

「ああ、奥にも大物が控えていやがる。歯応えが有りそうだな……日頃の鍛錬を見せる絶好の機会、負けられねぇぜ!王都の治安は俺達の使命、やり遂げてみせる!」

 貴族街を巡回中、突然シャルク伯爵の屋敷から大量のモンスターが飛び出して来た。直ぐに笛を吹き周囲に敵襲を知らせる。幸いだが近くに聖騎士団の巡回班が居る筈だ。

 我等は十人編成、五人二組に別れ飛び出して来るアタックドッグを槍で突き刺し凪払う。弓は準備していないので、遠距離攻撃は出来ない。もどかしい、一撃では倒せないタフな連中だ。

 知識としてモンスターの種類は分かる、だがアタックドッグが攪乱しポイズンラビットが死角から跳び掛かって来るので油断出来ない。種族が違うのに、連携しやがる。

「伝令二名!王宮に走れ。モンスターの種類と数、出現場所を伝えろ。俺達はこの場で奴等を足止めしつつ殲滅する。他に逃げない様に牽制しながらな」

「分かった。足の速い、レブスとモッズに任せた。我等に構わず早く行け!」

「任せろ!直ぐに報告し増援を連れて来るからな」

「槍を渡す。投げ槍として使え!」

 二人を伝令に走らせたから残りは八人、モンスターは約五十匹前後か?未だ屋敷の柵を飛び越えて出て来やがる。一体何匹運び込んだ?どうやって運び込んだ?

 城門の警戒は厳重にしていた筈だぞ。モンスターを檻に入れて運び込むなら目立つ筈なのに、監視網はザルだったのか?手引きした奴が居るのか?裏切り者が居るのか?

 疑問ばかりが頭に浮かぶ。だが今は奴等を足止めしつつ倒すしかないが、素早い動きで牽制するアタックドッグが邪魔だ。ポイズンラビットも隙を窺っている、つまり連携してやがる。

「せいせいせいっ!連続突きだ」

「二人一組背中合わせに構えろ。ポイズンラビットが死角を狙ってやがるから、油断するな」

 跳び掛かって来る、アタックドッグの顔面を狙い槍を連続で突く。奴等の攻撃は噛み付き、首筋を噛まれたら負ける。鎧兜の隙間に牙が突き刺されば、致命傷だ。

 ポイズンラビットの鋭い角は、同じく鎧兜の隙間ならば貫通する。しかも毒を受ける、致命傷を避けても毒消しポーションを飲む隙を与えてくれるか?

 近くの聖騎士団員達が来る迄の辛抱だ。レブスから貰った槍を投擲、アタックドッグの脇腹に命中。すかさず近くの仲間がとどめを刺す。単体なら弱いが取り囲まれるとキツい。

「糞がっ!また増えやがる」

「俺達を狙っているから散らばらなくて助かってるんだ。四方八方に逃げられたら、もう捕まらないぞ。それに周囲の屋敷の警備兵達も駆け付けてくれる筈、もう少し踏ん張れ!」

 上級貴族の屋敷が多い、常駐している警備兵も居る。異変を感じてくれれば、見付け次第応援してくれる。だから僅かな時間、奴等を釘付けにすれば何とかなる。

 腰に下げていたハンドアックスをポイズンラビットに向かい投擲、運良く頭に当たり仰け反る様に後ろに倒れ込む。逃げる賊の足止め用に、各自が得意の投擲武器を持っている。

 取り囲む連中に必殺の一撃を食らわせるが、回収して再度使うのは無理か?今は逃げ出しそうな奴を倒す為に使わずにはいられないな。もう五十匹は倒したが、やっと半分か?まだ出て来るのか?

「おっ?増援か?」

「違う!増援が馬車に乗ってなど来る訳ないだろ?まさか戦闘中なのに、逃げずに通らせろってか?何処の馬鹿野郎だ?」

 此方に真っ直ぐ向かって来る馬車が見えるが、周囲に護衛が居ない。中に乗っているにしても精々四人か五人、増援じゃない。何故、戦闘地域に来るんだ?

 馬鹿が、危険だから早く立ち去れ!お前達の安全確保は無理だ、今の陣形を崩す訳にはいかないんだぞ!それとも体力の無い魔術師でも連れて来たのか?それなら火力に期待が出来る。

「おいおいおいおい、マジか?いくら何でも、それは無いだろう」

 馬車から降りたのは……

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。