古代魔術師の第二の人生(修正版)   作:Amber bird

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第114話

 久々の魔法迷宮バンク攻略、しかし変なパーティがウィンディアを勧誘してきた。

 たしか『ワイルドカード』だったかな、そういえば僕等は名乗らなかった。

 所属するパーティが居る前で引き抜きをするとは違反じゃないがマナーがなってないな。

 奴等はゴーレムポーンを操るのが彼女と勘違いしたのだが本当の事は教えていない、面倒事はご免だ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「色々有ったけど漸くボス狩りを始められる。121回目から開始だ、今日の目標は40回にしよう」

 

 ゴーレムポーンを魔素に還しゴーレムナイトを六体召喚する、ツヴァイヘンダー装備が四体と盾装備が二体だ。

 レベルアップの恩恵はゴーレムの基本性能の向上にも繋がっている、多分だがゴーレムポーンはレベル20相当の戦士職からレベル25位に上がっているだろうしゴーレムナイトはレベル35位かな?

 前回エレさんと二人で来た時も苦戦しなかった。

 

「準備は良いね?ゴーレムナイトを先行させるよ」

 

 扉を開けて先にゴーレムナイトを入れてから僕等もボス部屋に入る、奥の方で魔素が集まり始めた。広い部屋なので出現位置もランダムなんだよな……

 魔法の灯りを十個に増やし周辺に浮かべ照明を確保しゴーレムナイトを配置する。

 

「じゃ始めるか、ビッグボア狩りを!」

 

 実体化したビッグボアが真っ直ぐ突っ込んでくるが慌てずに盾装備のナイトで受け止める。凄い衝撃音が響くがガッシリと受け止める事が出来た!

 

「止めを刺せ!」

 

 左右に二体ずつ配したツヴァイヘンダー装備のナイトが一斉に突き刺すと、悲鳴を上げながらビッグボアは魔素に還って行った……

 

「呆気ないね……ドロップアイテムは獣皮だね」

 

「確かにレベルが上がり能力も底上げされたからゴーレムも強くなってるんだ。でも油断大敵だよ、慎重に行こう」

 

 ウィンディアから獣皮を受け取り空間創造にしまう、エレさんが扉を開けて左右を確認するのを待つ。

 

「誰も居ない」

 

「よし、扉を閉めてくれ。122回目のボス狩りを始めよう」

 

 扉を閉めると今度は部屋の中央辺りに魔素が集まり始めた、これなら実体化と共に攻撃出来るな。

 ゴーレムナイトニ体を出現場所に近付けてツヴァイヘンダーを振りかぶる。

 

「今だ、突き刺せ!」

 

 実体化と同時に二本のツヴァイヘンダーに貫かれて、何もしない内にビッグボアは魔素となり空中に溶ける様に消えていく……

 

「調子が出て来たな、次に行こう」

 

 今日のノルマは早目に達成出来そうだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 143体目のビッグボアが魔素に還る、ドロップアイテムは肝だ。エレさんが拾ってくれた肝を空間創造に収納して時刻を確認すれば昼前か……

 

「昼休みにしよう、そろそろ集中力が切れそうだ」

 

 九時過ぎから始めたビッグボア狩りも23匹、一時間当たり8匹倒している。ドロップアイテムも獣皮が五枚、肝が六個と順調だ。

 

「リーンハルト様、テーブルセットをお願いします」

 

「分かった、しかし段々と豪華になっていくな」

 

 テーブルと椅子を出すとウィンディアがクロスを敷いて食器を並べて、イルメラが料理を出して並べていく。

 今日のお昼は僕のリクエスト通りナイトバーガーにマッシュポテト、季節のサラダにクラムチャウダー、デザートはオレンジだ。

 

「僕のナイトバーガーは切り分けなくて良いよ」

 

「丸かじりしたいなんて、リーンハルト様も子供らしい所が有りますね」

 

 邪気の無い笑顔を向けられるが、本来ナイトバーガーは軽く潰してひっくり返して食べるのが作法だ。

 勿論、騎士団流で正式な作法じゃないがワイルドに食べるのが美味しく感じるんだよね。

 

「はい、野菜も沢山食べてね」

 

 山盛りのサラダとマッシュポテトの乗った皿を受け取る、これはフォークで食べるからアンバランスだ。

 クラムチャウダーはカップに入れて貰う、流石にスプーンで行儀良くとは行かない、時間も限られているからだ。

 デザートのオレンジはパーティ内で一番器用なエレさんが剥いてくれる、兎に角丁寧で早い。

 

「はい、リーンハルト君」

 

「ん、ありがとう」

 

 

 脂っこい食事もオレンジの爽やかさで後味がスッキリした。モアの神に食後の祈りを捧げて昼食を終える、大満足だ!

 

「リーンハルト様、どうぞ」

 

 食事の片付けを終えると敷布に編み上げブーツを脱いだイルメラがスカートを広げて座っている。膝をポンッと叩いて早く頭を乗せなさいって事だ……

 

「じゅ、15分ほど頼む」

 

 無言の笑顔に気圧されて、だけど嫌じゃない膝枕をして貰う。彼女の膝に負担が掛からない様に頭を乗せて目を閉じる。

 仄かに甘いミルクの様な匂いが鼻腔を擽り眠気を誘う……

 

「リーンハルト君、直ぐに寝ちゃったね」

 

「戦闘の殆どを担っているのです、私達より疲労は大きいのです」

 

「意外と甘えん坊、二人が甘えさせ過ぎ……」

 

「エレちゃん、羨ましいんでしょ?でも駄目よ、膝枕をするのは二人だけの約束なんだから!」

 

「小声で話して下さい、リーンハルト様が起きてしまいます」

 

「あっ?髪を撫でるの反則だよ。私も次にやるもん!」

 

 イルメラが撫でてくれるのが少し擽(くすぐ)ったいが会話の内容が恥ずかしい、転生前を含めると彼女達の倍は生きているのに僕は甘えている。

 だが止められないのも事実なんだ……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「む、時間かな?」

 

「もう少し大丈夫です、リーンハルト様」

 

 額に手を添えていてくれるイルメラが微笑み掛けてくれるが目が覚めては膝枕は恥ずかしい、彼女の膝に負担が掛からない様に腹筋だけで起き上がる。

 

「ありがとう、大分回復したよ。これで午後も頑張れる」

 

 残り17回なら二時間一寸で達成出来る、終わったら様子見に四階層に下りてみるか……

 

「準備が良ければ扉を開けます」

 

「ゴーレムナイトも配置した、外を確認してくれ」

 

 イルメラが扉を開けて左右を確認する、誰も居ないと言ってそのまま閉めた。

 部屋の左奥で魔素が集まり始めたが距離が離れている、今回は突進してくるビッグボアを迎撃か……

 

「突進してくるぞ、ウィンディアとエレさんはイルメラの後ろに。イルメラ、魔法障壁を準備しておいてくれ」

 

 そう言って彼女達の前に出る、ビッグボアは僕等を警戒して睨んでいるが左右に小刻みに動きながら近付いてくる。

 だが弓型に配置したゴーレムナイトに突っ込まないと僕等に攻撃出来ない。

 

「来る、ゴーレムナイトよ受け止めろ!」

 

 右側に方向転換しツヴァイヘンダーを装備していたゴーレムナイトに突進するが、武器を手放し両手で押さえ込ませる。

 直ぐに他のゴーレムナイトが止めを刺す、今回はフェイントを織り込んで来たが一匹では包囲網は崩せない。

 ツヴァイヘンダーを背中に突き刺したまま、ビッグボアは魔素へと還って行った……

 

「今回のドロップアイテムは肝でした」

 

「うん、効率が良いね。後19回頑張ろう」

 

 イルメラから肝を受け取り空間創造へと収納する、休憩したから気力も体力も漲っている。エレさんが外を確認してるのを見ながらゴーレムナイトを再配置した。

 

「大丈夫、誰も居ない」

 

「よし、142回目のビッグボア狩りを始めよう」

 

 扉を閉めると今度は僕等の直ぐ脇に魔素が集まる。

 

「みんな下がれ!」

 

 六体のゴーレムナイトで取り囲む、二体は防御として自分の前に並ばせる。魔素から実体化した瞬間に六本のツヴァイヘンダーを同時に突き刺す!

 何も出来ずに魔素に還るビッグボア……

 

「今回はドロップアイテムは無しか、次に行こう」

 

 ボス狩りは順調だ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「これで160回目だ、今回は獣皮とルビーだな」

 

 合計40回、成果は獣皮十枚に肝が十二個、それにルビーが四個だ。

 買取価格は肝が金貨六十枚、獣皮が金貨十五枚銀貨、合計で金貨七十五枚だな。

 

「一日で金貨七十五枚だよ!効率的だけど経験値は少なくなってるね」

 

 今日は誰もレベルアップしなかった、一番低いエレさんもレベル18のままだ。

 ビッグボア四十匹も四人で割れば一人頭十匹か、そろそろエレさんは上がるかな?

 

「まだ時間が有るから四階層に下りてみよう、様子見だ」

 

「分かった、漸く私の仕事が増える」

 

 盗賊職のエレさんは罠の解除が出来ると張り切っているが、ポーラさん情報だと低レベルでも成功率90%らしいし大丈夫だろう。

 ゴーレムナイトを魔素に還しゴーレムポーンを六体召喚する、維持魔力コストの節約の為だ。

 前後に三体ずつ配置して下り階段を探す、ボス部屋からは遠いし初めて通る場所だ。

 周囲にフヨフヨと浮いている魔法の灯りを頼りに廊下を進む。特にモンスターや他の冒険者に遭遇せずに下り階段まで到着した。

 

「ヒンヤリした風が吹き上がってくるね、少し黴臭い様な……」

 

 四階層はコボルドの他にアンデットモンスターのゾンビがポップする、だがアンデット最下級だけあり物理攻撃でも条件付きで倒せる。

 頭を潰すか首を刎ねるか、胴体にダメージを蓄積させるかだ。

 

「ゴーレムポーンの武装を替える、四階層はゾンビがポップするが頭を潰すのが手っ取り早い。

攻撃役は両手持ちアックスを装備させる、それと噛み付き引っ掻きは毒を受けるかもしれない。特に回復役のイルメラは注意してくれ」

 

 毒消しポーションも用意してるが即効性が違うからなるべくならキュアポイズンの方が良い。

 ゴーレムポーン四体を先行させて階段を下りる、三階層と違い日干しレンガ風な壁だ……

 

「真っ直ぐな廊下だね、左右に扉が有るけど入るとモンスターが居る場合が有るみたい」

 

 冒険者ギルドで買ったマップを見ると幾つもの小部屋が連っていて、中には鍵が掛かっていたりモンスターが居たりと三階層迄とは様子が大分違うな……

 

「様子見だ、手前の扉から開けて行こう。ゴーレムポーンに開けさせて直ぐに魔法の灯りを入れるよ」

 

 安全なのはゴーレムポーンに開けさせて突撃させる事で不意討ちを防ぐ。

 初めてだからボス部屋みたいに扉を開閉すればモンスターがポップするのか最初から具現化してるのか分からない。

 

「ゴーレムポーンよ、扉を開けて中に入れ!」

 

 一番手前の扉を開けさせて中に突入させる、扉が開いた瞬間に魔法の灯りを二個放り込むが……

 

「何も無しか、次に行こうか」

 

 二番目の扉を開けて……鍵が掛かってるな、ゴーレムがガチャガチャとノブを回しているが開かない。

 

「退いて、解錠する」

 

 エレさんが針金と細長い金属棒を操り十秒と経たずに解錠してしまった、流石は盗賊職だ!

 

「早いね、流石はエレさんだ」

 

 頭を撫でたくなったのは僕だけの秘密だ、どうもエレさんは妹か娘みたいな感情が芽生えてるんだよな。

 ゴーレムポーンを突入させると部屋の中央に魔素の輝きが見える、やはり扉の開閉に反応する出現パターンか。

 

「ゴーレムポーンよ、実体化する瞬間を狙って攻撃だ!」

 

 注意して魔素を見ればコボルド四体みたいだ、六体のゴーレムポーンで囲っているから取り零しはないと思うが魔法障壁の準備をする。

 

「今だ、殺れ!」

 

 掛け声と共に一斉に武器を振り下ろすと断末魔の叫びを上げながらコボルドが魔素に還っていく。

 実体化同時攻撃は反撃を恐れないゴーレムに許された反則気味の戦法だが効果的でもある。

 実際にモンスターも実体化と同時に攻撃してくる場合も有り不用意に近付く事は危険とされているんだ。

 

「リーンハルト君、宝箱が出現したよ」

 

 木製で金属で補強された宝箱がコボルドを倒した場所に出現した、縦横が30㎝位の小さな宝箱だ。

 

「本当だ、だけど小さいな……」

 

 嫌な予感がする、僕は迷宮に現れる宝箱とは相性が悪いんだ。

 息を呑んで罠を調べ解錠するエレさんを見守る、蓋を開けて中を覗き込み中のお宝を取り出す、その手には?

 

「普通のダガー……」

 

「畜生、やっぱりか!」

 

 どうやら僕はランダム宝箱との相性は最悪らしい、大抵はダガーを引き当てるんだよ!


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