世界最悪の女   作:野菊

3 / 42
※※※※警告※※※※
主人公が20名ほどのモブキャラクターと、ネームドキャラを殺害するシーンがあります。
細かい殺害描写が有るわけではありませんが、苦手な方はご注意ください。
自己責任での閲覧をお願いします。
※※※※※※※※※※


世界最悪の女、ダイの大冒険の世界に行く 3

アジトの洞窟に残ったのは、下っ端3人。それでも全員私よりは強い。3人とも私のほうを気にはするものの、釘を刺された以上ボスより先に手を出すわけには行かず。

「なにしているんですか? 」

3人のなかで一番立場が上であろう男に、話しかけた。

「あ、ああ。ボスたちが帰ったら、宴会になるから、その準備を」

「えー、手伝う手伝う」

好都合だ。

私は指示された通り、皿を運んだ。途中、目的のものが目に入る。

「これ全部お酒? ちょっと味見してみたい」

酒樽の山。何気なく透明の水をコップに汲み、一口飲む。多分、ウイスキーだろう。私が知っているものと比べると、匂いがきつい。しかし、アルコール度数は余り高くない。これならば、かなり杯を重ねることになるだろう。

次に香草。調味料の代わりに、かなりの頻度で利用されているという事を、定食屋のカウンターから厨房の様子を眺めて知った。

「ねえ、足りないから摘んでこようか? 」

「ああ、頼む。あの大きな岩のあたりに群生しているから」

「了解でーす」

それはタイムによく似ている。形も、匂いも、使用方法も。適当に摘み取り、ポケットに入れていた、ここ数日夜間宿屋で準備していたものを、混ぜる。

スライムで実験した時は、上手く行った。例えば、毒の息は仲間にしたモンスターにも通じる。ということは、スライムに効けば人間にも効くと考えて間違えないだろう。

もし、失敗したら――考えても無駄だ。今まで、何度もやって、成功してきたのだ。だからこそ、世界最悪の女。

たかだか20人程度の盗賊ぐらい、なんでもない。

 

私は、私の世界で、数多くの人間を殺したのだから。

 

肉を食らい、酒を煽った盗賊たちが、昏倒している。

キャットバットが威嚇する声。こちらに飛び掛ってくることに気付き、慌ててマタタビを振りまいた。

森の中でマタタビの木を見つけたのは、幸運だった。

キャットバットは、もはや主人の異変に目もくれず、マタタビに夢中。

「くそっ……小娘がぁ――!!」

流石はカンダタ。意識が有り、この元凶が私であるということにも見抜いている。しかし、もう既に手遅れだ。

立ち上がることも出来ず、ただ喚くのが関の山。

部下たちは倒れ、眠り、あるものは自分の嘔吐物に窒息して絶命していた。

私はしかし、油断しない。

床に転がっていた、誰かの銅の剣を拾い上げた。やはり重い。振り回すのは難しいだろう。だけど、突き刺すことは簡単だ。

「っ、やめろ、やめてくれ……!!」

何でもする、好きな宝をやろう――命乞いを無視し、鈍く光る切っ先を、露出した胸元、心臓の真上に突き立てて。

 

「ぐわああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

醜い断末魔が、洞窟に轟く。三度ほど突き刺し、カンダタの絶命を確認した。

それからは単純作業。

まず、生死を確認する。遅くとも3時間ほどで死に至るが、万が一ということもある。人間の生命力は計り知れないのだ。

念のためキャットバットに再度マタタビを当て、喉をなでた後、薬の効きづらそうな者から止めを刺す。

それから片づけだ。

体液で汚れた土ごと、スコップで掘り、荷台に積み上げる。意外とスムーズに事を運ぶことが出来た。多分、レベルが上がったのだろう。なんと言ってもカンダタを倒したのだ。

そこまで終えると、急に疲れを感じた。

洞窟の奥、カンダタの私室の寝台に横になり、泥のように眠る。足元にもぐりこんだキャットバットの体温が、心地良い。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。