IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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6 ファーストミッション

ミッションを連絡します。

ミッションターゲットはインド、IS武器生産工場にいる者達の『殲滅』です。

インドの片田舎は未だカースト制度の影響もあり、同じ階級の女性が社会的に優遇されている事を良しと思っていない男性が多く、その不満から起きた物だと推測されます。

ですが彼らには、その身で今の社会がどういうものか。理解して貰わねばなりません。

これは、報酬を用意してありますが、貴方の試験でもあります。

貴方が、何をすることが出来るか。という試験です。

貴方の働きを我々国際IS委員会は期待しております。

では、よろしくお願いします。

 

「なるほど、使えるかどうか働きで見せろ。という訳か」

場所や予想される敵戦力など、ミッション内容を詳しく書かれた書類を投げ捨てエースはホットコーヒーを飲み、どう戦うか脳内でシミュレーションする。

だが、内容が内容なだけに考えるだけでも下らんと思い止めた。

「そうだな・・・だがこの内容は・・・」

「俺は構わんさ。シュタイベルト大将が気にすることはない。むしろ感謝している」

エースからしてみれば無茶な要求を目の前の男はしっかりと叶えてくれたのだ。感謝の言葉だけでは足りないとすら考えている。

「・・・そう言われると情けないが助かるよ」

「では、インドの時間で午前1時ちょうどに襲撃する」

「明日?今はもう昼だぞ?」

「ISで飛んでさっさとやって来いということだろ。見ろチケットすらない。俺のISの機動力も知りたいのだろう」

エースの指差す国際IS委員会から来たものは携帯とミッションに関する書類だけ。それ以外は一切何もない。

だが、ISなら今から飛んでいけば間に合うと向こうは考えているのだろう。

「・・・・・・」

「俺を案じてくれてるのは嬉しいが、向こうからしたらわざわざ警察でも使えば良い所を俺のために仕事をくれたんだ。機嫌を損ねる前に終わらせるさ」

エースの今回の報酬は一万ユーロ(約140万円)。敵は武装した歩兵が8名ほど。ISを使うまでもない。寧ろオーバーキルである。それでも、貴重な男性でISを使えるエースを傭兵にするチャンスを与えたのは、世界がどんな仕事でも金で動く駒を欲していたのだろう。

(ISの専用機持ちと言うのはモデルみたいな事をしている。だから汚い事はあまりさせたくないのだろうな。軍に所属していても、アラスカ条約があるとはいえ他国に自国の技術を見られたくない。陰湿と言うべきかな?この世界は)

陰湿。そうエースが評価したのはこれは結局の所、エースの世界の企業のように表立って殴り合うような事はしないが、裏では国同士が常に相手を警戒し合い、殴ったら殴り返すのだろう。これでは戦っている変わらないからだ。

(まぁ、ある意味殴ってないだけで平和とも考えられるなこれは)

「・・・ハルフォーフ大尉から聞いた。君のおかげで、シュヴァルツェ・ハーゼ内の仲が良くなったと。君が傭兵となり、何を成したいかは分からん。だが、ドイツは君をいつでも歓迎する」

「それはどうも。まぁその気はないぞ」

「ふっ・・・言ったな。私の孫と婚約してくれるなら許すぞ」

「勘弁してくれ大将。貴方の孫はもっといい男に嫁がせるべきだ」

出されたホットコーヒーを全部飲み切ってから、今回何かと世話になったロレフにエースは一礼してからロレフの個室を出た。

 

「夜中にインドへって、それ今日行くのですか!?」

クラリッサからの驚きの声。無理もない。ドイツからインドは直線距離でもだいたい7000kmくらいはあるからである。

エースがロレフの個室を出て真っ先に向かったのは黒ウサギ隊の訓練場。

今日は他の所から借りたISを使い、両機とも量産機のラファール・リヴァイヴ。だが片方は射撃武器であるアサルトライフル<ヴェント>を使い、銃本来の使い方である射撃を禁止して、その銃身で、もう片方のラファール・リヴァイヴが持つ近接ブレード<ブレッド・スライサー>の攻撃を防ぐという形で1vs1の模擬戦をしている。

これは、射撃武器が主力のラファール・リヴァイヴとはいえ、間合いによっては近接武器の方が有利になる状況がある。なので、いざという時に近接戦闘に持ち込まれても相手の攻撃を防げるようにするためという目的だ。

「あぁ、国際IS委員会からの仕事だ。ISを使って飛んで、君達が寝て起きたら終わってるさ」

「どんな内容ですか?」

「ISの武器生産工場を不法占拠した者の武装解除させろ。何、ISなら簡単だ」

ここで殺しはしないような発言をしたのはクラリッサにIS委員会に余計な疑問を持たないようにするエースなりの心遣いだ。

殺しをした事など、遅かれ早かれ耳には届くのは予想できる。だが余計な疑問のせいで黒ウサギ隊全員に何かしら被害を受けるのはエースは好ましく思ってないからだ。

「安心しろ。ここには一週間ほどだが世話になった。いつか必ず何かしらの形で返す」

「いえ、むしろ私達がお世話になったくらいです。エーアストさんのおかげで、隊長の棘が少しだけ取れたように見えます」

クラリッサの向ける視線の先には、部隊の仲間を指導するラウラの姿。口調は厳しいままだが、周りの隊員は以前のようにそれを怯えるのではなく尊敬する上司や共に高め合う友人の言葉のように受け止めている。

「気のせいだ。仲良くしようとボーデヴィッヒ少佐に歩み寄ったのは君達の方だ。俺は特に何もしていない」

「そんな事ありませんよ。エーアストさんが隊長の棘を取ってくれた。これは確かです」

棘を取る。その言葉にそんな事をしたのかとエースは考えては見えるがさっぱりだ。

「・・・まぁそういう事で良いか。この後、自室に戻る」

「早いですね。えぇ分かりました」

先ほど模擬戦をしていた二人に労いの言葉と、改善点を一通り話した後、エースは自身の個室へ向かった。

 

夜、23時 ドイツ陸上基地 

 

黒ウサギ隊達のミッションについての質問責めを振り切りエースは外へ出た。もちろんミッションを遂行するためだ。

(ディターミネイション。システム通常モード起動)

エースの意思に呼応し、首輪から青緑色の粒子が溢れだし全身を包む。

アセンブル――

HEAD

HD-HOGIRE

CORE

CR-LANCEL

ARMS

A11-LATONA

LEGS

WHITE-GLINT/LEGS

出現した装甲とAMSでリンク。あとはシステムを戦闘モードにし、武器を呼び出したらいつでも戦える状況になった。

(さて、行くか)

ブーストを起動。上空へ高く上がる。

通常モードにより、FCSや銃火器に使うエネルギーがブースター等に取られ使用不能になるが、KPを増やすことにもエネルギーを回せ、PAを薄いながらも展開しながら移動する事が出来る。

さらにPAが空気抵抗を低減させる効果もあり、速度を上げることも可能だ。

(VOB。いつでも使用可能になっているが、これは奥の手だ。あと多少は押さえていこう)

上空7000mほどの場所でOBを起動。

CR-LANCELの後方の装甲板を開き、無害化コジマ粒子を収縮し。エネルギーを生産。

そしてそのエネルギーが装甲板奥にある大型ブースターに火を灯し。

音速をも優に超える爆発的なスピードを生む。

PAの空気抵抗による作用もあり、機体は時速0kmから一瞬で5000kmへ、体に掛かる並の人間では、一瞬で死に追いやられるほどのGを、強化された体とISの操縦者保護機能で無理矢理受け止める。

(ISの操縦者保護機能のシールドエネルギーや被膜装甲、絶対防御はないが、ブラックアウトだけでもまぁ助かるな)

そんなことを思いつつも、ふと下を見ると夜がビルの光で照らされ昼の様に明るいその光景を見て、ふとエースは自身いた世界を思い出す。

(どこの世界も発展した場所の夜は変わらんか・・・)

エースは呑気にそんな事を思っているが、彼の下にある国達の議員や軍人達は大混乱中だった。

理由は勿論エースだ。何かが時速5000km。つまり戦闘機の出す最高速度以上の速度を常に維持しながら飛行しているのだ。

しかもそれがIS。機動力に特化した軍用ISですら到達しない速度を上空に飛んでいるそれは平気で出している。

どこの国の物だ、あれは何をしようとしている。迎撃の準備をしなければ。

数十分過ぎれば無くなるとはいえ、そんな恐怖をエースがばら撒いている他ならない。

(そういえば弾切れを起こしたら30分は使えなくなる。パージでもしない限りはないとは思うが気を付けなければ)

エースも一応本を読み、自分の機体が他のIS達に比べどれだけ異常な性能を誇るのかは理解しているが、これはアピールだと考えているのであえて速度を維持している。

これから自分を雇おうと考えている偽りのご主人様へのアピールという意味を込めて。

 

エースはインドの目的地へ向けて飛んでいく。地上にいる何も知らない人達には青緑色の流れ星を見せながら。




Q:早すぎぃ!!
A:ぶっちゃけVOBいらずでこれは早すぎかなと思ってますが、VOBを付けた状態のメリットはPAを減衰することなく、早く作戦領域にたどり着け、すぐに戦闘開始する事が出来るから必要なのではと考え、通常モードでは空気抵抗を減らすための薄いPAがある事と、エネルギーをブースターに回し、移動速度が上昇する代わりに攻撃は一切できないという縛りをつけました。最初からPA無しの状態でかーちゃんと戦え言われたらガチタンでない限りは回復する前にミサイルでAPが半分以上削り取られた状態になりそうですね

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