IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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10000文字以上ありますので疲れ目にご注意してください

(追記)01/22未使用音声を参考に エースはディターミネイションを解除。から(ディターミネイションAMS終了処理を開始)に変更しました。



3 基地にて

「ふんふんふ~ん♪」

機械の備品やそれを作るための道具が子供が遊んだ玩具の用にぐちゃぐちゃ捨てられ、ケーブルが蜘蛛の巣の様に床や壁に広がる部屋の中。

三次元立体映像に流れるその映像をとても楽しそうに眺める女性。

空色のワンピースに白色のエプロン。頭には髪を抑えるカチューシャを身に着け、背中の大きなリボンがとても愛くるしい。

童話、不思議の国のアリスの主人公アリスを思わせる服装だが、彼女は金髪の少女ではない。

長い髪はスミレの花を思わせる薄い紫、そして、体は流れるようにしなやかな四肢と女性を象徴する豊満な胸を持つ女性。

ISの開発者にして天才科学者である篠ノ之束だ。

「うんうん。いいねいいね。絶対防御強制発動と触れたISのエネルギーを吸収する束さん特性パンチは良かったな~もっとデータ欲しかったし、黒ウサギちゃんが雑魚すぎて途中で無くしたけどね~一応遠隔操作出来るようにしておいてよかった~」

束は映像を少し巻き戻す。

そこには、ドイツ軍最強部隊である黒ウサギ隊の隊長のラウラと副隊長のクラリッサの姿があった。

そして両名をたった一発でエネルギーシールドを四分の一も削った束が作り上げし無人機。名はゴーレム0。

「IIK<いっくん 育成 計画>のための機体だけど、まだこのパンチは強いだろうな~これは無くして、次のゴーレムちゃんは射撃メインにしよう。そうしよう」

にこにこと、映像を楽しげに眺める束。理由はこの後に、天才と呼ばれる束にも予想できなかったイレギュラーが発生したからだ。

「・・・何なんだろうね~彼。彼の持つ銃。彼のIS」

暇だった。ただただ暇だった。そんな日常に突然飛び込んだ異常。

その異常を目にした瞬間、束はしばらくの間忘れていた興奮が目覚めた。

ISにはISでしか相手をすることが出来ない。

だが、映像に映る男はそのISのしかも天才と呼ばれる自分の作ったISのフルパワーの速度で出した拳をISの恩恵を一切受けることない生身の体で躱し、ISでしかまともに傷付けることの出来ない装甲を貫通する武器を持ち、さらには見たことのないISを持つと来た。

「コア取られちゃったのは残念だけど~」

そんなイレギュラーだらけの人間を武器をISを、知的好奇心の塊である束を動かすのはとても簡単だった。

「会いたいな~!15か16くらいかな?若いけど顔もなかなかのイケメンさんだし~年上好みの人だといいな~」

映像を切り、束は彼に会うための準備に取り掛かる。

煌びやかな宝石をはめ込んだ指輪を指に通し、華やかなイブニングドレスを着こみ。夜の舞踏会へ誘うための準備。

それが指輪ではなくレンチだったり、ドリルドライバだったり、イブニングドレスではなく青いツナギで、場所は戦場に誘うことになるであろうというだけだ。

「うん!雰囲気完璧!まずはⅠから作るぞーおー!」

天才科学者の狂気の行進が始まった。

 

「・・・・・・」

彼は今、人員輸送車に無駄だからという理由で拘束されることなく、ただ目を閉じ、同じく目を閉じてる銀髪の少女と、監視しているように見張っている青髪の女の三人で、一切の会話なく重苦しい沈黙の空間と僅かに揺れる車両の中、先ほどのAMSから送り込まれた情報を整理していた。

まずあれは、間違いなくアーマード・コアであること。そしてそれと同時にインフィニット・ストラトスと呼ばれる兵器でもあり、そのISの技術と一部融合したかのような状態であること。

インフィニット・ストラトス。篠ノ之束という日本人の科学者が生み出した女性にしか使えないが既存兵器を全てを超える性能を持つパワードスーツ。この世界における個人に圧倒的な力を与える最強の兵器として君臨する、まるで彼の世界の個人が持つにはあまりにも強すぎる力をもたらす兵器、アーマード・コア・ネクストのような存在の技術。

例としてはPICという慣性制御システムがあるが、絶対防御というもの操縦者を守る機能が存在しないこと。

システムにISバトル用戦闘モードがあるが、ワンオフ・アビリティー<唯一仕様の特殊能力>が存在しないこと。

いつでも好きな時に武装や装甲を変えることが出来るアセンブル機能があるが、それ以上の装備は追加することが出来ないこと。

ハイパーセンサーやコア・ネットワークがあるが、形態移行<フォーム・シフト>が存在しないこと。

多数の単語の中でも彼が一番気になった単語それは、無害化コジマ粒子。

それはコジマ粒子として使い方は今までと一切変わらないが、毒性となるもの全てが無害化されている状態のコジマ粒子。

ついでにPAの対レーザー兵器対する弱さがある程度強化されているという万能すぎるものに強化されていた。

これには、ひどく彼はショックを受けた。

(これがあれば少なくとも・・・いや、もう過ぎ事か・・・だが・・・)

「すみません」

あんまりにも沈黙が続いていたこの空気に耐えかねてか青髪の女が彼に話しかける。

突然話しかけられたのもあり、さっきから監視してきてる相手に彼は自然と警戒と何かしようものならすぐに戦闘を開始するという意味を込めた視線を向けてしまい、青髪の女が僅かに体が震える。

「・・・何だ?」

「そういえばまだ自己紹介を済ましていないと思いまして」

あぁ、答えと彼は思い出す。

無人機を撃破し、銀髪の少女から質問攻めにされた。

これはなんだ、あれはなんだ、それはなんだ。なぜ助けた。

質問の量が多く、長くなりそうなのと、まだまだ彼自身混乱していたので、彼は約束を決めた。

「落ち着いて話が出来る場をそちらが提供したなら、俺はそこで答えれる限り、質問に答えよう。だが、俺が持つ武装や道具は一切渡さん。もし、これを守れないのであれば今すぐ俺はこの場から逃走する」

彼の言葉に、銀髪の少女は舌打ちをするも一旦質問を止め、迎えに来たドイツ軍と回収した無人機のコアと共に、近場にあるというドイツ軍の陸上軍事基地に送られている最中だ。

それまでの約一時間もの間、一切会話することがなかったので自己紹介をお互いしておらず、彼も特に気にしていなかったので、自己紹介をしていなかった。

「私はドイツ軍IS部隊シュヴァルツェ・ハーゼ所属クラリッサ・ハルフォーフ大尉です。あなたは?」

「俺は・・・」

ここで、彼は言葉を詰まらせる。

彼は生まれてからこの方名前というものを持っていない。

生まれは最底辺のスラム街、両親はいつの間にか消え、育て親は盗賊団。盗賊団の下っ端として金品盗んだり、己を鍛えながら必死に生き抜いた。

ノーマルを手に入れ、レイヴンとして仕事をしてた時も、セレンと出会い、ネクストを手に入れた時も、名前を必要としなかった。

ホワイト・グリントもUnknownでずっと活動していた例があるように。彼の名前もUnknown機体名さえあればそれで何とかなっていた。

様々な事情や特に必要にしていなかった事が名前を彼は持っていない。

(仕方ない考えるか。まさか、こんなところで必要になるとは)

「どうしました?」

クラリッサが友好的な笑顔を浮かべながら彼の返答を待つ。

銀髪の少女も一応は気になるのか彼を睨むように見る。

(昔の実力者の名前を借りるか)

彼が生まれるより昔。レイヴンがノーマルと呼ばれる前のアーマード・コアを駆る傭兵として力を振るっていた時代の実力者。その者たちの名前を借り、組み立て決める。

「・・・エーアスト・アレス。エースと呼んでくれ」

「エースさんですね。隊長」

クラリッサに促され、仕方なさそうに銀髪の少女が名乗る。

「ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ」

ハッキリとした声で名を名乗り、再び興味を無くしたように目を閉じるラウラ。

今この場で話をする気は一切ないと強調しているかのようにエースは感じた。

(まぁ、そうするようにしたのは俺だがな)

「それで、俺に何か用だったか?」

「えぇ、この後の事を考えて、せめて名前と年齢ぐらいは聞いておこうと思いまして」

「歳は・・・25だ」

(正確に言えば24から27のどれかだけどな)

年齢が分からないのはこれまでの人生のせいで年齢をまともに数えていないからで、25と言ったのは今まで出会ってきた人物がそれくらいだと言ったからだ。

「え!?」

正確ではないが、クラリッサから妙に驚いた声を出したのを聞き、エースは疑問を持つ。

「・・・どうした?」

「いえ、見た感じ14から16と思いまして」

(どういうことだ?)

今まで20に見えると言われたことがあったが、14から16。どう考えても少年にしか見えないという嘘偽りのないクラリッサの答えに、この世界に来てから何度目かの驚きを受ける。

「・・・すまない。鏡あるか?」

「え?はい」

クラリッサの軍服のポケットから小さな青色のタヌキのようなキャラクターが描かれてるポーチから取り出した手鏡を受け取り、エースは自分の顔を見る。

鏡に映されたエースの顔は、髪型は短髪で白色にほんの僅かの黄色を混ぜたかのようなプラチナブロンド。見覚えのある髪をしていたが、顔は少年とも青年言える、中途半端な物に若返っていた。

「・・・・・・」

10歳くらいは若返った自分の姿を見てエースは言葉を失う。

生きている、木を見た、機体、顔。

あまりの衝撃の連続攻撃にすでに頭がオーバーヒートしかけていたが、理性というラジエーターで緊急冷却する。

「・・・着いたな。付いてこい」

ラウラのその言葉と同時にトラックのドアが開く。どうやら基地に着いたようだ。

「ありがとう」

クラリッサに手鏡を返し、エースは立ち上がる。

自身の今後のための戦いはこれからなのである。

 

司令室。その場にいる少数の男性と過半数の女性全ての人間の視線を浴びる中、エースは目の前に座る50代ぐらいの所々にある白髪が目立つ男と対峙する。

「初めまして。シュヴァルツェ・ハーゼから話は聞いている。ドイツ陸軍ロレフ・シュタイベルト大将だ」

「初めまして大将殿。まさか、いきなり将軍、大将なんて階級を持つ人間と出会うなんて思いもしなかった」

「今回のことがことなだけにな。相応の立場の持つ人間が対応せねば失礼だというもの」

「そうですか、それはありがたい。こんな年端も行かぬ私に・・・おっと失礼。自己紹介が遅れました私の名前はエーアスト・アレスと言います」

「礼儀正しい、好感の持てる少年だ」

誰もが聞いても社交辞令にしか見えない会話を終える。

(質問されるであろう内容は考えた。どう出る?)

エースの持つ絶対的なジョーカーと呼べるカード。ACディターミネイション。もう知らているからこそ、自分は下手に出ることはない。何かあったら潰すまでとエースは考えている。

「君は何者だね。報告を受け、さっそく君を調べたが軍のデータベースでは君の名前と顔が一致する人間がいなかった。そして、ISを使えるとも聞いている。教えてもらえるかね?」

「えぇ、答えましょう。シュヴァルツェ・ハーゼのラウラ少佐にも約束をしましたしね・・・私はある研究所から逃げ出した身です。情報がないのは当然・・・ISを男性にも使えるように研究していた組織は・・・残念ながら分かりません、激情に駆られ、徹底的に消してしまいました・・・」

「そのデータが他の組織に回った可能性は?」

「ありません。メインコンピューター。サブコンピュータ。あるとあらゆる設備、その場にいた研究者を文字通り消しました。塵も残さず。データ残す暇もなく速く・・・あの研究所での出来事を忘れたかったので・・・今、思えばやめるべきだったのかもしれませんが」

「・・・・・・」

周りの人間がエースの言葉に、警戒を向けていた視線から憐れみを含んだ物に代わっていた。

(嘘だらけだが。どうやら大将にはなにか心当たりがありそうだな)

エースはロレフの僅かに引き付く頬を、髪の揉み上げあたりから流れる冷や汗を見逃さなかった。

「機体については、よく分かっていないのであまり答えることが出来ません。ただ、待機状態のISはこの首輪だというです」

とんとんとエースは黒い首輪を叩く。金属特有の冷たさがなく触れると温かいという首にあるAMS接続用あるシリコン樹脂コネクタにガッチリと接続されているので外せないのが難点だ。

「あぁ・・・そうか」

「ではロレフ大将、次の質問をどうぞ」

「君の持っている銃の事だが・・・」

そこから一時間ほどの門答が続いた。

聞かれて素直に答えるべきところは答え、武器については色々とうやむやにしながら話した。

この武器は今のこの世界には危険だ。それこそ戦争が起こりかねない物なので決して明け渡してはならないとエースは考えてるからである。

銃に関してもっと聞きたそうなロレフだったが、うやむやに答えるエースにそうかと一言言うだけで済ました。軍人としては国益となるであろう技術は欲しいだろう。

だが、それ以上にエースの機嫌を損ねたくないのである。もし、機嫌を損ねたら目の前の少年が何をするか分からないまさに爆弾と言える存在。

そんな爆弾を無駄に刺激する人物は普通いないだろう。

「ないのならいい加減お互いの要求を提示しましょう。ロレフ大将」

(ここからが本番だな)

エースの言葉に指令室に緊張が走り、ロレフの顔が強張る。爆弾が何を要求するかを警戒しているのだ。

「まず、そちらの要求を聞きましょう」

この場で初めての質問を行うエース。ロレフは隙のない真剣な顔で答える。

「・・・そのISの装甲を貫通したという銃の提供。そして、君が世界で二人目の男性IS操縦者としてドイツに所属してもらう事。無論ただではない。要求を呑んでもらったら衣食住を確保しよう」

「断る」

エースの拒絶の言葉と同時にピーという甲高い警告音が基地中に鳴り響く。

そしてそれと同時に指令室の壁を壊し、開いた穴から八機のネイビーカラーをしたパワードスーツ。ISが指令室に現れ、その場にいたISを装備してない人々は次々と慌てず騒がず逃げ出す。

「まったく血の気は多いが行動が早い軍隊だ」

「すまないが君は、手放すにはあまりにも損だ。嫌でも我々に協力してもらわねば」

「当然だな。俺もアンタならそう思う」

「理解が早くて助かる。それでは、従ってもらうぞ。わざわざ他国から緊急要請してまで揃えた戦力。無駄骨では困る」

「ところで、アンタは逃げないのか?」

「悪いな、私の周りにはISのシールドエネルギーを利用した防御装置がある。まぁこれぐらいは警戒するさ」

「当然だな、じゃ、今度は俺が要求を提示する番だ」

エースの言葉にISに乗る八人はくすくすと笑い始める。

「ISを使える二人目の男と聞いたけど、どうやら馬鹿みたいね」

「1対8で勝てる見込みでもあるの?」

「大人しく降服してくれない?」

「でも、せっかくだし見せてもらおうよこの子のIS。弱そうだけどね~」

八人が思い思いにエースの無謀さを非難する。

「聞くとでも?」

だが、笑う八人の存在を無視し、この場には、この男しか存在していないと言わんばかりにエースはロレフを見つめる、八人を呼んだロレフもエースの目を見て相手の器を見極めるように睨む。

「聞いてもらうさ、嫌でもな」

宣戦布告。この言葉はそれを意味し、理解した者たちが二丁のアサルトライフルらしき銃をいつでも発砲できるように構える。

「では、お見せしよう俺のISを。」

エースは意識を首輪に集中。

(ディターミネイション。メインシステム戦闘モード起動)

アセンブル――

HEAD

HD-HOGIRE

CORE

GAN02-NSS-C

ARMS

AM-LAHIRE

LEGS

LG-LANCEL

首輪から青緑色の粒子が出現し全身を包む。そして、そこからエースの想像した通りの鋼鉄の鎧が出現。装着する。

男性がISを本当に起動した。その事実に驚きを受けた八機だが、明らかに戦闘態勢に入った人間を待つ必要はないので、八機のISがエースを包囲するように動きながらマシンガンで攻撃を開始。

8×2合計16もある銃口から徹甲弾を発砲。八方向から迫りくる弾丸の嵐。だが。

「な・・・!」

「なんだあれは!?」

エースの身を守るために展開されたPAがその弾を無効化または減衰させる。

PAが無くなり僅かに通った弾丸も、PAの奥に待ち受ける装甲により、弾かれる。

(・・・なるほど、技術力に劣ると考えていたがISに関しては慢心してはならんな)

「行くぞ」

エースは想像する。武器を。相手を殺す、兵器が兵器として存在するために必要な暴力を。

アセンブル――

R―ARM WEAPON

NONE(装備なし)

L―ARM WEAPON

07-MOONLIGHT(レーザーブレード)

R―BACK WEAPON

MP-O200I(散布ミサイル)

L―BACK WEAPON

MP-O200I(散布ミサイル)

想像した武器が左腕に、背中に現れる。

エースは前へQB。銃弾を殆ど弾かれたことにより呆けていた一人の頭を右手で掴みスピードを乗せたまま、頭を壁へ叩き付ける。

「ぐぁ・・・」

女から漏れる呻き声。絶対防御発動により本来は女の首の骨が折れ死んでもおかしくない衝撃を防ぐ。だが、死ぬのは防ぐが痛みはもちろん存在する。

(ISに対するこいつの威力と絶対防御の力を確認させてもらおう)

壁に頭を押し付けたまま、エースは左腕のMOONLIGHTを起動。紫色の光の刃を形成、刃を壁と女の胴体を薙ぎ払うように振る。

「くぅ!!」

高出力のレーザーで出来た刃の直撃を受けISの絶対防御が発動。シールドエネルギーを大幅に削る。

(なるほど、やはり一撃は無理か。そして絶対防御。その名の通り素晴らしい防御力だ。無かったのが惜しいな)

「離せ!このっ・・・!」

手に持つマシンガンを撃ち、スラスターを、PICを、使えるもの全てを使い拘束を解こうと必死に女はもがくが、PAにより銃弾は無効化、スラスターやPICによる推進力もエースの手とブースターで相殺する。

「ガルムに変えろ!助けるんだ!」

一機の掛け声に他七機は全員両手に持つ武器をアサルトカノン<ガルム>に持ち替え攻撃を始める。

(ガルムというのか。なるほど、さっきのマシンガンよりははるかに強力だな・・・一応使用回数の制限について確かめておくか)

アセンブル――

SHOULDER WEAPON

ADDICT《PAチャージャー》

ディターミネイションの肩にアクアビット特有の球体が出現し、エースは早速起動させた。

ガルムによりPAが減衰されるが、ADDICTによりすぐにPAを回復。

「何故攻撃が効かない!あの肩の変な球体のせいか!?」

攻撃しても攻撃しても青緑色の膜が弾を遮り続ける光景に七機は焦る。

(使用回数あと二回か・・・さて、)

エースは女の胴体のみを狙うようにMOONLIGHTの出力をISバトル用の物に押さえてから刃で突く。

「ああああぁぁ!!」

絶対防御によるものか体を貫通するように刃が通っているが、胴体が無傷な事にエースはISの防御力にさらに感心した。

貫かれてる女はシールドエネルギーが削られ、具現維持限界<リミット・ダウン>ギリギリの所に突入。

死ぬ。ISという最強の兵器による安心感によって、今まで感じたことのない恐怖が女の全身を駆け巡りマシンガンでディターミネイションをひたすら殴るが、目の前にいる悪魔はその手を刃を退かさない。

貫かれた痛みに悲痛な叫びを出してる女の余所に、何も言葉を発しない態度。顔が表情が見えない黒いACの姿にISという最強の攻撃力、最硬の防御力を持っているはずの七人が恐怖し後ずさる。

エースは刃を引き、頭を押さえつけていた右手を離してから右肩の散布ミサイルを起動。

「ひっ!」

座り込み、すでに戦意喪失の怯えてるただのか弱き女に成り果てた者に向けてエースは同じくISバトル用の火力を抑えた散布ミサイルをロックオン。

後ろへQBしたと同時に右肩のMP-O200Ⅰから発射された32発の小型ミサイルが恐怖による硬直で動かぬ女に全弾直撃し、成形炸薬弾が爆音をあげ、最後に黒煙が辺りを包む。

沈黙。それが指令室を支配する。

黒煙が徐々に晴れ、現れる黒煙よりも黒いACディターミネイション。

そして、その足元には死んだかのようにピクリとも動かず横たわる女の姿。

「死ん・・・だの?」

七機の内の一人がISの救命領域対応の存在を知っていても不安に駆られ仲間の生死を問う。

その問いにエースは生きていることを脳内のレーダーで生体反応を確認しながらも答える。

「さぁ?死んだかもな。だが」

エースがゆっくりと振り向き、まだ無傷の七機を見る。

「次は貴様らだ」

「「「ッ!!」」」

QB起動。七機へ向けて、音速を超えるスピードで悪魔(エース)が突っ込んだ。

 

右手武器LR02-ALTAIR(レーザーライフル)の銃口をエースは防御装置が壊され、無防備になったロレフの目の前に突きつける。

「さて、聞いて貰おうか。俺の要求を」

「・・・・・・」

結果のみを言えばエースの圧勝。

八人のネイビーカラーのISを装備した女達が指令室に横たわる。

左腕に装着されているMOONLIGHTで次々と倒される者達に、最後の一人は、歩いて迫るディターミネイションの姿に恐怖の限界を超え気絶した。

その光景を見ても、ロレフは相手を賛美するかのように拍手をしながら椅子から立ち上がる。

「素晴らしい戦闘能力だ。ますます君が欲しくなる」

「それはどうも、ところであの二人はどうした?さっきの八人よりもよっぽど性能の良さそうな機体を持ち、まったく連携取れてない連中よりは戦えたと思うぞ?」

「いや、ボーデヴィッヒ少佐とハルフォーフ大尉二人とも今後のドイツ軍に必要な存在だ。特にラウラ君。軍人としてはまだ未熟者だが、PTSDになってもらっては困るものでな」

「なるほど」

(ディターミネイションAMS終了処理を開始)

装甲が青緑色の粒子と化し、首輪に吸収されるように集まり、消える。

そして再びエースはロレフと向かい合う。

「・・・要求は?」

「各国の大手企業や政治の主要人に俺がISを使って傭兵を始めることを知らせてもらう事。そのために個人データと国籍を作成してもらおう。あぁ、国籍はもちろん全ての国に、だ」

「傭兵?戦いの場がほしいのなら我が軍に来ればいい。金が欲しいのなら、君のその、ISの装甲を貫通したという対物ライフルを渡せば富を得ることが出来るのに。何故?」

「・・・俺には目的がある。俺は俺の目的のために行動する。目的のために傭兵になる必要があるからだ」

エースの目的。それは人類の平穏。人類が死することなく未来永劫生き抜くことの出来る世界。

まだ、この世界の人類が壊死を道を辿っているか分からない。だが、IS。ネクストに似た個人に圧倒的な戦闘能力をもたらすそれを、エースは危険視している。

エース自身が危険性をよく理解しているのである。個人があまりにも大きな力を持った結果の世界を。それに対抗するために生まれた多くの凡人を支えに動く巨大な力を。

力が更なる力を生み、力は環境汚染を引き起こし、いずれ人類は人類の生み出した兵器に滅びる。それを避けるために世界を動かす力を持つ人間達の考えを理解するために、己という戦力を商品として売り、接近するためだ。

「目的は・・・聞かないでおこう。聞ける立場でもないしな」

「そうだな。一応言うが拒否するのであれば、無人機、あの二機、そしてこの場にいる八機のコアを手土産に、ここに戦力を送った国にお返しも兼ねて行くとしよう。この短時間だ隣国・・・フランスかな?」

「フフフさぁ、どうかな?あぁ、やはり君は素晴らしい。経緯はどうあれ、是非とも私の孫の婿に迎えたいくらいだ」

「遠慮する」

エースは呆れたように答える。

「そうか・・・残念だ。それにしても、そこにいる八人。あれがISでなかったら、君がプラズマソードの出力を押さえていなかった死んでいただろうな」

「いや、ISの絶対防御のおかげだ俺は殺す気でいた」

「見え透いた嘘を・・・プラズマの刃が細くなった辺りどう考えても抑えていただろうに・・・だがIS。何度見ても素晴らしい性能だ。・・・だが、扱う人間は近年軍に入ったようなばかりの若者、IS以外の何も役に立たんくせに、デカい顔をし、食事に文句を言い、雑務に文句を言い、待遇に文句を言う。ISという力が取柄なのに、いざ銃を持ち、目の前の人を殺せと言っても出来ぬ者たちばかり。ISはISだけが敵ではないのに・・・今回は連携を一切取ってないフランスとの混合部隊で室内で自由に動けない状況だったかもしれん。だが、たった君一人を八人がかりでまともにダメージを与えることが出来ず。特に最後の一人。あれは我が国の者ではないが、仮にも国を守る軍人だぞッ・・・!」

ロレフのだんだん感情が籠りつつある言葉をエースはただ静かに聞く。何しろ、軍の大将が愚痴を零してくれるのだ。国というものが存在しない時に生きてきたエースにとってはあまり共感しにくいものだが、聞く以外の選択肢はありえない。

「軍人とは、国を愛し守るもの!国民がやりたくない仕事をやらねばならないそれなのに!」

「大将は今の軍や世界の有り方に不満でも?」

「あぁあるさ!この世界にもな!女尊男卑。ISによって生まれたこの社会。表面上は平等と謳うが、君のように力あるものはいい。だが。ドイツ軍にいたISという兵器の恩恵がなき大半の男達は女達に軍で働く場を奪われ、軍でしか働くことの出来なかった社会不適合者は犯罪を起こして牢屋行き、だが、ISさえなければ起きなかった!そして、なにより許せんのが今の社会に馴染めず、本来は優秀な愛国心溢れる指揮官にも成れたはず部下達が!ただの労働力にしか思われていない!私も、大将なんて位にはいるもののまるで辞書のような扱いだ!これが平等とっ!!?・・・情けない、父に憧れ必死の努力で就いたこの位も、・・・今では惨めだ」

今までずっとあまり感情らしい感情を顔に出さずにいたロレフだが、こうやって愚痴を零す自分に、零すようにさせた世界が憎いのか顔が悔しそうに、眉間にしわを寄せる。

(なるほど、女尊男卑か・・・)

「・・・すまない。愚痴を零してしまった。情けない大人だろう?笑ってくれ・・・さて、命もISのコアも惜しい。君の要求を私の名前にかけ必ず国には通すことを約束しよう。だが、これは我が国だけの問題では済まない。通った所で国際IS委員会の決議によっては駄目になるかもしれない。世界に知られてる日本の少年と違い、君は世界に知られていない。最悪、研究所行きだがそれでも?」

「構わん。なったら迎撃するまでだ。どちらにしろ世話になるな」

「ここまでやっておいて何を今さら。委員会の決議が決まるまで、エーアスト君。君の身柄はシュヴァルツェ・ハーゼに預けさせてもらう・・・戦うなよ?」

「・・・ラウラ少佐次第かもな」

「頼むから戦わないでくれよ?」

ロレフはラウラがエースを挑発する姿を思い浮かべたのか確認をするかのような視線にエースは強く頷く。

「君は・・・本当に少年か?その目とても、15か16には見えんなまるで、不思議と30~40の知慮深い人間と対峙している気分だよ。では、エーアスト君。敵になった時が怖いが、久しぶりに妻にも言えぬ愚痴を言えた者だ。今後もよろしく頼む」

ロレフが差し出した手をエースは握る。

「あぁ、よろしく頼む。・・・貴重な意見をありがとう。ロレフ・シュタイベルト大将。だが、覚えておいてほしい。・・・俺はただの屑さ」

 

この後、呼び出され、指令室に入室したラウラやクラリッサ。二人の後を追うように指令室に入った人間がその光景を見て驚いたという。

所々壁にヒビが入り、壊された設備、八人のラファール・リヴァイヴを着たIS操縦者が横たわる指令室。その中で二人、椅子に座りコーヒーを飲み、しつこく孫の婚約を迫るロレフと断り続けるエースの姿があったという。




Q実力者の名前(エーアスト アレス エース)
Aエーアスト ACマスターオブアリーナ 特殊アリーナ二脚機体専用アリーナトップランカー 
 個人的にマスターアリーナのナポレオンさんよりも強く感じた
 アレス AC2 トップランカー
 彼ではなくKARASAWAーMK2が強いのは内緒
 エース AC3トップランカー
 チェインガンでガシガシ削ってくる強くもなければ弱くもないロイヤルミストさんが強すぎたんだ・・・BB?知らんな

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