IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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37 そして二人は喧嘩へと

アセンブル――

HEAD

047AN02

CORE

SOLDNER-G8C

ARMS

047AN03

LEGS

HILBERT-G7L

 

R―ARM WEAPON

047ANSR(スナイパライフル)

L―ARM WEAPON

047ANNR<ライフル>

R―BACK WEAPON

|POLAR01(追尾ミサイル)

L―BACK WEAPON

MP-O601JC(PMミサイル)

 

エースの意思ですぐに、各部パーツを変更できるネクストにはない特性を持つACNISではあるが、この機体の構成は明確に近距離を捨て中、遠距離戦闘を追求した構成。

のしのしと数歩、その分厚い装甲で覆われた足で歩いて感触を確かめた後、メインブースターを起動してカタパルトからのっそりと飛び出る。

 

『待たせたな』

「おう」

『じゃ、やろうか』

「え?」

『何がえ、だ。お互いの主義はもう主張した。それで解決しなかったから殴りあうしかない。これは喧嘩だぜ?』

 

夕暮れの中でもはっきりと見える白、白式。

武器は近距離武器である雪片弐型のみ、つまり完全に近距離での戦いのみを搾った構成。

喧嘩の発端。誰かを思いやる優しさと一夏と、ただ解決だけを第一とするエース。

性格も、兵装もまったく真逆なエース対一夏。

放課後に訓練という形で何度か戦いはしてはいるが、エースはネクストを一度として起動してはいない。

その為、実戦形式で戦うのは初だ。

このカードを見たいという者達は学園中に山ほどいたが、事前に楯無に連絡したエースが、エースか一夏が招待した人物以外は観戦を禁止した為ガランとした空席ばかりの観客席に座るのは。

エースが招待したラウラと鈴、シャルロット。

そして一夏招待した箒のたった四人だけだ。

 

『喧嘩で合図ってのはおかしな話ではあるが、まぁいい。左手にある銃を空に撃つ。それと同時に開始だ』

「いいのか?」

『何が?』

「そんなことをしたら最初だけエースが無防備になる。フェアじゃない」

『なるほど……』

 

エースの言葉が終わる前に、アリーナに鈍い音が鳴り響く。

 

「がっ……は……」

『フェアという言葉は、もっと力を付けて言うんだな』

 

エースは一夏の言葉を聞いた直後。

なるほどと、一夏に語りかえるよりも前にエースはOBを発動させるためにコア背部の装甲版を開き。

PAに使用されていたコジマ粒子をOBに回し、その重量感のある見た目から反して、閃光となり。

突然の行動に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする一夏を、機体自体の重量とスピードが掛け合わされた蹴りを喰らわせた。

QBも合わせ、瞬時に時速千km以上に及ぶその衝突の衝撃は、壁に深くめり込んだ白式が物語っている。

十分すぎるほど致命的な一撃。息をぜぇぜぇと荒げる一夏にエースは追撃を行わずに、距離を開けるように移動しながら眺めていた。

もし、ここが本当の意味でルールなしの戦いならば、間髪いれずに一夏は凶弾によって沈んでいただろう。

 

『やっぱり喧嘩だ。合図ってのはおかしい。だろ?』

「……あいにく、千冬姉とは喧嘩にすらならなかったからなぁ!」

 

その態度が一夏の闘志を燃やしたのか、さっそく瞬時加速による突撃を繰り出すが。

エースはブースターの噴出口と足を軸にして軌道調整しながら地にS字を描くように後退しつつ、威力こそ低いものの左右から挟撃するように飛ぶ為、回避がしにくいMP-O601JC発射。

左右に1つずつある発射口からミサイルが飛出し、一直線に迫る一夏を狙う。

それに対して一夏は、右から飛来したミサイルを物理ブレードを展開させ。エネルギーの刃を露出させた雪片で横に振るって斬り落とし。

左から飛来したミサイルはシールドを展開して防ぐ。

多方面からの攻撃を繰り出すブルーティアーズとの戦闘経験が活き、ハイパーセンサーを利用した戦闘もエースが知らぬ所で成長し、ある程度対応できるようになっている。

しかし、エースからすればまだまだ序の口だ。装備は一つしか使っていないのだから。

 

「そら!」

 

瞬時加速の勢いを減衰させることなく、エースに急接近した一夏はエネルギーの刃を振り下ろす。

しかし、エースは予め膝を屈伸させ、あっさりと飛び跳ねて躱し。

全身のブースターでふわふわと浮遊しつつ、一夏の背後に回り込み。

頭部カメラを通じて見る仮装風景に一夏を捉えFCSでロックオン。

 

「ぐわぁ!」

 

047ANNRを一撃だけ喰らわせた後。

またS字を描くように後退しつつ距離をとると、ロックできる最大距離で止まり、直立不動の姿勢で一夏が体制を立て直すのを待った。

 

「……っ!もう一度だ!」

 

一夏でも十分わかるほど手加減。一夏は今度は瞬時加速を使わずPICで浮かび上がり、スラスターの噴出孔を上に向け空から攻める。

しかし、これも分かり切ったかのようにエースはすいすいとブースターでディターミネイションを動かすと、また047ANNRを一撃だけ喰らわせる。

 

「エース!真面目にやれ!」

 

三度にも渡る手加減。

さすがに一夏は抗議を上げたが、エースは無言のまま。

047ANNRを一夏の足元にわざと狙って撃ち返す。

 

「クソォ!」

 

エースの煽りが、さらに一夏の闘志を燃やす。

またも、瞬時加速による突撃繰り出した一夏。

これには黒と金の装甲に隠されたエースもつい、僅かに残念そうな顔を浮かべた。

武器が近接武器しかないのだから別に、一夏の戦い方は間違っていない。というよりも、それしか方法がない。

しかし、突撃タイミングがエースが評価するならば極めて悪い。

何も考えずに、距離が開いてるにも関わらずただまっすぐ。これではエースでなくとも対処は楽だ。

前から来るならば、横に逃げればいい。

それができるようにエースは、距離を開けているのだから。

 

「……っ当たらない!」

 

雪片を左から横に振り切った一夏だが、そこにエースは雪片を降り始める直前に、右へメインブースターから推力を得た小ジャンプ移動をして避ける。

まるで、それが当然の結果だと言っているように。

 

「まだだ!」

 

しかし、一夏も負けじとエースに追いかけるように特殊無反動旋回。

瞬時加速による速度を精密なPIC操作によって、無理やり押さえつけて回転した為。

瞬間的に一夏の体に全身に鉄板を張り付けて押されているかのような強烈なGが襲いISによる保護機能が働くが、全身に僅かに痛みが駆け巡る。

 

「うぉおおお――っ!」

 

それを、一夏は歯を食いしばって耐え。

さらに、エネルギーは知らぬとばかりに瞬時加速を行う一夏。

だが、エースはその動きも僅かな時間で、幾重にも思考した戦術思考の中で。

最適な動きを考察を済ませ。

一夏が瞬時加速を行う前には、ブースターで上昇して上空へ逃げ。

一夏の視界からエースは消えていた。

 

(太刀筋は悪くはないが、しかし……やはり機体を使いこなせているとは言えんな)

 

上から一夏の背後に回りつつ、エースは戦闘を行う上で一夏の欠点を改めて理解。

本人に教えるつもりはエースにはまったくないが。

千冬やドイツで出会った少女と同じ血を引く宿命か。

先天的な素材は良いだけに、修正可能な欠点と、それとは別の致命的な欠点を残念に感じた。

 

(まぁ、そこは織斑と環境次第だな)

「ミ、ミサイル!?」

 

エースは右肩のPOLAR01のミサイルハッチを開き。追尾に特化したMSAC製のミサイルをばらまき。

ミサイル先端に搭載された赤外線センサーがエースを追う一夏を捉え。

ハッチから飛び出た順に一夏を追うが、白式は機動力に特化したIS。

簡単には当たるまいと地を這うように移動して、ミサイルの燃料が底尽き、地面に激突して自爆するまで一夏は逃げ続けて見せた。

しかし、それを二度三度連続で、その上に挟撃するように追うMP-O601JCを織り交ぜると。

 

「ぐっ熱!」

 

途端に、白式に目に見えた被弾が増し。

僅かにではあるが、じわじわと確実にシールドエネルギーを奪い去っていく。

 

「一か八かだ!」

 

一方的な状況に焦りを感じた一夏は、逃げから転じて上空でミサイルを放ち続けるエースに攻めにでる。

被弾覚悟で残ったエネルギーを瞬時加速に割り当て、ウイングスラスターを最大限まで開くと、助走をつけてミサイル群の中をジャンプしながら突っ込む。

 

「う……負けてたまるか!!」

 

ISの保護機能がなければ火傷では済まされない熱量の海。

熱さを感じた途端に、引き下がりたくなった思考を一夏は追い払い。

今日一番のエネルギーを使った瞬時加速で駆け抜け空に浮かぶエースに迫る。

 

「……な?」

 

しかし、その前に一夏は目の前が徹甲弾とシールドエネルギーがせめぎ合った結果の火花で染まり、額に大きな衝撃を受けて地へと落ちる。

047ANSR。

エースが持つスナイパ―ライフルの中では一番火力が低い武器ではあるが、ネクストですら無視できぬダメージなのだからその火力が十分高い。

そして火力だけではなく。シールドエネルギーによって身が守られるとしても、頭に銃弾を受けるという精神的なダメージもまた一夏には大きいだろう。

 

(終わらせよう)

 

エースは、研磨が終わらず未だ輝きを見せぬ石にメインブースターの推力を切って。

POLAR01とMP-O601JCで再びミサイルの雨を降らし、すぐさま047ANSRと047ANNRに武器を切り替え一夏を落下しながら撃ち続ける。

 

「うわぁああああ!」

 

一斉に襲い掛かる武器達に、武器で切り捨てる時間も守る隙もなく。

全弾命中された上に墜落。

仰向けに倒れる一夏の上にエースは、雪片を握る右手を足で踏みつけ。

終わりの合図とばかりに、047ANNRを一夏の額に二発撃ちこんだ。

 

――――――――――――

 

低いブザー音がアリーナに響く。

 

『勝者、エーアスト・アレス』

 

そう、短く勝利者の名前をモニターを写してアリーナの審判機能は沈黙した。

 

「ちょ、ちょっとやばくないあいつら?IS解除してないわよ!」

 

普通ならば安全のために両者武装解除して、お互い距離を離してISをカタパルトに戻して、終了するのが試合においてのルールだ。

しかし、エースと一夏は武装解除するどころかIS展開を解除することもなく。

試合が終わった後のそのままの状態でお互いに睨み合っていた。

今にでも、戦い始めそうな雰囲気を漂いながら。

試合においての敗北の条件はアラスカ条約で定められた、シールドエネルギー残量が、操縦者の生命を脅かさない危険値を下回った時。

例え兵器のように扱われようが、IS学園における対ISはあくまでも試合。

安全が第一。それが絶対にして守らなければならない規則である。

だが、そのルールは操縦者によって簡単に破られかねない危険性は残念ながら孕んでおり。

それが、今のエースと一夏のように。

仮にエースが危険値を下回って尚。

攻撃しようものなら、操縦者の生命がどのようになるかは分からない。

鈴が危惧したのは、それが理由だ。

 

「あのまま撃ったら。まずいな」

「管制室へ行ってくる!」

 

そして、その危惧は場にいた全員が感付き。

まずいと起こりうる可能性を一言で言い表すが、ラウラは傍観。

箒、鈴、シャルロットは一夏を救出しようと箒はアリーナのシールドを管理する管制室へ。

 

「あの馬鹿(一夏)!なんだか知らないけど降参すればいいのに!」

「早く二人を離さないと!」

 

そして鈴とシャルロットは甲龍とラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ。

それぞれ専用機としてカラーリングされた二機のISが展開される。

 

「箒!急い――」

 

鈴の声は、唐突に響く炸裂音によってかき消される。

水を差すな。

そう警告するように、047ANSRの銃弾がアリーナを覆うシールドに向け。

正確には、一夏よろしく鈴の額に向けて放たれる。

 

「ッ!アイツ本当に――ひっ」

 

再び響く炸裂音。

アリーナのシールドにごく僅かに付けられたひび。

すぐに修復され消えたが、再び鈴の額に正確に放たれていた。

そして、ラウラ以外の頬にはすぅっと一筋の冷や汗が流れ出る。

 

次 は な い。

 

047AN02の四つ目の複眼が、箒、鈴、シャルロットを捉え。

もし、動こうというのならば気絶するまで殴打する。

そう、確信めいた思念を感じらせるほどのエースの強い意志を、無機物であるはずのカメラレンズ越しの視線で、三人の行動を有無言わさず制限した。

しかし、一夏が心配なことには変わりない。

どうすると、僅かに悪寒で冷えた体に鞭を打って、目配せする少女らにエースではなく。一夏が答える。

 

『皆。邪魔しないでくれ。危険なのは分かってるけど、これは俺とエースの喧嘩だ』

「危険だと分かっているのなら、なぜ今すぐ止めぬのだ馬鹿者!」

『馬鹿でもいい。でも箒。いや、皆聞いてくれ。俺は……皆を守る為にIS()を使いたい。使いたいんだ』

「守る……?」

『あとほんの少しの間だけでいい。静かに見守っていててくれ』

 

そう、一夏がISのオープンチャンネルで告げると、再び場は静寂で包まれた。

各々に一夏が告げた言葉の意味を胸の内で繰り返しながら。

 

――――――――――――――

 

状況。今だ変わらず、一夏がエースの気分しだいで事故につながりかねない。

しかし、一夏はエースがそんなことをしないと信じていた。

何故なら、世界最強の姉である千冬と同じく強者だと。

自身が身で戦い、同学年でありながら確信せざる負えなくなった相手であっても。

一夏にとってエースも守ると告げた皆の中の一人なのだから。

 

『守る。か……出来るのか。お前に』

 

戦闘中一切口を開くことがなかったエースの声を聞き、一夏はエースにだけ聞こえるように声量を抑え心中を語り始める。

 

「それは……分からない。俺あんまり頭良くないし。エースに比べれば……弱い」

『だろうな』

「……だけどなエース。お前がいなくなった後。俺も俺なりに反省してちゃんと考えたさ。だって、あの時俺が言った言葉は……結局は問題の見送りだ。根本的な解決をしたとは言えない」

『それで?』

「それなのに、それが俺ができることだと思って、それでなんとかなるとあの時は思ってた」

『…………』

「問題を解決する為に、何をしないといけないのか。どうやったら守れるのかは、それは……今も俺には分からない。でも!俺の目の前で、仲間が傷つけられるのは黙っておけない」

 

しかし、それと一夏自身の意思は別だ。

例え、自信を上回る力によって、思い通りにならないとしても。

意思だけは自身が選ぶものだ。

 

「ッ!」

『今のように、命の危険に脅かされてもか。レフェリーはここにはいない。さっきの宣言取り消すならISを解除しよう』

 

唐突に走る腹部に強い痛みに一夏は思わずえずく。

047ANNRの銃弾が一発、一夏の腹部に被弾し、シールドエネルギーが最低値まで落ちる。

白式のダメージレベルがAに。

 

『どうする。これは喧嘩だ。止めるタイミングを決めるのは、俺とお前だけだ』

「しない!――ぐっ!」

 

047ANNRの銃弾がさらに一発。一夏の腹部に被弾し、絶対防御が発動。

白式のダメージレベルが一気にCへ。

もう一度被弾したら、場合によっては命に関わる。

しかし、それでも一夏はするどくエースを見つめ、エースもまた一夏を試すように047ANNRの銃口を腹部に押しつけながら眺めていた。

時が、少しだけ過ぎた。

エースはディターミネイションを解除すると一夏に手を差し伸べる。

 

「……それがお前の出した答えだと言うのなら。好きにしろ」

「おう……」

「別に、俺はお前の考えを否定する気は微塵もないからな」

 

一夏はエースが差し伸ばした手を握り、起き上がる。

腹部のずきりと走る痛みに、眉を歪めるがしっかりと立ち上がる。

そして、右手に握り拳を作り。

エースの頬目がけて全力で拳を振るい殴った。

しかし、一夏には知らぬ話だが、強化人間として体をいじくられた結果。

見た目以上の体重を持つエースは予想と反してよろめくことなく拳を受け止めると。

歪んだ唇から一言だけ、いてぇとぼそりと呟く。

 

「エース。お前言ったよな。喧嘩を止めるのは俺かお前かって。俺は続けるぜ。俺はお前の考えが気に入らねぇ」

 

ISで惨敗、そして肉体でも惨敗しそうな気配を瞬時に一夏は感じ、冷や汗と同時に不思議と笑みを浮かべるが。

以前ボクシングのテレビを見た時を思い出し、それらしい構えをして戦う姿勢をとる。

対するエースは血が混じった唾を吐き捨てると、にたりと笑いながら。

ISスーツに比べればはるかにゴツゴツとした宇宙服のような耐Gスーツを脱ぎ捨て。

タンクトップと短パンの動きやすい格好へと変えると。

普段は耐Gスーツの下に隠されし、猛々しく膨れ上がった両腕両脚の筋肉を惜しげもなく晒し。

素人目でも格闘技に精髄していると分かる。堂に入った構えをして見せた。

 

「第二ラウンドだ。蹴り噛み金的は無しにしてやる」

「うるせー!負けねぇぞ!!」

 

ドカ!バキ!ドゴォ!

漫画でなぜこんな擬音を使うのか。

一発エースに拳をぶつける間に、五発以上は金属でも入っているのかと錯覚する拳を食らった一夏は身を持って知ることとなった。

 

――――――――――――――

 

あるラーメン屋の屋台。

あちこちにガーゼやら絆創膏が貼られた一夏と、遥かに軽傷なエースは。嗅げば、思わず喉が渇きスープに真っ先に口つけたくなるような、濃厚な香りを放つしょうゆラーメンを啜っていた。

 

「いって!しみるぅ」

「口切ってるのに無茶するなよ」

「でも、ここのラーメンうまいんだよなぁ」

「それは分かる」

 

噛めば弾力があり、喉を通すと程よい温かさを感じる麺。

豊富な具材に齧り付き。

そして、僅かに塩辛い汁を飲み。エースは一夏に勧められたラーメンを楽しんでいた。

 

「それにしても、なんでお前そんなに強いんだよ。ISも生身も」

「それはお前、企業秘密って奴だ」

「なんだそりゃ」

 

喧嘩を終えて、傍から見れば仲の良い学生に見える二人はラーメンが出されて数分と待たずに、みるみると減っていき。

 

「替えを頼む」

「俺も」

「おう!一の字も外国のにーちゃんも育ちざかりだろうからな。よく食えよ」

 

追加の麺を同時に頼むと、エースはコップに入った水を飲み干すと、さてと言い一夏に話を切り出す。

 

「まぁ今日はお互い腹が減ったから止まったわけだが」

「いや、お前が腹減ったって……」

「おそらく、近い内にまた今日のようなことが起こるだろうな。俺もお前も頑固だしな。所謂休戦だな」

「あぁ……けど次は。来週の学年別()()()トーナメントの時は俺が勝つ」

「そうか。ならば何度でも叩き潰してやる」

「言ったな!?」

「当然だ俺は負けん。誰にも、な」

 

したり顔でエースはそう言い放つと同時に、麺が追加されるた器が二人の前に出る。

一枚の大きなチャーシューが乗っているのは店主の計らいだろう。

 

「お待ち!」

 

陽気な笑みを浮かべる店主に、エースと一夏は勢いよく麺をすする音で返した。

 

(例えそれが誰であっても。何であっても)

 

その音の中に、疾走者の本音がまぎれていることを誰も知らずに。

 

(……そういえば。さっき学年別()()()トーナメントって言わなかったか)

 

重要な情報をたった今知ったことを知らずに。

 

――――――――――――――――

 

同日深夜、エースの部屋。

夜食としてエースから出された物に対してクロエは困惑していた。

 

「カップ。ラーメン?」

「うまいぞ。どれにする?」

「……塩」

「じゃ俺は味噌」

「えーと、貴方に聞くことは凄く不本意でありますが」

「あ?」

「どうやって食べるんですかこれ」

「…………」




すぐ迫る学年別タッグトーナメント

それまで、一夏はどうやって強くなるのか。

なぜ、セシリアが干されセシリアになったのか。

そして、エースのパートナーは?

次回 『地獄の準備期間』


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