IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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今更ながら何故話を纏めれないのに序破急にしたのやら(エヴァのせいです)



32 獣の恩返し 急 一人当千の資格

「へーやるじゃん」

 

オータムは口笛を吹き、加熱で一時的に使用不可となったパルスライフルを肩に当て。

膝から下の装甲をパルスライフルの熱で焦がしながらも平然とした顔で空を飛び続けるラウラを見上げる。

 

(咄嗟に体を傾けて被弾面積を小さくして損害を軽くしたか。判断能力は良いな)

 

面での攻撃に対し、点で防ぐ。喰らうことが避けられないのなら、被害を抑える。

理にかなった行動だが、それを瞬時に選べたのはラウラの戦闘経験によるものだろう。

 

(さて、どうすっかな)

 

黒ウサギ隊隊長であるラウラに対してある程度警戒することを決めたオータムは、装甲脚を威嚇するかのように高く振り上げ。ゆっくりと歩き出す。

依然としてラウラを拘束している状態であるオータムが現状は有利だ。

その余裕からか思考が回り。パルスライフルで仕留めるか装甲脚で切り裂くか。

はたまた奥の手である電気が流れると硬化する特性と高い粘着性を持つ液体化合物を手の射出口から弾性の高い素材で出来た導線入りの糸と共に射出し、電気を流して硬化させることで並みの攻撃では千切れない強靭で粘着力が高い糸で完全に動きを止めてじわりじわりと嬲るか。

フルフェイスの仮面の中、オータムは自身のワイヤーブレードで身動きが取れないラウラがどう足掻くかを想像しサドスティックな笑み浮かべる。

だが、その笑みはすぐに消え去った。

 

「はぁ?」

 

空中を飛んでいたラウラがすとんと地上に降り立つ様に面食らったかのような顔をする。

今の今まで遠距離での攻撃を徹底していたラウラが急に降りてきたのだ。

警戒よりも呆れに近い声を出し、装甲脚を下げ足を止める。

 

「お前何やってんの?」

「何。ワイヤーブレードが解けないから仕方なく地上に降りただけだ」

 

そう言った後、レールカノンで狙いを定めるわけでもプラズマ手刀を展開することもなく。

ラウラは左目の眼帯を外して、黄金に怪しく輝く眼を晒し。

深く深呼吸をしたら、ただきつく拳を握って右手を後ろに、左手を前に。

そして腰を深く落として構える。

さながら今から近接格闘でもするかのように。

 

(戦いを捨てた目はしてねぇ……罠か?)

 

近接武器しかないISも近接武器しか使わないIS操縦者も存在しないことはない。

ただそれでも剣や刀、小型でもナイフくらいの武器は持っている。

肘から手の先まで最新の素材加工技術で作り上げれた装甲で覆われている為手甲を付けている状態とは一応言えるが、わざわざ拳だけで戦うメリットがないからだ。

それ故に実戦経験を積んでいるオータムは下手に突出して撃墜された味方の様を思い出し、牽制の為にパルスライフルを放つ。

パルスライフルが振動し、銃身を冷却させるための空冷ファンが唸りを上げ、その銃口からエネルギーを纏った弾丸がレーザーのような形状を成し飛んだ。

そして光の線が瞬きする間もない速さでラウラの頬と交差した瞬間シールドエネルギーが弾丸の運動エネルギーと熱から操縦者を守る為絶対防御を発動させ、白い光を散らす。

それはまぎれもなくシールドエネルギーを削ったという意味ではあるが、ラウラは避ける動作を何一つしていなかったことに対しオータムは強い疑問を抱く。

 

(……エネルギー切れするほど戦っちゃいねぇはずだ。躱さなかった……?)

 

ラウラとオータムが交戦してから数分しか経っておらず、例え燃費が悪いISだとしてもエネルギーが尽きるには早すぎるくらいだ。

躱せなかったのではなく躱さなかった。そうオータムは判断し、その意図が読めずオータムはラウラを睨む。

 

「なーに企んでやがる」

 

パルスライフルを突きつけながらオータムはラウラに問いかけるが、ラウラは微動だにしない。

再びパルスライフルで射撃するが、それでも反応がない。

射撃し続けていればそのまま勝てるかもしれないが、言い表せない気味の悪さにオータムの中に焦りや何もしてこないラウラに対して、馬鹿にしているのかと怒りが生まれる。

マガジンに残された数十発の弾丸を撃ちこんだ後、パルスライフルを粒子化させて代わりにマシンガンを呼び出し。

試しに数歩距離を詰めたり、ワイヤーブレードを巻き取って近づけさせたりと煽っては見るものの、それでも銅像の様に動かないラウラに痺れを来たし。

手を握り締め糸の射出口をチラリと覗く。

 

(誘っているかもしれんが……だからこそ、拘束をより強固で確かな物へと変えて畳み掛ける!)

 

次の攻撃を決め、ラウラを拘束していたワイヤーブレードを解き始めながら射出口に糸と液をすぐにでも打ち出せるように構え。

八本の装甲脚を曲げ、ワイヤーブレードが僅かに緩んだ瞬間。

巨大なバネのような勢いで跳躍しラウラとの距離を一気に詰め、手の射出口をラウラへ向け糸を飛ばす。

そしてアラクネと言う名を持つISに相応しくただの一本であった糸は蜘蛛の網のように拡散し、網はそのままラウラのISごと全身を覆うかのように襲い掛かる。

 

(捕った!)

 

仮に今から回避行動を取ったところで決して間に合わない距離に達した時点でオータムは装甲脚に備え付けれたブレードを振り上げ、固定砲で狙いを定め、マシンガンも撃ち全方位による同時攻撃を始めた。

ブレードは空気を裂き、固定砲の熱は空気を震わせ、マシンガンの銃撃は身を振るわされるのような音を奏で糸の後ろから張り付くかのようにラウラを襲う。

しかし、オータムは目の前で起きた光景に目を開けた。

 

「何ぃ!?」

 

レールカノンやプラズマ手刀を使った後も見えない所か、何か目立った動作をしたわけでもない。

だが、あと数秒もせずにラウラを覆いかぶさり拘束しているはずの網が突如として弾け散り、糸がはらはらと地に落ちたからだ。

射出口が不調を起こしたのかと見る余裕がないオータムは一瞬の思考の後、疑問抱きながらも中途半端に退けば妙な威圧を放つラウラに勢いが削がれかねないと踏んで攻撃を続ける。

走って銃がブレながらも射撃武器である固定砲、マシンガンどれもラウラに直撃。

ようやく痛みで僅かに口を歪めたラウラに想定外の出来事があったがこのまま装甲脚のブレードで畳み掛け、杞憂で終わらせるとオータムが思った瞬間。

ふとラウラの拳の位置が先ほどと真逆になっていたことに気が付き、その意味を身で理解することなる。

止めとして勢いよく振り下げた装甲脚がラウラの頭部に触れる直前。

ラウラがオータムの視界から消えた。

 

「イグニッションブ――」

 

そしてオータムは腹部の所謂みぞおちと言われる部位に小さな拳に殴られたと感じた直後、殴られた箇所を中心とした周囲の肉が内臓もろとも抉り取られたかのような激痛が走った。

 

「ガアアアアアアアアアッ!!」

 

本能が苦痛から逃げる為に勝手に判断したのか、気が付けばウィングスラスターを最大出力で起動し、オータムは後方へ自機を吹き飛ばした後悶絶する。

ISの絶対防御の為、実際には抉れてはいないものの、痛みに慣れているどうこうの話では済まない痛みで膝から崩れ落ち、戦うどころか呼吸すらままにならない。

何度も咳き込み。腹部を抑え込んで痛みに耐えながらオータムは先ほどの出来事を思い返す。

今の今までラウラが動かなかったのはイグニッションブーストを最大出力で発動させるためにエネルギーを全てため込んでいたからこそ、不意打ちも兼ねて動かなかったのだろうとオータムは把握した。

だが、オータムが解せないのはその後の攻撃だ。

プラズマ手刀の威力を知った上で、不意打ちも予測し多少斬られた程度ならば近距離での圧倒的手数を持つアラクネで押し勝てると確信したが、ラウラから繰り出された反撃の一撃は余りにも重すぎた。

追撃を防ぐためにスラスターを起動し後方へ下げなければ、そのままやられていただろうと背筋を凍らせる。

 

「クソッ」

「さっきまでの威勢はどうした?」

「うるせぇ」

 

ラウラの言葉にオータムは唇を血が出るまで強く噛み。

荒い呼吸をした後、楽な任務だと高を括っていた自身への怒りを糧に、オータムは両膝に力を入れる。

そして余裕綽々とした笑みを浮かべて構えているだろうラウラへと向き合う。

 

「チッ……立つか」

 

しかし、またしてもオータムの予想とは裏腹にプラズマ手刀を展開してはいるが、ラウラは肩をだらんと下げ。

オータムと同様荒い呼吸を繰り返し、頬から玉のような汗を流していた。

 

「おいおいさっきまでの威勢はどうしたよ?」

「黙れ蜘蛛女」

「まぁ何したかくらい話してもいいじゃねぇか。データになかった所ドイツの新兵器か?それともセカンドシフトでも起きて、お前のISに新しい機能でも付いたのか?」

「答える義理は……ない!」

「つれないねぇ」

(まぁあの様子を見る限り何度も出来そう技じゃなさそうだな)

 

今だ痛む腹部に眉を顰め。オータムは斬るよりも突くことに特化した剣カタールを呼び出す。

想像以上のダメージは受けたものの、それを受けるまでに散々撃ち続けた為オータムの予想では互いのシールドエネルギーはおよそ五分。

ISコアを持つ以上簡単にやられるわけにはいかない。

だが、逃げる程ではないと冷静になり意気込むがその瞬間コードネームであるエムという名前以外何も知らない少女からのプライベートチャンネルでの通信が入る。

 

(何だあのガキめ)

 

いつの間にか実働部隊に入ってきた遥かに年下で見た目はあどけない少女ではあるが。

誰に対しても敬意も払わない上可愛げもない。

常に不機嫌そうな表情を浮かべるくせに時折残虐な笑みを浮かべるファントムタスクの実働部隊内で浮いた存在。

しかし、実力に関しては折り紙付きなのだから、おいそれと強く出れないという問題児。

そんなエムに対してラウラにも聞こえるほどの大きな舌打ちをした後、オータムは通信に応じた。

 

――――――――――――――――

 

「オータム」

『様を付けろ糞ガキ。何だ手短に言え』

「こっちの相手は終わった」

『終わったんならとっとISコアを奪ってきやがれ。こっちは交戦中だ』

「……さっさと終わらせろ。早く帰りたいんだ」

『うるせぇ!!』

 

気に食わない上司の劈くような怒鳴り声に耳が痺れ、エムは思わず舌打ちし、反論の一つや二つはしようと思っていたが、口から出す時にはすでに通信が切られていた。

 

「まったく……」

 

エムは不機嫌そうに幼さはあるものの無機質で人形のような冷たさを持つ顔を顰め、すでに力尽き意識を失ったクラリッサの頭を鷲掴みにして引きずりながらトンネル内へと足を進める。

作戦前の情報では敵戦力の内ISをまともに使えるのは二人。一人は気絶、もう一人は交戦中。

勝ったも同然とすでにエムの頭は決めており。

 

「動くな!」

 

剥き出される銃口達に一切の恐怖を感じなかった。

どれだけ撃ちこまれてもシールドエネルギーはまだまだ余裕があり、回避する自信があった。

何よりも特別な境遇で作られた組織とIS頼りの隊全体の実戦での経験不足故に甘さを捨て切れずにいる黒ウサギ隊に対する切り札があった。

エムは引きずっていたクラリッサを持ち上げ盾にし、その首に銃剣の剣先を突きつける。

 

「ISコアを寄越せ。さもなくば、この女を殺す」

 

動揺の空気が黒ウサギ隊の中で伝わるのをエムは整えられていた銃口がブレていく様から感じた。

そして試しに薄くクラリッサの首の薄皮を浅く斬れば、それだけで士気が乱れざわめきが起こる。

 

(下らない……全部壊した方が面白そうだな)

 

冷めた目でエムはしばらく様子を見ていたが、緊張で強張った顔と赤い髪が印象に残るラファール・リヴァイブに乗った作戦前に熟読したファイルに名も乗らない少女が箱を持ってゆっくりと近付く。

 

「要求に応じます。この中にISコアがあります」

「見せろ」

 

エムの言葉に従い厳重なロックを掛けられた箱を開ける少女。その挙動をエムは一瞬として見逃すことなく眺め続け箱が開けられ、鈍い輝きを放つISコアに目が奪われた瞬間。

 

「今だ!」

 

車や爆発の際に降ってきた瓦礫で作ったであろう簡易的なバリケードから小さな手がいくつも生え。

大量の棒状の物体がふわりと空中に半円を描きながら飛び出す。

 

(閃光手榴弾か……)

 

エムはクラリッサを放り捨て、バイザーの機能を停止して視界を完全に閉ざし、両手で耳を防ぐ。

直後に襲い掛かる爆音に僅かに驚くが、閃光手榴弾の威力を大幅に落とした。

耳を抑える程度は防ぎ切れない音で耳鳴りこそは起きたが、人間が情報を得る際に使う感覚の大半を占める目は生きている。

 

「やぁあああああ!!」

 

僅かに声が震えているものの、勢いだけはあるラファールのナイフを構えた突進をエムは両手の銃剣で受け流す。

そして続いて訪れる対人用のアサルトライフルの銃弾の嵐を軽いステップを交えながら躱して一度、トンネル内を脱出した。

 

(まぁこの方が面白い)

 

トンネルを背にして立ちふさがる赤髪の少女が何故、恐ろしそうな物でも見ているかのような顔をしているのか、エムには理解出来なかった。

自身があまりにも冷たい笑みを浮かべていると気が付いていなかったからだ。

 

「ははっ」

 

エムは小さな笑い声を出した後、全身の噴出口からブレードを出現させて突撃。

アサルトライフルによる銃撃をテンペスタⅡ型の翼を広げて軽々と避け。

銃剣を振り回し、怒涛の攻めを繰り出した。

 

―――――――――――――――――

 

「想像以上に……厳しくなりそうですね」

 

望遠鏡で周囲を見渡しクロエは思わずそう声を零す。

今現在トンネル付近で戦っている二機のISについては素人目から見ても力量差がはっきりとして、やられるのも時間の問題。

そして外で戦っているラウラとオータムは拮抗こそしているが、いつまでたっても決着がつかなければファントムタスクが有利になる一方だ。

そんな中、クロエが奪取出来るタイミングと言えば、両者の意識が最重要物資であるISコアから離れた瞬間のみ。

黒鍵のワールドパージで周囲に幻影を見せれば多少押し通ることは出来なくはないが、混戦の中に貧相な武装で身を投じる事になり相応の危険を伴う。

しかも、片方の陣営のISが完全に自由ならばISと敵対することも想定しなければならない。

 

あれ(ラウラ)が先ほどのAICを利用した攻撃をまた与えれれば……」

 

オータムとの戦いの中でラウラが放った一撃。

拳が敵と触れ押した瞬間すぐさま引く。

その際拳のごく一部にAICを一瞬だけ展開することで、拳での衝撃による物体の全体が動こうと運動する力とAICによる物体の一部が止まろうと静止する力が働き。

AICが作用する範囲内にある物体を無理矢理抉り取るという競技での使用は禁止されかねない技が出来る。

だが、ただでさえ自身の前方に大雑把な球体を置くようなイメージで展開することで使用者の負担を減らしているAICを拳のごく一部に展開し、尚且つ動かしているので使用には多大な集中力を要する。

何度も繰り返すのは体力や精神的にも並みの人間では不可能。

ラウラも技のイメージこそは容易に出来たが四苦八苦した中でようやく身に着けた技術だろう。

 

「無理な望みは止めましょう……多少の危険は止む無しといった所でしょうか……」

 

ラウラにはオータムを抑えて貰い。黒鍵での突撃を考えたクロエだが、交戦中のラファールリヴァイブの持つマシンガンの流れ弾に驚き思わず近場にあった茂みに頭を隠す。

 

「……はぁ」

 

穿いてきたスカートは葉でよれよれになったが、安堵のため息をクロエは思わず吐く。

クロエも幾度となく軍事基地へ潜入や工作をしたことはあるが、火器が飛び交わない戦場へは行ったことがない。

例えば某所のデータを盗みに行ったり男子生徒をISが収納された競技場に誘導するくらいのミッションだ。

 

「行きますか」

 

高まる鼓動を抑えつつクロエは立ち上がるが、何かの接近を束お手製のレーダーが告げていた。

ドイツ側の救援が来たら助かる程度の考えを持ちながらレーダーの画面を見たクロエの顔が曇る。

ISや固定砲などの一定の熱やエネルギーの反応を持つ物でドイツならば赤色、ファントムタスクならば青いと区別されたレーダーの中、接近する何かの色は紫。

束から唯一接触を避けろと命令された傭兵だった。

 

――――――――――――――

 

それの到来を事前にレーダーで感知したファントムタスクの砲撃部隊は固定砲台を用いて迎撃を開始。

点在する分隊が連携をとり、空間を砲弾で埋め尽くさんばかりに、地を揺らしながら発砲される。

ある程度躱される事は別働部隊の全員は予想していた。

砲台は誘導できるミサイルやそもそも近距離で当てるアサルトライフルと違い、些細なことで弾道にズレが起きる上。

配置された砲台はIS誕生以来時代遅れと称され、緩やかに開発が停滞していった鉄の兵器達のさらに前任を担っていたものだ。

技術格差はISと比べ数十年という単位で存在する。

だからこそ数で面攻撃を行い、砲弾を避けるために減速を引き起こし対空ミサイルで止めを刺す。

常套手段であるがそれ故に効果的だ。

ファントムタスクはISという兵器に対し、幾度となくこの策で時間稼ぎを行いどれだけ砲撃部隊は被害を受けようが戦略的な勝利を収めてきた。

そして砲撃部隊の前線に立つ者となれば幾度となく真っ先に死にかねない激戦の中生き延びた歴戦の兵士と言える存在だ。

しかし、それはまさにイレギュラーだった。

覆い尽くすような砲弾の雨に対し畏怖を抱いていないのかまったく減速することなく。

ただひたすら並みのISを大きく上回る速さで驀進。

ミサイルを次々と撃ち落とし続けそして、白い棒を背負った黒い物体が音よりも早く過る。

遠くにいた者は強い突風を感じ、近くにいた者は衝撃で空中を舞い、至近距離にいた者は衝撃波で肉塊と化した。

そして次に訪れたのは空から降り注ぐミサイルによる爆撃。

固定砲台はミサイルの弾頭に積まれた爆薬によって次々と爆発を引き起こし、巻き込まれた者はあまりの高熱で炭と化す。

それが通った後に残されたのは黒煙と火だけだった。

 

(囮役をこなす的確な砲撃とタイミングよく来るミサイル。どうやら正規軍の連中よりは遥かに練度が高そうだ。並みのISや操縦者が突撃しても突破は難しいだろう)

 

マザーウィルには劣るものの、それでも弾幕と呼ぶに十分な攻撃。

エースは砲弾を機体のブースターを調整しギリギリを掠めるように移動しながら避け、ミサイルは手に持つアサルトライフルMRーR102で撃ち落とすかQBでの急加速で避ける。

そして初めて接触するファントムタスクの歓迎を高く評価していた。

ファントムタスクの扱う砲台はエースが元々生きてきた世界と比べればそれこそ軍事博物館にでも飾られるようなもの。

ネクストの性能を考えれば練度や経験では覆すことは不可能だ。

しかし、まったく隙のない弾幕は部隊間における連携の良さを感じさせ、その質からか軽量機体ということもあり常時時速2000kmに達する速さで動くネクスト相手に未だに食って掛かっている。

 

(IS委員会が警戒するわけだ)

 

そのIS委員会からVOBというPAを消すことなく超高速移動を可能にする存在を隠していたことの説明を要求しているであろう通信をエースは無視。

QBで速度調整をしつつ砲撃部隊をロック。

そして両肩のOSAGE03に積まれたミサイルで徹底的に砲台を破壊し尽くし。

VOBの速度もあり、砲台の射程距離に入って僅か数十秒でエースは砲撃部隊を壊滅状態に追い込んだ。

 

(作戦領域に突入、確保対象の付近に未確認のISを確認)

 

大幅に戦力を削った。ISを使えば黒ウサギ隊も撤退出来ないことはないだろう。

だが、敵の最大の主戦力であるISが残っている以上無理強いは出来ない。

エースは気を抜くことなく頭部に積まれたレーダーに意識を回し、両手の武器を強く握る。

 

「VOBパージ」

 

作戦行動中の操縦者がパージタイミングをずらさない様にオペレーター側が送るパージ信号を操縦者であるエースが送る。

途端にVOBはプラズマ化されたコジマ粒子の噴出を止めネクストと衝突しない様にすることと、機密保持の為に空中分解を始め、分解されたパーツは粒子化し消えた。

だが、VOB中に加速された勢いはそのままだ。強い慣性にエースは身を委ね、目標付近で交戦中のテンペスタⅡ型をロック。

そして残弾が少なくなったOSAGE03を両肩同時に発射すると同時にパージ。

垂直に一定高度まで上がった後に目標を追うミサイルを追う形でエースは降り立ち。

 

「ターゲット確認。排除開始」

 

突然のミサイルと来訪者に驚愕する少女を気に留めることもなく。

ただそれだけエースは語り、両手の武器を構え、OBを起動した。

 

 




展開を早くしたい

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