IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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ハーメルンの色んな作者の名前を見ていると。
サボり王ニートってなんだよって自分で突っ込みました。
変えませんけどね。

文章と「」の間に行を開けた方がいいのでは?というありがたい意見がありましたので変更させていただきました。


18 一休み

晴天。雲一つもない見渡す限りの青と暖かく降り注ぐ太陽の下で今まさにISの飛行操縦の実践を行おうとしていた。

周りがISスーツと呼ばれるISの操縦能力を向上させるような仕組みに加え、汗の吸着性にも、小口径拳銃なら衝撃以外は防ぐことが出来る在学中の生徒の中には下着のように着用している特殊なフィットスーツに身を包む中。

ただ一人、エースだけはまるで宇宙服のようにゴツゴツとした黒い耐Gスーツを着込んでいたせいか目立つ。

 

「エスっちのISスーツゴツゴツしてるねー何でー」

 

隣で耐Gスーツを興味津々に触ろうとする本音にエースは鈍重そうな耐Gスーツの見た目とは裏腹に俊敏な動きで躱す。

 

「俺のは色々と特別なんだ。それより授業が始まるぞ布仏。俺は避けれるが出席簿を受けたいのか?」

 

ネクストによる他兵器とは比べ物にならないほどの瞬間的なGの圧力から耐えるために、耐Gスーツには外骨格フレームや人工筋肉といった様々な補助機能が備えられている。

見た目が鈍重そうでも耐Gスーツは一種のパワードスーツなのだ。

 

「いーやー」

 

そう言いながら背を伸ばし、敬礼する本音にエースは喉の奥で押し殺すように笑う。

そんな砕けた調子で話す二人のやり取りを止めさせたのは勿論千冬だった。

授業開始を知らせる千冬にエースと本音の顔は真剣なものへと変わる。

 

「これよりIS基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、アレス。ISを展開して試しに飛んでみろ。いい見本になれよ」

「はい!」

「分かりましたわ!」

「了解し…はい」

 

千冬からの指名にエースはディターミネイションを起動すべく首輪に意識を集中する。

 

(……そういえば初披露だな。ディターミネイション戦闘モード起動)

 

首輪が青緑色の粒子となって分解し、エースの身を包む。

アセンブル――

HEAD

SOLUH-HEAD

CORE

SOLUH-CORE

ARMS

AM-JUDITH

LEGS

EKHAZAR-LEGS

軽量逆関節機体。

飛ぶだけならタンクでも十分可能だがエースは地上から空中への上昇能力が高い逆関節を選んだ。

だが、これは間違った選択だとエースはすぐに理解することになる。

 

「何あれ?珍しい足だね」

「いやいやそれ以上に全身装甲なんて初めて見たよ」

「何か織斑君やオルコットさんのISと全然違うね」

(……やはり目立つなこれは)

 

自身の機体が他のISに比べると異常なのはエースも理解しているが、こういうものだと割り切るしかなく。

ただ、無害化されたとはいえ元は生身の人間には非常に危険な代物であるコジマ粒子を使用したネクストの防御機構プライマル・アーマーを停止させた。

エースがディターミネイションが展開し終えた頃に続いてISブルー・ティアーズの展開が終わったセシリアと一瞬だけだがエースはセシリアと目が合い。

 

「あいた」

(……ん?)

 

数日前までセシリアが持っていた人を見下すような目が綺麗さっぱりと消えていることに疑問を持ちながらもエースは逆関節の関節部をペタペタと触る本音を小指で小突いた。

 

「早いな。アレス、オルコットも合格だ」

「どうも」

「ありがとうございます」

 

唯一無二信頼していた人物が若返ったかのような容姿である千冬にエースは複雑な感情を抱きながら未だにISを展開できてない一夏へと目を移す。

 

「えーと……あれ?」

「早くしろ熟練したIS操縦者なら展開まで一秒とかからんぞ」

 

千冬に急かされ右手を突き出し、左手をISの待機状態であるガントレットを握るがそれでも一夏は白式を展開出来ず。

最悪叩かれるだろうと一夏が不憫になったエースは一言アドバイスを送る。

 

「織斑、一度目を閉じて白式を自分の体のようにイメージしろ。それで出るはずだ」

「なるほど……白式を自分の体のようにイメージ……」

 

エースのアドバイス通り一夏は目を閉じ、白式をイメージする。

すると、待機状態のガントレットが輝き始めそこから白い光の粒子が一夏を包み。

やがて光が装甲の形を成して白式が現れる。

 

「出来た!」

 

一夏は満面の笑みで喜ぶがそれもつかの間。

 

「よし。飛べ!」

 

千冬の声にまずセシリアが空へ飛び上がり、続いて一夏も飛び上がる。

エースもそれに続くように関節を折り曲げ、それをバネにして初速を稼ぎ、次いでメインブースターを起動し最大出力で飛ぶ。

しかしそれもまた注目を集めるきっかけとなった。

 

「はやぁ!!」

「何ですのあの速さ!」

 

先に飛んだ一夏とセシリアを抜き去るほどの上昇力にエース除く全ての人間が驚愕した。

元々は何tもする巨大な機械の塊を飛ばせるほどの出力を持つブースターが出力をそのまま小型化されたのだから飛ばす物が小さくなったらその速度がさらに速まるのは必然だろう。

だが、これもやりすぎた。

僅か数秒でIS学園の中央タワーよりも遥か高くに飛び上がったディターミネイションは明らかなまでに異常だった。

 

「すげぇな機動特化機体ってやつ?」

「あ、貴方その機体どこで手に入れましたの!」

 

エースを追う形でやってきたISを精通しているセシリアからさっそく疑問の声が掛かる。

一夏はつい最近ISを知り始めたばかりでエースのディターミネイションを異常だとは思っていないのだから、そうだと一言言えばそれで済む。

しかしセシリアには通用しないだろう。

それほどISとディターミネイションの速さが他とは圧倒的に違う。

 

「オルコット。君は自分の秘密を軽々しく話す趣味でもあるのか?俺にはないな」

 

正確にはエース自身がどうして愛機が小さくなった等の原因を把握していないのだが、それらしい理由を付けて黙らせるしか方法がなく。

二人を無視してエースはメインブースターの推進の向きを横方向へ変え。

今度は出力を調整し、速度をセシリアのブルー・ティアーズに合わせながら。

エースとセシリアがほぼ同速度、それを一夏が追う形で三人は空を飛ぶ。

 

「……貴方と戦うのはもう少し情報を集めてからにしますわ」

「そうか残念だ。またの機会な」

「何を話してるんだ二人とも?それよりもこれ(IS)ってどうやって飛んでるんだ?」

「イギリス代表候補生の秀才。オルコット嬢に聞いたらどうだ?」

「え?でも……教えてくれるわけ」

 

エースは半ば冗談で言い、一夏も最近までのセシリアの言動からそんなことは無理だろうと思っていた。

しかし二人の考えとは全く真逆の反応が返ってくる。

 

「そんなことありませんわ!このセシリア・オルコットが一から全て教えて差し上げましてよ!まずISが飛んでいてる理由について――」

「「…………」」

 

饒舌に口が三つあるのではないかと錯覚するほどISについて長々と話すセシリアにエースと一夏はお互い顔を見合わせる。

しかしエースの表情は現在頭そのものがSOLUHなので一夏には伝わらない。

その事を一瞬忘れていたエースは一対一で相手に自身の声を伝達する通信プライベート・チャンネルを使用した。

 

『何をした織斑』

『俺は知らないぞ!』

「って聞いておりますの?あ、もっと集中できる場が欲しいのですね!それなら放課後二人きりでお勉強なさいませんか?私ならISを使った実戦も!」

『積極的だな。良かったな織斑』

『何が積極的なんだ?』

『うーん……』

 

痛み出した頭を手で押さえ、今後一夏に恋愛関係の話は通じないから止めようと心に決めセシリアへと視線を移す。

目が異常なまでに輝き、一夏に送られる視線がどこか熱が含まれている。

頭を打ったかとつい聞きたくなるほどの変わりっぷりにエースはイギリスからハニートラップでも仕掛けて来いと命じられたのかと疑うほどだった。

しかし、セシリアの表情はそんな何かを企んでいる者が持つ作り笑いではなく純粋に楽しそうに微笑む姿に無粋と考えを改め。

では何故セシリアがこんなにも態度が変わったのか。

数秒エースは考え、ふとセシリアの目が箒とどこか似ていることに気が付き一つの結論を付けた。

 

「オルコット。お前惚れたか?」

「なななななな、何を言っているのかさっぱりですわねエーアストさん!頭を打ったのではありませんの!?」

「何だ?誰が誰を惚れたんだ?」

(駄目だこいつら……)

 

明らかに惚れてますと宣言しているようなセシリアと、話を聞いていてまったく理解していない一夏にエースは呆れを通り越してセシリアとついでに箒に憐みのため息を吐く。

そしてそれと同時に千冬からの地表から10センチ以下まで急降下と完全停止の通信回線を介して命令が下る。

 

「先に行く」

 

エースは一言一夏とセシリアに告げ、操縦に意識を集中させる。

まずはメインブースターの出力を停止。

飛び続けるための推進力が消え、降下を始める。

そしてジェネレーターから無害化コジマ粒子を生み出し機体周辺に散布。

さらに機体各所に分散して配置されている整波装置を使用し、粒子を安定還流させプライマル・アーマーを構築。

プライマル・アーマーが空気抵抗を低減し降下の速度上げ。

地表まであと数メートルの所まで来たらエースは無害化コジマ粒子生産を停止させ、メインブースターを起動。

降下の速度をブースターの推進力だけで殺し、僅かに砂埃が立てただけで飛び立った時と同じ場所へ着地した。

周りから飛び出る賛美の声を適当に応え。

この後降りてくる二人がいる空へエースは顔を上げた。

後、グラウンドに開いた大穴に土をせっせと運び穴を防ぐ一夏とそれを手伝うエースの姿があった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

夜、肉体労働や放課後の特訓で空かした腹を満たすべく食堂へ歩く一夏とエースがいた。

 

「実践の時は助かったほんとありがとうエース」

「気にするな。次は上手く着地すればいい。とりあえずお前は戦うための技術より制御のための技術を理解した方がいい。コーチの二人にはそう言っておけ。何か言ったら織斑に操縦ミスで人を殺す気かと脅しておけ」

「縁起悪い事言うなよ……うーん出来ればエースが教えてくれた方が助かるんだけどな。分かりやすいし」

「俺は駄目だ。教えるのは下手だ」

「感謝してるけどあの二人よりエースの方が分かりやすいんだよ」

 

放課後、一夏の特訓に観戦という形で付き合ったエースは一夏のコーチである二人の教え方を思い出す。

一人は言うなれば幼稚。

ぎゅーん。ぐっ。ずかーん。

擬音だらけで何をどう伝えようとしているか分からない。

もう一人は言うなれば難解

体を45度傾けて角錐をイメージしながら飛行。

考えれば理解できるかもしれないが教わる人間が理解しにくい物では意味がない。

 

「……まぁ同情はするよ」

「同情するなら教えてくれ」

 

エースと一夏は雑談を交えつつ歩き続け、食堂へたどり着きそのドアを開く。

そしてドアを開けた瞬間、パンという乾いた音と糸くずと紙くずが舞い散る。

 

「「「織斑君クラス代表決定おめでとう!」」」

 

輪飾りなどで軽く彩られた食堂に一年一組女子生徒達全員が集まり、主役である一夏を拍手で歓迎していた。

 

「おぉすごいなエース……どうした?」

「……気にするな」

「やっほーエスっち、おりむー。こっちこっち」

 

クラッカーの音と銃声と勘違いし、危うくポケットからGA製のハンドガンを手に取り、構えようとしていたエースは頬から冷や汗をかいていた。

仕事柄いつどこで闇討ちされてもおかしくないエースにとって、攻撃されそうだと気が付いたら一瞬で迎撃体勢を取るのは容易なことだ。

だが、今回はその反射神経が仇となり危うく周囲に危険人物だとバレそうになった。

すでに今いる世界で殺人行為を行った以上、IS学園に在学する人間の親族を殺した可能性がゼロではない。

つまり生徒だと思っていた人物が敵になることもありえるという事だ。

しかしエースは自身にそんな言い訳をせずにただ早計なことをしたと今の行動を深く反省した。

ズボンのポケットから少しだけはみ出たハンドガンをゆっくりと下ろして再びポケットの中へ入れ、息を整える。

そして純度百パーセントの作り笑いを浮かべ、本音に誘導されるがまま椅子に座る。

 

「ところで何で俺がクラス代表なんだ?」

「それは私が辞退したからですわ一夏さん」

 

一夏がクラス代表になった理由をエースは右隣から聞こえる会話で納得しながら、左隣に座る箒に小声で話しかける。

二人は一夏を通じて多少は話す程度の友達と言えるような関係ではないかもしれないが、エースは気まぐれで箒と会話をしている。

理由は勿論、篠ノ乃束の妹という仲良くして間違いなく損をしない相手だからだ。

 

「隣を取って悪いな」

「ッ!何を言っているお前は!」

「安心しろオルコットを贔屓するつもりはない」

「ん?それはどういうことなんだ?」

「オルコットを見て何も思わないのか。あれは完全に狙っているぞ」

「何を?」

「織斑以外誰がいる。いいのか?」

「え。それはつまり……!」

「篠ノ乃。お前は昔から織斑に馴染みがあるようだが、あまり油断しない方がいいってことだ」

「……感謝する」

 

エースからの忠告によってセシリアに対する闘志を燃え上がらせる箒。

本人は忠告なんてつもりはなく、ただその方が楽しくなりそうだとしか思ってないエースは面白そうに口角を僅かに上げてにやりと笑った。

その後、エースと一夏は黛薫子と名乗る新聞部の二年生からの質問責めに会い。

IS学園在校生には学園内に関するありとあらゆる情報を秘匿する義務があり、学園内の情報、特に世間一般には聞かされていない情報を気軽に話そうものなら内容によっては相応の懲罰が下されるようになっており。

一応は学園の校則によって簡単には世間に存在がばれないようにはなっているのだが、エースはその可能性をギリギリまで減らしたいので、質問を作り話で返し、写真を撮られるないように。

本音を盾にしてその後ろに隠れるようにしながらも、エースはクラスの一員として一夏がクラス代表になったことを歓迎しパーティを楽しんだ。

後日、IS学園新聞部から発行されている学園新聞にて謎の首輪付き美形なる見出しが書かれ、挙句内容は百パーセント捏造記事で書かれていたことと、見切れているはずの顔写真がIS学園の某所で行われているオークションに高値で競り出されたことにエースは苦笑いをせざるを得なかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

午後十時、健全な青少年は睡眠を推薦される時間だが、精神は二十代のエースはまだまだ活動時間だ。

しかし、大半の人物が眠ろうとする中暇だからという理由で部屋を訪ねるような子供ではなく、エースは寮の自室で過ごそうと思っていたが。

脳内のレーダーが自室に人間がいると告げていたのでGA製ハンドガンを片手に自室の扉を開けた。

エースの自室内はドアやベットを除いて多少細工している。

元の世界からの持ち物や銃火器を預けている金庫には三回解除に失敗したら解除しようとした人間の手首を吹っ飛ばす程度の爆弾を仕掛けてあったり、窓から侵入しようものなら触れば超高圧の電流が流れるように細工してあるワイヤーが張り巡らされていたり、強引に情報を聞き出すのための道具やその時に周囲に音が漏れないように特殊なセラミック材で作った防音個室もある。

 

「ん?お邪魔してまーす」

「何だ更識か」

 

中にいた人物を確認して銃を下ろす。

エースのたった一つしかないベットに転がる楯無の服装は傍から見れば裸の上にYシャツを着ているようにしか見えない状態でYシャツからチラリと覗ける並み以上の大きさを持ちかつ張りと艶の両方を両立している胸と太すぎず細すぎず程よく引き締まった太ももは扇情的で並みの男なら間違いなく視線がそこに釘付けにされるだろう。

だがエースは最初からそこに誰もいなかったかのような反応で自作したPCの前に座り、スリープモードにしていたPCを解除させる。

無反応すぎる反応に容姿端麗、スタイル抜群と評され、評されるだけの自信も、維持するための努力も欠かしていない楯無のプライドが傷つけられたため、僅かに怒りの感情が籠った声で楯無は話しかける。

 

「少しは反応したら!それにここにいることに対するツッコミは!」

「監視カメラは探し出されて壊される。下手に近づけば怪しまれる。なら堂々と接触して監視すれば不審に思われないだろう。こんな所か?」

「ワーナンデバレタンダー」

「お前がここにいるのが証明している」

 

スリープモードから解除したPCにメールが送られていたので早速エースは暗号化されているメールを解除し開く。

差出人はマリー・エバン。

そして内容は勿論ファントム・タスクについてだ。

 

「何をしてるの?もしかしていやらしいサイトでも見る気?」

「あぁそうだ。今からズボンを脱ぐ」

「…………え?」

「…………」

「……嘘よね?」

「嘘だ」

「ッ!!」

 

楯無が投げた枕をエースは首を曲げて難なく躱し。

メールに書かれた文章を読む。

 

『ファントム・タスク。先日アメリカの軍事基地から第二世代型ISアラクネを強奪したことで注目が集まっている武装組織です。

 第二次世界大戦中に結成されたと噂されていますが、それが今ファントム・タスクと名乗る組織と関連があるか定かではありません。

 むしろないと考えた方が良いのかもしれません。

 理由は組織が結成された目的も理由も不明もしくは存在しないと称される烏合の衆が50年以上も存続しているとは思えません。

 なのでファントム・タスクについてはただのISの力を無差別に振り撒く危険な思考を集団と認知してもらえれば十分です。

 貴方にはいずれ殲滅を依頼させてもらうかもしれませんのでよろしく』

(ISを持っているのか……強奪した一機を含めて最低でも二機はあるだろう。接触してみるのもアリか)

 

力が無きテロリズムなど哀れな物だ。

大体は巨大な力を持つ組織に指示する人間も指示される人間も安易に叩き潰される。

エースもその僅かな力で余計な死人を出すぐらいなら早急に叩き潰すべきだと考えている。

しかし力を持っているのなら別だ。

簡単には潰されないしぶとさを持つ上に、金銭を使った交渉によってはその力を利用することが出来る。

さらに力を膨れ上がるにつれ増えていくであろう指示される人間の中から必ず付け入る隙も出来る。

目的の為にIS委員会が邪魔になった場合の身を預ける組織の候補としてファントム・タスクに接触しようと決め、続いて今現在の世界情勢や各大企業の動きを調べる。

 

「ふーん。デュノア社経営不振ねー」

「何処かの誰かが金に物を言わせて妨害活動しているからな」

「へーどうやって調べたの?」

「さぁな。知りたいなら自力で調べるか情報屋に金を払え」

 

その誰かが自分自身だとは口に出さずに三十分ほど一通り各国と各企業の動きを調べ終えたエースはPCを再びスリープモードに変更させた。

そして勝手に購入し設置した冷蔵庫からオレンジの缶ジュースを取り出し楯無に向け放り。

三十分ただ黙ってPCに熱中しているエースを観察していた楯無は投げられた缶を受け取り怪しそうにそれを眺めたが、密閉状態の缶では細工しようがないと思ったのか缶を開けた。

 

「ところで監視するのは勝手だがミッションに行くなとは言わんよな」

「言わないよ。生徒に手を出さない限りはこっちは何もしない。これは約束するから安心して。ところでこの部屋仕掛けやそのパソコンも全部エース君が作ったの?」

「当たり前だ。学園内に死ぬ危険のある仕掛けを用意してくれと頼んで首を縦にふる人間の顔を見たいくらいだ」

「ふーん。なら爆発物とか毒物とかの取り扱いは余裕ってことね」

「当然だ。傭兵ってのは馬鹿では出来ん。お前もBINDに入ってやってみるか?」

 

傭兵を金で動く一匹狼や力だけのならず者と思われがちだがそんな訳ではない。

整備人、情報屋、専属の医者を雇ったり、雇った人間を指示する他、傭兵業を営む上で生命線となる顧客との友好的な関係を保つためのコミュニケーション能力。

ありとあらゆる国の見知らぬ言語を全て覚えたり、作戦を考え自身が常に優位に立つために武器や爆発物や毒物といった危険物の特徴や扱い方、医師がいない状況のための治療方法や最低限の生活を送るための家事、文明から離れた環境下でのサバイバルの知識が完璧に出来なければならない職業だ。

そうでなければ余程良い人材が補佐をしない限り並みの人間は一か月と持たない。

命を賭す戦場で力を振るう以外にもやるべきことは山のようにあるからだ。

 

「うーん。なるならエース君の監視を含めて補佐になりたいなー」

「……止めとけ俺の理想は高いぞ更識」

「あら残念。でも持ちつ持たれずの関係なら更識家の人間としては歓迎よ。あといい加減楯無って呼んでくれないかしら?楯無ちゃんでもいいわよ」

「了解した。更識」

「…………」

 

先日、銃を撃った人間と分身とはいえ撃たれた人間とは思えないほどの穏やかさで二人は雑談を交える。

傭兵として戦場を知る者と暗部として戦場を知る者。

二人の共通点は平和な場所に戦火を持ち込むほど悪趣味ではないことだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

エースと楯無が語り合う同時刻。

 

「ここがIS学園ね」

 

二つの尻尾を揺らす少女がボストンバッグを片手にIS学園の敷地に足を踏みしめる。

そして世界のどこかにて。

 

「出来たうぉっしゃぁあああああああああああああああああ!!」

 

黒光りする二機のISの前でガッツポーズをする天災がいた。




Q:傭兵云々
A:平均以上になんでも出来ないと傭兵なんてもん出来ないと思います。だからといってなんでも出来るって訳ではないですが。
身近に傭兵志願者がいましたら他国の言語本を5つくらいPON☆と置いて話せるようにしろっと言ってみましょうきっと効果あります。

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