IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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人間には管理が必要だと考える⑨と人間の可能性に期待した主任と人間の可能性を否定する財団。
三人?の考え方を比べると中々面白い。



17 代表戦後の騒動

ばしゃり。

追跡者の輪郭があやふやとなり、赤い液体ではなく無色透明の液体となって崩壊する。

「言ったはずだ。出てこいと」

エースは追跡者が潜んでいる方向へ、明確な殺意の塊であるハンドガンを突き付けながら睨みつける。

そして先ほどの偽物と一寸も変わりない追跡者が姿を現した。

追跡者である少女は端正な顔立ちと水色の髪は触れてはいけないような神秘的な雰囲気醸し出し、赤い瞳全てを見通しそうな程澄んでいる。

「ひどいことするね君。おねーさん強引な方が好きだけど強引すぎるのは引いちゃうわよ。国際IS委員会管理局直属、IS傭兵管理機構BIND所属のIS傭兵エーアスト・アレス君」

少女の一切緊張を感じられない余裕な態度にエースは警戒を高め、ハンドガンの照準を肩へ向ける。

「ほう、BINDを知っているということは君はそれなりの立場を持つ人間だと認識するが」

(さっきの液体……水か?どちらにしろISが関わっている可能性が高いな……それにしてもこんな子供が……)

BINDの傭兵としてのエースを知る人間はそれだけで社会的に重要な立場を持つ人間という意味を持つ。

それを精神年齢ではエースの十は下であろう少女が重要な立場に立つ人間として責任を負わされているのかと、少女に僅か同情をした。

だがGA製ハンドガンを下げる気は一切ない。

エースは間違いなく目の前の少女に敵対しているからだ。

「んー。そうね。そう認識して貰えると助かるな。にしてもまさか世界初のIS傭兵が偽名も使わずにそのままの名前でIS学園にいるとは思ってなかったわ。灯台下暗しってやつね」

「社会的に認められない存在だと私は認識しているが、やましいことをしているつもりはないのでな。偽名を使う必要性が私には感じられなかったのでな」

エースが一人称を俺ではなく私に変えたのはIS学園の生徒や個人としてのエーアスト・アレスと人類種の天敵とIS傭兵であるエーアスト・アレスとのけじめだ。

今この場にいるのは目的のためなら手段を選ばない金次第で誰にでも味方にも敵にもなる傭兵としてのエーアスト・アレスという意味だ。

「なるほどなるほど。じゃあ一つ聞くけど……」

突如、目の前にいる少女の目の眼光が鋭いものに変わったことにエースは気が付き、一切の感情を排除し質問に備える。

「なんでさっきの私が偽物って気が付いたのかな?」

エースの脳内レーダーには熱や鼓動といった生物が生きる上で必要な様々な要素から生死を判断する生体反応センサーが搭載されている。

それを使えば生きてるか生きてないかくらいの判断は容易に出来ることだ。

最初から生きていないと分かっているからエースは撃っても何も問題ない偽物の眉間を容赦なく撃つことが出来た。

だが、説明しても信じてもらえないようなことをエースは話す気はない。

「勘だ」

エースは適当だが、相手によってはそれなりに説得力を持つ単語で片づけた。

「嘘と言いたいところだけど第三アリーナの時のこと考えると言い切れないわね。見つかるとはまったく思ってなかったもの」

「そういうことだ。さて君は何故私に関わった。いい加減本題を言ってくれないか」

「本題ね……とりあえず依頼主の学園長の部屋へ行きましょうか。その物騒な物を下ろしてね他の子に見られたら貴方も困るでしょうし」

まだ一週間しか経ってないとは言え、生徒に銃を持っている事を知られたなら今後のミッションに多大な影響を及ぼす。

生徒を射殺するなど論外だ、するにしても徹底的に利用しつくした後だ。

エースは狂ってはいるが、手段を選ばないほど正気は失っていない。

IS学園で騒ぎを起こすことを良しと今は思っていないエースはディターミネイションという命じれば一瞬で最強の兵器へと生まれ変われるという保険がある。

少女の言葉を疑いながらもエースはハンドガンの銃口を下ろした。

「了解した。だが不審な行動や先ほどの言葉が嘘ならばいつでも君を撃つつもりだ。忘れるなよ」

「あら大人しく聞いてくれのね」

「あまり騒ぎを起こしたくないのでね。それに学園長なら媚を売って私に損はない」

「ふーん戦場に生きる人間が騒ぎを起こしたくないねぇ……。まぁいいや。とりあえず行きましょエース君でいいかしら?」

「……好きにすればいい」

少女の後をエースはハンドガンをポケットにしまいつつ歩き出した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

敵に襲われた時のことを想定されているかのようなを様々な装置がついている重厚なドア開き、エースと少女は学園長室に入室した。

「失礼します」

丁寧に礼をする少女に対し、エースは警戒心を包み隠さずに周りを見渡す。

(監視カメラ四か……まだあるかもしれん。レーダーに生体反応なし。護衛がいないということは何かトラップが仕掛けられている可能性がある)

「エース君そんな明らかさまに敵対心を露わにしても何も出ないわよ」

「出てきてもらった方がわざわざ考えなくてもいいから助かるのだがな。残念だ。さて、貴様が学園長か?顔を合わせるのは初めてだな」

エースは早々に部屋に備えられているソファに座った少女から、部屋の主であろう髪は老化のためか白髪で、六十から七十代と思われるほどのしわが顔に刻まれている男性に目を移す。

目が合い、にっこりと親しげな笑みを返した男性をエースはただ冷たく睨め返した。

「最近の若者は口が悪くていけねぇですなぁ更識君や」

「そうですねぇ十蔵じいさんや。おぉ怖い怖い」

仲の良い友人のように語る二人に対しエースはGA製ハンドガンを取り出し。

四発、四つの監視カメラのレンズをそれぞれ狙い、片手で撃ち抜いた。

そして弾丸に撃ち抜かれた監視カメラは小さな爆発を生み、それを最後に朽ちる。

一秒にも満たない一瞬の出来事に更識と呼ばれた少女と十蔵呼ばれた男性は拍手を送るがエースは興味なさそうに腕を組み、二人が逃げられないようにドアを背を預ける。

「下らん茶番に付き合う気はない。さっさと用件を言え。悪いが時間を持てましてはいるが無意味なことに使う気はないのでね」

「と言ってますよ更識君」

「じゃあまずは自己紹介といきましょう学園長……逃げられないことですし」

現状を把握した少女はやれやれと半ば呆れた声を出しながらどこかにしまっていたであろう扇子を取り出した。

「私の名前は更識楯無。対暗部用暗部更識家の人間よ。楯無って呼んでね」

楯無が扇子を開き、ちなみに生徒会長ですと妙なほど達筆な字で書かれている扇子をひらひらと仰いだ。

「では次は私ですな。轡木十蔵。IS学園の用務員です。色々あって学園長のようなこともしてますが」

「色々……女尊男卑か?」

エースの言葉に十蔵は頷く。

「あら、エース君は何か嫌なことがあったのかな?カッコいい顔してるし今まであーんなことや、こーんなことされたのかしら?」

(さっさとミッションの内容を言ってくれんかね)

にやにやと楽しそうに笑う楯無に、さっさと用件を話して貰いたいエースは面倒そうに口を開く。

「特別被害を受けたわけではないがまったくもってバカバカしいとしか言いようがない。女尊男卑なんて言い出し、男女の差別意識からくる武器屋だけが甘い汁をすする目を覆いたくなるような非生産的な争いを生み出す社会を作り出した馬鹿共も。踊らされる女共やそれに屈する男共。どいつもこいつもバカバカしい。こんな所か」

エースは怒りも呆れの感情を一切感じさせないほど、今いる世界の社会の感想を吐き捨てる。

バカバカしいとは思っていながらもエースがその社会を、自らの手で壊滅させたテロリスト達のように粛正なんて感情を抱かないのは、ひとえに元いた世界がそれ以上に酷過ぎたからだ。

生きる場をたった数週間維持するために他の生きる場を数世紀以上地図から消す。

これだけでエースの元いた世界がどれだけ末期状態だったか理解できるだろう。

「女が悪い。篠ノ乃博士が悪い。ISが悪いって言う男は多いけどこう言う人もいるのねー」

感心するような楯無の声に、さしたる興味を示さないエースは痺れを切らし、僅かに怒気を含みながら話す。

手に持つハンドガンを二人に威嚇するように見せつけながら。

「いい加減ミッションの内容とやらを言ってくれないか?ちょうど監視カメラを壊した事だ外部には漏れないだろう」

監視や偽物を使った接触。

依頼を頼むにしてはあまりにも不誠実な楯無とミッション内容を伝えようとしない十蔵の態度にエースは多少攻撃的な態度を取らざる負えなくなった。

監視カメラを壊したのも、ハンドガンをチラつかせているのも言うなればパフォーマンスだ。

「……そうですね。分かりました。依頼内容を伝えましょうIS傭兵エーアスト・アレス君」

パフォーマンスが功を成したのかエースの態度に十蔵は今までの温和な笑みから一変し、一切の柔らかみを感じさせない真剣そのものな表情変わる。

「依頼主は改めて言うが私轡木十蔵だ。内容は……IS学園の護衛ですかな」

「そんなもの学園の教師達にやらせろ。私がするべき仕事ではない。それに、私が勝手な行動をしたら抑えるのはその教師達だ」

「まぁまぁとりあえず聞いてくださいアレス君。君はファントム・タスクという組織を聞いたことがないかな?」

エースは首を振り、知らないと意志を示す。

(俺に頼るということは大方武装組織だろう。後でロレフかマリーに聞いてみるか。マリーには期待出来んが)

ついでに確実に情報を知っていそうな知人を思い浮かべながら。

「そうですか。まぁこれはその時が来たら話します。依頼内容はIS学園の護衛。正確には非常時における防衛戦力ですな。IS学園には織斑先生という切り札がありますが彼女には今ISがない。そこで君にもう一枚の切り札になってほしいのです」

「もう一枚の切り札?」

ふとエースはラインアークの仲介人の男を思い出す。

ラインアークをIS学園、ホワイトグリントを千冬に変えればラインアーク防衛戦の時とほとんど変わらない。

違いがあるとすれば、それはストレイドという名前からディターミネイションに変わったくらいだ。

「そうです。それに国際IS委員会からのミッションの都合上、IS学園が危険に晒されたらアレス君のミッション遂行に支障が出るでしょう。依頼と言いましたがこれは一種の共存です。お願いできますか?」

「共存ね……なるほど、私に利がある。了解した」

(学園がどうなろうと俺の与り知らぬことだがな。まぁいい大人しく従ってやろう)

ミッションの都合上仕方なくいるだけであって、IS学園にもミッションを命令したIS委員会にも肩入れする気は一切ないエースは友好的に接しているがそれは表面上だ。

目的のために必要となればいつでも裏切る所存だからである。

「……あぁ、言い忘れていましたが報酬は勿論払います」

「当然だ。用は済んだか?」

「えぇ。ではよろしく頼みます」

「失礼した。あぁ一応言っておく。更識あまり行き過ぎた行動をすると身を滅ぼすぞ」

「楯無って呼んでくれないかなー。あとそれは実体験かしら?でもご忠告ありがとう。気を付けるわ」

「……そうだな。実体験ではあるな。ではさようなら」

学園長室を出てエースは自室へ向け歩き出す。

その手にはドイツから送られた携帯が握られており、今まさに一国の大将に連絡を取ろうとしていた。

(行き過ぎた行動で身を滅ぼす。まさしく俺だな)

人間としては間違いなく行き過ぎた行動。人類を救うためにとクレイドルを落とし。

人類である非戦闘員の命を億単位で奪い続けた日々をその脳裏に思い返しながら。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

エースがいなくなった学園長室で楯無と十蔵はお互い真剣な趣で対面していた。

「間違いなく協力する気はないでしょうね彼は」

「……そうなると下手をしたら学園は危険に晒されるでしょうね。私としては彼は一番敵に回したくないです相手です」

「おや?珍しいですね更識君が弱音とは」

「ISのハイパーセンサーすら騙せる自慢の水分身が一瞬でバレたんですよしかも理由は勘って……自信なくします冗談抜きで」

二人に流れる空気は重い。

その原因である問題児は無論エースだ。

「それにしてもアレス君の監視をどうするべきでしょうね」

「下手に小細工するよりは堂々と接触して監視した方が良いと思います。小細工してもたぶんエース君全部掻い潜りますよ動く高精密センサですよ彼」

「うーん。堂々とですね……」

楯無の提案に十蔵は顎に手を当て考える。

生徒でもあり、友人のような関係である楯無に要注意人物を任せるのは申し訳ないと思っているのだ。

「私なら大丈夫です。生徒会の皆にも協力してもらうつもりですし、それにエース君はあまり騒ぎを起こすつもりはないようですし」

「……生徒の君に面倒をかけてしまって申し訳ない」

「申し訳ないと思っているのなら今度また美味しいお菓子をください」

「現金ですね更識君は」

「えぇ……さて、エース君が何者か考えましょうか。ちょっと色々ときな臭さすぎるので」

楯無はエースが立っていた場所へ目を移す。

そこに楯無が知る一般的な銃ならあるべき薬莢が一つもない事を疑問に思いながら。

 

 

 




Q:IS世界とAC4世界の西暦について
A:ISは原作六巻のファントムタスクが第二次大戦中に生まれてから50年くらいという明確な表現されてますので2010~2020くらいですかね。
ACはそういったものはないので人口爆発やエネルギー資源の枯渇やらの情報からして2100~2200くらいですかな?まぁBFFの武器からしてある時期を境に西暦というものが消滅した可能性もありえますのでかなり適当です。ですが少なくともアメリカを含む国家が末期状態になるくらいですから今より相当の年は経過しているはずです(じゃないとACなんて超技術の塊作れない)

虚「会長!?殺されたんじゃ・・・」
楯「残念だったな・・・トリックだよ」

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