IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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イグニッション・ハーツは気になりますが購入は悩みどころですな。
購入してもまだクリアしてないゲームが山積みですし。


14 学園初日 2

三時間目早々。

「クラス代表者を決めてもらう。主な仕事は生徒会の開く会議や委員会への出席、まぁこれは簡単な話、クラス長や学級委員だと思ってくれ。ただし、各クラスの実力推移を測るため、他クラスの代表者と戦ってもらう事になる事は覚えておけ。立候補もしくは、推薦する者は挙手しろ」

千冬の言葉によって生徒達はざわめく。

だが、そのざわめきも数秒で終わり、次々と女子生徒達は口を開いた。

なぜならその代表という名の見せ物にふさわしい人物が二人もいるのだから。

「はい!織斑君を推薦します!」

「私はエーアスト君を推薦します!」

「では、候補者は織斑とアレス。他にいるか?自薦も歓迎するぞ」

「お、俺!?」

「…………」

一夏はまさか自分が選ばれるなんてっと本気で思っていたらしく驚愕を。

エースは予想が出来ていたので千冬からクラス代表という単語が出た瞬間から言い訳を考えていた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は」

「座れ織斑邪魔だ。他薦された以上は覚悟を決めろ。他にはいないか?いないのならこのまま投票を始めるぞ」

抗議のために一夏は立ち上がったが、千冬に圧倒され大人しく座った。

そして、代わりにやってくれないかと、期待するかのような目でエースを見たが、当のエースは一夏を完全に無視した。

(織斑先生は傭兵活動をしていると知っているはずだ…推薦を取り下げないという事はあくまで、学園の生徒と扱うつもりなのだろうか…)

「待ってください!納得いきませんわ!」

クラス中が二人しかいない男子を推薦する中、机を叩き立ち上がり唯一拒否したセシリアに視線が集まる。

「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?いいですか皆さん!物珍しいからという理由で選出するのは迂闊だと思いますの!まず実力から行けば私がクラス代表になるのは必然。極東の猿とかかしなどに――」

「オルコット」

マシンガンの様にセシリアの口から飛び出る弾丸の中エースは静かにだが、圧倒的な存在感を放つ威圧感を込めて名を呼んだ。

「な、何ですの!?」

「極東の猿…これは今この場にいる日本人全員に対する侮辱的発言だと、日本人ではない俺はそう受け取ったのだが、それでいいかな?」

エースの言葉にセシリアは口を閉じ沈黙した。

これは自身の言った言葉が、失言だと認めたということ他ならない。

セシリアは興奮していた頭を両頬を叩きながら冷やした。

「失言でしたわ…皆さん申し訳ありません。ですが、実力ならイギリスの代表候補生という称号が証明してありますわ。今一度考えてくださいな」

最後にペコリと謝罪の意味を込めた礼をし、セシリアは大人しく席を座り目を閉じた。

「…では、立候補者は織斑、アレス、オルコットの三人だな。山田先生」

千冬の声に真耶は予め用意しておいたらしい投票箱を用意したが、エースは手を挙げ、千冬の了承を得る前に口を開いた。

「ところで、推薦してくれた者達には悪いが俺は辞退させて貰う」

「な!?エース!」

クラス代表の投票という運命を同じくすると思っていた男の唐突の裏切り声に一夏は再び立ち上がったが。

「織斑喋るな立ち上がるな」

再び千冬に圧倒され席に着いた。

「織斑先生。ついでに発言よろしいか?」

千冬が頷いたのを確認した後エースは口を開く。

「俺はオルコットの言うとおり、確かな実力を持つ人間がクラス代表をすべきだと考えている。だから俺個人としてはセシリア・オルコットを推薦する。だが、戦ってもいないうちに織斑とオルコットの実力差を決めつけるのは、二人に失礼だそこで…」

「エースまさか…お前」

「あぁ、そのまさかだ。投票ではなく織斑、オルコットの両者が戦い、勝った方がクラス代表となる。それでどうだ?」

エースの発言に再びクラス内に多少ざわついたが、それも一瞬だった。

一人目の男性IS操縦者とイギリスの代表候補生の戦い。

ISに関わるものとして、間違いなく珍しく貴重な戦いをみすみす逃す手はない。

生徒達はエースの提案に次々と賛成の意を示し、真耶はせっかく用意したのにと、残念そうに投票箱をしまった。

「…お前がクラス代表なら色々円滑に進みそうで助かりそうだが、そうだな。まず、なぜ代表を断った」

千冬の含みを感じさせる言葉にエースはにやりと笑った。

「少し都合があるだけですよ織斑先生。その都合に納得いかないのであれば、提案者として俺も二人と戦って、勝っても代表を辞退させて貰えるのであれば俺も戦いに参加しよう」

遠まわしに、辞退を容認しなければ一夏とセシリアと戦う気満々だと伝えるエースに、エースの傭兵としての一面を知っている千冬の顔が曇った。

例え傭兵だったとしても学園に通う生徒である以上、他生徒同様に平等に接するべき教師が、一生徒を特別に扱うわけにはいかない。

しかし、その傭兵がただISという高性能の兵器に頼っているだけの新兵ならまだしも、IS八機や専用機を持つ人物を相手にしても勝つ強者なら話は別だ。

勝敗が目に見えている戦いにわざわざ送るほど千冬は無能ではない。

だから千冬は悩んでいる。

辞退を認め、傭兵としてエースを認めるか。

辞退を認めず、生徒としてエースを認めるか。

この二つの選択肢はエースという人物を定める上で重要な選択なのだから。

「エース」

しかし、悩む千冬を他所に一夏はエースに話しかける。

「戦うって言っても男と女だぞ?普通ハンデがいるんじゃないか?」

と、一夏が言った途端、女子生徒達から笑い声が溢れ出した。

ISの力により戦車、戦闘機、戦艦といった既存兵器が全て鉄くずとなった世界において、力関係は問答無用で男は女より弱いという状態になっている。

理由は女であれば既存兵器を鉄くずに変えるISの力を全員潜在的に使用することが可能となっているからだ。

「織斑君それ本気で言っているの?」

「男が女より強かったのはISが出来る前の話だよ」

「もし男女で戦争が起きても男陣営は三日持たないって言われているよ」

(三日持たないか。国を解体したネクストですら一か月は時間を要するというのに…やはり数は重要だな。まぁその三日間で女が全員無事で済む可能性は極めて低いがな。さて、ISをISなしで撃破するにはどうすればいいか…シーモック・ドリの前例がある。勝率はゼロではないはずだ)

クラスが一夏への非難と中傷に包まれる中、エースは一人思考が別方向へ加速していった。

「ハンデ?笑止ですわ。寧ろこちらがハンデを与えるべきか悩むくらいですわ」

女子生徒達の一夏へ非難する声につられたセシリアはあざ笑うかのような表情を浮かべ、明らかなまでに一夏を見下し、胸を張っていた。

「……じゃあハンデはいい」

「えー?それは候補生をなめすぎだよハンデ貰ったら?」

一夏のすぐ近くにいた女子生徒が、一夏の身とプライドを案じてそう言ったのだが。

「男が一度言ったことを覆せるか。ハンデはいらない」

行き過ぎたことを言ってしまったと周囲の反応から理解しながらも、エースのせいで引こうにも引けない状況に追い込まれた一夏だが、その目に宿る闘志は勇ましく燃えており、ただセシリアの一点のみを見据えている。

そして、一夏の目をセシリアは好意的に受けとめ、不敵に笑んだ。

「日本の男子はジョークセンスがありますわね。よろしいですわ。完膚なきまでに叩きのめして差し上げますわ」

「…話はまとまったな。織斑とオルコット両名の勝負は一週間後の月曜の放課後。第三アリーナで行う。それぞれ用意をしておくように。そして…アレスの辞退を認める。以上だ授業を始める」

(決まりだな。先生。いや、ブリュンヒルデは俺を生徒ではなく傭兵と認めた。ならば俺もそう振る舞わせてもらうか)

戦うことを決めつけられた一夏はほんの少し後悔しながら。

その相手であるセシリアは余裕綽々に。

ただ静観していた箒は一夏を心配そうに。

千冬の答えにエースはにやりと笑いながら。

三時間目が過ぎて行った。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

ドアを開けた先に待っていた、教育機関が構えるには高級ホテルさながらの設備を持つ寮にエースは感嘆としていた。

「ここが俺の部屋か」

IS学園の寮は、他国籍の生徒の居住のためと、人工島の上という少々特別な環境に建てられた学園のため、交通が不便だ。

そのため、IS学園の生徒と教師は寮に住むことを推薦されている。

それは、飛び入りで扱い上は転校という形のエースも対象で他生徒同様に部屋を宛がわれた。

(ベットは一つか…一人部屋にしては広すぎる。一応確かめるか)

エースは周囲を見渡し、運ぶように頼んでおいた荷物の中から発見器を取り出し、さっそくスキャンを始める。

(反応あり…まぁ予想通りだな。委員会か学園どっちが仕掛けたことやら…とりあえず潰すか)

その後エースは数分掛けて監視カメラ等を壊し。

次に、今はパーツとして分解されている銃火器を取り出し、何一つ欠けていないかを組立ながら確かめ、ハンドガンをズボンのポケットへと仕舞い込み。

組み立てたアサルトライフルと対パワードスーツ用ライフルを分解し、それぞれ二つの金庫へ入れ、厳重に保管した。

「ふぅ……」

そして無意識に口から出たため息と共にベットへと転がり込んだ。

(あと三年…)

目を閉じエースは今日一日を振り返る。

一夏という少年。

日常とはまったく異なる学園。

陽気な女子生徒達。

そしてセレンとよく似た人物。

どれもが新鮮で、どれもが印象的だった一日を中々面白かったとエースは評価した。

(少し寝よう。その後はトレーニングでもするか)

普段とは違う一日を味わい、僅かに生まれた疲れを癒すためにエースは意識を睡魔に委ねようとしたが。

IS委員会から提供された携帯のメール着信音によって妨げられた。

エースは睡魔を払いのけ、急ぎ携帯画面を覗いた。

『依頼主 ロシア陸軍

 報酬金 一千万円

 内容  テロリスト排除』

簡潔な依頼文が載せられたメールを読むエースは間違いなくIS学園生徒エーアスト・アレスではなく。

IS傭兵エーアスト・アレスだった。




Q:首輪付きなんで一人部屋
A:女だけど幼馴染で馴染みがあり死ぬ危険性が低い人物と二人きりか、男だけど色々謎な傭兵という人物と二人きり。どっちが危険かは言わずもがな。

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