IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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・・・から…へと変更しました。



11 恐怖を植える者

(反応あり…)

センサー系に定評のあるMSAC社が開発した発見器片手に次々と隠しカメラを見つけては潰していく作業を繰り返すエース。

すでに4機は潰し終え、手に持つ発見器のスキャンした情報によると、最後の一つらしい小型カメラを見つけ、それを足で踏み壊した。

(ディターミネイションAMS停止処理を開始)

エースは部分展開していた063AN03を粒子化させ、個室に備え付けてあったタオルを噛ませて、ジャケットで両手首を縛り、履いていたスカートを足元まで下げて足枷にして逃げられないようにしておいたシャルロットと対面した。

「さて、いつまで持つか分からんが、落ち着いて二人きりで会話を出来る環境が出来た。俺の質問に答えて貰おう」

顔は相手を緊張させないように笑みを浮かべているエースだが、その声は威圧感が含まれており、何よりエースの右手に持つ命を奪うために存在する銃。

そのハンドガンのトリガーに指をかけてはいないが、ISの待機状態であるペンダントを奪われたシャルロットに十分すぎるほどの恐怖を与えており、シャルロットはカタカタと小刻みに体を震わしている。

「あぁ、安心しろ。今のところ撃つ気はない。幾つか質問に答えて貰えれば君の身の安全は保障しよう。君の大切なISもちゃんと返す」

フランスの国家代表候補生として訓練を重ねても、縛られてしまってはシャルロットはか弱き少女だ。

この場では絶対的な存在であるエースの身とISの安全を保障する甘い提案をシャルロットは命を握られていることもあり素直に頷いた。

エースが頷いたことを確認した後にエースはシャルロットの口を防いでいたタオルを解き、息がしやすいようにした。

「さて、YESかNOで答えて貰おう。もし恐怖で言葉が出せなくても、頭を動かすことくらいは出来るだろう。では、まず一つ目。君は間違いなくシャルロット・デュノアだな?」

何故そんな事を聞いたのかシャルロットは疑問に思いながらも恐怖で開かない口の代わりに頷いた。

「二つ目。ハニー・トラップ、恐らく君が俺にしようとした事だ。意味は分かるな?違ったとしても、俺に何かしろと、フランソワ・デュノアに命じられたか?」

エースの第二の質問に、シャルロットはぶんぶんと力強く頭を振り否定した。

「三つ目。君はフランソワ・デュノアの愛人又は親戚の子か?」

エースの第三の質問。それにシャルロットは、返答していいものかと数十秒考えたが、エースがハンドガンのトリガーに指をかけた所を見てしまい、うな垂れるかのように頭をゆっくりと下げた。

「最後だ。君はネリス・デュノアに命じられ、少しでも拒否する姿勢をネリス・デュノアに見せたか?」

エースの最後の質問。シャルロットはうな垂れていた頭を上げ、目を見開き、エースを不思議そうな目で見つめ。

「…NO」

そう一言告げると、複雑そうな表情をしながら再びうな垂れた

(居場所がなかったのだろうか…まぁ、俺に関係はないがな。さて、どうしてやろうか)

この場でシャルロットを射殺し、ISを奪い逃亡する。

右手に持つハンドガンで頭を撃ちディターミネイションで逃げるだけで事が終わる。

だが、愛人でもフランスで有名な企業の社長の血が通った娘を殺し、フランスが所持しているISを奪ったとなれば、デュノアではなくフランスという一国家から目を付けられ、ドイツに迷惑を掛けるわけにはいかないので帰れなくなり、国際IS委員会に傭兵登録されても今後の目的遂行に支障が出るとエースは判断した。

では、エースに明確な敵対意思を持ちトラップを仕掛けたネリス・デュノアを、正当防衛と称し暗殺する。

これも最終的には、目的遂行に支障が出るとエースは結論した。

大企業や国といった世界を動かす組織に対して正面からの戦いを行うのは、人類がどう足掻いても破滅への道を辿るだけと判断し、破滅への道から人類を救うために必要だと判断した時と、自身に危害を加える者に対する自衛の時のみだ。

だが、過剰なまでの自衛は必要以上に敵を増やす。

(この世界の答えを見つけてない今…容易に行動するべきではないか。しかし愛人の娘か…)

だが、デュノア社にある程度の損害を与えるには十分な情報をエースは手に入れた。

(捏造して、この手の話題を欲する連中にばら撒くのも良し、金を脅し取るも良し。まぁ、美味い飯を食え、多少は使えそうなカードを得たと思えばいいか)

思考するエースの表情自体は変わらないが、二年間で人を観察し気配を察する技術を磨かれてしまったシャルロットは目の前にいる少年の人類種の天敵として全ての人類を一切の例外なく絶望の底へと叩き落した男の敵意。

それを感じてしまいシャルロットは体を震わせながら全身から冷たい汗を噴出した。

「…君の協力に感謝する。約束は守ろう」

エースはシャルロットの両手首を拘束していたジャケットを解きそのままジャケットを着込み、そそくさと足枷にしていたスカートを顔を赤らめながら上げるシャルロットを尻目にアタッシュケースを回収した。

そして、待機状態にしているオレンジ色のペンダントをシャルロット向けて投げ渡した。

「あ、あのエーアスト・アレスさん…」

約束を守り終えたので窓からディターミネイションを起動させ飛び出ようとしたエースだが、シャルロットの静止の声に体を止める。

「デュノア社をどうするのですか?」

「失敗したらどうなるか分からないのに君は命じられるがまま何も考えずに行動したのか?」

「う…」

シャルロットのしようとした事は命じられ、拒否する権利もなく、嫌々した事とは言え一人の人間の人生を狂わせる事も可能なことだ。

その事を理解できないほど、シャルロットは幼稚ではない。

計画の発案者はシャルロットではないのだが、エースの言葉にシャルロットは顔を曇らせ自責の念に囚われた。

そして、それに畳み掛けるかのようにエースは言葉を続ける。

「やられた以上やり返さないといけない。これはどこにも属さない傭兵として、果たさねばならない自衛で義務でもある」

「それって…」

「デュノア社に相応の報いを受けてもらう。無論君もその対象だ。悪いが、報復せねば俺は見くびられる。自分の身は自分で守るしかないのでな」

エースの言葉は研ぎ澄まされた刃のようにシャルロットに突き刺さり、顔を青くさせた。

「まぁ、今君やネリス・デュノアを殺したり、デュノア社を物理的に潰そうなんて事したら俺は世界中のお尋ね者になるだろう。だが、必ず報復はするつもりだ」

昼にシャルロットに見せた優しげな笑みとは全くの対照的な誰もが畏怖を抱かせるような暗く冷たい笑み。

一瞬でも見た優しさが仇となり、よりシャルロットの心の奥底にまでエースという恐怖を植え付けることになった。

「ではまた会おうお嬢さん。楽しみに待っているといい」

そして、シャルロットの返事を聞かぬまま、エースは窓から飛び降りディターミネイションを起動させた。

アセンブル――

HEAD

HD-LAHIRE

CORE

CR-LAHIRE

ARMS

XAM-SOBRERO

LEGS

XLG-SOBRERO

装甲を身に纏い、そしてメインブースターを起動させ、あまり目立たないようにOBを使わずドイツへと低速で飛行しながら向かって行った。

この後エースがロレフに苦笑されたのは言うまでもない。

 

「コアの防衛ですか…」

エースがフランスからドイツに帰還した二日後、エースが戦闘を行った事により壊れた設備や壁が直された司令室。

そこにはラウラとロレフの二人の姿。

二人の表情は硬く、その場に重苦しい雰囲気が流れている。

「そうだ。先日君とハルフォーフ大尉が撃破した無人機のISのコアだが、あれを国際IS委員会に引き渡すことが決まった。そのため、4月からIS学園に入学して貰う予定だったが、少し先延ばし、ISコアを防衛してもらう」

「……」

硬いラウラの表情に僅かに不満を表すように顔をしかめた。

それに対し、ロレフは少しばかり申し訳なさそうな顔を浮かべた。

ドイツ軍陸軍の大将として、ラウラの出生、黒ウサギ隊が生まれた経緯やその他のドイツの黒い部分を知っている。

そして、様々な事情を持つラウラを良い意味でも悪い意味でも変えた人物の存在も知っている。

それだけに、今回の延期はロレフの私情としてはあまり良くは思っていない。

だが、人の上に立つ者としてはそれだけの理由で戦力を外すのは論外だ。

「織斑千冬教官に会うのが楽しみだったかな?」

同情ではなく、むしろ煽り、試すかのような口調でロレフはラウラに問いかけた。

それに対しラウラはしかめていた顔から元の何も感情を感じさせない無表情な顔へと戻す。

その表情はまるで、彫刻だ。柔らかみがないが、故にきめ細やかに整えられた様に美しい。

「楽しみじゃないと言えば嘘になるます。ですが、私は命じられれば従うまでです。ところで、あの男の監視はどうなるのですか?」

ラウラの表情と答えにロレフは納得するように頷き、ラウラの質問に答える。

「エーアスト君か、彼の事を含めて君を呼んだ。ちょうど良い、今言おう。彼の処遇が決まった、近々ここから去るだろう」

「…分かりました。私の部隊員達に伝えておきます。コア防衛の話を戻しましょう。期限は?」

「二か月だ。その間にコアからできる限りの情報を引き出すつもり、だそうだ。詳しくは指令書に書いてある。では働きに期待する」

ラウラはロレフから差し出された指令書を受け取り一通り読み終えた後。

「シュヴァルツェ・ハーゼ部隊長ラウラ・ボーテヴィッヒ少佐。ISコア防衛命令を受領しました!」

敬礼をして、頷くロレフを見た後、ラウラは指令室を出ていった。

話す相手がいなくなり、様々な電子音を奏でながら動く部下達を眺め、何も問題ない事を確認した後、届けられた書類を改めて読み上げる。

その書類にはファントム・タスク<亡国機業>と名乗った組織がアメリカの第二世代型ISアラクネ強奪したと書かれてあった。

ファントム・タスクという存在は、陰謀論の好きな者達に生み出された都市伝説のように各国様々な解釈の違いがあるが、大体は存在しないものと扱われてきた。

何せ第二次世界大戦中に生まれた組織で、国家や、宗教等に囚われない変わった組織で、組織と束ねる上で重要な目的も不明もしくは目的そのものもないのではと言われている組織が50年以上も存在し続けられるのか。

ロレフはそれを否と考えていた。

だから組織の存在を認めていなかった。

だが、アメリカの基地からアラクネを強奪したという証言と映像により、ファントム・タスクという組織の存在をロレフは認めざる負えなくなった。

「…厄介な事にならんといいが」

ISという、世界で最も重要性が高い兵器を強奪した組織を、ロレフは現時点敵になった場合、厄介だと確信しているエースを仮想敵として想定し、持つ知識を集め対抗策を考え始めた。




Q:いつになったら本編へ?
A:あと数話以内には本編へ行かせます

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