IS×AC<天敵と呼ばれた傭兵>   作:サボり王 ニート

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一週間過ぎましたが、あけましておはようございます。
色々と面倒事が続き、更新速度が遅くなりますがよろしくお願いします。


8 帰還。そして再び

「そちらの時間ですと、グーテンモルゲン(おはようございます)でしょうか?国際IS委員会。マリー・エバンです

現金と書類は届きましたか?

インドからお帰りなりお疲れでしょうが、ミッションを連絡します。

今回はフランスのデュノア社専用アリーナにて貴方に模擬戦を行ってもらいます。

日時は五日後の15時。対戦相手はデュノア社の社長令嬢シャルロット・デュノアです。ISは第二世代型のラファール・リヴァイヴ・カスタムII。

大容量の拡張領域<バススロット>を持ち、その恩恵で戦闘状況に合わせ多種多様な武器の中から最適な武器を選ぶことが出来るラファール・リヴァイヴのカスタム機です。

そして、それを使うシャルロット・デュノアも、冷静に状況を見極め、戦闘距離に合わせ全ての武器を駆使することが出来る人物です。

貴方のISの性能を考えて、苦戦はあり得ないと思いますが、気を付けてください。

報酬は3億5千万ユーロ(約5百億円)。ただし、もし負ければ報酬はなしです」

インドから帰還し、エースは少しだけ仮眠を取ろうとしたら、再び国際IS委員会からのミッションの依頼が来た。

「随分と報酬の値が上がったな。あと、試験は合格だと思ったのだが?」

「勿論合格です。ですが、これは言うなれば第二の試験です。報酬については、我々国際IS委員会は、貴方の今後の働きを期待する値として用意させていただきました」

「・・・一応聞く。これで試験とやらは最後か?」

「えぇ、これで最後です。ご活躍を期待します」

電話を切り、本物であると確認した現金と、まだ読んでいないミッションの書類をテーブルに投げ捨て、エースは改めてベットに転がる。

「また罠でも仕掛けるつもりか?まったく・・・」

エースは一人愚痴を零す。これから付き合っていく組織に呆れ始めているのだ。

「とりあえず少しだけ寝るか」

ふかふかとしたベットの柔らかさ。そして、ミッションの疲れによりすぐにエースに睡魔が襲う。

瞼を閉じその睡魔の赴くまま、意識を喪失させた。

 

 

 

ほぅ、インテリオルの実験体と聞いて奪ってみれば。中々面白い経歴をしているじゃないかお前。

 

分からない?・・・なるほどそこだけ記憶を失ったか。

 

名前は?

 

ないだと?

 

・・・まぁいい。私の名前はセレン・ヘイズだ。

 

これからよろしく頼むぞ。お前。

 

(・・・これはセレンと出会った時の?それに実験体?どういう事だ・・・)

目の前にいる間違いなく記憶の中と何も変わらないセレンにエースは手を伸ばす。

だが、何かが切れる音と崩れ落ちる音に、エースは夢の世界から現実の世界へと意識をすぐに覚醒させる。

枕の下に置いておいたGA製ハンドガンを持ち、ベットから飛び起き、テーブルを斜めに倒し身を隠す。そして、音の原因に視線を追わせる。

真っ二つに分かれたドアの上に立つ黒い軍服を着た銀髪の少女を見て、エースはハンドガンを下ろした。

 

テーブルの上に置いてあった本や書類などを片付けて終えて、エースは一息つく。

「ずいぶんと粗いモーニングコールだなボーデヴィッヒ少佐」

「呼んでも反応がなかったのでな。インドへ行ったついでに逃げたかと思っていたらいたのか」

「残念ながら逃げても俺にメリットがない。で、ドアはどうするんだ?」

「知らん」

当然と言わんばかりに自信たっぷりに答えたラウラに、呆れを越してついつい笑みを零す。

「まぁ、あとでシュタイベルト大将に誤って壊したとでも言っておくか。そういえば、朝食か?」

「そうだ。付いて来い」

「もう食堂の場所は知っているんだ。わざわざ起こしに来なくてもいいのだが」

一週間とちょっとの間、毎朝エースを起こしに来て、食堂へ案内してくれる黒ウサギ隊の隊員達には一応感謝してるが、特に朝が弱いわけでも、何度も教わらなければ覚えられない子供でもないエースの正直な気持ちは要らんというのが現状だ。

「そう言うな。お前のせいで、私達は訓練しかやることがない」

「それは悪いことをしたな。何、あともう一週間すればいなくなるさ」

「・・・そうか」

エースの個室を出た後、二人は会話する事なく黙々と廊下を歩く。

片や、黒色の軍服に、仏頂面でなければ年相応の可愛らしさを出すであろう銀色の髪の美少女。

片や、黒色ジーパンと灰色のYシャツに、顔は中性的でとても整っているが顔が少し厳つい白金色の髪の美少年。

ラウラは黒ウサギ隊の隊長として、またドイツの冷水としてドイツ軍人達によく知られているが、基地内ではエースは話題が絶えないほどの有名人だ。

そんな二人が並んで歩く姿は人ごみの中に突如現れたアイドルの様に目立つ。

(最初は数人だったが、どんどん視線が多くなるな。それに、最近黒ウサギ隊以外の人も話しかけられるようになった)

自身と目的に悪影響を及ぼさない注目ならどんなに注目を集めても特に気にしないエースだが、行く先々で奇異の目と質問されるのは面倒だとは思っている。

全員に友好的な態度をしているが、知的好奇心に溢れる人は男女問わず多くいるので少しばかり疲れ始めている。

だが、今もエースは視線があったのなら男女関係なく柔らか味のない頬を緩めて笑みを浮かべる。

「アイドルにでもなったつもりか?」

ラウラは卑下するような目でエースを見る。

力を持つ人間が数多の凡人に媚びへつらうかのような態度が気に食わないのだ。

「そうならまだ楽だけどな」

「お前には力がある。力を持つ人間が、力無き凡人共相手にする必要があるのか?」

強き人間は気高く孤高であるべき。そう思っているラウラにとって、エースの姿は理想と真逆の姿だ。

見たくない物を見せられている。そんな気分を味わっている。

「あるさ。君の言う凡人共に支えられて俺は生きてるつもりだ。感謝だってしている」

「理解できんな。お前は博愛主義者なのか?」

「それは違うな。薄汚い人間を見ると生理的嫌悪くらいはするさ」

「むぅ。ならお前はなんと表現すればいいのか分からん」

「安心しろ。周りの人間からは理解されにくい人間だと理解しているつもりだ」

エースのその言葉にラウラはふと何かを思い浮かべたような顔をした。

「おい、聞いた話だとお前はどこかの研究所から逃げ出したとか聞いた。親しい人間でもいたのか?」

「いない。逃げ出したという話も嘘だ」

「なっ!じゃあお前は何者なんだ!?」

「詳しくは話す気はないが、俺は周りの人間とは体も価値観も大きくかけ離れている。だから理解出来ないのも、表現出来ないのも仕方のないことだ。気にするな」

体は様々な強化手術を受けてサイボーグと言っても過言ではない。

価値観も、感情を持つ人間なら何億と言う人間をどんな正義や悪があっても直接殺すなんて事は絶対にしないだろう。

体についてはエース自らが望んだ事だ。だが、価値観については一切共感なんてされてほしくない。あってはならないとエースは考えている。

人類の未来ためになら生きてる人間を億も殺す事も厭わないという歪んだ価値観。

そんな異常な価値観を持つ人間は、人類種の天敵と呼ばれる人間は今後の人類の歴史上自分だけでなくてはならない。

だからこそ、クレイドル03を襲撃した時に、セレンに見捨てられた時にエースは確かに悲しみの感情を抱いた。だがそれ以上に自身の価値観に共感しなかった事を、失望してくれた事が嬉しかった。

人類が滅びへの道を確定させた企業の老人達を生かすことを決めたテルミドールやそれに賛同したORCA旅団の者達を裏切った時に、制裁を与えようと、その考えは間違えていると指摘し戦ったテルミドールを、狂っているのはエースだという評価をしてくれた事が嬉しかった。

狂っている屑。エースにとって他者からの評価はそれでいいのだ。

「まぁ、俺は傭兵志願者。それでいいじゃないか?」

「いい訳あるか。それに体と価値観がかけ離れてるとはどういう事だ?」

「そのままの意味、としか言いようがない。申し訳ないが」

エースの言葉にラウラは腕を組み、少し悩み始めた。

言うべきか言わないべきかを悩んでいるのだ。

数分ほど経過して、ラウラは意を決したかのように口を開く。

「お前はアドヴァンスド(遺伝子強化試験体)という言葉を知っているか?」

(アドヴァンスド・・・意味は上等や進歩・・・強化人間(プラス)のようなものか?やはり人体実験でも?)

「知らん。なんだそれは?」

「・・・すまん聞かなかったことにしてくれ」

「あぁ・・・了解した」

(強化人間・・・その手術法を確定させるのに何千の人達が犠牲になったと聞く。だが、恩恵は確かにある。潰す必要はあるのだろうか?もっと情報が必要だ)

エースの言葉を最後に再び会話が無くなる。

それは食堂に着くまで続いた。

 

「お兄様!インドはどうでしたか!?」

「ミッションお疲れ様です!肩を揉みましょうか!?」

「今後のためにぜひ!ご教授お願いします!!」

(食事に集中出来ん・・・)

案の定、ミッションの土産話を聞きに詰め寄る黒ウサギ隊のせいで、温かい牛肉と数種類の野菜のシチューがまったく食べられない。

柔らかい旨味あふれる牛肉と甘い野菜達の味がうまく調和されていて旨いのだが、対応に忙しくスプーンをシチューに出そうにも出せない。

「話してもいいが、あまり面白い話ではないぞ?それと食事をしたらどうだ?この後、訓練が待っているぞ」

(話すといっても嘘話だがな)

軍人としては余りにも純粋な少女達にはそのまま話すには少々酷な事をしたので当然である。

黒ウサギ隊達に質問責めに合う事はすでに予想済みのエースはすでに嘘話を用意している。

飛んで行って、正面から入って、投降するよう呼びかけ、捕まえて、また飛んで帰る。

この嘘に文句を言うのなら空から見る都会は星の様に素晴らしかったと適当な事をエースは言うつもりだ。

(それにしても、隊長殿は騒ぎを静める事をしないのか・・・)

さっきから隊長ならこいつらを何とかしろと、エースは離れた席に座るラウラに視線を送るが、ラウラはその視線の意味を理解しながらも我関せずといった顔をして黙々とシチューを食べている。

(クラリッサはどこへ行ったのやら)

食堂に着いて、副隊長であるクラリッサをエースは探したがいない。

(誰かに呼び出されたのだろうか)

今になってクラリッサの黒ウサギ隊での重要性を改めて理解したエースは内心ため息を吐いた。

エースは対応が面倒になり質問の嵐に身を委ね、長い長い朝食を摂った。

 

 




Q:ま た イ ケ メ ン 設 定 主 人 公 か
A:イケメン設定は後々活かそうと考えてますので許してください

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