まいづる肉じゃが(仮題)   作:まいちん

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第10話

ハァーイ!

 

金剛デース!

 

データベースによると、日本海軍初の超弩級巡洋戦艦、金剛型の1番艦の金剛デース。

 

結構軽いノリで話してるけど、舞鶴鎮守府では第一艦隊の旗艦を勤めてるダヨー。

だから、とっても偉いんだヨー、エッヘン。

自分で言うのもなんだけど、ホンートに凄い事なんだヨ。

 

とはいっても、舞鶴鎮守府、通称「まいちん」って呼ばれてるんだけれど、……実はネ、ここに着任してまだ半年もたってないのでした。

だから、ここの事は、ほとんどあまり知らないわけ。

そもそも、艦隊の指揮なんて何の事やら。

気合いで行くしか無いネ。

 

そんなわけで、何もかも私が来る前まで第一艦隊旗艦だった扶桑に頼りっぱなしデース。ほんと、扶桑には頭がアガラナイネー。

 

じゃあ、「まいちん」に来る前は何をしてたかって?

 

……実はですネー、何にも覚えてないんデス。

 

すっからかんの、からっぽ。

 

あ、違うな。全くの空っぽって訳じゃないんだけれど、でもでも、ほとんどなんにも覚えていなかったんだヨ。

記憶喪失??

 

気がついたら、なんか自分は戦艦だったし、人型として具現化した存在である状態の私は、変な服を着らされていたんだヨ。

そんでもって「舞鶴鎮守府ヘ赴任を命ズ」とかって変なおっさんに偉そうに指示されて、何がなんだか分からないまま、何隻かの駆逐艦の艦娘に護衛されて、ここまで連れてこられたワケ。

 

今思い返せば、神奈川県の横須賀って地名の所を出発して、日本列島っていういま私たちが住んでいる島を時計回りにぐるるるっと半周くらいして、「まいちん」までやって来たワケなんだ。

長い航海だったよ。

とはいっても高速戦艦っていう名前が付いてる位だから、私は凄く速く走れるのです。

並の駆逐艦なら置き去りする60ノットで巡航できるのだ。だからそれほど時間はかからなかったっていうのが正解デス。

 

日本海と人間に呼ばれる海は、暗くて辛気くさくて寒々しいなぁって思いながら到着しました。ちなみに塩の香りはしたけれど、香辛料臭くは無かったネ。

 

「まいちん」の第一印象も日本海のイメージとまったく一緒だったヨー。

まあ……そうはいってもどうにもならないからね。

いろんな不満が沸々って沸いてきたんだけど、すぐに忘れちゃった。

何でだろ??

 

はてなはてな……ん?

 

えーっと、それから、根本的な問題。自分が何者なのかとか、何をするために生まれ、何の為に舞鶴鎮守府に来たのかなんて誰も教えてくれなかったけど、すぐに理解できたヨ。

 

艦娘ネットワーク(ここでは説明は割愛します)に接続するまでもなく、……自分が「軍艦」であるって事。それも軍艦の中でも最上位である戦艦。つまり、戦う為にこの世に生まれたってことは定められた我が運命!! って理解してたんだヨ。

何が敵であり、何と戦うのかは自分の属する艦隊の司令官が決めればいい。私はその命令のままに敵を屠り、勝利するだけ。それ以外は何も考える必要なんてない。何で戦うのか、誰のために、何のために戦うのか、敵は誰なのか……そんなものを考える必要なんてない。考えてはいけない。ただただ勝利の為だけに存在する。

 

それが私なんデスよ。

艦娘はみんなそうなダヨ。

理屈なんて抜きに頭の中の奥の奥に、それがあるのを理解してた。

だって兵器なんだお。兵器なんだ。

 

それが私の「規範意識」なのデース。

それが、金剛(こんごう)なのデース。

 

目の前に敵が現れたら、速攻でぶち殺す。完膚無きまでにぶっ壊す。視界にあるすべての敵艦をばんばん沈め、すべての敵機を薙ぎ払う。自分がどれほど被害を受けようとそんなの関係ナーイ。

とにかく勝たなきゃ意味ナシ。負けたらただのゴミに成り果てる。

勝利勝利、勝利! それが全て。全てなのデース。

 

えっと、……金剛デース。

 

金剛デース。

 


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