アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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合宿名物入浴シーンあります!


Lesson361 Summer is here! 3

 

 

 

「それにしても、なんだか懐かしいというか久しぶりな感じだよねー」

 

 キュキュッと音を立ててステップを踏みながら、翔太が話しかけてきた。

 

「確かにこんな感じで一緒にレッスンするのは久しぶりだな」

 

「良太郎君と一緒にレッスンしたのは……確か、初めてコラボしたときだったね」

 

「あー……あれももう四年前になるのか」

 

 ターンを決めながら相槌を打つと、同じくピタッとターンを決めた北斗さんと冬馬も会話に参加してきた。

 

「それは確かに懐かしいな。あんときはなぁ……黒井社長がなぁ……」

 

「あぁ、うん……」

 

「色々あったね……」

 

「この話題やめねーか?」

 

 三人の目が一斉に逸らされた。まぁ楽しい話題ではないし、他の人もいるこの状況でする話題でもなかった。素直に反省……したところで。

 

「「「「ふっ!」」」」

 

 四人で最後のポーズを揃える。うーん、なんとなくこの指のポーズするの楽しい。

 

「問題なさそうだね」

 

「こんだけ通しやりゃあ覚えるに決まってるわ」

 

「あとは細かいところを突き詰めるだけだね」

 

「そうだね」

 

「……さてと」

 

 俺と冬馬と北斗さんと翔太の四人で振り付けの通しを終えたところで、俺たちは背後を振り返った。

 

「そろそろ休憩終わりにしよっか?」

 

『……は~い……』

 

 315プロのみんなも早朝ランニングで()()()()()体力を付けたみたいだけど、やっぱりまだまだのようである。

 

 

 

 

 

 

「……分かりきってたことだけどさ」

 

「……なんだ」

 

「……リョーさんたち、ヤバいな」

 

「……本当に分かりきっていたことを……わざわざ言うな」

 

 桜庭の憎まれ口に覇気がないところからも本当に疲れ果てていることが分かる。

 

 桜庭だけではない、リョーさんとジュピターの三人を除く全員が、運動場の床から身動きが取れない状況になっていた。

 

 リョーさんこと『周藤良太郎』と『Jupiter』の直接指導を受けた結果がこれである。初日だから手加減とかそういった類の考えは存在していなかったようで、徹底的に扱かれた。

 

 そして徹底的に扱いて尚、俺たちの休憩中にすら四人は振り付けを通しで確認し続けていたのだから末恐ろしい。ここまでくると体力云々を超えた何か超常的な力が働いているようにしか思えなかった。

 

 ちなみにその四人は「それじゃあ俺たちは夕飯作ってきますねー」「お前らはさっさと風呂入っちまえよー」と疲れた様子もなく運動場を去って行ってしまった。

 

 ついでにアイドルとしての先輩にあたる涼や元プロサッカー選手である蒼井兄弟も、若干ふらつきながらもしっかりと立ち上がってリョーさんたちを手伝いに行った。この辺りに地力の違いを感じる。

 

「まさか、これほどの実力差があるとは……」

 

「いや~……分かってたことでしょ……」

 

「べ、べりー……たいやーど……」

 

「す、すどうりょうたろうと……じゅぴたーの……つくる、ごはん……」

 

 俺たちドラスタやSEMの三人やみのりさんといった年長組のダメージは相当なもので、全員例外なく床に倒れ伏していた。

 

 いや、みのりさんだけ亡者のように這い蹲って運動場の入口へと向かおうとしていた。どうやらトップアイドル四人が作る夕飯に引き寄せられているようなのだが、ゾンビみたいでちょっと怖い。

 

「もーむりっす……ハイパーメガマックスうごけないっす……」

 

「四季、疲れてハイパーメガマックスの使い方が雑になってるぞ……」

 

「こんなもんもともと適当っすよ……」

 

「もうちょっとアイデンティティー大事にしてこうぜ……!?」

 

 かといって学生組にダメージがないわけではなく、息も絶え絶えといった様子。しかし軽口を叩く余裕ぐらいはあるらしい。

 

「……お風呂……いかないとね……」

 

「……そうだね」

 

 そして夏来と旬の呟きに学生組がもそもそと立ち上がり始めた。もう動けるというのか……。

 

「……う、うぉぉぉ! 負けるものかぁぁぁ……!」

 

 俺もいつまでもこのままでいるわけにもいかないので、無理やり気合を入れて身体を起こす。ヒーローは……いつだって……立ち上がるんだ……!

 

「風呂だ! 気合入れていくぞ! 翼! 桜庭!」

 

「は、はい……」

 

「やかましい……」

 

 大概のことはお風呂に入ればなんとかなるんだ! まずは大きい湯船に浸かって体力を回復するんだ!

 

 俺たちの入浴は、これからだ!

 

 

 

 

 

 

「あーおっきなお風呂で足伸ばしたーい」

 

「今日のところは我慢しましょう、志希ちゃん」

 

「………………」

 

 あ、ありのまま今起こっていることを話すぜ……。

 

『ぼくは346プロのシャワー室で汗を流そうと思ったらいつのまにかそこは123プロのシャワー室のようだった』

 

 な、何を言ってるのかわからねーと思うが、ぼくも何が起こっているのか分からなかった……頭がどうにかなりそうだ……白昼夢だとか幻覚だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わっているぜ……。

 

 いやマジでどうなってんの!?

 

 

 

 なんで()()()()()()()()()()がここにいるの!?

 

 

 

 いや分かるよ!? Pサマから説明されてるから346プロに出向してきてるってことは分かるよ!? でもそれとこれとは別じゃない!? まさかこの二人とシャワー室でコンニチワするとは思わないじゃん!? 時間的にはコンバンワかな!?

 

 いやいや落ち着け落ち着くんだぼく。今までにだってこのシャワー室でトップアイドルとコンバンワしたことなんていくらでもあったじゃないか。その度にぼくは(精神的に)危機的な状況を切り抜けてきた。そう、だから今回も行ける! 例え相手が激推しである123プロのアイドルであったとしても!

 

 いくぞシャワー室――シャンプーの貯蔵は十分か。

 

 

 

「んー? あ、りあむじゃん」

 

「あら、りあむちゃん、こんばんわぁ」

 

「フヒョッ」

 

 

 

 一瞬でバレたあああぁぁぁ!?

 

「うふふっ、お邪魔してますねぇ」

 

「ア、イヤ、寧ロ、オ邪魔ナノハ、ぼくナノデ、ハイ」

 

 うっひゃあああぁぁぁ! この間初めて顔を合わせたときも思ったけど、メッチャ可愛いぃぃぃ! 顔ちっせぇぇぇ! そしてははは裸ぁぁぁ!

 

「……じゅ、十万円で足りますか……!?」

 

「何がですか!?」

 

「足りませんよねゴメンナサイ!」

 

「本当に何がですか!?」

 

 だって、あの『佐久間まゆ』ちゃんの裸を見た以上、出すもの出さないとぼくの気が済まない……!

 

「んー? キミ、なんだかリョータローと似たようなこと言うんだねー」

 

 ほぎゃあああぁぁぁ! 志希ちゃんも可愛いぃぃぃ! 腰ほっせぇぇぇ!

 

「……心臓を……売ります……!」

 

「心臓!?」

 

「売るなら二つある腎臓じゃない?」

 

「腎臓も売っちゃダメですからね!?」

 

 

 

「もう! びっくりしちゃいますから、あんまり変なこと言っちゃダメですよ! メッ!」

 

「ふぁ、ふぁい」

 

 人差し指を立てて叱るまゆちゃんが可愛すぎて再び叫びそうになったがグッと堪える。

 

 ……シャワー上がりのまゆちゃんも可愛いなぁ……。

 

「んー、話終わったー?」

 

「あっ! また髪の毛が濡れたままじゃないですかぁ! もー! ほらここに座って!」

 

「はーい」

 

 脱衣所の鏡の前に志希ちゃんを座らせると、まゆちゃんは手慣れたようにドライヤーで彼女の髪を乾かし始めた。いいなぁ、ぼくもまゆちゃんに髪を乾かしてもらいたい……。

 

「志希ちゃんの髪の毛を乾かしながらでごめんなさいねぇ」

 

「い、いえ! お気になさらず! ぼくも気にしてないので!」

 

「うふふっ、そんなに固くならないでいいのよぉ。私、りあむちゃんとお話したいと思っていたの」

 

「……えっ!?」

 

 なんで!? なんで佐久間まゆちゃんがぼくみたいな木っ端と!?

 

「りあむちゃんって、良太郎さん……じゃなかった、『遊び人のリョーさん』と仲がいいのよねぇ?」

 

「……えええぇぇぇ!?」

 

 なんで!? なんで佐久間まゆちゃんがリョーさんのこと知ってるの!?

 

「今アイドルの中でも少しだけ有名人なのよぉ。ウチの事務所にも知り合いがいるの」

 

(……まぁ、知り合いには間違いないけど)

 

 そ、そうだったんだ……なんというか、すげぇなリョーさん……変人も極めればアイドルに認知されるようになるのか。

 

「りあむちゃんはリョーさんとプライベートでお知り合いなのよねぇ? 少しだけでいいので、聞かせてくれない?」

 

(……相変わらずリョータローのことに関すると、見境ないにゃー)

 

 ……なんかちょっとだけイラッとした。リョーさんの癖に生意気だぞ。

 

 ということで、少々まゆちゃんからの評価を落とすようなアレコレを吹き込んでやろう。

 

「リョーさんはですね! それはもう、相当なおっぱい星人なんですよ!」

 

「ふむふむ」

 

(知ってる)

 

「普段はアイドルの歌やダンスのアレコレを語るくせに、とにかくおっぱい星人で765プロの三浦あずさや四条貴音がそりゃあもうお気に入りで!」

 

「そうなんですねぇ」

 

(それも知ってる)

 

 

 

「あと、ぼくのこの無駄乳も大好きで!」

 

「……へぇ」

 

(うわ今部屋の温度が二度ぐらい下がった気がする)

 

 

 

「ことあるごとにぼくの胸をチラチラ見てるんですよ! なんだったらガン見ですよガン見! ぼくもこの無駄にデカい乳見られることは多いからそんなに目くじらは立てないんですけど、それを良いことにめっちゃ見てくるんですよ! いやぁホント変態ですよリョーさん! 無駄にデカいだけのこの胸! めっちゃ見てくるんですから! リョーさんきっとぼくのこと大好きなんですよ!」

 

「………………」

 

(今めっちゃ失踪したい)

 

 

 

「いやぁ好かれちゃって困るなぁ! 今のぼくはアイドルだし、色々と困っちゃうなぁ! とまぁリョーさんってのはこんな人で……」

 

「ねぇ、りあむちゃぁん」

 

 ……え、なんでまゆちゃんそんなにめっちゃ低い声出してるの?

 

 

 

「私、もぉっとりあむちゃんと仲良くなりたいなぁ」

 

 

 

「………………」

 

 普段から余計なことを言って炎上することが多いぼくではあるのだが――。

 

 

 

 ――またぼく何かやっちゃいました?

 

 

 




・この指のポーズ
合同ライブでやりまくってたら両手で出来るようになった。

・入浴シーン
※315プロの入浴シーンとは言っていない。

・ありのまま今起こっていることを話すぜ……。
なんかもう手垢が付きまくったポルナレフネタ。

・いくぞシャワー室――シャンプーの貯蔵は十分か。
こちらも手垢が付きまくった無限の剣製ネタ。

・またぼく何かやっちゃいました?
知らない間にアニメが始まってて終わってたやつ。



 アニメでも315プロの入浴シーンはやってなかったので()

 夏合宿回は無駄に重い話なんかはせず、軽く終わらせる予定です。息抜き息抜き。

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