アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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またの名を円卓会議編(嘘)


Lesson327 集いし八つの芸能事務所!

 

 

 

「皆さんに、一つご報告があります」

 

 突然、厳つい顔のボクたちのPサマが、ボクたち『#ユニット名募集中』を集めて言った。

 

「辻野あかりさん、砂塚あきらさん、夢見りあむさん……お三方には、年末に行われるイベントへと参加していただくことになりました」

 

「年末に行われるイベント……ですか?」

 

「その言い方からすると、346プロのイベントじゃなさそうデスね?」

 

 あかりちゃんとあきらちゃんが揃って首を傾げる姿が可愛いなぁなんてことを考えつつ、ボクも二人と同じように内心で首を傾げる。事務所外のイベント、しかも今から年末を見据えて動くとなると、かなりの大掛かりなイベントのような気が……。

 

「はい。……皆さんも既に一度は耳にされているかもしれませんが……」

 

 そう言いつつPサマが取り出して机の上に置いた一枚の書類を、ボクたち三人は覗き込んだ。

 

 

 

「皆さんには『八事務所合同ライブ』に参加していただきます」

 

 

 

「「「えええぇぇぇ!?」」」

 

 目ん玉飛び出るかと思った。

 

「ちょっ、Pサマ本気で言ってんの!?」

 

「こ、これってあれデスよね!? 123プロと1054プロが主催で行われるっていうあの……!?」

 

「す、す、すっごく大きなイベントじゃないですか!?」

 

 三人揃って滅茶苦茶動揺してしまったが、無理もないというか当然の反応。寧ろ一人もソファーから転げ落ちなかったことが奇跡である。ボクはちょっと危なかった。

 

「ボクたちみたいな木っ端じゃなくて、普通こういうでっかいイベントはもっと有名なアイドルが出るもんじゃないの!?」

 

 346プロダクションには『ニュージェネレーションズ』や『LOVE LAIKA』みたいな大人気ユニットは沢山いるし、『翠の歌姫』と称されるようなスーパートップアイドルな高垣楓さんだっている。そんな346プロの中でわざわざボクたちみたいな新人に毛が生えたレベルのアイドルユニットに出演依頼が出るなんて、とても信じられなかった。誰が選んだのか知らないけど、ちょっと頭おかしいよ?

 

「私は、貴女たちのことを木っ端だとは思っていません。もっと自信を持ってください」

 

「「「………………」」」

 

 やだ、ちょっとキュンってしちゃった。

 

「先輩のアイドルの皆さんという点で言えば、数名他の方々の参加も予定しています。しかし先方からは『是非若い芽の積極的な参加を』という要望があったのです」

 

「若い芽……デスか」

 

「えっと……」

 

「あかりちゃん? 今なんでボクのこと見た? ん?」

 

 ボクだってまだ十九だぞぉぉぉ!? 十分若いに決まってるだろぉぉぉ!? そもそも若い芽ってそういう意味じゃなぁぁぁい!

 

「今回のイベントは全国クラスの規模の大きなものとなります。年末の開催が予定されたライブですが、皆さんにはこのイベントに向けて活動を進めていきたいと考えています」

 

「つまりそれが私たちの今年の目標ってことデスね」

 

「つまり育成目標……それまでにファン数が一定以上にならないと育成失敗になったりするわけね」

 

「#もしかして #お馬さんのゲーム」

 

 ともあれ、明確な目標が決まっているというのはそれはそれで悪くない。ただ闇雲に頑張るというよりは、しっかりとタスクが決まっていた方が人間は動きやすい。

 

「……皆さん、頑張りましょう」

 

「「「はい!」」」

 

 よーし、メンタルクソ雑魚なりあむちゃんだけど、年末の話だったらまだまだ先だし余裕だな! 流石に一年もあれば心の準備ぐらいできるでしょ! 多分!

 

「つきましては、本日ライブに参加する全事務所でのリモート会議が予定されていますので、皆さんにも参加していただきます」

 

 おや? 風向き変わったぞ?

 

「……まさか、全事務所ってことは……」

 

 

 

「はい。主催である『周藤良太郎』さんと『東豪寺麗華』さんも参加されます」

 

 

 

「ほげえええぇぇぇ!?」

 

「りあむサン、せめてもうちょっと女性らしい悲鳴をデスね……」

 

 そんなこと言ってる場合じゃないって! だって『周藤良太郎』と『東豪寺麗華』だよ!? 現在進行形でアイドル界の伝説を作り続ける文字通りの生きる伝説だよ!? そんな人たちと画面越しとはいえ直接会うんだよ!?

 

「画面越しは直接ではないと思いマスが」

 

 言葉の綾!

 

「というかあきらちゃんはどうしてそんなに冷静なの!?」

 

 ホラ見てよ! あかりちゃんなんか驚きすぎて白目向いちゃってるよ!? 手でりんごろうのマスコットを握り潰すんじゃないかって勢いだよ!? 

 

「貴女たち二人がそれだけ取り乱してるから、逆に冷静にならざるを得なかったんデスよ」

 

 うっわマジでどうしようどうしようどうしよう心の準備っていうか覚悟が決まらないというか何か用意するべきなんじゃないかっていうか……!?

 

「スパチャは投げれるの!?」

 

「プロデューサーサン、今からでも参加メンバーを選抜しなおすべきでは?」

 

「………………」

 

 せめて否定して!

 

 

 

(周藤良太郎サン……りあむサンのこの感じからすると、まだ伝えてないんデスね)

 

 

 

 

 

 

 さて、初めての315プロ訪問から早一週間。事務所に帰ったら何故か兄貴に怒られ「違うもんちゃんと()()()()()()って言ったもん!」という言い訳の言葉もあっさりと退けられ既に相棒の風格を漂わせるポリバケツ君との熱い一時間を過ごしたなんてこともあったが、とにかく一週間が経ったのである。

 

「あの拷問のような罰をそれだけで済ませるリョータローさんもリョータローさんですよね」

 

「流石ですぅ!」

 

「なにが流石なんですか……?」

 

 なんとなく久しぶりな気がする恵美ちゃん・まゆちゃん・志保ちゃんの三人娘と共に、現在事務所の会議室。本日これから今回の『八事務所合同ライブ』の第一回打ち合わせが行われる予定になっていた。

 

 ただ参加事務所と参加アイドルが多いため、全員ではなく各事務所の代表者や一部アイドルだけが参加するリモート会議となっている。今流行ってるらしいし。

 

「……なんで今リモート会議が流行ってるんだ?」

 

「さぁ?」

 

「なんでですかねぇ?」

 

「よく分かりませんけど、とりあえず流行ってますね」

 

 俺を含めて誰も知らないが、とりあえず流行っているらしい。

 

 ついでに最近では映画館でのライブビューイングじゃなくて各家庭でのライブストリーミング配信も流行ってるらしいね。

 

「……なんでだろうね?」

 

「さぁ?」

 

「なんでですかねぇ?」

 

「よく分かりませんけど、とりあえず流行ってますね」

 

 やっぱり俺を含めて誰も知らないが、とりあえず流行っているらしい。

 

 何故か触れてはいけない世界の謎に迫ってしまったような気分になったが、そんなことはさておこう。

 

「そろそろログインしておこうか」

 

 会議の予定時間は午後三時。まだ三十分前だが一足先にログインをしてもいいだろう。こっちの画面の映り方も確認しておきたいし。

 

 というわけでログイン。……うん、しっかりと横並びに座っている俺たちの姿が映っている。一応代表して俺の目の前の机にマイクを置いているが、コードに余裕があるので他の三人にもすぐにマイクを渡せるようになっているため、問題ないだろう。

 

「あっ、ごめんなさい良太郎さん! お飲み物をご用意するの忘れてましたぁ!」

 

 突然まゆちゃんが「しまった!」という表情になって口元を抑えた。確かに言われてみれば何も用意していなかったが、それを忘れていたのは俺も同じだし、そもそもミスというわけではないのだけれど……。

 

「すぐにご用意しますね! 何が良いですか!?」

 

「……それじゃあ折角だし、コーヒーをお願いしようかな」

 

「分かりましたぁ!」

 

「まゆさん、お手伝いします」

 

「ありがとうございます、志保ちゃん。恵美ちゃんはどうしますかぁ?」

 

「えっと、それじゃあアタシもコーヒーで。ありがとう、まゆ」

 

「いえいえ」

 

 まゆちゃんと志保ちゃんが席を立って会議室を後にした。

 

「あー手伝いそびれちゃったーちょっとだけ罪悪感ー」

 

「まゆちゃんも志保ちゃんも気にしないと思うけどね」

 

 どうやら志保ちゃんに先を越されて手伝いを申し出ることが出来なかったことに対して不満があるらしい恵美ちゃん。唇を尖らせて不満そうにする彼女の姿を微笑ましく思っていると、ピコンという電子音がノートパソコンから聞こえてきた。どうやら誰かログインしてきたらしい。

 

 さて誰が……。

 

 

 

『………………』

 

「「っ!?」

 

 

 

 そこにはめっちゃドアップで映る厳つい顔の男性の姿が!

 

 

 

『……お疲れ様です、123プロの皆さん』

 

「「……お、お疲れ様でーす」」

 

 もしかしなくても346プロの武内さんだった。見知った顔であるにも関わらず、思わず恵美ちゃんと二人で固まっちゃったぞ。

 

『……周藤さん、今回はこのような素晴らしいステージの機会を与えてくださったこと、346プロダクションを代表してお礼を……』

 

「あーいいですって、まだ会議すら始まってないんですから。そういうお堅いのなしなし」

 

 深々と頭を下げてつむじを見せてこようとする武内さんを、軽い口調で押し留める。

 

「寧ろこちらに参加要請に応じてくれたことに感謝してるんですから、一先ずこの場はイーブンってことにしておいてください」

 

『……はい、ありがとうございます』

 

 うんうん、武内さんも割といい感じに笑えるようになって何よりだ。

 

「それで? もしかして後ろの子たちが今回のイベントに参加してくれるシンデレラプロジェクト二期生のアイドル?」

 

 この話題を一旦さておいて、先ほどから武内さんの大きな体の後ろにチラチラと見えていた少女たちの姿が気になっていた。見覚えのある三人の少女、その中でも特に見覚えのあるピンク色の頭が見えるもんだから余計に気になっていた。

 

『はい。周藤さんにしっかりとご紹介するのはこれが初めてになりますね』

 

 武内さんが体をズラしたことで、三人の少女の姿がしっかりと画面に映った。三人とも緊張を全く隠しきれていない表情で、しかし画面に映ったことに気が付くと慌ててその場に立ち上がった。

 

「初めまして三人とも。折角だから君たちから直接自己紹介してもらいたいな」

 

 本当は初めましてではないが、それでも()()()()()()()以上その体裁は保たなければいけない。

 

『……あ、え、えっと……!』

 

 

 

辻野あ夢見!り塚あきあむ!デスす!です!

 

 

 

 ゴメン、なんだって?

 

 

 




・『#ユニット名募集中』
デレステのイベントでついに正式名称が決まったけど、こちらはもうちょいこのまま。
そのうちしっかりと改名イベントを挟みます。

・ファン数が一定数以上にならないと
メジロマックEーン

・リモート会議
・ライブストリーミング配信
なんで流行ってるんですかねぇ?
……って、数年後読み返したときに笑えるような未来になってるといいなぁ。

・ゴメン、なんだって?
『辻野あかりです!』
『砂塚あきらデス』
『夢見! りあむ! です!』



 2/8事務所。

 ついにユニ募と『周藤良太郎』の邂逅。果たしてりあむはどれほどの痴態を晒すのか!? 頑張れりあむ! お前がリョーさんの正体を知るのはもうちょい先だ!



『どうでもいい小話』

 デレマス、コンステ二日間当選しました! 二日目はSS!

 唯ちゃん! 加蓮! ソロ曲は二日目のメインステージでお願いします!

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