アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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アイ転は新キャラをこうする()


Lesson269 少女たちの夏の始まり 3

 

 

 

「えっ、今『東豪寺財閥が経営して麗華が運営するUTX学園秋葉原分校の生徒であり、麗華が手塩をかけて育てている三人の女子高生アイドルがついに765プロ劇場シアターのステージに立つことになり、今晩シアター組のアイドルと対面している頃だ』って言った?」

 

「聞き返す必要が無いぐらいハッキリと聞こえてるじゃん」

 

 テレビ局の廊下でたまたま一緒になったともみから、そんな面白そうな話を聞くことが出来た。

 

「そうか、ちゃんと話進んでたんだな。全く俺の耳に入ってこなかったから、まだ先の話かと思ってた」

 

「麗華が情報統制をしっかりとしたからね。本気を出せばリョウにも隠し通せるって知って麗華喜んでたよ」

 

 人をそんな凄い情報屋みたいな扱いしないでほしい。俺はただ芸能界に知り合いが沢山いて、その人たちからちょっとずつ情報を貰ってその見返りにちょっとずつ情報を渡して、たまに個人的なお礼を渡したりしているうちにいつの間にか色んな人から色んな話が聞けるようになってるだけである。

 

「一番タチの悪いタイプの情報屋だよ」

 

 基本的に善意で動いているというところがポイントである。

 

「それで? どんな子たちなんだ?」

 

「胸が大きな子は一人だけだよ」

 

「なんで真っ先にその情報言ったの?」

 

「リョウなら絶対にこれを聞きたがるって、わたしは信じてたから」

 

「ともみ……」

 

 隣を歩くともみと、コツンと拳を合わせる。

 

 

 

「ゆ「ゆうじょうパ」パワー!」

 

 ツッコミ役がいない場合の俺とともみの会話はこうなるという一例である。

 

 

 

「で?」

 

「自分で言うのもアレだけど、わたしたちと似たタイプの三人組ユニットだよ。元々アイドル選抜クラスで麗華が目を付けた子たちなの」

 

「ふーん。やっぱり自分たちに似た子たちに何かしら思うことがあったのかね」

 

「多分、麗華は()()()()()()王道を育てようとしてるんだと思う」

 

 なるほどね。自分たちこそが『王』だから、か。

 

「でもしばらくは正式にアイドルデビューさせるつもりはないんだって。具体的には三年ぐらい」

 

「え、なんで?」

 

 いや765のシアターでステージに立つ経験をさせるぐらいだから、それなりのキャリアを積んでからデビューさせるつもりなのは分かってたけど、随分と長いな。

 

「シニア級までじっくりと育てないとね」

 

「確かにちょうどメイクデビュー後の時期で間違ってないからな」

 

 まだ頭がトレセン学園から帰ってきていない二人だった。

 

「タウラス杯どう?」

 

「わたしのミホノブルボンがジェットストリームゴルシに轢き殺された」

 

「一人はお前のゴルシなんだよなぁ」

 

 閑話休題(ぜんぜんかてねぇ)

 

「麗華はトップアイドルでもありプロデューサーでもあり、『校長先生』でもあるからね」

 

 『校長先生』で『三年』ってことは、高校の三年は学業に専念させるってことか? でも芸能科の高校なんだからそれこそ学業に専念となると……いや待てよ。

 

「……そうか、()()()()()()()をさせるつもりなのか」

 

「流石リョウ。感想で『まるで未来が分かってるかのような察しの良さ』と揶揄されただけのことはあるね」

 

「お話を円滑に進めるためだから仕方ないね」

 

 もしくは電波が降って来たってことにしておいてくれ。

 

「つまり麗華はその三人を『UTX学園のスクールアイドル』として活動させるんだな」

 

「そういうこと。麗華は『今はまだ部活動レベルだったとしても、きっとこの波はまだまだ大きくなる。いや、寧ろ私が大きくしてみせる』って言ってた」

 

「モノマネ上手だね」

 

「幼馴染だからね」

 

 しかしそうか。麗華もスクールアイドルに目を付けるとは思っていたが、()()()()()()()()スクールアイドルを育てるつもりだとは思っていなかった。俺はてっきりそっちは生徒の自主性に任せて、その三人はさっさとメジャーデビューさせるものだとばかり考えていた。

 

 だが麗華は、まだ名も知らぬ三人の少女を『スクールアイドル時代の火付け役』として育てるつもりだったんだ。

 

 確かに『トップアイドルから直接指導を受けることが出来る』というのがUTX学園の利点の一つだ。きっと彼女たちが他のスクールアイドルたちから頭一つ抜き出てしまうことは確実だろう。

 

 

 

 だからこそ、そんな頂点に立つであろう彼女たちへの『挑戦者』はきっと現れる。

 

 

 

 麗華の秘蔵っ子も楽しみだ。しかし俺はそれ以上に、そんな『挑戦者』たちの存在も楽しみだった。

 

「っと、わたしこっち」

 

「俺はこっちだ」

 

 お互いに手を振り「またね~」と軽く別れる。久しぶりに話したはずなのだが、そんなことを一切感じないぐらいの気軽さだった。

 

「……って、そういえば結局どんな子たちか聞いてないぞ」

 

 新しい情報は『大乳な子が一人いる』ということだけだった。いや、これはこれで俺的には重要な情報なんだけど。超楽しみ。

 

 けどまぁ、なんだ。あの麗華が目を付けた『トップアイドルの原石』だ。

 

 

 

「きっと自信と向上心に溢れた子たちなんだろうな」

 

 

 

 

 

 

「っ……!」

 

 プロデューサーに促されて入室してきた三人の姿を見た瞬間、私は息を呑んでしまった。

 

 プロデューサーは「まだアイドルじゃない」と言った。それが本当ならばきっと彼女たちはアイドル候補生かそれに準ずる存在なのだろう。

 

 でも、彼女たちはまるでそんなことを感じさせない堂々とした佇まいで、自信に満ち溢れた表情で、私たち劇場アイドルの前に立っていた。

 

「し、静香ちゃん、大変だ……!」

 

 そんな彼女たちの様子には、普段はそういうことに関して無頓着な未来も圧倒されていて……。

 

「『ツバサ』と『エレナ』って、二人も名前同じアイドルがいるよ!?」

 

 やっぱりされていなかった。

 

「ていうか1054プロダクション!? すっごい! あの魔王エンジェルの1054プロダクションだよね!?」

 

 そう言って真っ先に駆け寄った辺り、やっぱり未来は未来だった。

 

 しかしアイドルになる前から変わらずにこの業界についての知識に乏しい未来ですら当然のように知っているビッグネーム、それが1054プロダクションだ。

 

 私たちだってあの765プロダクションに所属している身だが、まだその肩書を背負えるほどの自信は持ち合わせていない。しかし目の前の彼女たちは臆することなく、笑顔で「1054プロダクションだ」と口にしたのだ。

 

「えぇ、そうです春日未来さん。残念ながらまだデビュー前ですけど」

 

「えっ、私のこと知ってるの!?」

 

「当然です。これからお世話になる事務所の先輩方なのですから、全員の歌とダンスは見せていただきました」

 

「凄い……! 勉強熱心だ……!」

 

 いや、それぐらいはして当然というか、しなかったの多分貴女ぐらいよ未来。

 

「え、えっと、それで、プロデューサーさん……?」

 

 結局彼女たちは何故ここにいるのか、と琴葉さんがプロデューサーに尋ねる。

 

「えっとだな……」

 

 どうやら1054プロダクションの東豪寺麗華さんから765プロの社長へ直々に「ウチの事務所のアイドル候補生を、そちらのステージに立たせてもらいたい」という旨の依頼が来たらしい。曰く「デビュー前にアイドルとしての経験を積ませたい」とのことだが……。

 

「安心してください」

 

 三人の中で真ん中に立つ少女……先ほど綺羅ツバサと名乗った彼女がそう口を開いた。

 

「確かに私たちはデビュー前の身ではあります」

 

「それでも765プロダクションさんのステージに立たせていただけるように、これまでしっかりとレッスンを受けてきました」

 

「決して皆さんのステージに泥を塗るような真似はしません」

 

 ツバサさんに続いて、英玲奈さんとあんじゅさんもそう口にする。

 

 謙遜の言葉は、きっと嘘じゃない。けれどその口調から、彼女たちからは自分たちに対する絶対的な自信を感じられた。

 

 まだ彼女たちのステージを見たわけではない。それどころか顔を合わせて数分しか経っていない。

 

 

 

「必ず、1054の名に恥じないステージにしてみせます」

 

 

 

 それでも、きっと彼女たちのステージは凄いのだろうと、そう感じられた。

 

 

 

「………………」

 

(……ん?)

 

 何だろうか、自信満々にそう言い切ったツバサさんが目を伏せて黙ってしまった。見ると、微妙にプルプルと震えているような気がする。

 

 ……もしかして、本当は緊張しているのに、それを隠すために……!

 

「……流石に十五分は持たなかったな」

 

「でも今日はいつもより持ったと思うよぉ?」

 

 しかしツバサさんの両隣の二人の反応を見ると、どうやら私の考えは間違っているらしい。英玲奈さんは腕時計を見ながら小さくため息を吐いているし、そんな様子を見ながらあんじゅさんは小さく笑っていた。

 

 えっと、一体何が……?

 

「……いっ」

 

 い? と首を傾げる間もなく、小さく呟いたツバサさんが顔を上げた。

 

 

 

「今の私、すっごい決まってなかったっ!?」

 

 

 

 ……え?

 

「どう!? 英玲奈!? あんじゅ!? 今すっごいそれっぽくなかった!? それっぽかったよね!?」

 

「ツバサ」

 

「今回は麗華さんというよりはともみさん成分を増してみた感じなんだけど、やっぱりあのクールな感じも憧れるよね!」

 

「ツバサちゃん」

 

「あぁでもなぁ、りんさんの小悪魔チックな感じも魅力的だし、でもアレには私じゃちょっと背も胸も足りてないからなぁ、流石に分が悪いかなぁ、でも諦めたくないなぁ!」

 

「うるさい」

 

「いだぁ!?」

 

 英玲奈から放たれた手刀がヒートアップしていたツバサさんの頭頂部に突き刺さった。

 

「……え、え~っと……」

 

「お見苦しいところをお見せしましたぁ」

 

 私たちが困惑していることを悟ったあんじゅさんが苦笑と共に頭を下げた。

 

「実はウチのツバサちゃん、極度のアイドルオタクなんですけど、その中でも魔王エンジェルさんの狂信者でしてぇ……」

 

「まだアイドルのユニットとしての方針がなにも決まっていないのに『魔王エンジェルっぽい感じでアイドルやりたい!』と言って聞かず……」

 

「カッコいいじゃん! 魔王エンジェル!」

 

『………………』

 

 そのとき、口にはしなかったものの、私たち765プロのシアター組アイドルは大半が同じことを考えただろう。

 

 

 

 ――あぁ、亜利沙さんの同類か、と……。

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくしょぉぉぉい!? ずずっ……なんですかね、誰かありさの噂でもしたんですかね……?」

 

 

 




・「ゆ「ゆうじょうパ」パワー!」
『神代學園幻光録クル・ヌ・ギ・ア』(通称ぬぎゃー)
で検索!

・「タウラス杯どう?」
ウチはブルボンさんが三勝を逃げ切ってくれたので、ギリギリAリーグ決勝進出してしまいました。
……虐殺が始まる……!

・彼女たちへの『挑戦者』
現れるのは二年後。

・「二人も名前同じアイドルがいるよ!?」
アイマスだけで300人近いアイドルがいるんだから、被るに決まってるんだよなぁ……。

・「今の私、すっごい決まってなかったっ!?」
久 し ぶ り だ な(美城常務以来約四年ぶり二度目のキャラ崩壊)
なお作者は「殆どメディアに登場してないなら勝手にキャラ付けしてもかまへんやろ」などと供述しており()



 というわけでついにラブライブから『A-RISE』の参戦です!

 そして早々にツバサがアイ転時空に飲み込まれました。彼女は犠牲になったのだよ……犠牲の犠牲に……。

 これにより、ラブライブ無印二期三話のあのシーンが大分愉快なことになります。(そこまでは多分行かないけど)

 え? 詳しい紹介?

 ……次回!

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