はぁい! 『佐久間流周藤良太郎学』のお時間でぇす! 今日は番外編として、トップアイドル周藤良太郎が『自分よりも優れたパフォーマンスをする』と認めるアイドルのことを解説しますよぉ!
恵美ちゃんと志保ちゃんも知っている通り、良太郎さんは日本一のアイドルです。それは人気や知名度といったものだけではなく、歌やダンスといったパフォーマンスの面においても他の追随を許さないことから、日本一と称されています。例えるならば、ありとあらゆる面において百点満点なんです。流石良太郎さんですよねぇ!
……ですが残念ながら、それは
彼女たちは、各分野に置いて百点を超える存在。そしてアイドルという身でありながらそんな存在の領域に足を踏み入れているのが、良太郎さんが認めるアイドル……『歌姫』と呼ばれる三人なのです。
まずはDNAプロダクションの佐野美心さん。彼女は良太郎さんがデビューした一年後に引退をしてしまっていますが、その圧倒的な歌唱力は良太郎さんが『彼女は俺の目標だった』と言わしめるほど! ……いつそんなこと言ったか? 三年前に発売された周藤良太郎ファンクラブ会報六月号のコラム内での発言ですよぉ。
次に346プロダクションの高垣楓さん。二年前にアイドルデビューした彼女は、何と一年足らずでその実力を発揮した、まさにダークホース的な存在です。……そして、良太郎さんが珍しく『ファンだ』と公言しているアイドルの一人でもありますねぇ……ふふっ。
そして最後に、お二人もよくご存知の765プロダクションの如月千早さん。彼女はデビュー当初こそ『それなりに歌が上手い』レベルだったそうなのですが、良太郎さんとのレッスンを経て自分の限界を知り、そこから才能を開花させ、今では日本一の歌手として名前が上げられるほどの存在になりました。
……はい、そうです、
……そうですねぇ……確かに、良太郎さんのアレはアイドルの心を折る一つの要因だったとは思います。でも、現にそれを目の当たりにした千早さんはこうしてアイドルを続けていますし……そもそも
これは私の憶測ですけど……良太郎さんのアレに心を折られて辞めるのは『良太郎さんと同期、もしくはそれに近かったから』なのではないかと思うんです。圧倒的実力が知れ渡った今でこそ良太郎さんと比較しようなんて思う人はいませんが、当時の良太郎さんはまだ『駆け出しアイドル』です。同期のアイドルは、どうしても比較してしまった……そして『敵わない』と決めつけてしまった。
つまり心の奥で最初から『周藤良太郎には敵わないと思ってしまっている人』、もしくは『周藤良太郎の実力を認めている人』は、良太郎さんのアレを聞いても心が折れないのではないかと私は考えます。……なんですか志保ちゃん……「私は後者?」……はい、そうですねぇ、私は分かってますよぉ、えぇ。
以上が私なりに解釈した『覇王世代が極端に少ない理由』です。この辺りに関する考察はまた別の機会にしますねぇ。
……っと、話がだいぶ逸れちゃいましたねぇ。
良太郎さんが実力を認める三人の『歌姫』。では良太郎さんは
ズバリ! 良太郎さんが完璧に
声帯模写で声そのものは全く同じものを出すことが出来る良太郎さんが
……ですが! それはあくまでも一つの分野における話です! 彼女たちが百点超えで歌うのに対し、良太郎さんは百点。単純に点数で考えれば負けています! だがしかぁし! それと同時に良太郎さんは
私はこの、歌とダンスのクオリティを下げることなく同時に百点の実力を発揮することこそが、トップアイドル『周藤良太郎』の真価なのだと声を大にして主張したいのです!
いやぁ、気分が乗ってきましたよぉ! それではこのまま『第十八回佐久間流周藤良太郎学~周藤良太郎の歌とダンスが織り成す相乗効果~』を始めて――どこ行くんですか、恵美ちゃん、志保ちゃん! まだ終わってませんよぉ!?
「……うぅむ」
スマホを使って録音しておいた先ほどまでの俺の歌を聞き返す。黒羽先生直伝の声帯模写術のおかげで楓さんと同じ声は出せているが、やはりあの人と同じクオリティで歌うことは出来なかった。美心さんといい千早ちゃんといい、歌唱特化の彼女たちには敵いそうにない。
逆にこの三人にお願いして歌のレッスンをつけてもらうのもいいかもしれない……などと考えていると、レッスン室のドアが開く音が聞こえた。振り返るとそこにいたのは着替えを終えたリップスの五人。
「え、えっと……お待たせしました」
「大丈夫だよー」
きっと更衣室内で女の子がキャッキャしてたのだろうと脳内補完しているので、別に気にしていない。そのときのCGとかないかなぁ!? 音声データとかでもいいよ!?
「あの……良太郎さん、さっき中から楓さんの歌が聞こえてきたのですけど、あれは……?」
「ん? 聞こえてた?」
まぁいくら防音設備がしっかりとしているとはいえ、流石に完全に音漏れを防ぐことは無理だったか。別に聞かれて困るものじゃないからいいんだけど。
「もしかしてとは思いますが……良太郎さんだったり……?」
「『アッタリー! さっすがアタシだねー!』」
「!? い、今の、もしかして……!?」
「……美嘉、貴女の声だったわ……」
「『フフッ、凄いでしょ?』」
「っ!?」
「わ、今度は奏の声……!?」
「ワオッ! リョーくんの口からミカちゃんとカナデちゃんの声が! ふっしぎ~!」
「……凄いけど、良太郎さんの口から二人の声って……なんか違和感というか……キモイ」
「ん~? 声帯どーなってんのー……?」
美嘉ちゃんに続いて速水の声も出してやると、美嘉ちゃんと速水とフレちゃんは驚いてくれたが、周子ちゃんの感想は結構辛辣で志希も研究対象としか見ていなかった。声帯に関しては俺も知らない。教えてもらったはいいものの、結局どうやって声が変わってるのかよく分かってないし。
「あぁ……そういえば、一昨年の学園祭の『ロミオとジュリエット』でも、貴方が全部声を当てたって言ってたわね……こうして直接聞くのは初めてだから、脳の理解が追いついてなかったわ……」
何故か額に手を当てながら溜息を吐く速水。
「とはいえ、まさか楓さんの声を出しながら楓さんの歌を歌ってるとは思わなかったわ」
「声を変えてその人の歌を歌うってのが、俺独自のレッスンなんだよ。こーやって他人になりきって歌うことで、自分の表現の幅を広げてるんだ」
「それじゃあ、フレちゃんの声でフレちゃんの曲も歌うこと出来るの?」
「ん? 勿論出来るけど」
「聞いてみたーい! リョーくんレベルにまで進化したフレちゃんは、果たしてどんな歌を歌うのか!」
「ご要望とあらば……どうせだったら、ここにいる全員分歌ってみるか?」
「「「えっ」」」
「んー……ちょっとだけ興味はあるかなー」
割と前向きな反応を示した志希に対し、残りの三人はやや難色を示した。やっぱり男の喉から自分の声が出てくる様は、ちょっと見苦しいものがあったかな……?
「……私もお願いしようかしら」
「ちょっ、奏……!?」
何かを決意したような表情を見せる速水の肩を、焦った様子で掴む美嘉ちゃん。
(い、いいの……? な、なんか良太郎さんレベルで歌う自分の声とか聞いちゃったら、色々とショックを受けそうな気がするんだけど……!?)
(……えぇ、そうね。きっとショックを受けるでしょうね)
(だったら……)
(でも……それは周藤先輩が教えてくれる『最高の私』なのよ。信じて努力すればいつか辿りつける、私の到達点。それを知っても損は無いわ)
「……奏」
「こう見えて私、志は高い方なのよ?」
何故か俺に向かってパチリとウインクをする速水。一体なんの事なのか分からず困惑するが、まぁ美人にウインクされて嫌な気はしない。
「……分かった。良太郎さん、私もお願いします」
「ん、いいよ」
「……はぁ、みんながやるって言うんなら、しゅーこちゃんもやらないわけにはいかないよねー……ついでにお願いします」
結局リップス全員分やることになったようだ。まぁ別に俺は歌うだけなのでそれほど労力はかからない。どうしてみんな決意に満ちたような目をしているのかは分からないが……まぁ、これぐらいのことで彼女たちのやる気が出るのであればお安い御用だ。
「それじゃあ早速……」
「その前に、一つだけいいかしら」
「ん? なんだ速水」
「貴方、いつまで私のことを名字で呼び続けるつもりなのかしら?」
「……どういうこと?」
「姫川先輩や鷹富士先輩に聞いたわよ。貴方、アイドルかそうじゃないかで呼び方を変えているらしいじゃない」
そんなこと……言ったなぁ。確かアイツらがアイドルをやり始めた頃だったか。
「美嘉たちは名前で呼んでるのに、私だけ名字ってことは、まだ私はアイドルとして認められていないってことなのかしら?」
「別にそこまで強いこだわりがあるわけじゃないんだけどなぁ……」
なんか俺の呼び方に対する認識のスケールが大事になっているような気がする。こいつの性格からして『自分だけ名前で呼ばれないのは寂しい』って言いたいわけじゃないだろうが……。
「まぁお前がそういうなら、それでもいいぜ、
「……えぇ、それでいいわよ、
「……ねぇ奏、やっぱりアンタって……」
「何を言おうとしてるのか知らないけど、それ以上先を口にしたら酷いわよ、美嘉」
「やるんならさっさとやらないとな」
「あっ、なら録音したいんだけどいいですかー?」
「フレちゃんも記念に欲しいー!」
「あたしもサンプルとして欲しいかなー」
「これいっそのこと、事務所のレコーディングスタジオ借りた方が早いかもなぁ……ちょっと聞いてみよう。……もしもーし――」
「いくらなんでもそんないきなり借りることなんて……」
「――美城さんに聞いたら、ちょうど時間が空いてるところにねじ込んでくれるらしい。ヤッタネ!」
「……あぁもう、本当にこの人は……」
「いや、この場合は常務の方も……」
このあと滅茶苦茶奏たちの声で歌を歌った。
その過程でみんなにそれぞれ歌のアドバイスが出来たから良かったんだけど……まぁ、こんなモノマネが役に立つなら、それでいいか。
・『佐久間流周藤良太郎学』
Lesson130参照。主な受講者は恵美と志保だが、基本的に二人とも話半分で聞いていない。
・ヘレン
『アイドルマスターシンデレラガールズ』の登場キャラ。クール。
世界レベルでダンサブルな24歳。ヘーイ!
本家ではお馴染みのネタ要員として有名な彼女ですが、なんとこのアイ転世界においては『本物の世界レベル』のダンサー。
(こういう設定の方が、逆にギャグかなぁって思った)
・『彼女は俺の目標だった』
割と後付けですが、良太郎より前にアイドルをやっていた中で唯一良太郎を超えていたので、別におかしくはないはず。本当に弟子とかでも面白かったかも……。
・珍しく『ファンだ』と公言
Lesson171参照
・何を持って自分以上だと判断したのか
・良太郎さんが完璧に歌声を再現できない人
なんかここだけ読み取ると、黄瀬の模倣みたいだなーって思った。
・黒羽先生直伝
Lesson28参照。
今更ながら、この辺りからコナン時空混ざってたな……と改めて思い出す()
ちなみに良太郎は有希子が姉弟子だということは知りませんし、有希子も弟弟子だということを知りません。
昔とは事情が違い『周藤良太郎だったら自分よりも上手く歌が歌えて当たり前』という認識が定着しているので、例のアレをやられても傷は浅いです(傷つかないとは言っていない)
このようにして、リップスは346プロが誇る歌唱お化け集団へと変貌を遂げていくのであった……。
次回は久しぶりに番外編をば。……何を書こう。