本編戻れって? 俺だってたまには頭空っぽにしてラブコメ書きたいんだよ……。
それは、あり得るかもしれない可能性の話。
一ページ戻ればいいだけなのでする必要は殆どないだろうけど、あえて入れる前回までの雑なあらすじ!
俺は現役トップアイドル、周藤良太郎!
いつものように事務所に顔を出すと、新人アイドル一ノ瀬志希が怪しげな薬を持ち出した。志希の動きに気を取られていた俺は、背後で開く部屋のドアに気付かなかった。
俺はその隙に薬を飲まされ、気が付いたら――。
――異性から異常な好意を持たれるようになってしまった!
「……ふぅ、奇跡的にここまで誰にも会わなかったぞ……」
例え俺が惚れ薬を飲んでしまったとしても、仕事があることには変わりない。とりあえずいつも以上に変装をし、さらに極力
今日の仕事は『関係のあるアーティスト二組を招いて対談をしたり、お互いの曲を歌う』というコンセプトの番組の収録で、ゲストとして招待されたのは俺と765プロのみんな。司会者は男性タレントなので、スタッフ以外の女性は765プロのみんなしかいないというのが不幸中の幸いなのだが……果たしてこんな状態で本当に仕事になるのかどうか甚だしく疑問である。
ちなみにあらかじめりっちゃんに『惚れ薬を飲まされたので、みんなには出来るだけ近づかないように言っておいてもらいたい』というメッセージを送っておいたのだが、先ほど帰って来たメッセージが『嘘松乙』だった。全く信じてもらえなかったのは、惚れ薬という存在が非現実的なだけで、俺の信用が足りていないわけではないと信じたい。
とりあえずリハまでは楽屋に篭って誰にも会わないようにする以外、今俺に出来る手立てはないだろうから、一先ず自分の楽屋に――。
「りょーたろーさーん!」
――と思った矢先に、背中に軽い衝撃と共に柔らかい感触が広がった。
(早速見つかったー!?)
俺に抱き着いてくるこのアグレッシブさと身長及び背中に広がる張りのある柔らかさは、多分美希ちゃんだと思われる。
ただ、何やら声が違ったような……?
「えへへー良太郎さーん! 一番に良太郎さんに会えるなんて、自分ツイてるぞ!」
「……
個性的なアイドルは数いれど、この一人称を使うアイドルには一人しか心当たりが無い。
「ひ、響ちゃん?」
「はいさーい! おはようだぞ! 良太郎さん!」
背中から離れてトコトコと俺の前に回り込んできたのは、やはり響ちゃんだった。成程、確かに響ちゃんの大乳ならば美希ちゃんと勘違いしてもおかしくはない……じゃなくて。
「な、何? そんなに見られると、流石にちょっと恥ずかしいぞ……?」
普段の響ちゃんならば背中に抱き着くなんて行動をするはずないので、じっと様子を観察してみるといつもの元気のいい笑顔が少し赤らんでおり、後ろで手を組んでモジモジとしていた。
……既に惚れ薬が効いてるな……これは慎重に行動をせねばなるまい!
「今日のお仕事、自分目一杯頑張るから、ちゃんと見ててね!」
「あぁ、うん、勿論。響ちゃんが元気にジャンプして揺れる胸は見逃さないから!」
ダメみたいですね(諦め)
いつもだったらここで「な、何言ってんだよこの変態っ!」ぐらいの罵倒が入るところなんだけど……。
「……そ、それぐらいなら、別にいつでも見せてあげるけど……」
「……え゛っ」
先ほどよりも顔を赤くしつつ、響ちゃんはキョロキョロと周りを見回した。そして俺たち以外に人影がないことを確認すると、右手で左肘を掴みながらムニュッと胸を押し上げた。小柄故にサイズ以上に大きく見える響ちゃんの胸がさらに大きく強調される。首元がやや広いシャツを着ているため、その深い谷間が丸見えだ。
これは趣味嗜好云々を抜きにしても男なら絶対に目を離せない……!
「ちょ、ちょっと恥ずかしいけど……りょ、良太郎さんにだったら――!」
「どうしたのですか、響。突然走り出して……」
「――って、わあああぁぁぁ!?」
突如声をかけられたことにより、響ちゃんはその場で文字通り十センチほど飛び上がった。流石に人前ではいくらなんでも恥ずかしかったようで、そのままワタワタと俺から距離を取った。
「? 何をしていたのですか?」
「べべべ、別に何もしてないぞ!」
誰が来たのだろうかと振り返ると、たなびく銀髪がいとうるわしき貴音ちゃんだった。二人の会話から察するに、突然俺の元にやって来た響ちゃんを追いかけてきたということなのだろうが……逆に、響ちゃんは何処から俺の存在を察知したんだ……?
「おや、良太郎殿、おはようございます」
「うん、おはよう、貴音ちゃん」
「………………」
普通に挨拶を返したのだが、何故か貴音ちゃんは黙り込んでしまった。そのままジッと俺の顔を凝視しているので、多分既に惚れ薬の効果が出始めてるのかもしれないが……響ちゃんと比べて表情の変化が殆どないのでイマイチ判断が付かない。
なので一応ほんの少しだけ距離を離そうと一歩後ろに下がる。
「あっ……」
しかしそんな寂しそうな声を出されてしまったので、思わず足を止めてしまった。
マズイ、貴音ちゃんに先ほどの響ちゃんみたいなことをされたら流石に色々とアウトだぞ……! いや、響ちゃんの時点でもう既に色々とアウトなんだけど……!
「……あの、突然ぶしつけとは思うのですが……一つお願いが」
「……何かな?」
「……手を、握らせてください」
「……へ?」
惚れ薬の影響でどんなトンデモナイお願い事が飛び出してくるのかと一瞬身構えたが、想像以上に簡単なそれに呆気に取られてしまった。
「ダメ、でしょうか……?」
「あ、いや、それぐらいなら……」
不安そうに俺の顔を覗き込んでくる貴音ちゃんに思わずオッケーを出してしまったが……多分大丈夫、だろう。
一応、今朝の志保ちゃんのときのようにいきなり胸元に引き込まれないように注意しつつ右手を差し出すと、貴音ちゃんはその右手を自身の両手で優しく包み込んだ。そのまま胸元へと近づけていくものだから、すわ志保ちゃんの再来かとも思ったが、体に触れない位置で動きは止まった。
そのままそっと目を閉じる貴音ちゃん。ぎゅっぎゅっと二・三回力を籠められるが、それ以外何かをする様子もない。
「……貴音ちゃん?」
「お慕い申し上げております、良太郎殿」
「………………あー……えっと……」
「返事は不要です。良太郎殿に恋慕を抱いている小娘がいるということを、頭の片隅に留めていただければ、それで十分です。……こうして貴方様の手の温もりを感じることが出来るだけで、わたくしは幸せですから」
あ、ヤバい。余りにもガチすぎて惚れ薬のせいだって分かってなかったら堕ちてた。
やべぇよ……やべぇよ……恐ろしくなったよ……。
「っ!? じ、自分だって、良太郎さんのこと大好きだぞ!」
「わっ!?」
そんな貴音ちゃんに影響されたのか、響ちゃんもそんなことを告白しつつ背中に抱き着いてきた。再び背中にむぎゅりと柔らかいものが当たるが、先ほどよりも勢いが強くて思わず前につんのめってしまった。
俺の眼前には貴音ちゃんがいたので、咄嗟に彼女の肩を掴んで支えるようにしながら踏み留まる。
「あっ……」
当然先ほどよりも彼女との距離は縮まり、目の前には彼女の顔が。女性としては高身長な貴音ちゃんではあるが、一応男の意地として身長は俺の方が上。なので貴音ちゃんを見下ろす形になるのだが、何故か貴音ちゃんはその潤んだ瞳を閉じて顔をゆっくりと寄せてきて――。
「何をやってるかアンタらはあああぁぁぁ!!??」
「ぐぼぉっ!?」
――突如強烈な喧嘩キックが脇腹に突き刺さった。
「今回ばかりは本当にありがとう。マジありがとうりっちゃん」
『はぁ……まさか惚れ薬が本物だとは思わないわよ……』
危うくトンデモナイ過ちを犯す一歩手前だったところを救ってくれたのは、りっちゃんだった。あのままだったら本当に貴音ちゃんの唇に吸い寄せられていたかもしれない……そうなった場合、正気に戻ったときにどうお詫びをすればいいのか、末恐ろしすぎて背筋が凍る。
『それで、その惚れ薬の効果時間とか効果範囲とか分からないの?』
「それが分かったらよかったんだけど……何せ開発者が本当に俺を実験台にデータ収集しようと思ってたらしいから、本当に何も分かってないんだよね」
事務所を出る際に「あ、ついでだからレポートの提出よろ~」などと全く反省の色を見せていなかった志希は、こんなこともあろうかとあらかじめ購入しておいたお仕置き用の激臭スプレーの刑にあっていることだろう。本当に反省しなさい。
「一先ず、こうして距離を置けば問題ないってことが分かっただけでも良しとしよう」
『まぁ、これだけ離れれば流石にね……』
ため息交じりのりっちゃんの声が、スマホの向こうから聞こえてくる。
現在俺は自分の楽屋で、りっちゃんは765プロの楽屋。どうやらこの惚れ薬は距離が離れると効果が表れないため、こうしてりっちゃんと何事もなく話せている。まぁあくまでもフェロモンに影響を受けているわけだし、その範囲内にいなければ問題ないのは当たり前だ。
そして一度効果が表れても距離を置くことで効果が消えるらしいのだが……。
「それで、二人の様子は……?」
『……当分使い物になりそうにないわ』
効果が表れていたときの記憶が無くなるなんていう都合のいいことはなく、りっちゃん曰く『先ほどから真っ赤になって部屋の片隅に蹲って動かない』そうだ。いやホントマジでウチのバカがすみません……。
「また後日改めて謝りに行きたいんだけど」
『四・五日は顔合わせない方がいいと思うわ』
やはり傷は深かったか……。
「今日の収録どうしようか……?」
『……すっごい不本意だけど、アンタに好意を持っちゃうことをあらかじめ念頭に置いて動けばなんとかなると思うのよね』
「さっきのりっちゃんは一瞬危うかったけどね」
『忘レロ』
「アッ、ハイ」
電話越しのりっちゃんの声が氷点下以下だったので、先ほど俺に喧嘩キックを決めた後に胸倉を掴んで「私の方がアンタと先に知り合ってんだからねっ!」とよく分からない宣言をされたことは大人しく忘れることにしよう。「あぁもうさっさとここから離れなさい! モタモタしてるとチューするわよ!?」とか言われてたような気もするけど、もう忘れました。
しかしその理屈だと何故志希はばっちりと引っかかっていたのかという疑問が残るが、多分アイツの場合は匂いに対して敏感だからとかそういう理由だろう。深いこと考えてたら番外編なんてやってられないって。
「とりあえず、そこにいる765のみんなにはりっちゃんから事情を説明しておいて。気をしっかりと強く持てば大丈夫だって」
『本当ならば番組に集中させないといけないってときに、どうしてそんな変なことに集中させなきゃいけないのかしら……』
「マジでゴメンって」
スタッフにも事情説明をしに行かないといけないので、一先ず楽屋を出ることにする。
『真っ先に注意しとかないといけないのは美希ね。あの子はただでさえアンタに懐いてるっていうのに、惚れ薬の効果も合わさったらどうなることか……! 楽屋に来たらちゃんと注意しとかないと……!』
「うん、お願いねー」
ドアノブを回しながらそろそろ通話を切ろうかと思ったその瞬間、今のりっちゃんのとある言葉が気になった。
「……
『えぇ。美希以外にも二人到着が遅れてて、後から来ることになってるのよ。だから――』
ガチャリ、と楽屋のドアが開いた……否、
「あ、りょーたろーさん! ナイスタイミングなの!」
「ご挨拶に参りました」
「きょ、今日はよろしくお願いします」
『――美希と千早と雪歩には出くわさないように、気を付けて………………今、三人の声が聞こえなかった……!?』
「………………うん」
つづく!
・俺は現役トップアイドル、周藤良太郎!
見た目はクール! 頭脳はパッション!
・『嘘松乙』
りっちゃんあんまりネット見なさそうだけど、プロデューサーとしてツイッターチェックはしてるんじゃないかと思う。
・響ちゃんの大乳
本当はアイマス2で美希と大きさが逆転してるけど、気にしない気にしない。
ラブコメは かいていて とても たのしかった です。
もうちょっとだけ続けるんじゃよ。
ちなみにラストに登場した三人は、例の如くツイッターでのアンケート結果+αとなっております。
『どうでもいい小話』
白南風の淑女フィギュアがついに届いた! やべぇ……何この女神……! 作りこみが今までよりもパねぇ……!
『どうでもよくない小話』
グリマスが終了……だと……!?
イベントとガチャの更新が無くなるだけで、アプリとしては残るらしいけど、マジか……。やってなかったとはいえ、アイマスというコンテンツが終わることにショックが隠せない……。