※ちなみに今回はいつもと違い、新章直後の閑話的な話はすっとばして本編に入ります。
Lesson160 Who are you?
昔、あるところに一人のアイドルがいました。
彼はその類い稀なる能力で人々を魅了し、一躍人気者となりました。
しかし、そんな彼の人気を妬んだ魔女が、その能力を奪おうと彼に呪いをかけてしまいます。
彼は魔女に奪われるぐらいならばと、自らの能力を五つに分けて封印することにしました。
いつの日か封印を解き、自らの能力を受け継いで『トップアイドル』になる人物が現れると信じて……。
123プロダクション・765プロダクション合同企画『Project:
時は流れ現代。封印を解いたことで『伝説のトップアイドル』の能力を受け継ぎ、それぞれの能力の精霊と共にトップアイドルを目指す五人の若者がいた。
「その程度で私の能力を引き出せているとでも?」
「てんめぇ……」
『
『歌唱』の精霊 / 如月千早
「どうどう!? こんな感じ!?」
「おー! 流石だな! 自分とおんなじぐらい完璧だぞ!」
『
『舞踏』の精霊 / 我那覇響
「お、男の人ー!?」
「いや、君の能力の元の持ち主も男の人だったでしょ……?」
『
『演技』の精霊 / 萩原雪歩
「目指せ一等賞!」
「ついでに悪戯ナンバーワン!」
『
『道化』の精霊 / 双海亜美
「……私には、笑顔が本当に大切なことなのか、分かりません」
「……志保ちゃん……」
『
『笑顔』の精霊 / 天海春香
新たな
しかし、そんな彼らに忍び寄る不穏な影……。
「さぁ……今度は逃がしません。トップアイドルになるのはただ一人……この四条貴音です!」
魔女 / 四条貴音
「あはっ! あの人の能力は、アナタたちにはちょっともったいないってミキは思うな」
「うふふ……だから、私たちに返してくださいねぇ?」
『
『嫉妬』の精霊 / 星井美希
今、アイドル界を……世界を揺るがす、大事件の幕が上がる!
「う、うわあああぁぁぁ!?」
「亜美ちゃん!?」
「ふふふ……まずは一人ですね」
倒れゆく仲間。
「……貴方以上にあの魔女が気に入らない。手を貸す理由はそれだけです」
「ふん、それだけで十分だっての」
育まれる絆。
そして……。
「あ、貴方は、まさか……!?」
「……俺はただの、アイドルファンの一人にすぎないよ」
謎の男 / 周藤良太郎
「やっぱり、私に『笑顔』の能力なんて……」
「それは違うよ! 私は、貴女なら最高の『笑顔』が出来るって信じてるから!」
真のトップアイドルになるのは、果たして誰だ!?
豪華キャストでお送りする、SFファンタジー!
「俺は、君ならなれるって信じてるよ。……俺を超える、トップアイドルに」
『LEGEND~アイドル戦記~』
「……はい、今ご覧になられましたのが、この秋から公開になります私たち765プロダクションと123プロダクションの合同企画『Project:888』の第一弾となる映画『LEGEND~アイドル戦記~』の予告映像でしたー!」
またいつも通り撮影かと思った? 残念! なんと今回は映画の予告映像でした!
「いやぁ、念願だった765のみんなとだけじゃなくて、123の俺たち全員で映画出演出来て満足だよ」
「ミキもリョータローさんと共演出来て嬉しかったの!」
にぱーっと花も咲くような笑顔の美希ちゃんの頭に思わず手が伸びそうになるが、流石にカメラや観覧客の前な上に、これが生放送の『生っすか!?レボリューション』の撮影中ということで止めておく。
「良太郎さん、見どころを教えていただけますか?」
「んー個人的に推したいのは、やっぱりウチの三人娘かな。恵美ちゃんとまゆちゃんと志保ちゃん」
千早ちゃんからの問いかけに「貴音ちゃんのセクシーな衣装」って答えそうになったが、なんとか自重する。
「三人ともこういう映像作品初出演な上に、志保ちゃんに至ってはつい最近CDデビューしたばっかりだからね。そんな彼女たちが頑張ってる姿を是非見てもらいたいね」
しかし勿論こちらも本音だ。一応デビューして半年も経っていない彼女たちが、こうしてほぼ主役級の役柄で映画出演なのだ。本当に大変だったと思うが、それでもしっかりと最後までやり遂げた彼女たちを是非称賛したい。
ちなみにだが、今回の撮影で志保ちゃんがこういう演技系が得意だということが分かった。まだまだ新人の彼女には気が早いかもしれないが、将来的にはそっち方面の仕事に力を入れていくことになるかもしれない。
「さて、123プロの周藤良太郎さんをゲストにお招きしてお送りした今週の『生っすか!?レボリューション』もお別れの時間がやって来ました」
「良太郎さん、今日は本当にありがとうございました」
「いやいや、こちらこそありがとう。楽しかったよ。次回はスタジオだけじゃなくて、外のロケにも参加してみたいな。響チャレンジとかスマイル体操とか」
あみまみちゃんの方も面白そうだ。あ、らーめん探訪だけは勘弁な。
「響チャレンジはともかく、スマイル体操は……」
「りょ、良太郎さんもスモック着るんですか?」
「なんか近い未来にスモックを着る予定があるかもしれないっていう電波を受信して……」
「どんな電波ですか!?」
「って春香、時間が……!」
「よーしそれじゃあみんな! 来週も見てくれよな! 生っすかー!?」
『レボリューショーン!』
「って、全部良太郎さんに持ってかれちゃったよ!?」
『あはははっ!』
『お疲れ様でした!』
「なの!」
「うん、お疲れー」
舞台裏に戻り、観客の目が届かなくなったのでさっき撫でれなかった分も美希ちゃんの頭を撫でると、相変わらず彼女は猫のようにうにゅーっと目を細めた。
「いやぁ楽しかったー。やっぱりこういう身内ばっかりの番組ってのは気兼ねしなくていいね」
「アンタはもうちょっと気兼ねしなさいよっ!」
竜宮小町を含む765プロオールスター組勢揃いの番組なのでこちらに来ていたりっちゃんの背後からの一撃を後頭部で受ける。張り手ぐらいかなーっと油断していたら思いっきり中身が入った缶コーヒーによる一撃だった。普通に凶器なんですがそれは……。
「いつか余裕が出来たら、123プロも全員参加の番組を一本やってみたいもんだ。そっちならより一層自由にやれるだろうし」
「あ、それじゃあミキがゲストに出たいの!」
「これ以上自由にやるんですか……?」
「今日だけでも何回か放送事故を覚悟したんですけど……」
「というか私が言うのもなんだけど、少しぐらい痛がりなさいよ……」
はーいはーい! と元気よく手を上げる美希ちゃん。その一方で、春香ちゃんと千早ちゃんとりっちゃんが凄い微妙な表情を浮かべていた。いや、痛いけど表情に出ないだけだから。
「それより美希、貴女良太郎さんに言いたいことがあるって言ってなかったかしら?」
「え?」
千早ちゃんの言葉に、美希ちゃんは首を傾げて動きが止まる。数秒そのままフリーズした後に「あっ! そうだった!」と再起動した。
「りょーたろーさん! ミキは怒ってるの!」
「え?」
プンプンッ! と頬を膨らませて両手を腰に当てる美希ちゃん。可愛い。
「りょーたろーさん! 最近ずっと346プロダクションのアイドルにばっかり構ってて、ミキのことがおざなりになってるの!」
ミキにはお見通しなの! と美希ちゃん。
「んー……そんなつもりは無かったんだけどなぁ」
確かに最近は凛ちゃんたちのことが気になってシンデレラプロジェクトの子たちの様子を見に行ったりする機会が多かったような気がしないでもない。
いやでも最近だと歌番組の収録で美希ちゃんと一緒になったはずなんだけど……と頬を掻いていると、キュッと俺の服の裾を摘まんだ美希ちゃんが涙目で見上げてきた。
「……りょーたろーさん、ミキたちに興味無くなっちゃった……?」
「そんなことないぞー!」と叫びながら思わず美希ちゃんを抱きしめそうになったが、それを見越していたらしいりっちゃんに再び殴られて行動に移す前に正気に戻る。りっちゃんが俺の行動を把握しているのか、それとも俺の行動が読まれやすいのか。
「……ちっ、なの」
何やら舌打ちのようなものが聞こえた気がしたが、多分空耳だろう。
「前にも話したと思うんだけど、あの事務所には昔なじみの妹みたいな子がいてね。まだまだ新人さんでちょっと目を離したくないんだ」
あのサマーフェスでようやく『アイドル』になった彼女たちだが、それでもまだ卵から孵ったばかりのヒヨコ同然なのだ。余計なお世話と言えば余計なお世話だが、行く末を見届けると約束した以上、しっかりとそれを守るつもりである。
「春香ちゃんたちで言うなら、まだ感謝祭ライブが終わった辺りぐらいかな。あの頃の君たちも、色々と不安要素が沢山あった時期だからねー」
チラリと視線を向けると、自分でも心当たりがあったらしい春香ちゃんと千早ちゃんがサッと目線を逸らした。
「だからもうちょっとだけ346プロの方を気にかけることが増えちゃうけど、だからって765プロのみんなを蔑ろにしているわけじゃないから安心して。それに、君たちの方は君たちの方で気になることが進んでるみたいだしね」
というのも、そろそろ第一期生に続く第二期生のシアター組の書類選考も最終局面を迎えているらしいのだ。
本格稼働前から二期生かとも思わないでもないが、一期生も精々六人。オールスター組もステージに立つことがあるとはいえ、少々劇場を回していくには心もとない人数ではあるので、もう何人か迎え入れるらしい。多分あの高木さんのことだから、随分と個性的なメンバーが揃っていることだろう。
そうそう、ついでに事務員として迎え入れたはずのこのみさんが何故か事務員兼アイドルとしてデビューを果たすことになったため、もう一人新しい事務員の女性を雇ったらしい。
「あ、そういえば一つ聞きたいことがあったんでした」
いい感じに話が纏まったので、このまま一緒にお昼でも……と切り出そうとすると、ポンッと春香ちゃんが手を叩いた。
「えっと、良太郎さんの気にかけてる妹みたいな子っていうのは、ニュージェネレーションズの渋谷凛ちゃん、ですよね?」
「うん、そうだよ」
「そのユニットメンバーの島村卯月ちゃんと本田未央ちゃんはご存知なんですよね?」
「そりゃあ、何回か顔も合わせてるからね」
なんだろうか、春香ちゃんの質問の意図が良く読めない。
「えっと、それじゃあ良太郎さん、その二人が天ヶ――」
ピリリリリ。
「っと、ごめん春香ちゃん、電話みたい」
一言断りを入れてから先ほどスタッフから受け取ったカバンの中からスマホを取り出す。
「……お、噂をすれば」
画面に表示された名前は、先ほど話題に上がった凛ちゃんのものだった。
少しみんなから離れると、フリックして通話状態にする。
「もしもし、凛ちゃん。こんにちは」
『こんにちは、良太郎さん。……えっと、今いいかな?』
「うん。何か用事?」
『用事というか、なんというか……』
何やら歯切れが悪い凛ちゃん。何かあったのかな?
『良太郎さんってさ、色々と知り合いの人、多いよね?』
「割と真面目に芸能界トップクラスの顔の広さは自負してるけど」
『それじゃあさ……霊能力者とか、いる?』
「……はい?」
・『Project:888』
123+765=888
・『LEGEND~アイドル戦記~』
初めは能力を各クラスにおいて聖杯戦争的な感じに仕上げるつもりだったのですが、うまいこと纏まらなかったのでこういう形になりました。
・『生っすか!?レボリューション』
アニメ本編終了時にリニューアルして復活した生っすか!?サンデー。なんかゴールデン番組とかいう話もチラリと聞いたが、それだと響チャレンジとかスマイル体操とかが生中継できなくなりそうだったので、この小説内ではお昼のままで。
・志保ちゃんがこういう演技系が得意
公私をしっかりと分けるタイプなのが関係するかどうかは定かではないが、渡された役はなんであろうとキッチリこなすタイプ。その結果が例の小学生メイドである。
・近い未来にスモッグを着る予定
とときら学園逃げてー! 超逃げてー!
・「……ちっ、なの」
この世界の美希は割と欲望に忠実。大体良太郎のせい。
・随分と個性的なメンバー
姫とか、ミリマス版くんかー枠とか、野生っ子とか、うざかわいい子とか、ぷっぷかさんとか、腹筋背筋胸筋とか。
・青羽美咲
ついに事前登録が開始された『アイドルマスターミリオンライブ!シアターデイズ』に新キャラとして登場する劇場事務員さん。どんなキャラなのか全く掴めてないが、とりあえず新しいものに飛びついて名前だけは出しておくスタイル。
デレマス編が始まってから一年と一ヶ月、ようやくアニメ二期編のスタートです。
まずは久しぶりの765信号機トリオ+りっちゃんとの絡みから、アニメ十三話へと突入していきます。
そして今話にて、ついに(というかようやく)123最後の新人の登場です。お楽しみに。