アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ついに第四章最終話のスタートです。

というわけで(謎)アイドルのセクシーシーン、用意しときました!


Lesson155 Got it going on!

 

 

 

 本日ハ晴天也。

 

「……あっつい……」

 

 少々気温が高すぎる気もするがそこは夏だから仕方がないと首を振り、少なくとも悪天候ではないことを喜ぼう。

 

 今日はついに迎えた346プロダクションサマーフェスの当日。美嘉さんのバックダンサーを務めたとき以来の大舞台だ。

 

 午後からの開演ではあるが、当然演者である私たちは朝から現場入り。スタッフさんたちへの挨拶もそこそこに早速リハーサル。それも終わると、そのまま私たちシンデレラプロジェクトに宛がわれた控室に集まってミーティングである。

 

 ミーティングを進めるのは、当然私たちシンデレラプロジェクトのリーダーである美波。元々私たちのまとめ役的な立ち位置にいた彼女だが、先日の合宿を境により一層それが板についた気がする。

 

「他にリハーサルで気になったことある?」

 

 マジックペンの蓋をしながら美波が振り返る。ホワイトボードには『リハーサルで気付いたこと』として、美波の字で『舞台は思ったより広い』『全体曲の立ち位置注意』『舞台監督さんのQをちゃんと見る』と書かれており、これらは全て先ほどのリハーサルにて私たちが実際に感じたことだった。

 

「出ハケ、まだちょっとバタバタしてるかも」

 

「やっぱり人数多いとね」

 

 みくが小さく挙手をしながらそう発言すると、隣に座る李衣菜がそれに同意する。

 

「そうね、もう少し余裕をもって動きましょう。他には……」

 

 

 

 一先ずミーティングも終わり、本番までまた少し時間が出来る。

 

「美波ちゃん、まだ練習する時間あるかな?」

 

「えぇ。全体曲?」

 

 みりあに尋ねられ美波がそう聞き返すと、彼女は「うん!」と頷いた。

 

「待ってて、私も付きあうわ。先に出ハケの事をスタッフさんたちに連絡して――」

 

「あ、ゴメンみんな。少しいいかな」

 

 このまま各自での行動になりそうな雰囲気を察したので、全員揃っている今が丁度いいタイミングだろうと全員に呼びかける。

 

「凛ちゃん?」

 

「しぶりん、どうかしたの?」

 

「うん、実はさ……」

 

 本当はあまり乗り気ではないのだが、()()をいつまでも自分の手元に置いておくことが精神衛生上よろしくないと判断したので鞄の中から()()を取り出す。

 

「……良太郎さんから全員宛に封筒を預かっちゃって……」

 

『良太郎さんから!?』

 

 そう、また今回も良太郎さんから受け取ってしまった『アイドル虎の巻』である。しかも今回は『もし何かあったら開けて』ではなく『みんなと一緒に開けて』と言われてしまった。

 

「わー! 凄い凄い! 良太郎さんから!?」

 

「凛ちゃん、早く開けて開けてー!」

 

「……うーん」

 

 莉嘉とみりあの年少コンビにせかされるが、正直乗り気じゃない。

 

「あ、もしかして前回みたいにしぶりんの昔の写真が入ってるかもしれないから?」

 

「その可能性も勿論あるんだけど……」

 

 ここ見てよ、と封筒の隅に書かれた一文を指で示す。

 

「……せ、『※セクハラ注意』……!?」

 

 これである。これまでのことから考えるに、わざわざ自分で注意書きを書く辺り本当に面倒くさい奴のような気がしてならない。

 

「いっそこのまま見なかったことにして燃やして灰に(どうだ明るくなったろう)した方がみんな幸せなんじゃないかな」

 

 しかし前回はそれなりに役に立ったことも事実なので、全員で挑む初めての大舞台を成功させるためにも中身を読みたい気も一応あるのだが……。

 

「そ、それは流石に……あっ、そうだ! それじゃあ一回プロデューサーに中身を確認してもらうっていうのは?」

 

「え?」

 

 未央のその提案に、入り口付近で事の成り行きを見守っていたプロデューサーに全員の視線が集まる。

 

「……私は、構いませんが……」

 

「……それじゃあ、お願いしようかな」

 

 また自分の昔の写真だった場合も考えたが『※セクハラ注意』の内容が色んな意味で怖かったので、素直にプロデューサーに任せることにする。

 

「で、では、失礼して……」

 

 私から封筒を受け取ったプロデューサーはその場でクルリと後ろを振り返り、その大きな体で私たちからの視界から封筒を隠して中身を確認し始めた。

 

「……えっ」

 

 ガサガサという音と共に封筒の中から何かを取り出したプロデューサーは、表情こそ見えないものの明らかに動揺した様子で動きを止めた。やはり碌でもないものが入っていそうな雰囲気である。

 

「それで、プロデューサー的には私たちが見ても大丈夫?」

 

「……その……ふ、不健全なものではないと……思うのですが……」

 

 しかしその言葉とは裏腹に、困惑しているのは一目瞭然だった。

 

「不健全じゃないならいいじゃーん。もしかして、またしぶりんの可愛い写真とか?」

 

 そう言いながら興味を抑えきれなかったらしい未央がササッとプロデューサーに近付いてその手元を覗き込み――。

 

「きゃあああぁぁぁ!?」

 

 ――随分とキャラに合わない可愛らしい悲鳴を上げた。

 

「え!? 未央ちゃんどうしたの!?」

 

「何々ー!? アタシみたいー!」

 

「みりあも見るー!」

 

「あっ……!?」

 

 莉嘉とみりあに飛びつかれ、気を抜いていたらしいプロデューサーの腕がこちらに引っ張られる。その拍子でその手にあった封筒が宙を舞い、そのまま綺麗に机に着地して中身をその上に曝け出した。

 

「……なあっ!?」

 

 封筒の中身は、やはり今回も写真だった。しかしそこに写っていたのは私ではなく、ましてや良太郎さんでもなく――。

 

 

 

 ――上半身裸のジュピターの三人だった。

 

 

 

『きゃあああぁぁぁ!?』

 

 先ほどの未央と同じような黄色い悲鳴が楽屋中に響き渡った。

 

 本当に興味無さそうな杏やよく分かっていないみりあを除き、その場にいたプロジェクトメンバー全員が顔を赤くしている。かく言う私も顔が熱い。

 

 いや、ただの男性の上半身裸の姿だったならばここまで取り乱すこともなかっただろう。問題はそれがトップアイドルグループであり私たちと歳が近いジュピターのものだったから、である。

 

「なんにゃコレ!? なんにゃコレ!?」

 

「十分不健全ですよプロデューサーさん!?」

 

「そ、そうでしたか……!?」

 

 テンパるみくに、プロデューサーに詰め寄る美波。

 

 まさかこういう方向でのセクハラだとは思いもしなかった。

 

 確かに女性の水着写真とかよりは全然健全だとは思うのだが、少なくとも私たちにとっては些か刺激が強すぎた。しかし目を逸らそうと首を動かすが視線は自然とそちらに吸い寄せられてしまう。

 

 写真はどうやらジュピター三人がロッカーで着替えている様子を撮影したものだった。何となく雰囲気がプライベートに近いものを感じるので、もしかすると良太郎さんが自分で撮影した可能性が高い。その証拠に天ヶ瀬さんは基本的にそっぽを向いているものの、伊集院さんと御手洗君はノリノリでポーズやピースサインを決めていた。明らかにノリが男子学生のそれである。

 

「良太郎さん、本当に何してくれてるのさ……」

 

「これ、出すところに出したら数万円はするんじゃないかな……」

 

 しばらくしてようやく落ち着いてきたので、改めて写真を手に取る。別にじっくり見たいというわけではなく、裏に書かれているであろうメッセージを読むためである。

 

 先ほどは真っ先に悲鳴を上げた未央も少し落ち着いている。他のみんなもそれなりに落ち着きを取り戻したようだ。

 

「……えっと……りょ、良太郎さんの写真はあったりしないかにゃ……?」

 

「あああ、あの、あの……あああ天ヶ瀬さんのおおお写真をもも貰ったりしちゃったりしちゃったりしたらだだだダメでしょうかっ!?」

 

 一方でみくと卯月はまだテンパったままだった。みくは何故か写真の中から良太郎さんが写っているものを探そうとしているし、卯月は天ヶ瀬さんがうっとうしそうな目をカメラに向けている写真を手に目をグルグルと回していた。

 

 みく、多分良太郎さんは性格的にこういう写真に自分のものを混ぜないと思うよ。卯月、良太郎さんがバラ撒いたやつだから多分大丈夫だとは思うけど、とりあえず123の社長(こうたろうさん)に聞いてみるからちょっと待ってて。

 

 さて、改めて写真の裏に書かれているメッセージを読み始める。

 

「えっと……『まずはこの写真を見て落ち着いて欲しい』」

 

『落ち着けるかっ!』

 

 全会一致だった。

 

「……ってこれ、私たちへの個別メッセージになってる」

 

『えっ!?』

 

 二枚目を手に取ってみると、そこには『凛ちゃんへ』という書き出しで『未央ちゃんと卯月ちゃんの背中を押してあげて。そうすれば二人が凛ちゃんを引っ張ってくれるから』というメッセージが書かれていた。どうやら全員分のメッセージを書いたらしい。

 

「わ、ホントだ! こっちは私宛のメッセージだ!」

 

「わ、私宛もありました!」

 

「こ、これは……か、かな子ちゃん宛?」

 

「こっちは智絵里ちゃん宛だから、交換しよ?」

 

「杏ちゃん宛もちゃんとあったにぃ?」

 

「うげぇ……」

 

 など全員で協力しながら自分に宛てたメッセージをそれぞれの手元に持っていく。今回は純粋に応援の言葉だけのようだが、それでも良太郎さんからのメッセージは全員のやる気向上に繋がったようである。ホント、これで最初から真面目にやってたら素直に感謝したのに、どうして毎度毎度自分で自分の行動を台無しにするのだろうか。

 

「……え?」

 

 そんな中、美波が一人自分に宛てられたメッセージを見て首を傾げていた。

 

「ミナミ、どうかしましたか?」

 

「あ、アーニャちゃん……うん、良太郎さんからのメッセージなんだけどね?」

 

 ホラこれ、とアーニャに自分の手元のメッセージを見せる美波。

 

 そういえば合宿から変わったことと言えば、今まで『周藤さん』又は『周藤良太郎』呼びだった美波が765プロの千早さんと話してから『良太郎さん』と呼ぶようになった。良太郎さんへの嫌悪感が無くなったのかとも思ったのだが、それ以来大々的に『良太郎さんが苦手』と公言するようになったので、ただ単に吹っ切れただけなのかもしれない。

 

「……?」

 

 そんな美波のメッセージを覗き込んだアーニャも首を傾げた。

 

 一体どんなメッセージが書かれているのか気になったので、私もこっそりと覗き込んで見る。

 

「……?」

 

 そこに書かれていたのは他のメッセージ同様紛れもなく良太郎さんの字で『みんなのことをよろしくリーダー!』という応援のメッセージと共に一言。

 

 

 

 ――ただし()()()()()()()()()()()()()()こと。

 

 

 




・『※セクハラ注意』
「成程、つまり注意書きしておけば大丈夫だな!」
↑こんな思考回路してるけど一応トップアイドルな主人公。

・どうだ明るくなったろう
恐らく誰もが一度は見たことあると思われる歴史の教科書の一コマ。

・上半身裸のジュピターの三人
ほら、アイドルのセクシーシーンですよ(ゲス顔)



 CPとジュピターの双方にセクハラを仕掛けていくスタイル。良太郎不在にも関わらず場を掻き乱していくトラブルメーカー系主人公の鑑。

 次回はちゃんと主人公登場しまーす。



『どうでもいい小話』

 CD先行で全滅したと思ったら、WEB先行の方で勝ったあああぁぁぁ!

 というわけで前回に引き続き5th参加決定です! 石川初日でお会いしましょう!

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