アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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楓さん誕生日記念完全新作公開! 詳細は活動報告にて。

あ、今回普通に本編でーす。


Lesson121 The first step for a ball

 

 

 

「……え、初ステージが決まった!?」

 

『う、うん』

 

 それは、写真撮影の現場でシンデレラプロジェクトの面々と顔を合わせた日の夜の凛ちゃんとの通話での出来事だった。

 

 なんでも事務所に帰った後、今では『カリスマJK』など称される人気アイドルになった美嘉ちゃんが凛ちゃん他二名を自分のバックダンサーとして使いたいと武内さんに直談判し、今西さんがゴーサインを出した……ということらしい。

 

「いやー、素直に驚いた……でも良かったね。実際にアイドルの後ろに立って踊ってみると、アイドルのステージっていうのがどういうものなのか手に取るように分かるだろうし」

 

 百聞は一見に如かず。アイドルの話を聞くよりも、映像資料として見るよりも、実際にそのステージの上に立たないと分からないこともある。

 

「えーっと……これだな」

 

 凛ちゃんと通話しつつ、パソコンを使って次の美嘉ちゃんのライブの情報を見つける。ふむ、346の定例ライブか……となるとそこそこの観客が入りそうだな。流石に同じバックダンサーとして初デビューした恵美ちゃんたちのアリーナほどではないが、それでも初ステージにしては破格の大きさである。……って、本当の初デビューはミニステージの方だっけ。

 

 よーし、ならばお兄さん張り切って見に行っちゃうぞー! ……と言いたいところなのだが。

 

「仕事なんだよなぁ……」

 

 いつもだったら偶然時間が空いていたりするのだが、今回はちょうど仕事が入っていた。珍しく歌って踊らない仕事で、春休みに海外に行っていたことと英会話が出来るということに目を付けられ、最近流行りの英国の小説『ハニー・ポッター』シリーズの作者との対談が設けられていた。

 

「ゴメンね凛ちゃん、俺は見に行けそうにないよ……」

 

『う、うーん……寂しいようなホッとしたような……』

 

「凛ちゃん指しながら周りの観客に『あの子俺の妹(みたいな子)なんすよーwww』とかやりたかったのに……」

 

『絶対に来ないで』

 

 全力で拒否られてしまった。ははーん、恥ずかしいんだな?

 

『って、今回電話した本題がまだだった』

 

「ん、やっぱり今回も何かお悩み?」

 

 こうして凛ちゃんから電話をかけてくる時って何かしらの相談事がある時なんだよね。凛ちゃんって『世間話で長電話』ってタイプじゃないから、特に用事がないと電話してこないし。

 

『事務所に所属することになって、こうしてアイドルになった途端にステージに立つことが決まって……なんというか、トントン拍子過ぎて戸惑うというか……』

 

「あー、言いたいことは何となく分かった。今まで『お前トップアイドルの癖にオフ多過ぎない?』と言われても仕方がないぐらい時間が偶然合って765プロの練習に付き合ったりライブに行ったり、そういう出来すぎた展開に見えない神の意志を感じるんだよね?」

 

『流石にそこまで壮大な上に第四の壁的な意味でもないけど、まぁ大体そんな感じ』

 

 確かに、よくよく考えてみれば凛ちゃんがアイドルにスカウトされてから二週間も経ってないし、アイドルになると決めてからも一週間経ってないんだよなぁ。

 

『まだ全然実感が湧かなくて……アイドルの仕事って、こんな感じに決まってくのかなって』

 

「んー、流石にそれは人によりけりとしか言えないかなぁ。俺だって兄貴が履歴書を送ってから割とトントン拍子にアイドルになったし、そういうこともあるって割り切るしかないって」

 

『……うん、そうだね』

 

「寧ろ逆に考えるんだよ。事実は小説より奇なりじゃなくて、この世界は実は小説で凛ちゃんはメインキャラクターだって」

 

『ふふ、何それ』

 

 悩み相談になっていたかどうかは分からないが、とりあえず今は初ステージに集中してもらうのがベストだろう。

 

 さて、それにしてもどうしたものか。凛ちゃんの初ステージは気になる、しかし俺は仕事だし。恵美ちゃんは美嘉ちゃんと仲良いから、ちょっと見に行ってくれないか相談してみようか。

 

 

 

 ……あ、そうだ。

 

 

 

 

 

 

「……ふーん」

 

「ん? どーしたの、とーま君」

 

「もしかして、女の子からのメールかい?」

 

 番組収録の本番までの空き時間に楽屋でメールを読んでいると、暇だったのか翔太と北斗がこちらに興味を示してきた。

 

「まぁ、女の人からのメールっていう点ではあってっけど、女の子って歳ではねーな」

 

 メールの送り主は先日挨拶に行った養成所の先生だった。

 

 なんでも346プロダクションに所属することになった島村が、城ヶ崎美嘉のバックダンサーとして初ステージに立つことが決まったらしい。

 

 城ヶ崎美嘉と言えば、巷では『カリスマJK』として有名なアイドル。そんなアイドルのバックダンサーに自分の教え子が抜擢されたということで、先生も浮かれているらしかった。少なくとも(自分で言うのもアレだが)トップアイドルであるジュピター相手に「もし時間があるようだったら是非見に行ってやってくれ」とメールしてしまうぐらいに。

 

 島村のデビューステージならまだしも流石にバックダンサーデビューにそこまで大騒ぎすることではないとは思わないでもないが、まぁ一度はダンス指導をしてやって知らない間柄じゃないし、何より恩師の頼みだ。別に見に行ってやってもいいのだが……如何せんタイミングが悪い。

 

「翔太、北斗、この日の予定って何だったか覚えてるか?」

 

「ん? いつー? ……えっと、何だっけ?」

 

「確か取材だったはずだよ」

 

 しかし分かっていたことではあるが、やはり仕事だった。時間的にもライブは見に行けそうになかった。

 

 ならば仕方がないと諦めればいいだけの話なのだが……誰かに代わりに行ってもらうか? 確か良太郎の奴は346に知り合いも多いし、適当に話を振ってやれば勝手に見に行きそうではあるが、どーせアイツも仕事だろうしな。

 

 

 

 ……あ、そうだ。

 

 

 

 

 

 

「え、マジ!? 美嘉のバックダンサー!?」

 

『そーなんだー! 入って早々の大抜擢……くぅー! アイドルって何が起こるか分かんないから楽しー!』

 

 ダンスレッスンの合間の休憩時間、先日知り合って仲良くなった未央からかかってきた電話の内容に、アタシは素直に驚いた。

 

 美嘉は一応アイドルとしての活動を始めた時期という点ではアタシやまゆと同期になるのだが、ステージデビューがアタシたちよりも早かったので既に人気アイドルの一員になっていた。事務所の方針故のことなので別に悔しいとか羨ましいとかそういうのは無いが、昔から美嘉を知っている身としては『カリスマJK』と呼ばれているのを見ると思わず「ぷふーっ!」と吹かざるを得ない。

 

 ともあれ、そんな美嘉のバックダンサーとして未央の他二人の新人アイドルが選ばれたらしい。

 

「恵美さん、少し声が大きいです。廊下まで聞こえてましたよ」

 

「あら、誰かとお話中?」

 

「あ、お帰り」

 

 お手洗いに行っていた志保とまゆが戻ってきた。

 

 この間の合同イベントの時もそうだが、最近アタシたちピーチフィズの二人と志保は一緒に行動することが多い。事務所に所属するようになったタイミング自体はアタシたちの方が早いものの、基礎的な部分はアタシたちと志保は殆ど変わらないので同様のレッスンを受け続けても問題ないだろうというのが社長の判断だ。

 

 要するにアタシたちとリョータローさん、もしくはジュピターの三人だと実力差が開きすぎているので無理だが、アタシたちと志保だったらほぼレベルは一緒だから大丈夫、というわけだ。

 

 ちなみにこの話を聞いてリョータローさんと冬馬さんは「確かに、レベル差があるキャラのレベル上げ場所には気を使うなー」「特にFE(ファイ○ーエ○ブレム)とかちゃんと育成計画立てねーと終盤で泣きを見るんだよな」などと話していたが、残念ながらアタシにはよく意味が分からなかった。

 

「今未央とお話中だよー」

 

『あ、もしかしてそこにままゆとしほりんもいるの? ヤッホー二人ともー! 私今度城ヶ崎美嘉のバックダンサーやることが決まったんだー!』

 

「あら、凄いわねぇ」

 

『あ! そーいえばめぐちんたちも初めてのステージはバックダンサーって言ってたっけ? ねーねー、どんな感じだったー?』

 

「「うっ……!?」」

 

 そんな未央の純粋な問いかけに、アタシと志保が思わず言葉を詰まらせる。

 

 バックダンサーとして初めてのステージというとどうしても思い出してしまうのは去年のアリーナライブ……ではなく、それよりも前のミニライブである。あの時のミニライブはアタシたちバックダンサー組に少々トラブルがあり、さらにそのことを雑誌で叩かれ、さらにその頃はまだ志保と仲が良くなくて色々と険悪で……と今思い返しても若干憂鬱になりそうだ。

 

 特に志保との一件は既に和解しているものの、それでも改めて思い返してお互いに目を逸らしてしまうのは仕方がないことだと思いたい。

 

『……ん? あれ、どったの?』

 

「んーん、何でもないわよぉ」

 

「し、しいて言うなら、大成功ってわけじゃなかったってところかな」

 

 だから彼女の初ステージが無事成功することを祈りたい。

 

 うーん、本当は美嘉のライブ&未央の初ステージということで是非見に行きたいのだが、残念ながらその日はレッスンとイベントでアタシとまゆは見に行けそうにない。志保は志保でその日は家の都合でお休みするらしいし……事情を話せばなんだかんだで面倒見がいい冬馬さんが代わりに行ってくれないものだろうか。

 

 

 

 ……あ、そうだ。

 

 

 

 

 

 

「「「346プロの定例ライブ?」」」

 

 

 

「「「……ん?」」」

 

「ん? ミキミキとはるるんと真美、電話しながら顔見合わせてどーしたのー?」

 

 

 

 

 

 

おまけ『ハニー・ポッター』

 

 

 

『ハニー・ポッターと賢者の豚』

『ハニー・ポッターと豚の部屋』

『ハニー・ポッターと豚の囚人』

『ハニー・ポッターと豚のゴブレット』

『ハニー・ポッターと豚の騎士団』

『ハニー・ポッターと純潔の豚』

『ハニー・ポッターと豚の秘宝』

 

「……どう考えてもタイトルオチなんだよなぁ……『純潔の豚』とか、それもうただの血統書付きの豚じゃん。イベリコか何か?」

 

「えー、でもこれラストすっごい泣けるんですよー!」

 

「恵美ちゃんはいつも泣いてるからあまり参考にならないんじゃないかしらぁ?」

 

「ちょっとまゆ!」

 

「正直眉唾だな……」

 

 

 

「只今戻りました。……って、りょ、良太郎さん!? な、何で号泣してるんですか!?」

 

 

 




・『ハニー・ポッター』
結構有名なパロssシリーズ。設定というか一番最初は完全にネタなのだが、設定や伏線は原作を完全遵守した名作ss。本家よりも伏線が分かりやすくなっているので、本家で若干理解出来なかった人でも簡単に把握できる。
作者はラストを読んで電車内にも関わらず泣いた。ひんひん!
ちなみにおまけでのサブタイトルは全部作者オリ。

・『お前トップアイドルの癖にオフ多過ぎない?』
逆に考えるんだ。『良太郎がオフ以外の時も物語は進行していて、描写されないだけだ』と考えるんだ。

・第四の壁
要するにメタっていう意味だが、第四の壁って言い方をすると最近ついに実写化して来日してしまった例の赤いアイツのイメージ。

・とーまとしまむーの繋がり
感想でも指摘されたけど、要するにこーいうこと。
ヘタレの冬馬君に女の子のメアドが聞けるわけないのである。

・レベル上げ
「今のFEはフリーマップあるからレベル上げ余裕っしょーw」とか言ってると暗夜編で白夜王国にぬっころされる羽目に。
作者はヒノカ姉様に何度もぬっころされました(白目)



 アニデレ第三話編です。

 まずは安定の電話フェイズから。事務所違うからしょうがないねんて。

 そして765プロとの絡みというオリジナル展開がようやく出来そうです。アニマスから書き続けた甲斐がありました。



 そして前書きでも書きましたが、楓さん誕生日記念の新作公開しました。

 主人公は良太郎ではありませんが、もしよければそちらもお願いします。

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